大河ドラマ「おんな城主 直虎」の第29回です。
前回のお話では、武田に追い詰められる今川を、寿桂尼が懸命に立て直そうとします。
井伊家は今川に見切りをつけ、寝返りの算段を始めますが、寿桂尼はそれを予期していたように、井伊家粛清の筋書きを描くのです。
前回の第28回「死の帳面」を見逃した方は、是非、こちらをご覧下さい。
第29回のサブタイトルは「女たちの挽歌」、元ネタはジョン・ウー監督の1986年香港映画「男たちの挽歌」でしょう。挽歌とは死者に捧げる歌のこと。井伊家の女性の誰かが、犠牲になるのでしょうか?
徳川への人質
直虎(柴咲コウさん)は、戦をしない道を模索し、徳川に書状を出しました。徳川が武田ではなく上杉と組めば、武田は今川に攻め込まないと考えたのです。徳川家康(阿部サダヲさん)からの返事は「考えておく」というもので、直虎は希望が見えたと喜びます。
そのような状況下で、今川を支えていた寿桂尼(浅丘ルリ子さん)が死去。1568年3月、桶狭間の戦いから8年。尼御台、女戦国大名と言われ、直虎もその生き方を見本にした偉大な女性が亡くなりました。
盛大な葬儀が執り行われ、小野政次(高橋一生さん)も参列。
直虎は井伊谷で、寿桂尼が記した仮名目録を手にしながらお経を。
遠く岡崎でも、駿府にてお世話になった家康・瀬名(菜々緒さん)夫妻が手を合わせます。
直虎の元に常慶が現れます。常慶は、諸国を行脚しながら情報を集める山伏で、徳川配下の松下家出身です。11話、20話など、たまに出てくる時は井伊の運命が動く時です。
常慶が言うには、三河は混乱しているとのこと。武田と徳川は、今川に同時に攻め込み、領土を分割するという密約を交わしました。上杉と手を組む話しは立ち消えたのでした。
常慶は直虎に今川と徳川、どちらにつくのか迫ります。直虎は自ら、徳川の味方になりたいと進言。すると常慶は「では人質に、虎松様の母君をいただきとうございます」と、常慶の実家である松下家に嫁ぐように要求したのでした。
駆け引きが必要な場面だったのに、勇み足だった…と愕然とする直虎。しかしここは、しの(貫地谷しほりさん)に嫁いでもらう他、事態を収める方法が無いのでした。
直虎自らがしのに伝えますが、しのは「人質を求められるなど、失策にも程がありましょう!」と大激怒。直虎はこれはだめかと困り顔。
クルッと背を向けたしのは「で、虎松には何と話せばよろしゅうございますか」と直虎に聞きます。しのは武家の女として生まれた運命を受け入れ、井伊家のために犠牲になる覚悟を決め、嫁ぐことを了承したのです。
虎松の試練
息子の虎松(寺田心くん)に、他所に嫁ぐことを話すしの。虎松は大反対し、どうにかして行かないで済む方法は無いのか、知恵を絞るのでした。
虎松は様々な策を考え、最後には新野家長女・あやめ(光浦靖子さん)をしのの身代わりにと提案しますが、身代わりがバレた時、あやめも直虎も切られてしまうだろう「その策、受け負いかねる」と直虎は却下します。虎松は走り去り、泣きながら机で眠ってしまいました。
しのの決意と井伊の行く末
しのは直虎に、虎松の心の成長のため、敢えて「行きたくない」と虎松に言ったのだと告げます。そして「私が嫁ぐということを、うまく取引に使い下さい。井伊のためになる何か。そしてその話をいつか虎松にしてやって下さい」と言うのでした。
目覚めた虎松にしのは「やはり行きたくなってしまったのですが、行って良いですか」と聞きます。亡き直親の志を継ぐために嫁ぐのだと、説得しました。虎松は泣きながら「毎晩虎松とともに寝て下さい」とお願いし、了承したのでした。
虎松こと寺田心くんの演技が自然で、子役ということを忘れるほどの演技力です。
直虎は常慶に、人質了承にあたり条件を出します。井伊は徳川に決して逆らうことはない。しかし兵を出すこともしない、というものです。
井伊の目指すところは、民百姓を1人たりとも殺さぬことだというのが、直虎の思いなのでした。
やがてしのは輿入れをします。遠くから、虎松が吹く少し拙い笛の音が。母と子の別れ…井伊家の犠牲になったしのへ、挽歌ともいうべき音色でしょうか。
寿桂尼の残した罠
駿府に武田家臣・山県昌景が訪れ、遠江を割譲せよと無理難題をふっかけます。今川家臣・朝比奈泰朝は、武田に内通した国衆の首を突きつけ、山県を追い返しました。
今川氏真(尾上松也さん)は「もはや戦しかあるまい」と決意。さらに井伊の件も進めよと家臣に命じます。
井伊谷では虎松に、私を父と思って欲しいと直虎は伝えます。しのの代わりはできない。いっそ父として接しようと考えたのでしょう。
次回第30話は、「潰されざる者」。
寿桂尼の残した罠とは、また徳政令を使って井伊家を潰す作戦でした。
追い込まれる井伊家、直虎と政次はどう動くのでしょうか?