2019年大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」は、毎週日曜日20時からNHK総合他にて放送中です。
前回第6回「お江戸日本橋」は、主人公・金栗四三(中村勘九郎さん)が、オリンピック代表選手としてストックホルム大会に参加する決意を固めるまでのお話でした。
10里もの長距離を走るには普通の足袋では脆すぎる、足袋の改良が必須、と感じた四三は播磨屋足袋店店主・黒坂辛作(ピエール瀧さん)に正直に感想を話し、足袋に対するダメ出しをしてしまいました。
その結果、黒坂は激怒し、四三を店から追い出したのですが、後日、四三のために足袋の底を3重にして改良を加えてくれました。
喜んだ四三は早速練習を始め、ますますマラソンの練習に力を注ぎます。
嘉納治五郎(役所広司さん)を会長とする大日本体育協会は、オリンピックに派遣する選手の選考に頭を悩ませていました。
入賞した選手を全員連れて行きたいけれど、資金難のため連れて行けるのはせいぜい2人。
懸命に練習する四三の姿を見た嘉納は、四三を絶対にオリンピックに連れて行くと決意を固めます。
代表は短距離の三島弥彦(生田斗真さん)と長距離の四三に決定し、嘉納は四三に代表決定を伝えたのですが、四三の返事は「行きとうなかです!」という嘉納の期待大きく外したものでした。
実は四三は、自分の力を試したかっただけで、予選会がオリンピック選考会だと知らなかったというのです。
日本中の期待を背負ってオリンピックに参加などしたくない、負けたら切腹か、と騒ぎ、参加を拒む四三に、嘉納らは失望を顕にします。
短距離の三島に出場を依頼しても、三島も家族の反対と文部省からの圧力で首を縦には振りません。
そんな時、清国で辛亥革命が起こり、嘉納は留学生たちの生活費を工面するため多大な借金を抱えてしまいます。
三島と四三への出場依頼に失敗し、莫大な借金を抱えてしまった嘉納のもとに、四三が優勝カップを返しにやってきました。
嘉納は、金欠のためか力なく、柔らかな調子で四三にオリンピックの説明を行いました。
半ば諦めかけていたものの、四三に「黎明の鐘」になって欲しいと再度オリンピック出場を依頼します。
嘉納の言葉が胸に響いた四三は、オリンピック出場を承知しました。
四三の出場が決まったものの、四三を派遣するお金がない嘉納は、言葉巧みに四三を誘導し、四三自身に渡航費と滞在費用を出させようとしました。
嘉納に丸め込まれた四三は、自費でオリンピックに行くことになり、そのお金の調達を実家の兄・実次(中村獅童さん)にお願いしたのでした。
若き志ん生・美濃部孝蔵(森山未來さん)は、憧れの橘家円喬(松尾スズキさん)の弟子になり、毎日人力車で師匠の送り迎えをしていました。
弟子は背中で師匠の芸を聞くと教えられた孝蔵は、毎日走りながら芸を練習します。
そして、オリンピックに向けて練習を開始した四三と噺家として修行を始めた孝蔵は、日本橋ですれ違いました。
前回第6回「お江戸日本橋」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
それでは、第7回「おかしな二人」のあらすじと感想です。
返事がない
オリンピック代表に決まった四三は毎日練習しながら、ポストを目にすると表情が暗く沈むようになっていました。
それというのも、嘉納の口車に乗せられて、ストックホルムには自費で行く事になってしまったから。
兄に費用を用立ててくれるように手紙を出した四三は、来る日も来る日も実次からの返事を待っていました。
嘉納は三島を呼び出し、金栗は自費でストックホルムに行くのだと説明します。
三島にもぜひ行こうと勧誘するのですが、三島の返事は変わらず、なかなか首を縦には振りません。
嘉納は一計を案じ、三島の記録は日本では速いけれど、世界記録には及ばない、三島の記録は計りミスではないのか、まぐれではないのかと疑問を持たれている、と三島の気持ちを乱します。
生来の負けず嫌いの三島は、自分の記録が世界記録に達しないと知り、闘争心に火が付き始めました。
出場の返事はしないものの、三島の表情を伺っていた嘉納は、三島は必ずオリンピックに出場すると確信し思わず笑みを浮かべました。
明治45年2月、オリンピック出発まで3か月の時のこと。
実次からの返事がなかなか届かず、練習に身が入らない四三。
その悩みを徒歩部の監督・可児徳(古舘寛治さん)に相談します。
金が届かなかったら、学校を休学して身の回りの物を売って借金をしてストックホルムに行くという四三に、可児はどうしてそこまでしてオリンピックに出場したがるのかと問いかけます。
四三の返答は、とつけむにゃあ嘉納治五郎先生が行けというのなら、自分は何があっても行く、と強い決意が伺える言葉でした。
四三の言葉を聞いた可児は、嘉納に、少しでも旅費の500円だけでも大体協で出せないかと言うのですが、嘉納は辛亥革命の時の10万円の借金を背負っているため、金のない四三にどうにかしてあげることはできません。
この時代の10万円とは、今の時代の数億円に当たります。
三島弥彦の兄・弥太郎(小澤征悦さん)は、家業を弟に任せて、自分は日銀の総裁になろうとしていました。
弟・弥彦が酒もタバコも辞め、行動が不審なことに気づき、弥太郎は弥彦がオリンピックに参加しようとしているのではと疑います。
弥彦は、問い詰める兄・弥太郎に頭を下げ、土下座をし、オリンピック参加を懇願すると見せかけて、手の向きを変え、シマ(杉咲花さん)の合図でそのままスタート。
女中たちが持つゴールテープまで、すごい速さで走り出しました。
弥彦が何をしたいのか、何が何だかわからず、ただ目を丸くする弥太郎でした。
実次からの返事
四三はなかなか来ない手紙の返事を待ちわびていました。
寮に戻って、手紙の返事を待っていると、ようやく実次から手紙が届きました。
四三が早速手紙を読んでみると、そこには「あっぱれ、四三よ」と書かれていました。
四三の実家・熊本では四三が世界記録を出したことを家族全員で喜び、外国に行ってこいと力強い言葉で四三を後押ししてくれました。
四三が資金繰りに苦しんでいる事を知ると、たとえ田畑を売ってでも四三を外国に行かせると心強い返事が帰ってきました。
喜ぶ四三は涙を流し、可児も思わずもらい泣き。
これで練習に集中できます。
ストックホルムへの道~エントリー
翌朝から四三は日課になっている冷水浴で身を清め、練習に励みます。
四三は、兄にお礼の手紙を書き送りました。
翌日、校長室に呼ばれて行ってみるとそこには三島弥彦が待っていました。
たった2人の選手、2人は固く握手を交わします。
可児からオリンピック出場のエントリー用紙を渡された2人は、様々な事情で一度は代表を拒んだことを思い出し、万感の思いでエントリー用紙にサインしました。
これにより、四三と弥彦が正式なオリンピック代表選手となったのです。
嘉納は2人に対し「勝てとは言わん、精一杯戦ってきてくれたまえ」とエールを贈りました。
可児は四三と弥彦にストックホルムまでの道行を説明します。
そして嘉納からは、四三と弥彦はこれからストックホルムに行くために、英語の特訓とテーブルマナーについて学べと厳命されます。
洋食のマナーについては、弥彦からの提案で三島家にて行うことになりました。
実次の金策
徒歩部の野口(永山絢斗さん)らは、四三が自費でストックホルムに行くのだと聞き、可児に抗議します。
四三の同郷の親友・美川(勝地涼さん)は、四三が実次に金の無心を行ったことを聞き、あの倹約家の実次が素直に金を払うだろうかと懐疑的になっていました。
その頃、熊本の実次は、医師の春野(佐戸井けん太さん)に借金を頼み込んでいました。
四三の頑張りを受けて、勢いで金を用意してやると言った手前、どうしても1800円を用意しなければなりません。
家族全員で春野に土下座をして頼み込みますが、春野からの返事は芳しくありませんでした。
そんな時、春野の娘・スヤ(綾瀬はるかさん)が池部家に頼んでみたらどうだろうと提案します。
実次はスヤに連れられ、玉名市の池部家を訪れました。
スヤは池部の一人息子・重行(高橋洋さん)と親しい間柄のようでした。
ストックホルムへの道~マナー教育
四三がマナー講座のために三島家を訪れると、突然三島の母・和歌子(白石加代子さん)から薙刀を突きつけられ、メイドたちからも薙刀を突きつけられ囲まれてしまいました。
四三が弥彦の客とわかると薙刀を引く和歌子。
四三は自分が歓迎されていないことを感じていました。
同行していた可児が三島弥太郎に挨拶をしようとしても、弥太郎は全くの無視。
三島家は弥彦のオリンピック参加にまだ反対していたのでした。
和歌子が薩摩の出身であると知った四三は、親しげに話しかけるのですが、和歌子から強い言葉を返され、言葉に詰まってしまいます。
マナー講座が始まりました。
講師は大森兵蔵の妻・アニ子。
マナーを教わる四三ですが、何しろ初めての洋食で、まずスプーン・ナイフの持ち方が違うと怒られてしまいます。
スープに鮭のムニエル、ローストビーフなどなど、四三が見たこともない洋食が並びますが、いちいちマナーを注意され、ほとんど口にできない四三。
弥彦の計らいで、使用人たちが食べるおにぎりを使用人のシマからお土産にもらった四三は、改めて弥彦と自分の境遇があまりにも違うことに驚きます。
こういう上流家庭でなければオリンピックという夢は見られない、と四三は嘆きます。
しかし、シマは、四三の日本人らしい主張に賛同し、三島の母やアニ子には注意されたが、一品出る毎に「いただきます」という四三の言葉を聞き嬉しかった、と話します。
シマの言葉に落ち込んでいた四三の気分が少し上がってきました。
シマから、なぜ10里もの長距離を走るのか、走りきったら、走りきった人にしかわからない喜びやなにかご褒美があるのか、と聞かれた四三は、「何もわからないが、わからないから走るのだ」と答えました。
お金が届かない~ストックホルム出立まで後ひと月
ストックホルムに出立するまでもう少し、後1か月となっていました。
実次からは何の音沙汰もなく、金が届かない四三は焦っていました。
いよいよ学校を休学し、私物を売り捌き、資金の足しにしようとする四三。
同室の美川は、実次に催促しろというのですが、家族に無理をさせていることを承知していた四三は、家族に迷惑をかけられない、とうなだれてしまいました。
冷静な美川は、一番初めは大体協が費用を持つはずだったのになぜ自費で行くことになったのか四三に尋ねます。
すると、四三は嘉納から提案されてそうなったと答えました。
美川は四三に「騙されてるよ」と苦言を呈し、四三ももう一度資金を出してもらえないか嘉納のもとを訪れます。
嘉納の所に行った四三は、嘉納が10万円もの借金を背負っていると知ってしまいました。
もう一度金を出して欲しいと言い出せずにいる四三を見た嘉納は、四三を外に連れ出しました。
嘉納は、自分が初めて欧米視察に出た時のことを四三に話して聞かせます。
自分の着ている背広は、かの勝海舟から貰ったもので、ここぞという勝負の時に着用しているのだと四三に話して聞かせました。
嘉納は浅草の質屋に四三を連れて行くと、自分の来ていた大事な背広を質屋に出し、その金を四三に持たせて、日本橋の三越で背広を仕立てろと言います。
多額の借金を背負っている嘉納がオリンピック出立を不安視する四三に見せた気遣いに四三は感動し、嘉納の言うとおり、その足で三越に行きフロックコートと背広を揃えました。
2週間後、三越から届いた背広を着た四三は、三島家で弥彦に写真を撮ってもらっていました。
弥彦から、オリンピック出場を家族は喜んでいるのかと聞かれた四三は、家族みんなが四三のためにお参りしたりしてくれていることを話します。
弥彦はそれを羨ましいと漏らし、三島家は自分に全く関心がないと愚痴をこぼします。
家族からの無関心に平気なフリをする弥彦をシマは痛ましげに見ていました。
四三は毎日毎日来る日も練習に明け暮れています。
苦手なマナー講座にも必死に取り組んでいます。
日本橋ですれ違う美濃部孝蔵も走りながら芸の稽古を頑張っています。
四三はシマに聞かれたなぜ走るのか、という問いを考えていました。
足袋はなぜ擦り切れるのかと黒坂に聞くと、足袋は走るためのものではないから擦り切れる、と言われ、清さんになぜ走るのかと問うと金のため、と返されました。
車引は走れば金になるが、マラソンは走れば金が掛かる。
金がないから走れない、と四三は嘆きます。
走るとはなんなのだろうかと、四三はずっと考え続けました。
もう少しでストックホルムに旅立たなければならない四三は、実次からの返事がないことに焦り、とうとう優勝カップを売ろうと決意します。
優勝カップを手に街に出た時、市電から降りてくる人物に声をかけられました。
それは、赤い毛布を纏った実次でした。
実次は四三の渡航費用1800円を持って、東京までやってきたのでした。
四三と実次は固く抱き合い、四三は安堵の笑みを浮かべるのでした。
ギリギリで出立に間に合ったのです。
次回、第8回は「敵は幾万」
実次が用意してくれた渡航費用を持ち、ストックホルムに旅立つ四三。
その金は、熊本の春野スヤの働きかけで得られたものでした。
兄に一生懸命戦うと誓う四三に実次は「勝とうなどと思うな」と語ります。
四三の壮行会が開かれる頃、熊本のスヤは池部家に嫁入りをします。
大勢の人に見送られ出発する三島と四三。
そんな中、いつも冷静で厳しい三島の母が懸命に走って三島の名を呼んでいます。
家族からの理解がないと嘆いていた三島でしたが、母からの声援を受けストックホルムに旅立つのでした。
次回、第8回「敵は幾万」、楽しみです。