「軍師官兵衛」は、2014年1月5日から12月21日まで放送された大河ドラマです。
2018年4月からNHK BSプレミアムの日曜昼12時の大河ドラマアンコール枠で再放送しています。
2018年4月15日に放送されたのは、第3回「命の使い道」です。
前回、浦上氏との同盟の為、政略結婚をする事になった小寺政職(片岡鶴太郎さん)には、年頃の姫がおらず、黒田(小寺)職隆(柴田恭兵さん)に、官兵衛(岡田准一さん)の幼馴染のおたつ(南沢奈央さん)が養女として入り、浦上氏に嫁ぐ事になりました。
しかし婚礼の夜、浦上の室津城に赤松政秀(団時朗さん)が攻め込んだとの知らせを受け、駆け付ける官兵衛でした。
前回の第2回「忘れえぬ初恋」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
それでは、第3回「命の使い道」のあらすじと感想です。
荒れる官兵衛
室津城に着いた官兵衛と母里武兵衛(永井大さん)は、惨状を目の当たりにし、言葉を失います。そしておたつが血を流して倒れているのを見つけると、官兵衛は抱き上げ、声をかけましたが、おたつは「官兵衛様。」と一声出しただけですぐに息絶えてしまいました。
泣き崩れる官兵衛は、何も出来なかった自分を責めました。
これは残酷な場面でした。あっという間に初恋の人が亡くなるというのが衝撃でした。
御着城で、小寺に職隆と報告した官兵衛は、怒りに任せて「赤松を討つべき。」と進言します。しかし、小河良利(磯部勉さん)と江田善兵衛(上杉祥三さん)は「戦を嫌がっていたのはお主ではないか。」と指摘し、小寺はしばらく様子を見る事にしました。
黒田家では、休夢(隆大介さん)と井手友氏(飯田基祐さん)が「おたつの弔い合戦」と職隆に赤松を攻めるよう言います。義理の娘を失って職隆も辛かったのですが、それ以上に官兵衛は苦しんでいました。
官兵衛は、櫛橋左京進(金子ノブアキさん)に「殺されたのが実の姉でなくてよかったではないか。」と言われ逆上し、殴りかかったのをはじめ、近習の仕事に身が入らず、山の中で力任せに刀を振り回したり、頭を抱え込んで落ち込んだり、荒れに荒れまくっていました。
私は前回のあらすじでおたつを「義妹」と書きましたが、「義姉」でした。そういえば子役さんが演じている時、おたつは万吉より大きかったですね。失礼しました。
半兵衛の動き
天下を狙う織田信長(江口洋介さん)は、美濃攻略に苦戦を強いられていました。
そんな時、清州城にいた木下藤吉郎(竹中直人さん)のもとに、竹中半兵衛(谷原章介さん)が謀反を起こし、僅かな手勢で稲葉山城から主君の斎藤龍興(斉藤悠さん)を追い出したという知らせを受けます。
信長は半兵衛に使いを出すよう藤吉郎に命じ、美濃半国を与えるから城を明け渡すよう要求します。しかし半兵衛はすぐに斎藤龍興を城に戻し、信長の要求を退けました。
命の使い道
武兵衛と栗山善助(濱田岳さん)は、心ここにあらずで過ごしている官兵衛に、竹中半兵衛の事を「面白い。」と聞こえるように話しましたが、全く興味を示しません。釣りをしていて竿が引いても、取り逃がす始末です。
赤松が新たに鉄砲を数十丁買い付けたという情報を聞きつけた職隆は、小寺に、備えを万全にする為、鉄砲を揃えた方がいいと進言しました。
小寺に任せられた職隆は、小寺から官兵衛を借りて、堺まで買い付けに行かせたいと申し出て、許されました。
悲しみが癒えていない官兵衛は最初、職隆の話を断ります。
職隆は「怒りはまた喜ぶべく、憤りはまた悦ぶべきも、亡国はまた存すべからず。死者はまた生くべからず。」という孫子の言葉を出し、「一時の怒りや憤りで戦を起こしてはならぬ。死んだ者が再び生き返る事もない。」と諭しますが、今の官兵衛に届くはずもなく「今のお前は黒田家の恥だ。」と突き放すのでした。
一人、海を見つめる官兵衛に話しかけてきた重隆(竜雷太さん)。嫁に行く前の日におたつが来て話した内容を官兵衛に話します。
「私は、官兵衛様をお慕い申しておりました。でもこのお話をお受けした時にその思いはきっぱりと捨てました。私は黒田の娘となり、官兵衛様は弟です。これで胸のつかえが取れました。」そう言っておたつはさっぱりしたように笑っていたのです。
重隆は「赤松を討つべき」と怒りに任せて仇討ちをするという官兵衛に「負ける。やめておけ。」と言います。官兵衛は「負けたら死ぬまで。」と言い切ります。
「たわけ!命を無駄に使うものではない。お前は、命の使い方が分かっておらん!」と一喝します。しかし官兵衛は婚礼の夜に泣きながら死んでいったおたつの無念を思い、「仇を討ってやらねば。」と言い、泣きました。
おたつの事を思って言っているようで、官兵衛自身の気持ちの持っていきどころがなく、仇討ちをする事で気を晴らしたいといった感じです。
「頭を冷やせ。あのおたつが仇討ちを望んでいると思うか?官兵衛、お前はまだ若い。世の中を知らん。こんな小さな播磨が世の全てではないぞ。世界は広い。己が何を為すべきか、世の中を見て、よく考えるのじゃ。」と重隆は優しく諭すのでした。
それから間もなく、重隆はこの世を去りました。
荒木村重との出会い
官兵衛は、武兵衛、善助と共に堺へ向かう事になりました。職隆の後妻のぬい(藤吉久美子さん)は「お勤め、つつがなく果たされるよう念じております。」と言い、幼い兄弟たちも一緒に見送りました。
堺に向かう道中で、金を持っていた武兵衛に、善助が「自分も半分持つ。」と言って言い争っているのを、近くにいた男たちに聞かれます。饅頭屋(深沢敦さん)も話を聞いて官兵衛に饅頭をすすめます。二人を仲直りさせようと官兵衛は買うと言いました。
武兵衛が代金を支払うと、本当に金を持っていると確認した饅頭屋は、周りの男たちと組んで官兵衛ら三人を取り囲み「有り金を全て置いていけ。」と脅してきました。相手は大人数で、刀を持っています。すると道の脇で寝ていた男(田中哲司さん)が立ち上がり、官兵衛たちと一緒に追い払ってくれました。
礼を言う官兵衛は名を名乗り、男の名前を聞くと男は「拙者、摂州牢人、荒木村重。」と言い、豪快に笑いました。
村重は、無料の宿だと言って古びた建物に官兵衛たちを案内し、官兵衛たちの行き先が堺だと知ると、「こんな大変な時に。」と言います。
村重の話では、「松永久秀と三好三人衆が将軍足利義輝を暗殺、その後仲間割れして畿内一円が戦場になっていて、一日ごとに形勢が目まぐるしく変わっている。」との事でした。
村重はあちこちを歩き回っていて、情報を得ていると言います。
「今は牢人だが、いずれ一国一城の主になる。」その為にどうするか機をうかがっていると夢を語ります。官兵衛は買ったばかりの饅頭を、助けたくれたお礼に渡しました。笑顔で饅頭を頬張る村重に、官兵衛も笑顔になるのでした。
堺までの道、戦の跡の遺体が転がっている側を通る官兵衛たち。村重は「愚かしい。何の為の争いだ。民百姓だけが苦しむ。」と嘆きます。遺体に手を合わせながら官兵衛は、村重の言葉に聞き入るのでした。
村重は、官兵衛たちを堺の町へ連れて行きました。初めて見る南蛮人や町の賑わいに心を躍らせる官兵衛たち。村重は「堺はよそとは別だ。どんなに腕に覚えがあろうと、堺の金の力には勝てん。この町で一番偉いのは、将軍でも大名でもなく会合衆と呼ばれる豪商たちだ。」と説明しました。
村重は、会合衆の一人、今井宗久(小西博之さん)の屋敷まで案内してくれました。
これから摂津に行くと言う村重に、官兵衛は礼を言い、武兵衛にこれまでのお礼のお金を渡すよう指示します。武兵衛は渋々お金を渡すと、官兵衛はその倍のお金を渡しました。驚く村重。
「荒木殿は命の恩人ですから。」笑顔で言う官兵衛に「今度会う時は、わしは城持ちになっておるからのう。10倍にして返すぞ!」と言うと笑顔で去っていきました。
相手の思っている倍のお金を渡すところが、人の心を掴んで戦略を立てる官兵衛の、将来の姿を垣間見た一場面でした。
この村重は、官兵衛の後々の人生に大きな影響を与えるんですよね。
堺の町
今井を待つ間、屋敷内にある調度品に心躍らせる官兵衛たち。今井が現れて慌てて席に着きます。
「一見の客に売ってもらえるのか?」尋ねる官兵衛。「お代さえ頂ければどなた様でも。」今井は答えます。官兵衛はまず鉄砲の実物を見せてもらう事にしました。
出された鉄砲を持って、使い方も教えてもらいました。
今井は、「尾張の織田信長様がぎょうさん買っていった。」と漏らします。直接買い付けに来たのは藤吉郎でした。藤吉郎は「今のこの堺の栄華が、戦の道具を売る事によって成り立っているのは、何とも因果なものですな。」と言っていたと言います。
今井は「お武家様にはお分かり頂けないでしょうが、これが堺の商人の戦なのでございます。」と言うのでした。
官兵衛は堺の町を歩き、鐘の音につられてある小屋に入ります。キリシタンの教会でした。
「デウスのもとではみな平等。我が身を思うがごとく隣人を大切に思うのです。隣人を許し、自分のように慈しむのです。そうすれば、この世から争いはなくなるでしょう。」
宣教師の教えを聞き入る官兵衛は、重隆と職隆の言葉を思い出し、仇討ちへの気持ちが解け、生きていた頃のおたつを思い、涙を流しました。
「世界は広い。とてつもなく広い。俺には分からない事ばかりだ。」武兵衛にそうつぶやく官兵衛でした。
次回、第4回「新しき門出」です。