「風林火山」は、2007年1月7日から12月16日まで放送された大河ドラマです。
2017年、4月からNHK BSプレミアム日曜昼12時から、大河ドラマアンコール枠で再放送されています。
2018年2月4日に放送されたのは、第44回「信玄暗殺」です。
前回、越後の長尾景虎(GACKTさん)は、庇護していた関東管領、上杉憲政(市川左團次さん)から、北条討伐を条件に、上杉家と関東管領の地位を譲ると申し出られ、将軍から正式に関東管領の命を受ける為、再び上洛をします。
留守を預かっていた宇佐美定満(緒形拳さん)は、武田への刺客として、今は駿河にいる、諏訪頼重(小日向文世さん)の嫡男、寅王丸こと長笈(柄本佑さん)に白羽の矢を立てます。
そして、宇佐美の使者として駿河に向かったのは、元諏訪家家臣、矢崎の婿になっていた、矢崎平蔵(佐藤隆太さん)でした。
自身の身の上を知った寅王丸は甲斐へ向かいます。
前回の第43回「信玄誕生」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
それでは、第44回「信玄暗殺」のあらすじと感想です。
寅王丸の恨み
宇佐美の使者として駿河に入った平蔵を、今川義元(谷原章介さん)の生母、寿桂尼(藤村志保さん)が応対します。
「元諏訪家家臣として、仇を討ちたい。」と言う平蔵に、「今川が武田と縁戚関係と知っているのか?」と寿桂尼が尋ねます。ちょうど、信玄の嫡男、義信(木村了さん)に嫁いでいた今川の娘、綾姫(平田薫さん)が姫を生んだばかりで、誼が強くなってきたところでした。
寅王丸に接触するには、今川家の協力なくしてはあり得ない話なので、宇佐美は今川に接触するよう、平蔵に指示していたのです。
寿桂尼は平蔵の「寅王丸に会わせて欲しい。寅王丸が立つならば、お供し、忠義を尽くしたい。」という申し出に「無謀の事。」と言いながらも、「無下には出来ぬ志じゃ。」と富士郡、善得寺にいる寅王丸こと、長笈に会わせてくれることになりました。
寅王丸は、「諏訪家の出だとは知っているが、今は出家した身。」と今更、諏訪家家臣に迎えに来られても、困る素振りを見せます。
しかし、仲介した寿桂尼が「そなたにはあずかり知らぬ事がある。私の口からは言えない。」と暗に平蔵から経緯を話すよう促します。
平蔵は、「信玄が無理やりあなた様の姉を側女にし、その間に男子が産まれ、あなた様が邪魔になったから駿河へ送られ出家させられた。本来ならあなた様こそが諏訪家を継ぐ御身。
それを武田に約束されたゆえ、諏訪頼重様もご自害あそばされたのです。」と言います。
自分の為に父が自害したと知って涙を流す寅王丸。
「側女になった姉が今、どうなっているか。」尋ねる寅王丸に、平蔵が話すのを迷っていると、寿桂尼が「武田に殺されたも同じ。」と話し始めます。
「諏訪の地に押し込められ、子を産んだ後は、ただの囚われ人として病に倒れた。武田と諏訪の子さえ生まれれば、諏訪衆の怒りを静められると思うたのじゃ。駿河の寺に預けたそなたはもう、この世におらぬも同じ。今川家は目付にされたのじゃ。」
と、悪意に満ちた視点で寅王丸の恨みを起こさせるように武田の情報を吹き込みます。
そして今川は利用されたと思わせる事も忘れていないあたりが、ずる賢いなと思いました。
寅王丸は「このまま黙ってお見逃しください。」と寿桂尼に頼みます。寿桂尼は「捕らえているわけではないから、諏訪家の嫡男としてせねばならぬ事をすればよい。」と優しく言って、今川家は味方であるような言い方をして駿河から寅王丸を出したのでした。
寅王丸は、平蔵が他国に妻と子を残してきたと知ると、「連れていけない。帰れ。」と一人で甲斐に行くと言います。「父を子から奪うなんて、義が立たない。」と言うのです。
平蔵は越後を発つ時、妻のヒサ(水川あさみさん)に「もし寅王丸様が武田を討てば、無事で済むまい。平蔵が寅王丸様を殺したことになる。」と止められていました。
自分の身の上より平蔵を心配してくれる寅王丸に、平蔵は罪悪感がムクムクと湧いてくるのでした。
武田を討とうとした者たちが皆、死んでいった事をヒサは思い返しており、父の名と平蔵が大事にしていた女の名と同じ名を、子供たちに付けて、恨みを晴らすより新しい命を守っていこうとしていたのです。
過去に囚われ過ぎて、今の幸せを手放してしまうなんて愚かな事です。けれど、失わないと人は幸せに気づかないものです。
四郎の成長
山本勘助(内野聖陽さん)は、高遠城代の秋山信友(市瀬秀和さん)に預けていた、四郎(池松壮亮さん)に会いに行っていました。見違えるほど剣術が上達している四郎に、勘助は目を細めます。
そして何枚も紙に書いた戦術を、四郎に教えようとしますが、「出家したのに戦の事ばかりだ。」と四郎を呆れさせます。「わしの為?母の為?」と尋ねる四郎に「武田家の為。」と勘助は答えます。
「諏訪家を継ぐ。」という役目を甲斐、諏訪の者たちに期待されている四郎は、自分の使命をしっかりと受け止めていて、立派に成長していました。
甲斐の屋敷に戻った勘助は、リツ(前田亜季さん)から、於琴姫(紺野まひるさん)のいる積翠寺に、若い僧侶が物語を話しに来ていて、御屋形様にも明日、会うようだと聞きます。
そこへ寅王丸を心配して甲斐まで付いてきていた平蔵を、葛笠太吉(有馬自由さん)と河原村伝兵衛(有薗芳記さん)が、積翠寺近くで捕らえたと連れてきます。
再会の喜びもつかの間、勘助は何も話さない平蔵に勘づき「於琴姫様に近づいてきた坊主は誰じゃ?おぬしが連れてきたか?存じておろう!さような刺客に御屋形様が討てると思うてか!刺客もうぬも八つ裂きにされるだけじゃ!」と追及します。
「寅王丸様を止めてくりょ。寅王丸様を許してくりょ。」と平蔵が漏らし、信玄に危険が迫っていると知った勘助。急いで積翠寺へ向かうのでした。
寅王丸と見抜く信玄
寅王丸はすっかり於琴姫の信用を得て、積翠寺に迎え入れられていました。於琴姫は訪ねてきた信玄の世話もそこそこに、「長笈から話が聞きたい。」と皆を集めます。
信玄も「そなたが長笈か。「平家物語」を聞かせてくれ。」と笑いかけます。
夢中になって話を聞いている女性陣に背を向けて、信玄は一人、縁側で寝ています。於琴姫がリツに頼んで、信玄に何かかけるよう指示します。
寅王丸が「私がおかけしましょう。」とリツから羽織物を受け取り、背中を向ける信玄に向かって進み出ます。
近づいて座り込み、羽織物を信玄にかけた時、懐に忍ばせていた短剣の鞘を抜きます。その瞬間「寅王丸!」信玄が叫び、立ち上がります。
驚いて倒れ込みながら、刃先を信玄に向ける寅王丸。
「長笈…わしがその名を知らぬと思うか!よう、甲斐に参ったのう。そなたの事はいつも気にかけておった。わしの館に参れ。話がしたい。」
そう言うと信玄は、寅王丸の視線に合わせて座ります。そこへ勘助が到着しました。
「勘助か。見よ、寅王丸じゃ。立派な僧になってわしがもとに戻って参った。」と笑いかけるのでした。
諏訪家と武田家の因縁
躑躅ヶ崎館に着いた、信玄と寅王丸と勘助。信玄は「辛き思いをさせたのであろう、すまぬ。」と寅王丸に謝ります。
不動明王像の前で、寅王丸を可愛がっていた大井夫人(風吹ジュンさん)が亡くなった事を告げると、寅王丸は出家に旅立つ前、「何ものも、得られるのもがないところを、得ると呼ぶのです。」と大井夫人からかけられた言葉を思い出していました。(第25回「非情の掟」)
大井夫人は、禰々(桜井幸子さん)の忘れ形見の寅王丸を大変可愛がっており、出家させる時も大いに悲しんでいました。
信玄は「母に誓い、またそなたの母である妹の禰々に誓い、わしはこれよりそなたを、我がもとに留め置きたい。」と言います。驚く勘助。
「ありのままのわしを、武田家を、そなたの目で確かめて欲しいのじゃ。わしを恨むのはそれからでも遅くないだろう。」と寅王丸に話しかけます。答えない寅王丸。
そこへ義信が、寅王丸が信玄に刃を向けたと聞いて怒鳴り込んできます。止める信玄と勘助。
さらに義信は激高します。
「元はと言えば山本勘助!そちが、かの者の姉に誑かされ、かような始末となった。
その為、諏訪家には我が母は、散々苦しめられてきた。父上は諏訪家の女を側女にしてまで、諏訪との絆を保ってきたのじゃ。今更、戦に負けた恨みを晴らされる覚えはない!
全ては終わった事なのじゃ。」義信が言い放つと寅王丸は静かに言い返します。
「私は何も知らずに生かされてきましたが、にわかな恨みも今消えました。」
義信は疑います。
寅王丸は立ち上がり、両腕を広げて義信の目の前に立ちます。
「ありのままの私の心をお確かめ頂きたい。」と義信に進み出ます。すると勘助が義信の前に立ちふさがり「義信様、お下がりくだされ。」と言うと、また義信は激高して勘助を払いのけた瞬間、寅王丸が義信の腰に差してあった刀を抜き、義信を刺そうとすると、今度は侍女の萩乃(浅田美代子さん)が義信の前に立ち、刺されてしまいました。
勘助が寅王丸を羽交い絞めにして引き離しましたが、時すでに遅し、でした。
萩乃はその場に倒れ込みます。三条夫人(池脇千鶴さん)が駆け寄ります。
萩乃は、義信が無事だと分かると微笑み「姫さん、誰よりもお優しい…姫さんにお仕え出来て、萩乃はほんま、幸せでした。姫さん、お幸せに。」そう言うと息絶えました。
義信の気持ちも分からないでもないですけど、由布姫の事を侮辱して、寅王丸の感情を逆なでして、許せなかったですね。寅王丸の恨みが、信玄から義信に移った瞬間だったんじゃないでしょうか?家を滅ぼされて、その上亡くなってからも侮辱されたんじゃ、たまったもんじゃないです。
萩乃さん、正直、気が強くて嫌味で、好きではなかったですが、心から尽くしていた三条夫人の、息子をかばって死んでしまうなんて。寅王丸の事をやる回だと思って、油断していました。
まさか萩乃さんが死んでしまうなんて。これには泣いてしまいました。
浅田美代子さんが演技しているのをテレビで観るのは「101回目のプロポーズ」以来でしたが、最後の最後で引き込まれてしまいました。
話を戻します。寅王丸はその後、寺に閉じ込められました。
武田家と諏訪家の因縁がまたここで増えてしまいましたね。不幸なつながりがずっと続いてしまっています。
黒幕は寿桂尼
屋敷に戻った勘助は、太吉たちが平蔵を逃がしたことを知ります。
「寅王丸様を誑かしたのは、駿河の寿桂尼じゃ。裏で糸を引いたのは寿桂尼じゃ。」伝兵衛は、平蔵が言っていたと言います。
勘助は怒りに震えます。
勘助のこの怒りが駿河の大事件へとつながっていくようです。
次回、第45回「謀略!桶狭間」です。
とうとう今川義元が討たれる時が来るようです!
見逃せません!