毎週日曜日20時から、NHK総合他にて放送中の大河ドラマ「おんな城主 直虎」。
2017年11月5日、第44回「井伊谷のばら」が放送されました。
今回のサブタイトル、「井伊谷のばら」の元ネタは「ベルサイユのばら」です。池田理代子さんの漫画作品で、フランス革命を舞台に、架空の人物としてオスカルやアンドレの他、実在の人物マリー・アントワネットらが登場します。宝塚歌劇やテレビアニメでも上映されていますので、これを機会に是非見直してみてはいかがでしょうか?
前回、長篠の戦いでの論功行賞に悩んでいた徳川家康(阿部サダヲさん)に、武功を表にしてまとめることを提案した、井伊万千代(菅田将暉さん)。武功では浜松の方が多く、岡崎には今川勢を優遇することでバランスを取ることになりました。万千代は、家康の使いで岡崎の信康(平埜生成さん)に会いに行き、承知してもらいました。
一方、井伊谷では木を多く切ったことで山崩れを起こし、おとわは昊天(小松和重さん)を通じて、松下常慶(和田正人さん)に山崩れを防ぐ方法を聞いたところ、常慶はその返事に絵の上手な万千代に絵図を依頼します。
万千代が描いたわかりやすい絵図のおかげで、山崩れ防止の為の植樹が上手くいきました。おとわは、裏で万千代が薬を欲しがっている事を分かっていながら、礼として常慶に薬を渡すのでした。
その薬は松下が頼んでいると見せかけ、万千代が家康に献上するためのもので、万千代は家康への薬の担当を勝ち取りました。
4年後、万千代と小野万福(井之脇海さん)はようやく初陣を飾る事が決まりました。
まだ元服もしていない万千代と万福、戦場に行くことが出来たのでしょうか?
前回の第43回、「恩賞の彼方に」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
それでは、第44回、「井伊谷のばら」のネタバレとあらすじと感想です。
万千代の初陣
万千代と万福は、甲冑を身に着け初陣へと張り切ります。万千代の初陣は、武田が治める駿河の田中城攻めでした。万千代と万福は軍議の為の場所のセッティングなどを担当し、当然軍議にも参加できると思っていました。が、本多忠勝(高嶋政宏さん)に「殿の大事な色小姓に怪我はさせられない。」と寝所に戻るよう命じられます。
万千代は自ら色小姓と名乗った手前、否定することも出来ずイライラしながらも寝所へ戻ります。万千代が薬箱をチェックしていたところへ、信康が薬をもらいに来ます。信康の側にいた小姓が、前に岡崎城で会った小姓と気づくと、万千代は名を尋ねます。「近藤武助」というその武者は、前は前髪だったのに、この出陣に際し元服をしていたのです。
万千代は他の小姓たちと自分たちが差をつけられていることに不満を漏らします。早く元服しないと、いつまでも色小姓扱いされて、戦場にも連れて行ってもらえないと焦っているのです。
万千代は信康に薬を手渡して「お作りしなくてもよろしいのですか?」と聞くと、代わりに武助が「私が作ります。」と答えます。武助は、薬の知識があるようでした。
二人が寝所を出ていくと、万千代は薬箱に薬を戻し、しっかりと蝶結びに紐を結びました。
間者の存在に気づく
夜になり、寝所の番をする万千代と万福。万福は居眠りしていましたが、万千代は手を抜かずしっかりと守っています。万千代は奥の間の暗いところに人影が見えたと感じ、見回りましたが、見つかりませんでした。
気のせいだと思う万千代でしたが、万千代が感じた場所に確かに若い男がいたのです。朝になって家康に報告する万千代。「陣中には人が入り乱れているから。」と気に留めない様子の家康です。しかし万千代はまだ疑っていました。
出陣する家康、本多忠勝、榊原康政(尾美としのりさん)、酒井忠次(みのすけさん)。万千代と万福も付いていこうとしますが、「今回は戦の準備段階で、田を刈り、畑を焼き払うだけだから、付いてこなくてよい。」と言われてしまいます。なおも食い下がりますが、断られます。
家康は、万千代が気配を察知したという「怪しい輩を捕まえておいてくれ。」と話を逸らします。酒井と本多忠勝にも「捕まえたら大手柄。」と次々に言われ、万千代たちは従うしかありませんでした。
寝ずの番をした翌日ともあって、万福は遠慮なく横になり、眠っていましたが、万千代は出世を焦るあまり、眠れません。しかし家康の命令に背くわけにもいかず、怪しい輩を捕まえる為、陣中をくまなく見回り、罠を作り、夜に備える事にしました。
一通り準備をした後、家康の寝所にある薬箱の前で、万千代は横になりました。そして薬箱の結び目が変わっている事に気づきました。
夜、家康たちが帰ってきても、万福だけが家康を迎えに出て、万千代はまだ家康の寝所で眠ったままです。家康と万福が揺さぶったり、大きな声で起こしても一向に起きません。
家康は薬湯を所望します。万千代が眠っている為、万福は他の薬を作れる者を見つけてきました。
代わりの者は、慣れた様子で薬箱から薬を取り出し煎じます。家康に渡そうと両手で器を持ち上げたところ、万千代が起き上がり、その手を掴みました。そして「そなた、毒味をしてみよ。」と言います。
家康は驚いて止めに入りますが、万千代は「毒味を。」ともう一度迫ります。薬を差し出したのは、信康が連れてきた武助でした。武助は、毒味をしようとしません。「何故出来ぬ。」万千代はなおも責めます。
追い詰められた武助は、薬湯を万千代にかけて刀を抜きます。万千代はとっさに家康に覆いかぶさると、武助はそのまま万千代を背後から斬り付けたのでした。万千代は家康に逃げるよう言うと、布団の下に隠していた槍を出して武助の刀を払いのけます。
万千代は槍の先を武助に突きつけ「それまでじゃ!刀を捨てよ。」と言うと、自害しようとしたので、刀を振り落し、槍の柄の部分で武助を押さえつけました。万福が「曲者を捕らえたり!お出会え下され!」と人を呼び、事件が明るみになりました。家康を見事守ることが出来たのです。
万千代が刀傷を手当てしてもらっていたところ、榊原がどうして企みに気づいたのか、事件の経緯を聞きに来ました。
「薬箱の止め紐の結び方が違っておりました。止め紐は必ず蝶結びにしておりまして、それが何故か、片結びになっており、誰かが薬箱に触れたのだと。
調べて見ましたところ、やはり混ぜ物がしてあり、これは何者かが、私が殿を殺してという事にして、殿を亡き者にしてしまおうとしておるのだと気付きました。」榊原はそれまで立って聞いていたのが、万千代の言葉を聞いて感心した様子で座り込みます。
「あの者は何故、かような事を?」万福が榊原に聞くと「恐らくは武田に通じておったのではないかと。」と答えます。榊原は二人に休むよう命じて立ち去ると、万千代は糸が切れたかのように倒れ込みました。緊張していたんですね。前日から寝てない上に、家康をかばって右肩を斬られましたから。万千代、格好いいです!
万福は「信康様はさぞご心痛でしょうな。」と、武助を抱えていた信康を心配するのでした。
一万石を賜る
万千代には、寝所に忍び入った武田の間者を討ち取った功により、一万石の知行を与えられることになりました。驚く万千代と万福。あまりの待遇に茫然となる万千代です。
何も知らない他の家臣からは、「寝所での手柄」「槍の働き」という曖昧な表現を、違う意味に取って、陰で万千代を笑い者にしていました。
その事を立ち聞きした万千代でしたが、怒りを抑えて何も言わず立ち去るのでした。
小姓の部屋に戻り、色小姓といつまでも言われている現状に「早く元服をお許し頂かなければ!もはや耐えられぬ!」と万千代は叫びます。「元服となると、井伊の当主となるという事ですよね。おとわ様に家督を譲ると言って頂かねばならぬのでは?」と、万福が冷静に言うと、「ここであの意地悪ばばあに手綱を握られるとは!井伊万千代、一緒の不覚。」と肩を落とします。
万福は「この際、きちんと話をしてみてはいかがですか?和尚様から月ごとに薬がよこされておる事、おとわ様が知らぬはずがないと思いますが。」と勧めるのでした。
「薬はよこしても、家督はよこすまい。それをしてしまっては、俺に何の文句も言えぬようになるからの。」と万千代は吐き捨てます。
おとわと万千代は丸太の一件以来、ずっとこじれています。おとわは、直虎として虎松の親になった時、「母と思わず父を思え。」と言っていました。その通りこの二人の関係は母子というより、父子ですね。
祐椿尼の病
万千代と万福の初陣を心配していた、おとわと祐椿尼(財前直見さん)のもとに、なつ(山口紗弥加さん)が万福から無事戻ったとの知らせを持って訪ねに来ます。
安堵するおとわ祐椿尼。緊張から解き放たれたのか、祐椿尼は倒れ込んでしまいました。昊天に見てもらったところ、心臓の病との事でした。おとわは親不孝してきた自分を責めます。
おとわはなつから、知らぬふりで、世間話をしに祐椿尼に会いに来るよう頼みます。なつは、あやめ(光浦靖子さん)に伝え、六左衛門(田中美央さん)から、中野直之(矢本悠馬さん)と高瀬(朝倉あきさん)にも伝えるよう約束します。
万千代にはどうするかなつが聞くと、「万千代には私から文を出す。他に話しておきたい事もあるしの。」と言うのでした。
祐椿尼のもとに、あやめと瀬戸方久(ムロツヨシさん)夫妻が来て、「長春」というばらの一つを持ってきて庭に植えます。「刺繍の柄にしたいから見に来させて欲しい。」とあやめが頼むと祐椿尼は喜んで、来るように言いました。
次に、しの(貫地谷しほりさん)が訪ねてきて、「万千代が知行一万石を賜った。」と祐椿尼に話します。一緒に聞いていたおとわは大いに驚きます。「お知らせは届いていませんか?」としのの方が驚いて聞き返します。祐椿尼は、おとわと万千代が上手くいっていないことを察します。
祐椿尼は、南渓和尚(小林薫さん)に「最後に一人、会っておきたい者がおる。」と明かして、万千代に当てた書状を南渓に託すのでした。
おとわは、近藤康用(橋本じゅんさん)に呼び出され、万千代が一万石知行された事、井伊谷を安堵されたらどうするのか、おとわに任せるのではないかと聞かれていました。
おとわは「武家に戻るつもりはない。」と言ったものの、万千代とは話が出来ていない状態にため息をつくのでした。
おとわと万千代の対立
おとわが龍潭寺に戻ったところ、万千代と万福が来ていました。祐椿尼と万福は席を外し、おとわと万千代の二人にさせました。
「来てくれたのか。」おとわが話しかけると「おばば様直々に顔が見たいと言われては、顔を出さぬわけにも行きますまい。」と顔を背けながら万千代が答えました。
二人は井戸の前へ向かいます。
「一万石ともなれば、家来も入り用の事と思うが、此度はどうしたのじゃ。」おとわが聞きます。
「松下の方にいまだ抱えてもろうておる小野の者たちがございますので、此度はその者たちを抱え、知行地も見てもらう事に致しました。こちらに手出しは致しませぬので。」とおとわが言いそうなことを先回りして万千代が答えます。
「この先はどうするつもりじゃ?」いよいよおとわが本題を聞きます。
「領地も出来た事だし、そろそろ殿に戻りたい、という事にございますか?」万千代はズレた事を聞きます。
「私はここで井伊谷の民として民の為に尽くすつもりじゃ。」と返す言葉を遮って「ならばその邪魔立てをするつもりはございませぬ。お話はそれだけで。」と言うと万千代は去ろうとします。
「井伊谷を安堵し直してもらう事は考えておらぬな。」おとわは聞きます。
「おとわ様は井伊谷が誰のものであろうと、構わず井伊谷の為に尽くされるはず。ならば、それこそ誰の地であろうが関わりのない話かと存じますが。」万千代は答えます。
「いらぬ波風を立てんで欲しいと言うておるのじゃ。ここは近藤殿と私達でうまく取り仕切っておる。それを壊されたくはない。」おとわがため息交じりに言います。
「殿は誇りというものがござらぬのか!近藤は但馬を殺し、ここを掠め取った当の本人ではないか!井伊のものであったものを井伊が取り戻して何が悪い!」万千代は怒りながら言い放ちます。
「分かった。ではそなたがここを取り戻したとしよう。取り戻したとしてここでしたい事でもあるのか?ないのならば祖先の土地を取り戻した井伊の万千代はすごい、さすがじゃ。そう褒められたいだけという事じゃが。そう思うてよいのか。」おとわは挑戦的に言います。
「それの何が悪い。武家とはそういうもの。力を示して戦い、その証として土地を治める。」「そうして同じように力を示そうとする者に土地を奪われるという事か。」
「その下らぬ事すら出来なかったのはどこのどなたじゃ。あえて自ら身を引いたようなおっしゃりようだが、殿は出来ぬ事から逃げ出しただけではないか。戦いから降りた者が、戦いに口を出すなど以ての外。」
「逃げて見えるものもある。」
「負け犬がたわごとをほざくな。」
「さような考えなら家督は決して譲らぬぞ。」
「望むところです。力ずくで引きはがすまで。」
完全に二人は決裂です。平行線の保ったままです。
ちょっとここまでくると、おとわが頑な過ぎると思います。もし徳川に安堵し直されればそれこそ、おとわの言う「筋目が通ってる」から正当に取り返せるわけですし、それに文句はつけられませんよね。万千代は、体を張って主君の命を守るほどの力を付けてきているのです。いつまでも自分の記憶の中にある、小さな男の子を守っているつもりでいてはいけないと思います。
女からみたら、男の子は急に大人になっていると思います。いつまでも自分の中に閉じ込めておけないと思います。
龍潭寺に戻ると、祐椿尼が「話は出来ましたか?」と聞いてきました。話が出来たと聞いて、「役に立ててよかった。」と祐椿尼は喜びます。祐椿尼はおとわに出家させて、家督を継がせて、大変な目にばかり遭わせた事を申し訳なく思っていました。
「はたから見て、己がどう映るか私には分かりませぬが、私はこの身の上を不幸だと思うた事は一度もございませぬ。」と自ら進んでこの生き方を歩んできたと言います。一人娘として生まれたからこそ家督を継ぎ、民や商人の気持ちも理解できたと言い切ります。
祐椿尼はおとわの言葉を受けて安心します。
祐椿尼は、その夜静かに息を引き取りました。祐椿尼は一人一人に文を残していました。桶狭間の戦いで、戦死者を多く出した時も同じように一人一人に文を出していました。
おとわには「陰ながら虎松を支えてやって欲しい。」と遺していました。南渓が「まこと、何の手助けもしてやらぬつもりか。」と聞くと「手助けなど、要らぬようですよ。」寂しそうに答えるおとわでした。
万千代は、軍議の末席に加えられるようになりました。まだ色小姓で出世していると思っている他の家臣が聞こえよがしに嫌味を言うなか、万千代は怪我をした右肩をさらけ出し、
「井伊万千代、此度かような寝所の手柄にて、末席を汚す事になりました。以後お見知りおきを。」と皆を黙らせました。家康はニヤッとします。
井伊の家督という問題は残しながらも、その身に日が当たり出した万千代でした。
家康を討とうとした武助は、城下で引き回した上、八つ裂きにして首を晒し、一族悉く殺せと言い渡されました。信康は静かに「当然であろう…」とつぶやくのでした。
徳川家最大の悲劇はその芽を吹き始めていました。
次回、第45回「魔王のいけにえ」です。
徳川家に赤ちゃんが生まれて万千代が守り役になるようです。
年代からして後の秀忠の事でしょう。
悲劇もこれからです。