2019年大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」は、毎週日曜日20時からNHK総合他にて放送中です。
前回第7回「おかしな二人」は、第5回オリンピックストックホルム大会の代表選手に選ばれた主人公・金栗四三(中村勘九郎さん)と短距離の三島弥彦(生田斗真さん)らが、ストックホルムへ旅立つまでの苦悩の物語でした。
本来ならば、オリンピック参加費用の全ては大日本体育協会が賄うはずだったのですが、会長の嘉納治五郎(役所広司さん)は、辛亥革命で行き場を失った清国の留学生の生活費を賄うために、10万円(現代の数億円)の借金を背負っていました。
四三の、国民の期待を背負って外国で戦うなんてできない、負けたら切腹しなければならないのか、という不安を逆手にとって、嘉納は大体協のお金で行こうとするから責任を感じるのだと言います。
自費で行けば、国民からの期待だろうがなんだろうが関係ない、そんな責任はなくなる、と言葉巧みに自費で行かせるように誘導しました。
素直な四三は、嘉納の言葉を間に受けて、自費でストックホルムへの渡航費と滞在費1800円を用意しなければならなくなりました。
四三はその費用を実家の兄・実次(中村獅童さん)にお願いしたのですが、実次は、四三がマラソンに打ち込むことに賛成していません。
実次からの返事が気になり、四三は練習に身が入らなくなってしまいました。
事情を知った徒歩部の監督・可児徳(古舘寛治さん)は、そんな四三の様子が心配で、嘉納にせめて渡航費500円だけでも用意することはできないかと直談判。
しかし、10万円の借金を背負っている嘉納からは、ビタ一文も引き出すことはできません。
そしてとうとう待ちかねた実次からの返事!
怖々開封してみると、そこには「あっぱれ四三」という賞賛の言葉が書かれていました。
実次は、四三の金の無心を快く承諾し、四三のオリンピック参加を後押ししました。
これで、費用の心配がなくなった四三でしたが、次の問題は英語の習得とテーブルマナーをはじめとする外国のマナーの習得。
大森兵蔵(竹野内豊さん)の妻・安仁子(シャーロット・ケイト・フォックスさん)が講師となり厳しい特訓が開始されました。
同じく代表選手になっている三島弥彦の家でテーブルマナーを学ぶことになった四三は、そこで弥彦が家族からオリンピック参加を反対されていることを知りました。
弥彦が家族からの反対を振り切って、参加を決めたからです。
お金持ちで政財界の著名人と繋がりを持つ三島家と、田舎育ちでテーブルマナーもできず、未だに渡航費用も用意できていない四三。
金があるのに家族からの反対を受けている弥彦と、行けるのに金がない四三。
2人の置かれている境遇は真逆といっていいほど違っていました。
熊本の実次は、四三に気前のいい手紙を書いてしまったがために、金策に苦慮していました。
困り果てた実次に救いの手を差し伸べたのは春野スヤ(綾瀬はるかさん)でした。
スヤに仲立ちになってもらい、熊本の豪商・池部家に赴く実次。
池部家はスヤが嫁ぐ予定の家でした。
出発まで後ひと月となっても、実次からお金は届きません。
困った四三は身の回りの物、とりわけ高く売れそうな予選会の優勝カップを売って、渡航費用に当てようと街に出ました。
すると、派手な赤ケットを纏った実次が市電から下りてくるではありませんか。
実次は、四三のオリンピック参加費用を調達して東京までやってきたのでした。
四三に厳しい言葉をかけていた実次が、四三のために奔走する姿。
嫁ぐ予定の家に、四三のために借金の仲立ちをするスヤ。
弥彦の理解者であるシマ(杉咲花さん)の優しさと、莫大な借金を背負っているにも関わらず、四三のために、勝海舟からもらった背広を質に出す嘉納の心意気など、見所が満載の第7回でした。
前回第7回「おかしな二人」を見逃した方は、ぜひこちらをどうぞ。
それでは、第8回「敵は幾万」のあらすじと感想です。
実次の上京
派手な赤ケットを纏った実次が市電から降りてきました。
再会を果たした四三と実次。
四三は実次を寮へと案内しました。
四三に連れられた実次を見た徒歩部の野口(永山絢斗さん)らは、実次はものすごい倹約家でオリンピックのために金策などしない、というかつて美川(勝地涼さん)から聞かされた実次の話を鵜呑みにし、オリンピック出場に反対している実次が四三を連れ戻しに来たのだと勘違いします。
実次が持ってきた大金を見た四三は、自分のために金を用意してくれた兄に感激し、「あにうえ~」と号泣しました。
四三は、実次に田畑を売ってしまったのかと問いかけます。
1か月前~熊本
実次はスヤの仲立ちにより、熊本の豪商・池部家に借金の申し込みをしに行きました。
対応したのはスヤの許嫁である池部重行(高橋洋さん)。
オリンピックもストックホルムも知らない重行は、そんなわけのわからないことにお金を払う者は、こんな田舎に居るわけがない、と難色を示します。
国の代表ならば国が金を払うべき、アマチュアスポーツなら遊びなんだから、そんなことに金を出せないと資金援助を断ります。
実次は、四三の頑張りを語り、どうしても四三をストックホルムへ行かせたいのだと、四三にはストックホルムに行くだけの価値があるのだから、そのためだったら田畑を売ってもいい、と覚悟を話します。
と、そこへ、重行の母・池部幾江(大竹しのぶさん)が現れました。
田畑を売ってどうするのか、それで生活ができるのか、たかがかけっこなのに、どうしても行かせなければいけないのかと、問われます。
実次は、幾江に土下座して頼みます。
四三が走る10里もの先に何があるのかわからない、走って何があるのかわからないけれど、その先の景色を四三に見せたい、見せてやりたい、どうしても行かせてやりたい、と幾江に懇願します。
すると幾江は、金栗家の田畑を1800円で買うと言いました。
1800円で買って、タダで貸してやるから実次はこれまで通り畑を耕して百姓をすればいい、と言ってくれたのでした。
喜び礼を言う実次に、スヤを信用しているから、スヤの頼みだから力を貸すのだと幾江は言うのでした。
東京
幾江からの1800円を見せながら、実次は四三に母校・玉名中学校長からの餞別と、春野からの餞別も渡します。
金策の礼を言い、頭を深々と下げる四三の肩に実次が手を置いたその時、野口らが窓から踏み込んできました。
野口らは、四三のために後援会を作り、全国の学生数千人から寄付を募り、1500円という大金を用意していました。
金ならあるから、四三をオリンピックに参加させてやってくれ、連れ戻さないでくれ、と野口らは実次に頭を下げました。
実次は、自分もお金を用意してきたと話すと、美川の言葉を信じた野口らは驚愕します。
誰が実次は絶対に金を出さないなんて言ったんだ、と学生らが騒ぎ出すと、美川は動揺し見つからないように本で顔を隠し続けました。
せっかく池部家から大金を持ってきた実次は、1500円もの寄付金を受け取ることに最初は抵抗を示すのですが、最後はお言葉に甘えて、野口らが集めた1500円を頂くことにしました。
スヤの計らいで渡航費用が出来たと知った四三は、スヤに手紙を書きました。
四三の部屋で、背広を着て喜ぶ実次は、それが嘉納がくれたお金で仕立てられていると知り驚きます。
嘉納に挨拶に行こうと四三の部屋を出ました。
すると、酒を飲んでクダを巻いている可児と永井がいました。
ストックホルムへの同行者2名は、自分たちで決定、と思っていたのが、まさかの大森夫妻だったことが気に入らず、不満を漏らしていたのです。
そこに実次が合流し、挨拶を始めました。
人間は、25歳までに大成するかどうか分かる、という話に、四三はまだ21歳だからすごい、とベタ褒めです。
日本のオリンピック出場第一号は金栗四三、未来永劫それは変わらない、と絶賛していました。
ところで、実次は2人を守衛と間違えており、満面の笑顔で2人に守衛さんと呼びかけました。
翌日、四三は美川とともに、実次を東京見物に連れ出しました。
浅草十二階から東京の街並み、遠くに見える富士山を見て大喜びの実次。
阿蘇は見えない、という実次の言葉に、四三はスヤの歌声を思い出しました。
スヤや故郷のことを思い出した四三は、弱気な気持ちが湧き出してきてしまいました。
日本の期待を背負って遠く離れた外国に行くことに不安を感じ、自分は生きて帰れるのか、と弱音を吐いてしまいました。
そんな四三に実次は四三を一喝します。
四三が行かなかったら後が続かない、四三がそんなに弱虫だったら100年後のいだてんも弱虫だ、と四三を怒鳴りつける実次。
母や家族たちは、四三が無事に帰ってこられるように無事を祈っていると四三を励まします。
複雑な思いを抱きながら四三は気持ちを切り替え実次に頷いて見せました。
12階から降りると、そこには小梅(橋本愛さん)が客引きをしていました。
美川を見かけると小梅は逃げ出し、美川は小梅を追って行きました。
四三はお金を出してくれた池部家について実次に話を聞くと、予想していた通り池部家はスヤの嫁ぎ先でした。
来て良かったと言う実次を見送る四三に実次は「勝とうなどと思うな、何も考えんで行って走ってくれば良か」と叫び四三を鼓舞しました。
美川と小梅
赤ケットを纏った実次に「遊んでかないかい」と誘う小梅。
美川が「小梅」と呼びかけると、舌打ちをして逃げ出してしまいました。
逃げる小梅を追う美川。
美川は小梅を助けたいと手を差し伸べます。
しかし、小梅は美川を邪険に扱い、ついうっかり「ぎゃんぎゃん」と方言を使ってしまいます。
美川は小梅が熊本出身と気づきました。
播磨屋足袋店
ストックホルムに向けて、播磨屋足袋店で黒坂辛作(ピエール瀧さん)につま先と踵を3枚重ねにした足袋を作ってもらいました。
そして、胸に日の丸がついたTシャツをプレゼントされたのです。
四三は黒坂に深々と頭を下げました。
出発まであと2日
嘉納は四三の壮行会で、野口らが四三のために寄付金を集めたことに対し賞賛し、頭を下げました。
三島は天狗倶楽部の面々と練習を繰り返していました。
仲間から大学はどうするのかと聞かれた三島は、落第して兄とはとことん違う道を進む、と宣言しました。
弥彦の母・和歌子(白石加代子さん)は、シマに弥彦の動向を聞き、三島家の恥と言いながら熱心に縫い物をしていました。
四三の壮行会
高師の仲間たちが四三のために壮行会を開いてくれました。
そこに、美川が帰ってきて、そのまま部屋に行こうとしています。
永井に怒鳴られても部屋に行こうとする美川。
呼び止められ美川は、肋木の罰でしょう、と言いながら振り返りました。
するとそこには四三がいて、美川にお礼を言うのです。
美川が高師受験を誘ってくれたからここにいる、美川がいなければマラソンに興味を持つこともなくオリンピックに行くこともなかっただろう、だからありがとうと礼を言うのです。
美川に、精一杯戦ってくるから、美川も自分の道を極めてくれと四三は言い、美川を部屋へと促しました。
家に戻った弥彦は、シマにストックホルムへ行くことを母へ報告しないのかと問われます。
弥彦はシマの気遣いに耳を塞ぎ、余計なお世話とシマの言葉を聞こうとしません。
壮行会の終わりに四三は歌え、と言われ、スヤに教わった歌を歌い始めました。
その頃、熊本のスヤは池部家への嫁入り道中をしていました。
四三はスヤとの思い出を思い出しながら顔を真っ赤にさせて全力で歌います。
壮行会は盛り上がり、自転車唱歌の大合唱。
スヤの嫁入りは粛々と進み、三々九度、固めの儀式が終わりました。
その頃の四三は、冷水を浴びていました。
四三の顔や全身から水滴が流れ落ち、何かを吹っ切るように水を浴び続けました。
しばらく無言でいましたが、やがて「よしっ」と気合を入れると、その場を去りました。
四三は、何を思っていたのでしょうね。
出発
明治45年(1912年)5月16日、四三の出発の日になりました。
新橋に徒歩で向かう四三は、小石川大通りから伝通院の前に出て、富坂を降りて和田倉門前へと進みます。
途中、二条橋前では、永井の音頭で皇居に向かって万歳三唱、新橋に向かいました。
日本からの初のオリンピック選手の見送りをするため、新橋は黒山の人だかりが出来ていました。
四三は、車夫の清さん(峯田和伸さん)にも見送られ、外国で足袋で走るのは四三だけ、自分も日本で足袋で走るとエールを贈りました。
そして弥彦は、天狗倶楽部の応援を受けて登場しました。
粋な服装、派手な応援、女子からの黄色い声援を受けて弥彦も汽車に乗り込みます。
大体協から日章旗を渡され深々と頭を下げる2人。
2人は盛大な万歳三唱と「敵は幾万」の歌で見送られました。
その日の新橋駅の騒動は新聞に載りました。
「汽笛にわかに起こり
高師生徒などが
声の限りに歌う「敵は幾万」
金栗、三島、大森夫妻のために、
万歳、万歳」
列車が発車する直前、シマの「お待ちください」という声が響きました。
弥彦の兄・弥太郎(小澤征悦さん)は弥彦に母に挨拶をしてから行けと叫び、シマも弥彦を呼び続けます。
兄とシマに連れられた母を見た弥彦は、デッキまで出て母の手を取りました。
母に「精一杯戦ってくる」と言う弥彦に、母は「当たり前じゃ。お前さんは三島家の誇りなのだから」と答えるのでした。
そして、自ら縫った日の丸のついたシャツを弥彦に渡しました。
感激した弥彦は、列車の窓から身を乗り出して、母の作ってくれたシャツを振ります。
母は、兄は、弥彦の名を呼びながら弥彦が見えなくなるまで列車を追いました。
「三島家の恥」と言われていた弥彦は、ようやく家族からの理解を得て、出立できたのです。三島家の家族の絆が繋がった瞬間でした。
我が子に関心のない親はいない、と四三も涙を流し、弥彦は母がくれたシャツを嬉しそうに握り締めるのでした。
さて、ストックホルムへの道行は、
まず、新橋から福井県敦賀に行き、船に乗ってウラジオストックへ。
そこからシベリア鉄道に乗り続けること14日間。
ロシアの首都・セントピータースバーグに着くと、船でバルト海を渡りストックホルムへ向かう全部で17日間の長旅です。
列車の中で取材を受ける四三は、自分で言葉を発せず、記者の言うまま頷くばかり。
日本運動界の全責任を背負って、出場するのだから倒れて後止むの大決心で望んでくれ、と言われ頷きます。
決して国体を辱めるざることを期す、と言う心境かなと言われ頷きます。
それがそのまま新聞に載りました。
後日、新聞を読んだ実次ら家族は大喜びしました。
四三が席を立つと、そこにはなぜか可児の姿が。
後を追ってみると、野口や橋本らもいるではありませんか。
別れがたく、思わず乗ってしまったという彼らに四三は喜びます。
嘉納はどこに乗っているのかと尋ねる四三に、可児は気まずげに嘉納は乗っていないと告げました。
なぜか嘉納は、男3人に止められており、列車に乗り損ねてしまったのです。
ホームでは、可児がこっそり乗っていることに気づいた嘉納と永井は、可児の名を叫んでいました。
次回、第9回「さらばシベリア鉄道」
乗り遅れてしまった嘉納はどうなるのか、ストックホルムへの長旅はどんなものになるのか。
嘉納の乗っていないストックホルムへの長旅はトラブルばかり。
初めて旅する外国に四三は戸惑いばかり。
一体どうなってしまうのでしょうか。
いざ、決戦の地へ。
一方、橘家円喬(松尾スズキさん)の弟子になった美濃部孝蔵(森山未來さん)は新しい名前をもらったようで…。
次回、第9回「さらばシベリア鉄道」、四三たちのドタバタ道中はどんなことが待っているのでしょうか。
ワクワクが止まりません。