「風林火山」は、2007年1月7日から12月16日まで放送された大河ドラマです。
2017年、4月からNHK BSプレミアム日曜昼12時から、大河ドラマアンコール枠で再放送されています。
2017年7月2日に放送されたのは、第14回「孫子の旗」です。
前回は、武田晴信(市川猿之助さん)に仕官したばかりの山本勘助(内野聖陽さん)に重臣たちが腕試しを仕掛けました。
相手は鬼美濃と呼ばれる原虎胤(宍戸開さん)でしたが、足の悪い勘助と条件を合わせて始めた戦いで、勘助が舟底に穴を開け浸水させて原の動きを封じ、両者無傷で勝利したのでした。
結果に晴信は満足し、他の重臣も渋々勘助を受け入れました。
武田の代替わりを機に、若い晴信を侮り、関東管領上杉憲政が信濃の佐久へ侵攻したという知らせを晴信が受けたところで終わりました。
前回の第13回「招かれざる男」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
重臣たちが諏訪攻めを進めるなか、晴信はどう決断するのか?
それでは、第14回「孫子の旗」あらすじと感想です。
関東管領が諏訪と和議を結ぶ
関東管領上杉軍は佐久に侵攻し、諏訪軍が出陣すると戦わずして、諏訪と和睦しました。
諏訪頼重は、武田を出し抜いて佐久を自分の土地にしたのでした。
諏訪頼重は家臣たちに、これは勝ち戦である。関東管領軍に対してではなく、武田への勝利である。関東管領と和議を結んだことにより、武田が信濃に進む道は、断たれたのも同じだ。と言うのでした。
関東管領が信濃へ侵攻して、真田の郷を奪還できると思っていた真田幸隆(佐々木蔵之介さん)は、お家再興の望みが当面断たれたのでした。
関東管領と諏訪は佐久から武田を締め出すことで、手を結んだのでした。
勘助、諏訪への謀略を提案
諏訪に出し抜かれたことで佐久の地侍が諏訪に寝返ることを懸念した重臣たちから、諏訪を攻めるよう勧められます。しかし、今戦えば長期戦となり、父信虎(仲代達矢さん)と同じになると、晴信は渋ります。
甘利虎泰(竜雷太さん)は晴信が弱腰になっていると勘違いし、「諏訪を恐れていては、何も始まらない」と強く言います。重臣たちは、早く諏訪を攻めて佐久を取り返したいと思っていました。佐久を取られると武田は信濃への足掛かりを失い、再び貧困を強いられるからです。
晴信は戦をしないわけではない。と言いますが、重臣は諏訪に裏切られたことで焦っています。話が平行線をたどるなか、勘助が意見します。
諏訪頼重と対立する一派の、諏訪の分家である高頭頼継(上杉祥三さん)は、かつて諏訪に代わって、諏訪社の神職の最高位である「大祝」を務めたほどの家柄でした。
今でも本家の座と、「大祝」の座と両方を狙っているはず。そこを突いて諏訪勢を二分させる案を出します。
諏訪には晴信の妹、禰々(桜井幸子さん)が人質として嫁いでいます。武田は合戦をせず、あくまでも高遠の援軍として出陣することで、高遠討伐にはやる諏訪頼重と有利に和議を結び、屈服させれば、禰々の命も安泰である。と勘助は言います。
「戦わずして勝つは最善なり。戦の上策でございます。」と締めくくるのでした。
家臣たちが晴信の真意を探る
甘利たち家臣は、晴信が新参の勘助を、軍師のように扱い、諏訪への謀略の話も聞き入れたことに不審を抱いていました。
晴信の真意を聞いていないかと、晴信の母、大井夫人(風吹ジュンさん)に尋ねていました。
話を聞いた大井夫人は、「晴信もまだまだ若いので、わからないことが多いのだろう。先代から続く譜代家臣の甘利たちには遠慮もあるだろう。そのようなものを取り払って話せる相手が欲しいのでは?」と推測します。
甘利は「それでは何のために先代の信虎を廃して、晴信に御屋形様になってもらったかわかりません。」と力なく言います。続けて晴信の弟、信繁(嘉島典俊さん)は、晴信が勘助の言うことに乗じて諏訪に攻め入る覚悟をなされたと大井夫人に言います。
そこへ板垣信方(千葉真一さん)が割って入り、晴信が単に勘助の言うことに乗ったのではなく、もともと諏訪に攻めようと思っていたが、妹の禰々がいるので言い出しかねていた。それを勘助が察して代わりに進言した。と言うのです。
すると、小山田信有(田辺誠一さん)も、晴信の考えを察したのは勘助だけだと言います。
甘利は納得せず、晴信は戦をしたくないと弱腰になっているだけだと、なおも言います。
しかし小山田は、もし御屋形様が諏訪を攻略したら、父上を超えたということになるだろうと言うのでした。
勘助への晴信の溺愛ぶりが、止まりません。前からいた家臣らからすれば面白くありません。晴信の真意が分からず、混乱しています。勘助には実績がないので、家臣らは全く信用できないのです。信虎への謀反も一緒に成功させたのに、大事にしてもらえないように思うのでしょう。
晴信、勘助に孫子の好きな言葉を尋ねる
湯村の隠し湯に、晴信は勘助と一緒に入っていました。そして勘助に、孫子で気に入っている言葉を尋ねます。「兵は詭道なり」といつもの言葉を言う勘助に、それは見ていたらわかると晴信はすぐにツッコミます。
他にはないのかと聞くと、勘助は「疾き(はやき)こと風の如く、その徐か(しずか)なること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し!」と答え、晴信は続けて「知り難きこと陰の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し。か」と言います。
「まず、迂直(うちょく)の計を知る者は勝つ。これ軍争の法なり。これぞ孫子の目にございます。」と勘助は答えました。
「風林火山」の元の言葉ですね。登場しました!
高遠に話を持ち掛ける
諏訪にいた頼重の妻、禰々は妊娠しました。頼重は嫡男であれば、なお、めでたいと手放しで喜びます。
禰々はすぐ兄の晴信にも知らせたい、と頼重に言いますが、頼重は自分から晴信に知らせると言います。
禰々は頼重が兄を裏切ったことを知ります。「兄を侮ってはなりません。」と禰々は言いますが、頼重は聞き入れません。体を大事にするようにとだけ言うのでした。
一方、勘助と教来石景政(高橋和也さん)は、晴信から密命を受けて、信濃、伊那の高遠へ向かっていました。計画通り高遠頼継に出兵を促すためでした。
高遠城を目の前にして勘助は迷っていました。どう切り出せば高遠が乗ってくるか、武田から援軍を出すから出兵せよ、と真正面から言っても裏があると疑われるだろうと予測します。諏訪頼重と晴信は義兄弟だからです。
教来石はその話を聞いて「武田と諏訪が謀って高遠に出兵させてから壊滅させる策とも取られる。」と考えます。そこで勘助は、教来石と二手に割れて、高遠に話をしてみることを考えつきます。
高遠頼継と、弟の高遠連峰軒(木津誠之さん)は、武田の使いで来た二人から話を聞きます。まず勘助が、「武田が代替わりをし、そのついでに諏訪を取りたいと思っている。諏訪と戦を構えるつもりです。」と言います。
驚く高遠一同ですが、頼継は「晴信がその気になったか。」と感心します。そして何をせよというのか、と尋ねます。勘助は「我々が攻め入ったら、すぐに援軍を出して諏訪の退路を断って欲しい。」と言うと、すかさず教来石が、「そうではない!」と言うと「我が主は、高遠様に先陣を切っていただきたいと思っています。そして武田は援軍を出し、あくまで諏訪には降伏を促したいと考えています。」と言います。
これを聞いた頼継は「降伏した時は?」と聞くと、「高遠様には諏訪の総領、大祝として、諏訪城代をお務め頂きます。」と教来石は答えます。「城代?武田の軍門に下れと言うのか!」と激高する頼継に「諏訪の惣領として、でございます。」と甘い言葉をかけるのでした。
頼継は、考え込みます。その様子を見た勘助は教来石と争う振りを演じ続けます。
言い争う二人に、「どちらを信用すればいいのだ。我らに援軍を出せと言うのか、我らに援軍を出すのかはっきりしろ!武田武士が見苦しい!」と頼継は、一喝するも顔は満面の笑みでした。
教来石が間者として信濃へ
二人は、手応えを感じながら高遠城から帰ります。勘助と教来石は言い争うことで、晴信が家臣もまとめられないうつけ者と頼継に思わせ、そんな武田に諏訪を取られてなるものか、と競争心をあおらせる作戦でした。
教来石には信濃に入って間者、スパイになれと晴信は命令していました。諏訪衆の中にも武田に味方する者がいるかもしれない。その者を探り、内応を促し、諏訪の力を弱めていこうと言う考えでした。晴信はやはり合戦を避けたいと思っているのでは、と教来石は考えていました。
そのまま信濃へ向かおうとする教来石に、勘助も信濃が見たいと付いて行くのでした。
相手が考えそうなことを先回りして見せて、しかもこちらを侮るように仕向けるあたりが見事です。自分が上だと感じると人は隙が出てきてしまうものです。兵法と言うのはそこをうまく突くのですね。
川の堤防工事を始める
甲斐では、度重なる河川の氾濫に苦しめられていました。晴信は領内をくまなく見て回り、堤防工事、川除普請をする川除衆を集めました。そのなかに以前勘助を屋敷に泊めた、春日源五郎(田中幸太朗さん)がおり、工事についての意見を述べました。
「兵の形は水に象る(かたどる)と申します。水は地によりて流れを制し兵は敵によりて勝ちを制す。故に兵に常勢なく、水に常形なし。よく敵によりて変化し、勝ちを取ると申します。そのようにすればよろしいかと。」と。晴信は孫子の言葉であると気づき、誰に習ったのか尋ねると、勘助から習ったと春日は答えます。
釜無川が氾濫するのは、支流の御勅使川が原因でした。春日の言う通り、御勅使川の流れを変える工事をするよう、晴信は川除衆に指示しました。
晴信は戦への不安を拭うかのように、積極的に国づくりを始めました。
平蔵を通じて矢崎に会う
教来石と勘助の二人は、甲斐を出て、信濃の諏訪家家臣、矢崎十吾郎(岡森諦さん)の世話になっていた、平蔵(佐藤隆太さん)に偶然会います。勘助と平蔵はお互い生きていたことを喜び抱き合います。今何をしているか尋ねられた勘助は今も浪人だと嘘をつきます。
勘助は身分を偽っていましたが、教来石は、身分は偽らず、武田から晴信を見限って諏訪に仕官しようとやって来たという設定でした。
二人を迎えた矢崎に、教来石は諏訪に取り次いでもらえないかと頼みます。
平蔵は、かつて勘助の恋人のミツ(貫地谷しほりさん)が好きでした。二人とも甲斐での日々を信虎と共に追い払っていました。
勘助は矢崎の娘のヒサ(水川あさみさん)が、平蔵に惚れていることを見抜きます。しかし、下人の自分と釣り合わないと、結婚相手まで決まっているヒサを忘れようとしていました。
矢崎も身分の違いから二人のことを反対していました。
教来石は勘助に、高遠が諏訪を攻めると矢崎家の三人が死なすことになるかもしれない。と言うと、勘助は黙って考え込むのでした。
一方、三条夫人も、晴信に諏訪への出陣を思いとどまるよう進言していました。
三条夫人(池脇千鶴さん)はまだ勘助を嫌い、勘助のせいで災いが起こっているというのでした。晴信は、諏訪への侵攻は自分自身の意志でもあるので、三条夫人に心の内の激しさを知り、驚きます。
何もかも勘助のせいにする三条夫人に、今度は「二度と申すな」と厳しく言うのでした。
まだ言っていたのですね。三条夫人は本当に勘助のことが嫌いなようです。思い込みが激しいところがあるのでしょうか。三条夫人にとって気味が悪い上に夫である晴信が重用していることも気に食わないのでしょう。
諏訪湖の御神渡りで由布姫をみかける
諏訪湖に、諏訪の守護神が女神のもとへ通い渡った跡であると言う「御神渡り」が生じました。勘助たちは民衆に交じってそれを見に行きます。
そこへ大祝である頼重の弟、諏訪頼高(小野賢章さん)と頼重の娘、由布姫(柴本幸さん)たちが神事を執り行うため現れます。由布姫の美しさに教来石は心惹かれますが、勘助はあまり思いを入れない方がいい、あの姫の命は断たねばならないといってその場を去ります。
由布姫に惹かれているからこその言葉だと思います。凍った諏訪湖に反射して、由布姫の美しさがさらに際立っていました。
神事が終わったあと、頼高と由布姫は、「東から災いが来る」とお告げがあったことを報告します。
風林火山の旗が掲げられる
甲斐に戻った勘助に晴信は、近習となった春日源五郎を紹介します。驚く勘助に、「もっと驚かせる。」と言って外に連れ出し、重臣たちが待ち構えるなか、板垣が話し始めます。
「皆の者!御屋形様は決して戦いに弱腰ではございません。御屋形様の思い、しかと心に刻むように。」と言います。
次に晴信が、「疾き(はやき)こと風の如く、徐か(しずか)なること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し。風のように動くかと思えば、林のように静まり、火の如く攻めるかと思えば、山のようにして動かず。我が軍勢かくあるべし。これぞ新しき甲斐の旗じゃ。」と言うと、旗が掲げられます。
原虎胤がたまらず雄叫びを上げると、皆も続いて雄叫びを上げ興奮するのでした。
孫子の旗のもと、武田軍の新たな戦いが幕を開けようとしていました。
次回は、いよいよ諏訪へ侵攻します。
次回、第15回「諏訪攻め」です。