吉高由里子さん主演、大石静さん脚本の2024年大河ドラマ、「光る君へ」。
「世界最古の女性文学」と呼ばれる『源氏物語』の作者・紫式部の波乱の生涯を描く物語です。
光源氏のモデルの1人と言われる藤原道長を柄本佑さんが演じます。
千年を超えるベストセラー『源氏物語』を書きあげた紫式部の、秘めた思いと一途な思いを胸に懸命に世を生きた女性の物語。
こちらでは、大河ドラマ「光る君へ」のあらすじ、ネタバレ、感想をお届けします。
さて、第35回「中宮の涙」では、道長が嫡男と共に御岳詣に向かいましたが、その途中、伊周が不穏な動きを見せるのです。
一方、帝と中宮の間にも変化が見られます。
道長の願いは届くのでしょうか。
前回のあらすじ
興福寺が朝廷に抗議行動を起こし、道長(柄本佑さん)は対応を迫られていました。
脅しに屈せず、国守と興福寺との間に起こった諍いは審議すると約束し、藤原とその氏寺である興福寺が争うなどあってはならない、御仏に仕えるものとしてそれでいいのかと諫め追い返しました。
翌日、約束通り陣定にかけていた時、興福寺が大極殿の朝堂院に押し寄せてきました。
道長は即座に対応、帝(塩野瑛久さん)に許可を取ると、検非違使を派遣しました。
興福寺の暴動から身を守るため、彰子(見上愛さん)は帝のいる清涼殿に避難することに。
俯き、怯える彰子に帝は、こういう時だからこそ中宮は胸を張れと諭し、その言葉で彰子は少し顔を上げたのです。
その後、暴動は検非違使により収められ、道長は興福寺別当・定澄と対面。
定澄の言う4つの申し入れの中の3つを退け、法会への参加のみ、申し文を出せと命じたのでした。
興福寺を追い返した後から、都では不審火など不穏なことが多く起こるようになりました。
斉信(金田哲さん)や道綱(上地雄輔さん)の邸が焼け、都の人々は不安に思います。
欠員のでた蔵人に、新たに伊周(三浦翔平さん)の嫡男と、まひろの弟・惟規(高杉真宙さん)が選出されます。
伊周は道雅にこの機を活かせ、と命じます。
彰子には面白さがわからないと言われたまひろの物語ですが、それは内裏の中に浸透し、評判になっていきました。
帝もまひろの物語に興味を持ち、まっすぐに語り掛けるようなまひろの物語を気に入るのです。
土御門殿で行われた曲水の宴。
雨による中断の最中、彰子は道長が旧友たちと昔話で盛り上がり、笑い合う姿を見て、驚きました。
その驚きを彰子がまひろに伝えると、まひろは殿御はみんな可愛い、と教えたのです。
帝も?と尋ねる彰子。
まひろは帝の顔をしっかり見て話せばいい、と進言したのでした。
道長は彰子の懐妊祈願、このところの不吉を祓うため、御岳詣に向かいます。
前回、第34回「目覚め」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは、第35回「中宮の涙」のあらすじと感想です。
金峯山
道長は中宮・彰子の懐妊祈願のため、京を立って金峯山に向かいました。
道長たちが歩き去る様子を、伊周の側近が陰から窺っていました。
まひろは、道長の無事を願い、貰った扇を胸に抱きしめるのでした。
寛弘4(1007)年、伊周の元には道長の動向が逐一報告されていました。
供が20人程と知って、ほくそ笑む伊周。
側近はすぐに出立すると言い、伊周は11日に落ち合おうというと、側近たちを送り出したのです。
それを隆家(竜星涼さん)が見ていました。
隆家は伊周に酒を飲もうと勧めるのですが、伊周は定子が亡くなってから飲んではいないと断ります。
1人で考えたい、と隆家を追い返しました。
金峯山への道行は厳しいものでした。
雨の中、足場の悪い山道をひたすら進み続けます。
その足跡を伊周の手の者が追っていました。
道長たちの足跡を発見した側近は、道長を狙える位置を探るのでした。
その夜、宿に辿り着いた道長は、疲れ果て食欲がわかず、ほとんど食べることができません。
源俊賢(本田大輔さん)は食欲のわかない道長を心配します。
すると同行していた嫡男・頼道(渡邊圭祐さん)が、道長が動けなくなったら自分が背負っていくと宣言。
俊賢はそんな頼道を褒め称えます。
見事な嫡男に育った、と褒めながら、明子の息子・頼宗も逞しく育っていると道長に売り込みます。
その言葉を聞いた道長は、厠に行った頼道が戻ってこないことを確認しながら俊賢に「明子は私の心をわかっておらん、地位が高くなることだけが人の幸せではない、されど明子は、頼道と頼宗を競い合わせようとしている、お前からも明子に張り合うな、と言い聞かせておいてくれ」と言い聞かせるのでした。
道長の心もちとは
帝はまひろの物語に夢中になり、物語の内容について、まひろと語り合います。
物語の中の夕顔の君が何故死ななければならなかったのか、まひろに問い質しました。
まひろは、生霊の仕業、と答えます。
「光る君の夢に現れた女が憑りついたのか?」と帝。
「誰かがその心持の苦しさゆえに、生霊となったのやもしれませぬ」とまひろ。
少し考えこんだ帝は「左大臣の心持はどうなのだろう、御岳詣でまでして、中宮の懐妊を願う左大臣の思いとは…」と呟く帝に、まひろは親心だと答えました。
「左大臣様が願われるのは中宮様の女としての幸せだと存じます」
帝は「御岳詣は命がけの難行であるぞ、そのようなことで…」
まひろは「そのようなことに命を懸けるのが人の親にございます」と言うのです。
帝自身も3人の子の親なので子を思う心はわかるが、今回のことは行き過ぎている、と感じ戸惑っていました。
険しい崖、綱を使って一行は慎重に上ります。
途中、俊賢が足を滑らせ、宙づり状態になりました。
気づいた頼道が俊賢に手を伸ばし、必死に俊賢の手を掴もうとします。
揺れる綱に苦戦しながら、指先が触れると手を握り合い、がっちりと掴むと、俊賢は頼道の助けを受け、上り切ることができました。
京を出て9日後、道長は金峯山寺の山上蔵王堂に辿り着きました。
金峯山寺にて様々な仏事を催した道長。
最後に道長は、山上本堂の蔵王権現に自ら書き写した経典を捧げ、催事は終わりました。
狙われる道長
下山の最中、伊周は道長たち一行を待ち受け、矢で狙っていました。
決して討ち漏らすなと命じる伊周。
狙いを定めて矢を引き、手を放す直前、隆家が走り込んできて道長たちを守りました。
隆家は木々に隠れる伊周たちを見上げ、手前で落石があった、この辺りも危ない、早く進むのがいい、と進言して道長たちを急がせたのです。
隆家が見上げたことで、全員が上を見ました。
伊周と側近たちは見つからないよう、慌てて身を伏せます。
隆家は道長たちを急がせると「どうぞご無事で」と声をかけ逃がしたのでした。
山中にて、伊周と隆家は対面していました。
何故自分の邪魔をするのか、と問いかける伊周。
あの時、伊周が止めるのも聞かず、隆家は花山院の御車に矢を放ちました。
あれから何もかもが狂い始めた、しかし、そのことで隆家を恨んだことはない、だが今、ここまで邪魔をされるとは、お前に問いたくなる、お前は俺の敵なのか、と伊周は言うのです。
隆家は、兄上が大事だからこそ止めたまで、と言います。
左大臣を亡き者にしたからといって何も変わらない、大人しく定めを受け入れて穏やかに生きるのが伊周のため、自分が花山院の御車を射たことで、伊周の行く末を阻んだことは今も悪いと思っている、それ故に、憎まれても伊周を止めねばならないと思った、これが自分にできるあの過ちの詫びだ、と訴えました。
伊周は気が抜けたように、帰ろう、道長など狙ったつもりはない、と笑います。
「うつけ者め」という伊周に、隆家は詰めていた息を吐き出しました。
帰還
金峯山から戻った道長は彰子の元を訪れました。
霊験あらたかな護符を彰子に渡したのです。
そこに敦康親王(渡邉櫂さん)もやってきました。
親王は、道長がいない間中宮を守った、と胸を張ります。
道長は、さすが親王様、と親王に感謝を伝えたのでした。
その後、まひろの局を訪れた道長。
まひろは道長の元気な姿を見て安堵しました。
道長は物語の進捗を尋ね、仕上がったという新しい巻きを読み進めます。
そこにはまひろが道長と初めて出会った時の様子が描かれていました。
道長は「小鳥を追いかけていた頃のお前はこのように健気ではなかったが」と呟きます。
まひろは「嘘はつくし、作り話はするし」と笑います。
「とんだ跳ね返り者であった」と道長も言うのでした。
物語を読み進めた道長は、物語にあった不義の話はどういう心づもりで書いたのかと問い質します。
するとまひろは、わが身に起きたことだ、と言ったのです。
「わが身に起きたことは全て物語の種でございますれば」とまひろ。
道長は「恐ろしいことを申すのだな。お前は、不義の子を産んだのか」と聞きます。
「ひとたび物語になってしまえばわが身に起きたことなど霧の彼方、真のことかどうかも分からなくなってしまうのでございます」
まひろはそう答えたのでした。
道長は1つ頷くと、すぐに写させよう、預かっていく、と物語を持ち出しました。
勢いよく歩いていた道長ですが、ふと足を止め、少し考えましたが、またすぐに勢いよく歩き始めたのでした。
物語の種
この年の10月、あかねの想い人・敦道親王が27歳の若さで世を去りました。
為尊親王も敦道親王も、自分が慕った人は皆自分を置いて旅立ってしまう、まるで自分が命を奪っているみたい、とあかねは嘆きます。
まひろは、短い間でもあかねと過ごした日々は幸せだっただろう、とあかねを慰めます。
どんなにあの世から自分を見守ってくれていても、2度と顔を見られないなんて。
親王とは心を開いて歌を詠みあったものだわ、とあかねは振り返ります。
まひろは、亡き親王との日々を書き残してはどうかとあかねに提案します。
かつて、書くことで己の悲しみを救ったという人がいた、親王との日々を書くことで親王の姿を後々まで残せるのではないか、と提案したのです。
ある夜、惟規が役人に追われていました。
惟規は役人を振り切るため斎院の壁を上り、斎院の庭に下り立ちました。
そこで愛しい斎院の女房と会い抱き合いました。
しかし、役人に見つかり引き離されそうになります。
その顛末をまひろの局で話した惟規。
どうやって解き放たれたかと聞くと、とっさに歌を詠み、斎院の選子内親王がその歌を気に入り、許してやれと言われたというのです。
悪びれることなく、歌が上手くて良かった、という惟規にまひろはもう斎院には近づくな、と注意します。
しかし惟規は、そうはいかない、自分を待っている女人がいるのだから、と一向に懲りた様子を見せず、ひょうひょうと局を後にしたのでした。
これから着想を得たまひろは、早速、物語にそのことを組み込むのでした。
中宮の涙
翌朝、まひろの物語は彰子の前で披露されていました。
女房達は、光る君の行動についてあれこれと話し合います。
皆が立ち去った後、彰子はまひろに光る君に引き取られ育てられる娘は自分のようだ、と告げました。
自分も幼い頃入内し、ここで育ったゆえ、と言うのです。
娘はこれからどうなるのだろうか、と言う彰子に、まひろは今考えているところだ、といいます。
どうなったらいいと思うかと聞かれた彰子は、光る君の妻になったらいい、妻になる、なれぬであろうか、なれるようにしておくれ、と言うのです。
それを聞いたまひろは、帝に真の妻になりたいと言ったらどうかと進言しました。
彰子は戸惑ったように、そのようなこと、自分のすることではない、と断ります。
では、中宮様らしい中宮様とはどのようなお方なのか、とまひろは問いかけます。
「私の存じ上げる中宮様は、青い空がお好きで、冬の冷たい気配がお好きでございます、左大臣様が願われることもご苦労もよく知っておられます。敦康親王様にとっては唯一無二の女人であられます。いろいろなことにときめくお心もお持ちでございます。その息づくお心の内を帝にお伝えなさいませ」
まひろの言葉に彰子は息を飲み、涙を浮かべました。
そこに、帝がやってきました。
敦康親王に会いに来たのだが、居ないのか、と言う帝。
彰子は頭を下げながら帝に呼びかけると、泣きながら「お慕いしています」と顔を上げました。
帝の顔を確りと見て、泣き続ける彰子。
戸惑ったような帝は、また来る、と言って、立ち去りました。
その言葉を聞いた彰子は泣き崩れたのでした。
彰子の一連の行動に驚き、まひろは目を見開いて見守っていましたが、どうしたらよいか頭を抱えたのでした。
「来年の元日は朝拝を致します」と帝に報告した道長。
御簾の中で、「よきに計らえ」と言い、立ち上がった帝は、去り際に「左大臣、御岳詣での御利益はあったのか」と問いかけ、「今宵藤壺に参る、その旨伝えよ」と言ったのでした。
藤壺では、急いで彰子の支度に取り掛かりました。
雪が降る中、藤壺を訪れた帝。
彰子の年を尋ね、いつの間にか大人になっていたのだな、と感慨深く呟きます。
すると彰子は、ずっと大人だった、と答えたのです。
そうか、と呟いた帝は、寂しい思いをさせてしまって、すまなかった、と彰子を抱きしめたのでした。
抱きしめられた彰子も、おずおずと帝の背に手を回したのでした。
その夜、まひろと道長は2人で月を眺めていました。
お前の手柄なのか、と言う道長。
まひろは、自分は何もしていない、帝の心を掴んだのは中宮自身だといいます。
金峯山の霊験なのでしょう、とまひろは言うのです。
どちらでもいいが、良かった、と道長は呟いたのでした。
そういって、2人は笑い合うのでした。
月を眺める2人の姿を藤壺の女房が、陰から見ていました。
次回、第36回「待ち望まれた日」
一条天皇(塩野瑛久)の中宮・彰子(見上愛)がついに懐妊。宮中が色めきだつ中、まひろ(吉高由里子)は彰子から、天皇に対する胸の内を明かされる。一方、清少納言(ファーストサマーウイカ)は、まひろが道長(柄本佑)の指示で物語を書いた事を知り、伊周(三浦翔平)にある訴えをする。出産が近づくにつれて不安を抱える彰子に、頼りにされるまひろ。他の女房らに嫉妬されつつ、道長から新たな相談を受け…
とうとう彰子が懐妊しましたね。
道長の喜びようは凄まじく、あの頃の文献にもその様子が数多く記録されているようですね。
出産の不安をまひろに支えられる彰子。
ただでさえ浮いているまひろですが、さらに他の女房達から嫉妬されて、大変そうです。
次回は懐かしいききょうも出てくるようで、何が起こるのか、楽しみですね。
最後に
険しい金峯山への道行、凄まじかったですね。
雨の中、傘もささずに行く姿に、修験者を思い浮かべました。
崖で俊賢が足を滑らせ、頼道に助けられるシーンは、某健康ドリンクのCMを思い出しました。
ファイト一発ですね。
面白かったです。
隆家が伊周と手の者に狙われた道長を助けるシーン。
これまで仲の良い兄弟でしたが、没落の辺りから伊周と隆家の考え方が違ってきました。
伊周はお家再興を考え、道長を邪魔に思っていましたが、隆家は最高権力者である道長に付くことを選びました。
伊周と敵対するつもりはなく、伊周のために、伊周が穏やかに過ごせる道を作るため、隆家は頑張っていたのですね。
花山院の一件、隆家がどれほどまでに後悔していたのか、兄のために尽くそうと思っているのか、よくわかりました。
伊周の気に抜けたような、帰るか、うつけ者め、という言葉、凄く良かったです。
隆家の気持ちが通じたんだな、と嬉しくなりました。
道長が、難行である御岳詣を敢行したことにより、帝の考えも変わってきましたね。
道長の思いがよくわからなかったようですが、まひろの解説を受け、少しずつ理解していったのでしょうね。
それにしても、皆が自分の物語を読むことは作者冥利に尽きるでしょうが、目の前であれこれ論争をされるのはどうなのでしょう。
まひろも戸惑った顔をしていましたが…。
彰子の突然の告白にも驚きました。
まひろの言葉を聞き、気持ちが高ぶったのか、心が決まったのか、今までまともに見ようとしなかった帝の顔を泣きながらではありますがじっと見つめた彰子。
突然の告白を受けた帝も戸惑っていましたよね。
しかし、これまで俯いていた彰子が真っ直ぐに自分を見つめてくる様、しかも、目を潤ませて。
これは、心に刺さるものがあったのでしょう。
帝は藤壺を訪れると道長に伝えました。
藤壺の皆の喜びようは見ていてよく伝わりました。
いつの間にか大人になっていた、と感慨深い帝と、もうとっくに大人だったという彰子、2人の初々しい様子を見て、良かったな、と胸をなでおろしました。
これで彰子は帝の寵愛を受けるようになり、懐妊。
子を成すようになります。
道長の願いは叶いましたね。
苦しい御岳詣をした甲斐がありました。
それにしても、まひろ、本当に恐ろしい女人になりましたね。
自分の過去はもちろん、身近な人々のエピソードから着想を得て、次々と物語にしていきます。
紫の上が光る君と出会った下りは道長とまひろのエピソードですよね。
惟規と斎院の女房との話は朝顔の君の話になるのでしょうかね。
不義の話は、藤壺、それとも女三宮になるのでしょうか。
自分に起こった話、とまひろが言ったことにより、道長は賢子が自分のこと確信したのでしょうか。
その前に、賢子と初めて会った時に気づいていなかったのですかね。
まあ、まひろと宣孝が疎遠になっていたとは知らないですから、気づかなかったのかもしれませんね。
人のエピソードを次々と物語にしてしまうまひろ。
凄いけど、本当に恐ろしいです。
まひろに打ち明け話などできませんね。
さて、次回第36回「待ち望まれた日」では、彰子の出産エピソードが描かれます。
道長の喜びの凄まじさが描かれるようです。
たくさんの人がこの時の道長のことを書き残していますが、一体どんな喜びようだったのでしょうね。
楽しみです。