毎週日曜日20時から、NHK総合他にて放送中の大河ドラマ「おんな城主 直虎」。
2017年9月24日、第38話「井伊を共に去りぬ」が放送されました。
今回の「井伊を共に去りぬ」というサブタイトルの元ネタですが、1939年に作成されたアメリカ映画の「風と共に去りぬ」ってことで、問題無いでしょう。この「風と共に去りぬ」ですが、Wikipediaによると
太平洋戦争の緒戦において、日本軍による被占領地となった上海、シンガポール、マニラなどで、主に軍隊関係(陸軍中野学校出身者)の日本人がこの作品(他、ディズニー・アニメ映画「ファンタジア」)を見る機会を得たが、「こんな映画を作る国と戦争しても勝てない」と衝撃を受けたという。
だそうです。もし、未見の方がいらしたら、これを機会に是非80年程前のこの「風と共に去りぬ」をご堪能下さい。
前回、還俗し、瀬戸村で一農婦として龍雲丸(柳楽優弥さん)と共に暮らしていた井伊直虎(柴咲コウさん)。気賀の商人、中村屋(本田博太郎さん)から「堺で商いをやらないか。」という誘いに乗り、二人で堺に向かおうとしたところ、武田信玄(松平健さん)が遠江に侵攻してきたとの知らせを受けます。
南渓和尚(小林薫さん)ら、龍潭寺の僧たちと作戦を練る直虎。井伊谷城の近藤康用(橋本じゅんさん)はあくまで、徳川家康(阿部サダヲさん)側として戦うつもりでいました。そこで直虎は、兵力となる村人を残らず全員逃散させ、武田に帰順させるよう仕向け、近藤を説得します。しかし近藤は、逃げる事には承知したものの、城を開城することは承知せず、井伊谷城に火を放ちました。城は焼け落ちましたが、焼け死んだ人は一人も出なかった…というところで前回の話は終わりました。
前回の途中、高瀬(高橋ひかるさん)が、謎の男から毒を渡され近藤殺害を命令され、失敗したり、あやめ(光浦靖子さん)と瀬戸方久(ムロツヨシさん)が結婚するなど、前回は盛りだくさんでした。高瀬の謎と、直虎の堺行きが今回へ持ち越しとなっています。
今回の冒頭、武田は、井伊谷城が焼け落ちた上、村から人も物も全て無くなっていたことに怒り、里を皆焼き払ってしまいました。
前回の第37回「武田が来たりて火を放つ」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
それでは、第38話「井伊と共に去りぬ」のネタバレとあらすじと感想です。
南渓和尚が信玄を取り込む
近藤と従者は、井伊の隠れ里へ逃げ込んできました。近藤は、中野直之(矢本悠馬さん)から、隠し里の報告がなかったことに不服でしたが、こうして無事でいるので、納得せざるを得ませんでした。
南渓和尚は、信玄のもとへ行き、「実は、武田様が攻め来るとの知らせに接し、昨日、井伊の残党がこぞって兵を挙げましてございます。此度武田様がいらっしゃると聞き、これは好機と立ち上がり、民百姓を逃散させる事で、近藤を追い詰めました。なれどすんでのところで城や寺に火を放たれ、かようなざまとなりまして。民百姓も、近藤の支配を望んではおりませぬ。井伊の家名を復すると共に、我らにこの地をご安堵願えませぬでしょうか。」と言うと、信玄は興味深げに、少し疑うような顔を見せるのでした。
使いの傑山(市原隼人さん)が、信玄からの書状を直虎に渡します。そこには「近藤の首と引き換えに井伊家を再興させる」との内容が書かれてありました。
直虎は、近藤にそれを見せながら、「井伊と小野のように、今度は近藤と井伊が対立しているよう大名らに見せかけてはどうか。この戦がどうなるか分からないので、その時々を見て、こちらも内輪揉めしているように見せかければよい。要するに、武田が強いうちは、井伊が表向き治めているような体にし、逆に徳川が強くなれば、井伊を追い払ったと言えばよい。武田の勢いがこのまま続くとなれば、我が死んだとでも言うて恭順すればよい。」と説得します。近藤は「まこと井伊を再びと思われておらぬのか。」と念を押すように聞きます。
「我は、民百姓が安んじて暮らせる土地であれば、それでよい。」と直虎が答えると、近藤は家臣に支えられながら立ち上がって、「あいにく、疑り深い質での。」と言って、答えを保留するのでした。
近藤は、しばらくして直虎の話を承諾。直虎は答えを聞いて笑います。近藤が話を受けてくれると信じていたのです。
井伊と近藤がこんなに仲良くなるとは、思いもしませんでした。木の窃盗事件から始まって、井伊谷開城、政次の死。嫌なことで両家は繋がっていました。こうやって笑い合える日が来るなんて思いもしませんでした。
高瀬の苦悩
龍雲丸は、井伊谷城で高瀬を救出した時、様子がおかしかったことを直虎に話し、高瀬から目を離さぬよう助言します。その話を聞いて直虎は、かつて小野但馬守政次(高橋一生さん)が、高瀬の事を「武田の間者」と疑っていたことを思い出します。
直虎が、高瀬が運んでいた近藤の薬を、横取りして飲もうとすると、高瀬が、薬をお椀ごと地面に落としました。直虎は間者と確信します。
そして高瀬に問い質し、「直親(三浦春馬さん)の娘というのは偽りか。」と聞きますが、娘という事は嘘ではありませんでした。間者になった理由は「母の借金の肩代わりと引き換えに、武田から、井伊に間者として潜り込むよう言われた。」と白状します。
「今は近藤殿を殺せと?」と直虎が聞くと、高瀬は、「近藤を殺せば母上のもとに井伊が戻ってくるではないですか!」と、井伊への恩から命令を聞くと言うと、直虎は高瀬の頬を打ち、「そんなこと頼んでない!」と怒り、高瀬を抱きしめ、「辛かったろう、高瀬。誰にも言えず。もっとそなたの話を聞いてやればよかった。我はもう、まこと、井伊を再興したいとは思うておらぬ。だからもう、物騒な事は考えるな。武田もうまく丸め込んだ。恐らくもう、そなたが咎められることはもうあるまい。これからは、ただの娘として、ここにおればよい。」と言うと高瀬は、大粒の涙を流します。
少し離れたところで龍雲丸は二人の様子を、切なそうな表情で見つめるのでした。
高瀬の謎は、今回で全て明らかになりました。以前高瀬は、直親の笛の曲を鼻歌で再現していたので、私は、娘には違いないと思っていました。しかし、政次に「武田の間者かも。」と言わせていた場面がずっと気になっていました。前回の予想は、ほぼ合っていました。
このドラマの話の流れは、とても細かく繋がっていて、後々そういう事かと分かる事が多いです。細かいエピソードを省いてしまって、後で、実は繋がる話だと分かると悔しいので、気になった部分を書かせていただいています。
井伊谷の復興
武田は西への進軍を急いでおり、早々に井伊を発ちました。里は焼き払われていたので、すぐに復興というわけにはいかず、直虎は村人たちに謝ります。
村人たちは、大事な物は持ち出せたし、皆が生きているから、謝る事ないと口々に言います。
家も畑も焼かれてしまったので、直虎は、「まず大きな寄り合い場を先に造れば、大人数がそこに寝泊まり出来、普請を進めやすくなる。」と提案すると、村人たちはみんな立ち上がって「前よりいい村にしよう!」と意気込み、村人たちと直虎は井伊谷の復興を始めました。
建物の工事とは別に、直虎は、村人であれば寺で僧が診て、薬をもらえるようにしたいと考えます。高価なものは出せないが、武田が方々焼いて回ったし、そこで井伊が住みやすいと評判が立てば、流れて来る者が来て、囲い込めるかもしれない。と方久を説得します。
「もう井伊の領地でもないのにご苦労なことで。」という方久に「井伊の土地であろうとなかろうと、そういう土地がいいと思う。」と直虎は楽しそうに言うのでした。
夫婦となった方久とあやめは、方久の望む刺繍のデザインをあやめが仕上げ、綺麗な糸を方久が仕入れてくる、と二人の相性は抜群です。仲が良さそうな二人をみて直虎も羨ましがります。
復興に夢中になるあまり、直虎は堺行きの話を忘れてしまっていました。中村屋が迎えに来ても、「気賀に戻ったのか?」ちぐはぐな質問をして、龍雲丸を呆れさせます。
直虎は、迷い出したことを南渓に見抜かれ、「一生行けぬぞ。」と言われてしまいます。龍雲丸も、「残った方がいい。」と言います。
「あんたが今までやって来た事が、ようやく実を結ぶのではと。盗まねば生きていけぬような世はよくない。ならば変えねばならぬ。まずは己の周りをと、言うたの覚えておるか?井伊の民となれば、綿という稼ぎの道を得られ、文字も教えてもらえる。そのための場があり、百姓たちはしっかりと考えを持ち、主とすら話が出来る。
此度の戦に押し出され、ここを頼る者はますます増えよう。その者たちもまた、井伊の民に育っていく。それを積み重ねていく事で、あんたは小さくとも、世を変えていったって事になるんじゃねえのか。まさにここは、そういう土地になろうとしてんじゃねえのか。
ここでやめちまっていいのか?この先を見たくはねえのか?」と心を込めて直虎を説得します。しかし直虎は「見ずともよい。頭と堺へ行く。頭と二人で新しい暮らしがしてみたい。」と言い、二人は堺へ発つことにしました。
寿桂尼が信玄を迎えに来る
家康のもとにいた今川氏真(尾上松也さん)は、庭先で、寿桂尼(浅丘ルリ子さん)の命日だと言って、家臣と笙の演奏をしています。「「死して尚、今川の家を守らん。」と仰せでしたし。」と家臣が言うと、氏真は「この苦境も何とかしてくださるかもしれぬのう。」と遠い目をして言うのでした。「滅びるわけじゃ。今川は。」と酒井忠次(みのすけさん)はつぶやきました。
話は少し戻って、南渓和尚は、信玄がまだ井伊に滞在している時、酒を酌み交わしながら話が出来るほど、親しくなっていました。信玄は、「甲斐という土地は切り開かないと道もなく、川も氾濫する厳しい土地なので、他国を奪うしかなかった。戦に強くなる事が何よりの生業。疲れている暇もなかった。」と本音を漏らし、来世は何になりたいかと南渓が聞くと、「お天道様になって、全ての土地を恵まれた土地にしたい。」と語っていました。
その信玄が、進軍の途中立ち寄った先で、能に興じていました。余裕綽綽で、家臣と三河と尾張へ侵攻計画を話した後、遊女を呼んで部屋に入りました。
火を消した途端、遊女が寿桂尼の顔が見えるという幻覚に襲われます。寿桂尼は「冥府より、お迎えに参りました。」と言い、信玄は悲鳴を上げます。
遊女の悲鳴で、寝所に入ってきた信玄の家臣は、血を吐いて倒れている信玄を発見するのでした。
氏真の言う通り、寿桂尼が何とかしてくれましたね?
直虎と龍雲丸の決断
南渓和尚は、井戸で直虎が堺に行くとを報告していると、傑山から信玄が亡くなったことを知らされます。
直虎と龍雲丸は、見送りをする井伊の面々に挨拶をして、出発します。南渓は、信玄が死んだことを教えません。直虎はひそひそと話をする人たちの事が気になりつつ、出発します。
船へ行く道中、話しかけても上の空の直虎に、龍雲丸は中村屋を待たせ、直虎の腕を引っ張り、「帰るぞ。」と言い出します。直虎は「我は帰らぬ。共に堺に!」と抵抗します。
龍雲丸は「勝手に付いてくんじゃねえ、ばばあ。」と言います。あまりの言い草に驚く直虎。
「前の男に未練タラタラのくせに付いてくんじゃねえわ!嬉しくとも何ともねえんだよ。城も家もなくとも、あんたはここの城主なんだよ!もう根っからそうなってんだよ。だから戻れ。」そう言われてもまだ行こうとする直虎の腕を、掴んで引き戻す龍雲丸。
勢いあまって直虎は地面に転げます。龍雲丸は「今無理していかなくても、やりたいこと終わらせてから来たらいい。」と言います。「何一つ案ずることなく、戦もない。そんな日が来るわけがない。ここで行かねば頭と共に生きることが出来ぬ。」と直虎は泣きます。「分からないじゃないか。」と直虎を抱きしめて慰めても泣き止まず、納得しません。龍雲丸の「待つ」という言葉も、直虎は信じません。
「あんたみたいな女が他にいるか。情にもろくて泣いたり怒ったり忙しい。普通の女なのに、何でか、兵一人使わず町を手に入れ、人一人殺さず戦を乗り切り、したたかに世を変えていくんだぞ。そんな女、どこにいるんだ?」と龍雲丸は言うと「ごまかすな。」と直虎は返します。気持ちが落ち着いてきた直虎は、「待たずともよい。」と言います。
「頭には心のままに生きて欲しい。」と直虎が言うと。「そっちも。」と龍雲丸も答えます。
「あの約束は守って欲しい。我より先に死なぬと。」と言うと、これも「そっちも。」と龍雲丸は答えます。「達者でな。」直虎は別れの挨拶をします。龍雲丸は「そっちも。」と答えてキスをしました。待っていた中村屋は驚いて目を背け、涙を浮かべながら、笑うのでした。
直虎は、雲に浮かんだ龍雲を見つめ、背を向けて歩き出しました。龍雲党が仕官を断った時も浮かんでいた同じ雲でした。
あぁ、これで龍雲丸とは本当におさらばなんでしょうか?殿と盗賊、確かに交わること自体あり得ない話だったのですが、残念です。
今回と前回、本当に良かったんですけど。残念過ぎて言葉が見つかりません。
近藤は、隠し里を発ち、嫡男が野伏として山中に籠り戦を続けているところに、加勢していきました。
直虎は寺に戻り、龍潭寺の面々が戦の状況を話す場に加わり、驚く面々に、龍雲丸に振られたことを報告するのでした。
信玄の死に勢いを得た徳川は、遠江西部から武田勢を追い出し、井伊谷は再び徳川領になりました。
菅田虎松登場!
天正2年(1574)、直親の十三回忌を行う事になりました。松下から、虎松(菅田将暉さん)、しの(貫地谷しほりさん)、六左衛門(田中美央さん)、なつ(山口紗弥加さん)、亥之助(井之脇海さん)が、皆揃って出席することになりました。
緊張して迎える直虎。虎松が「松下の虎松にございます。」と元気よく挨拶する笑顔は直親そっくりです。直虎が見とれていると「どうかされましたか、おとわ様。」と大きくはっきりした声で尋ねる、虎松なのでした。
ここで、「続く」です。
菅田将暉さん初登場です!「どうかされましたか?」と話した時、寺田心くんの話し方に寄せているようでした。
亥之助役も大人になり、苗字は「小野」でなく、「奥山」になっていました。
次回、第39話「虎松の野望」です。
予告では、虎松が六左衛門の顎を撫でながら「俺を信じてくれ。」と言っているシーンがありました。前に政次が、六左衛門を追及していた時と同じような感じでした。
おとわの前で挨拶していた様子とは別人です。直親張りの多面性があるのでしょうか?
菅田虎松の、はじまり、はじまりです。