「風林火山」は、2007年1月7日から12月16日まで放送された大河ドラマです。
2017年、4月からNHK BSプレミアム日曜昼12時から、大河ドラマアンコール枠で再放送されています。
2017年10月29日に放送されたのは、第31回「裏切りの城」です。
前回、越後の長尾景虎(Gackt(現GACKT)さん)は、兄から家督を引き継いだ後、守護の上杉定実(鈴木瑞穂さん)が亡くなり、子がいなかった事から上杉家は絶え、景虎は時の将軍、足利義輝により、毛氈鞍覆と白傘袋の使用を許されました。これで越後において、実質的な支配権を公認されたことになりました。
一方、山本勘助(内野聖陽さん)は、紀州根来寺の津田堅物(吉田鋼太郎さん)に鉄砲を100丁注文し、船で運ぶための湊を駿河の今川義元(谷原章介さん)から借りる約束を取り付けました。
勘助は、武田晴信(市川猿之助さん)にその鉄砲を越後へ持っていき、長尾景虎に鉄砲商人として近づくことを許可してもらいました。
前回の第30回「天下への道」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
それでは、第31回「裏切りの城」のあらすじと感想です。
真田の郷奪還を目指す
天文19年(1550)7月、武田軍はいよいよ信濃守護小笠原長時(今井朋彦さん)を討つ為出陣。小笠原配下の城を次々に降伏させていきました。小笠原は程なく林城を捨てて逃亡。武田は、戦わずして信濃府中を手に入れました。板垣(千葉真一さん)の蒔いた種が実りました!
しかしそのさなか、今川義元の妻であり、晴信の姉が亡くなりました。晴信は、今川との新しい誼を結ぶことを考えねばならなくなりました。
7月19日武田軍は、小笠原から接収した深志城へ入りました。晴信は、小笠原の居城だった林城ではなく深志城を、信濃北方進出の拠点とする事にしました。城代は馬場信春(高橋和也さん)です。不作の甲斐に変わって、ここで一手に兵糧を賄えるよう、馬場に任されたのです。馬場は上田原で負けた、村上義清(永島敏行さん)を討つことに躍起です。
家臣たちは、信濃の攻略を目前にして勢いが増しています。晴信は「信濃の北には越後がある。」と家臣たちに越後も視野に入っている事を伝えました。
真田幸隆(佐々木蔵之介さん)が、小笠原が村上義清を頼って葛尾城に向かった事を掴んでいました。村上は、小笠原に「共に武田を成敗しましょう。」と受け入れていたのです。
村上は、須田新左衛門(鹿内孝さん)に、集められるだけの兵を集めて砥石城を固めるよう指示します。武田が次に狙うのは砥石城と読んでいたからです。
砥石城は村上の本拠地、葛尾城の背後を守る難攻不落の山城です。その目と鼻の先に真田が居城とする松尾城がありました。
その松尾城に、勘助と相木市兵衛(近藤芳正さん)が来ていました。勘助は、城攻めに鉄砲を用いたい事を伝えます。そして鉄砲が着く前に、越後で調べたいことがあると言います。
勘助は、真田に村上が先手を打って攻めて来るかもしれないから用心するよう言います。真田はその為に相木を呼んでいました。「小県の事は案ずるな。」と言うのでした。
真田は信濃府中に出陣する直前に、晴信から「砥石城攻略を遂げれば、真田の郷を全て真田のもとへ回復する。」と約束されていました。相木は驚きながらも「己が生まれ育った土地を、敵の領地として眺め暮らすは、さぞ辛かったであろう。それは祝着!必ずや本意を遂げましょうぞ!」と一緒に戦ってくれる事を約束してくれました。真田が礼を言うと、相木は微笑みます。
真田の妻、忍芽(清水美沙さん)は勘助に「常日頃より、我が殿の願いを御屋形様にご注進下されたおかげじゃ。」と感謝します。勘助は「皆御屋形様のお目配りにございます。」と晴信を立てます。忍芽は「やっと真田の郷を皆で歩ける。」と大喜びです。真田は「あと少しじゃ。あと少しで我が郷が手に届く。」と気持ちを抑えきれない様子です。
勘助は、そんな真田に「はやりまするな。村上との戦は十二分に機を待たねばなりませぬ。」と忠告して甲斐へ戻っていきました。
昨年の「真田丸」でも真田の郷の攻防が繰り広げられていました。幸隆の時代からの戦いだったのですね。
今川との新しい誼
甲斐、躑躅ヶ崎館では、三条夫人(池脇千鶴さん)をはじめ晴信の子供たちが「勝ち戦を祝い、晴信を出迎えました。
晴信は姉に変わって、駿河に新たな人質を送らねばならない事を三条夫人に伝えます。三条夫人は長女の梅をその代わりと考えている事に気づきます。まだ8歳の梅を出す事に抵抗感を表します。今川家の嫡男は13歳で、程なく元服を迎える頃でした。晴信は「すぐに嫁がせる事はないだろうが、心得てもらわねばならぬ。」と三条夫人に覚悟を促します。
萩乃(浅田美代子さん)が、諏訪の四郎を遣わしては?と言いますが、「今川は諏訪ではなく、武田と誼を結びたいのじゃ。」と言ってはねのけます。三条夫人が産んだ子が武田家の子なのです。三条夫人は納得するしかありませんでした。
甲斐、駒橋の屋敷の小山田信有(田辺誠一さん)は、代々武田家に仕えてきたわけではありませんでした。時に争い、時に手を結んできました。小山田の側室の美瑠姫(真木よう子さん)は「また武田と争う事もありますか?」と小山田に聞くと「ないとは言えぬ。戦って欲しいか?」と聞き返しました。「いいえ。」と返事する美瑠姫。この事が後の話につながっていくのでしょうか?
鉄砲到着
なかなか帰らない甲斐の勘助の屋敷は、葛笠太吉(有馬自由さん)一家の屋敷みたいになっていました。太吉の息子たちは鍛錬を重ねて勘助の役に立とうと頑張っています。
「お父やんの為には死ねねえが、旦那の為には死ねるだ。」と言うくらいです。太吉の妻おくま(麻田あおいさん)は勘助に妻がいないことを心配したりして、すっかり家族みたいになっていました。
そんな勘助の屋敷に、河原村伝兵衛(有薗芳記さん)が帰ってきました。伝兵衛は2丁だけ鉄砲を体にくくり付けて現れ、残りはまだ駿河にあると言います。伝兵衛は根来で待たされた間、鉄砲の腕が上がっていました。
勘助は、鉄砲を晴信に見せます。これを持って越後でどれだけ欺けるか、晴信は心配します。
「鉄砲より、そちが無事に戻る事が肝要じゃ。心して参れ。越後も気になるが、駿河との新しい誼も急がねばなるまい。」と晴信が言うと、「それほど今川も急いでないはず。」と勘助は言います。
「今すぐ娘を差し出す事はないと?時を稼いでいかにする?」と晴信が聞くと「その間に村上を下し、信濃を我がものと致しますれば、駿河などもはや恐れる事はございません。」と勘助は答えます。信濃さえ治めてしまえば、駿河に人質を送る事はないという事です。
急いで砥石城を落とそうと意気込む晴信に「急いてはなりませぬ。」と釘を刺す勘助でした。
あくまで勘助は越後が気にかかると言います。晴信は「越後の長尾景虎、いかほどの者か、しかと見極めて参れ!」と指示を出しました。
勘助こそ、長尾景虎に会うのを急いでいる感じですよね。どうして越後にこだわるのでしょうか?
真田と相木のはかりごと
松尾城で真田と相木が酒を飲んでいたところ、素破の葉月(真瀬樹里さん)が現れます。城の中にいる村上の間者が分かったというのです。しかも重臣の内にいると言います。
相木はふすまを全て閉め、真田たちは葉月の話を聞きます。相木はその間者を使って砥石城を落とす策があると言います。「我らのみであの城に籠る兵を減らせるやもしれぬぞ。」と言う相木に真田は「御屋形様の下知なく城攻めは出来ぬぞ。」と言うと相木は「向こうから攻めよせて来たらいかかじゃ。敵を攻めるよりも、攻めさせた方が討ち取りやすい。」と言います。
真田はその言葉だけで全てを悟ります。「されどはかりごととはいえ、こちらから戦を仕掛ける事には違わぬ。」と真田が心配します。
「村上の兵力を削げば、御屋形様にご出陣を願い、一挙に砥石城を叩ける。その好機ぞ!」との相木の言葉に真田が傾き始めた時、忍芽が勘助が「急いてはならぬ。」と言っていたと口を挟みますが、相木が「砥石城攻めは真田殿こそが軍師でござろう。」と止めの一言を言います。村上は背後の高梨と争っている時だったので、今こそが好機でした。
真田は決心しました。
真田は、重臣たちを集め「裏切り者がいる。村上方に内通しておる者が居る。」と告げます。「そんな者はいない。」と一番に否定したのは深井(荻野英範さん)という家臣でした。
しかし真田は、春原若狭守(木村栄さん)が裏切り者だと言って責め立てます。春原若狭守は真田に鞭で叩かれたり、蹴られたり散々に痛めつけられました。
弟の春原惣左衛門(村上新悟さん)が止めに入ると、次は惣左衛門にも疑いの目を向け、「弟の手で兄を斬らなければ弟も間者とみなす。」と言い放ちます。兄は自分を斬れと言い、本当に斬ろうとしたところを真田が止めました。弟は違うと分かった真田は、兄を牢に入れることにしました。深井が一番震えていました。
弟の惣左衛門は村上に駆け込みます。真田を討つ為、兵を500人貸して欲しいと言います。疑う素振りを見せる村上に「兄を救い出したい。」と訴えます。
その場に同席していた矢崎平蔵(佐藤隆太さん)が「真田幸隆なる武将は、さように証拠もなく家臣を誅する者では…」と言いかけると、「今の真田は違います。武田に旧領回復の餌を与えられ、その欲に引かれております。」と惣左衛門は言葉を遮り訴え続けます。
「このわしを討てば真田の領地を取り戻せると?」村上が納得しかけると、平蔵は「真田殿ははかりごとに長けております。」と必死に止めます。それを須田が口を挟むなと怒ります。
「多くの兵を高梨との対陣に割いている今、僅かな兵で真田を落とせる好機にございます。」と須田は進言します。「真田の謀ではないと?」村上は聞くと、須田は「常田隆永(橋本じゅんさん)を召している。」と言います。
常田隆永は、村上に付いている真田の弟です。常田は本当の間者を連れてきていました。深井です。深井は真田が春原を疑った一部始終の場面を見ていたので惣左衛門の話は、嘘ではないと証言したのでした。
松尾城では、葉月が牢に入れられたはずの春原若狭守の、傷の手当てをしていました。相木は「あそこまでやるとは思わなんだぞ、わしも。」と言いました。春原は「それがしが頼んだのです。深井は上州へ逃れた後、常田家に仕え、深井の娘は常田の縁者に嫁いでいます。」と忍芽に説明します。真田は「初めから間者であったわけではない。わしは深井を通じて常田家を寝返らせようとした。されど常田はわしの誘いに乗らなんだ。」と話します。
常田は真田の弟でした。ですから深井の事は責められないと真田は言います。
惣左衛門が信用されれば、あとは上手く村上の兵を導くのみです。真田は、村上の兵を二の曲輪に押し込め、本曲輪と三の曲輪から挟み撃ちする予定なのです。
村上は、真田の落城を見届ける為に砥石城に入ることになり、平蔵もお供することになりました。妻となったヒサ(水川あさみさん)は平蔵の身支度を手伝います。
真田の城へは高梨勢と対陣している猛将、小島五郎左衛門(高田延彦さん)を行かせることになりました。須田も出陣する予定でしたが、須田はヒサの父、矢崎十吾郎(岡森諦さん)に代わりに行かせることになりました。それを聞いた平蔵は、真田の策略だったら生きて戻れないと止めます。しかし矢崎は「矢崎家は小県ではまだまだよそ者。ここで武功を立てれば、堂々とこの小県を我が郷と呼ぶことが出来る。」と出陣していきました。
真田の作戦通り、惣左衛門は村上軍を二の曲輪に押し込め、門を閉めて挟み撃ちにしました。小島も矢崎も討ち死にしました。
真田の勝利です。平蔵は砥石城からその様子を知り、涙するのでした。
真田の調略成功の報を受け、晴信は砥石城に向かって出陣。小笠原攻めからおよそひと月後の早さでした。
勘助、人質となる
越後で商人として長尾景虎に初対面した勘助。根来の僧道安と偽る勘助を剃髪もせず法衣も汚れていると、景虎は気に食わないと言いました。
「何丁用意できる?」との景虎の問いに「10丁。」と答える勘助。100丁用意するよう命じる景虎。「100丁届けさせるまで、そなたは人質じゃ。」
勘助は人質に取られることになりました。
次回、第32回「越後潜入」です。
景虎の晴信への考えが分かるようです。
いよいよ越後と甲斐の対立がはっきりしそうです。