2020年大河ドラマ「麒麟がくる」は、NHK総合にて日曜夜8時、BSプレミアムにて午後6時、BS4Kにて朝9時に放送中です。
前回、第7回「帰蝶の願い」は、美濃の守護代・斎藤利政(後の道三)(本木雅弘さん)の娘・帰蝶(川口春奈さん)が持ち込まれた縁談に抵抗し、主人公・明智十兵衛光秀(長谷川博己さん)の居る明智の荘にやってきたお話でした。
1548年、尾張の織田信秀(高橋克典さん)は、駿河の今川義元・美濃の斎藤利政・身内の織田彦五郎という3つの敵に囲まれていました。
今川から受けた矢傷が原因で体も弱っている今、3つの敵は手に負えない、と分析した信秀は、美濃の斎藤利政との同盟を思いついたのです。
早速、利政のもとに使者を送り、和睦の申し入れをした信秀。
信秀の申し出を受ける利政ですが、帰蝶と信秀の嫡男・信長(染谷将太さん)の縁談が同盟の条件としてついてきたのです。
帰蝶は縁談を嫌がり、明智の荘にやってきました。
帰蝶は、一度目の結婚で夫を父に殺された苦い経験から、何も分からずに嫁に行くことなどできません。
光秀に、「尾張になど嫁に出してはいけない」と皆を説得して欲しいと頼みます。
その一方で光秀は、利政から帰蝶を説得するようにと命令を受けるのです。
光秀が悩んでいると、利政の嫡男・高政(伊藤英明さん)の使いが来て呼ばれてしまいます。
行ってみると、そこには美濃の国衆が集まっていました。
皆、尾張との同盟に反対していたのです。
高政は光秀にも同盟反対を呼びかけ、明智の荘にいる帰蝶を稲葉山城へ戻してはいけない、と言うのです。
明智の荘に戻った光秀は、帰蝶と話をしようとするのですが、帰蝶は光秀の話を遮ります。
縁談の相手である織田信長は、尾張ではうつけと評判だけれども、この美濃ではどううつけなのか真偽がわからない、だから、光秀が帰蝶の目となって信長を見てきて欲しい、と懇願するのです。
光秀は帰蝶のお願いを聞き、織田信長を観察するために尾張の熱田に向かいました。
熱田は、大阪・堺に負けないほどの活気に満ち、賑わっていました。
港のある市は巨万の富を生む、国を豊かにするために、海を手に入れたい、という利政の願望が実感できた光秀。
熱田の市で、三河の農民・菊丸(岡村隆史さん)にであった光秀は、信長の情報を得ようと菊丸に聞いてみます。
すると、信長はこのところ供を連れて漁に出ているという情報が得られたのです。
信長が帰ってくるという明け方、光秀は港で船の帰りを待っていました。
ほどなくして若者が乗った1艘の小舟が港に戻ってきました。
光秀は、若者の自信に満ちた顔を見入っていました。
前回、第7回「帰蝶の願い」を見逃した方は、ぜひこちらをどうぞ。
それでは、第8回「同盟のゆくえ」のあらすじと感想です。
風変わりな信長
1548年、帰蝶に頼まれて信長を調べに来た光秀は、熱田の港で漁に出た信長の帰りを待っていました。
やがて到着した小舟には自信に満ちた若者の姿がありました。
獲ってきた魚を担いで港に降り立った信長は、手馴れた様子で魚を切り分け、一切れ1文で民に売っていました。
信長は、市で売ればもっと高値で売れるぞ、と声を掛けながら売り、民はそれを喜んで買い付けています。
光秀はその様子をじっと眺めていました。
じっと眺めるだけで魚を買おうとしない光秀を不思議に思いながら、信長は刀を持つと、どこかへ行ってしまいます。
光秀は信長を「奇妙な男」と感じていました。
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帰蝶の答え
その頃、明智の荘では帰蝶が幼い頃のことを駒に語っていました。
母・小見の方にもらったお菓子を当時仲の良かった光秀にやろうと大切に取っておいたのに、兄・高政に食べられてしまい悔しくて泣いてしまったと言うのです。
その後やってきた光秀に対し、「来るのが遅い」と八つ当たりをしてまた泣いてしまったと、当時を懐かしく振り返っていました。
駒は、今も光秀が好きなのですね、と帰蝶に問いかけました。
すると帰蝶も駒に同様に問いかけます。
駒は困った様子で頷き返しました。
すると帰蝶は困ることなどない、と話し始めました。
帰蝶は、光秀に自分の縁談相手の良し悪しを調べてきてほしいとお願いしました。
しかし、遠目からちょっと見ただけで人となりが分かるはずもありません。
本当に嫁に行かせたくなければ、尾張まで行って信長を調べるなどということをするはずがないと帰蝶は諦めたように遠くを見つめます。
だから、駒が困ることなど何一つないのだと、帰蝶は寂しげに笑ったのでした。
明智の荘の牧(石川さゆりさん)のもとに光秀が帰ってきたという知らせが入りました。
しかし、光秀の様子がいつもと違い、邸に入ろうとしないと報告を受けた牧は光秀の様子を見に行きました。
光秀は考え込む様子で土手に座っていました。
尾張に行って信長の様子を見てきたが、民に魚を売る奇妙な男、信長に帰蝶を託してもよいものかと、考え込んでいたのです。
悩む光秀の話を聞いた牧は、人は消えても山や畑は変わらずそこにある、そのことが大事なこと、変わらずあるものを守っていくことが残された者の努めかも知れない、「大事なのはこの国ぞ」と光秀を諭しました。
母の言葉を受け、光秀は帰蝶のいる部屋に行き報告をします。
「尾張は良いところか?」と尋ねる帰蝶に光秀は「海が美しいところだった」と答えます。
帰蝶は、美濃にはない海に思いを馳せて、「行って見てみるか」と呟きます。
「十兵衛の口から聞きたい、行ってみるべし、と」
帰蝶の言葉を聞いた光秀は、「行かれるがよろしいかと」と口にします。
「申したな、この帰蝶に」と言った帰蝶に、大きな声で「尾張にお行きなされませ」と光秀は平伏しました。
「十兵衛が申すのじゃ、是非もなかろう」と帰蝶は笑みを浮かべ、稲葉山城へと戻ったのでした。
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同盟への反発
帰蝶が縁談を承知したと聞いた利政は大喜び。
光秀を「でかした、上出来だ」と褒めちぎるのです。
光秀が見てきたという信長がどんな人物なのかと問いかけると、光秀は「風変わりな若殿であるが、うつけかどうかは判断できない」と返答しました。
利政にとって厄介なのは、信秀のみで、信長などはどうとでもなる、それよりもこの婚姻によって海に1歩も2歩も近づいた、とご満悦でした。
利政のもとから下がると、光秀はすぐに高政の家臣に囲まれてしまいました。
そして連れて行かれた先には、高政と国衆たちが集まっていたのです。
なぜ帰蝶を稲葉山城に返したのか、裏切ったのか、と問い詰める高政。
高政は何も答えない光秀に、「一緒に来い、従わねば斬る」と脅して光秀をある屋敷に連れて行きました。
行った先は美濃の守護・土岐頼芸(尾美としのりさん)の邸でした。
頼芸は、光秀に会ったことがあるが覚えているかと問いかけますが、光秀には全く覚えがありません。
光秀が2、3才の頃、父に連れられて鷹を見に来たことがあるのだと言う頼芸に対し、2つ3つでは覚えているはずがない、と反論する光秀。
鷹狩りはするのか、と問いかけられると、叔父・光安に連れられてやったことがあると答えます。
すると頼芸は、「光安…」と言葉を濁してしましました。
集まった国衆に「光安を好きな者はいるか」と問い掛けるのですが、手を挙げるものは誰もいません。
それは、光安が利政に媚びへつらっている男だから、と頼芸は言います。
しかし、光秀は違う、光安と違い土岐源氏と繋がりを持つことを誇りに思う気骨のある男だと高政から聞いている、と頼芸は言います。
なのに、なぜ利政の言いなりになっているのか、と頼芸は光秀を問い詰めます。
利政が信秀と手を組んでしまったら、信秀の天敵・今川義元と戦う事になってしまう、そんな大切なことを利政の腹一つで決めて良いものか、と言い放ち、国衆に同意を求めます。
頼芸は利政の横暴は許さない、と言い切りました。
今からでも遅くはない、帰蝶を稲葉山城から連れ出し、同盟を潰すことが光秀の役目だと高政たちは光秀に言い募るのです。
「お館様は熱田の市はご覧になったことがありますか?」光秀は静かに問いかけます。
光秀は、あのような賑やかで大きな市はこの美濃では見たことがない、と絶賛しました。
熱田の港にはたくさんの船が訪れて、諸国の産物を熱田の市で売っている、また、尾張で仕入れた品物を他国に運んでいる、日々それを繰り返すことで尾張は豊かになっている。
そんな国と自分たちは戦っていたのだ、と光秀は言います。
しかし、尾張と同盟を結べば熱田の市に美濃の特産物を置くことができ、交易が生まれる、美濃も熱田のおかげで豊かになれる、同盟のおかげで戦わずしてそれができるのであれば、それはそれでいいのではないか、今川が尾張の地を手に入れたい理由がよくわかる、しかし、攻めあぐねている、自分たちはそれを戦もせずに手に入れられるかもしれない、この機を逃すのは愚かである、と光秀は主張します。
それに反論したのは高政でした。
尾張の守護は斯波氏であるのに、守護代でもない斯波氏の一家臣である織田信秀となぜ同盟を結ぶ必要があるのか、土岐家とともに美濃を守る立場であるはずなのに、勝手に同盟を結ぶなどあってはならないことだ、と高政は言い募るのですが、「それをやろうとしているのはそなたの父だ」と頼芸に言われて高政は口をつぐむしかありません。
「疲れたから寝る」と高政の話を遮る頼芸にさらに言い募るのですが、頼芸はそれ以上高政の話を聞く気はない様子で立ち上がりました。
付き従う国衆の稲葉良通(村田雄浩さん)は、頼芸に歯向かった光秀の始末を聞くのですが、返事は放っておけ、というものでした。
尾張との同盟は許しがたいものではありますが、帰蝶の気性を考えればこの婚姻が長続きするはずがないと頼芸は皮肉るのでした。
光秀は高政の意に添えなかったことを謝るのですが、高政の怒りは解けず光秀はただ下がるしかありませんでした。
その夜、高政は、母・深芳野(南果歩さん)のところで愚痴をこぼしていました。
母は、頼芸はその日によって機嫌が変わる人だから気にすることはないと慰めます。
尾張との和議がどれほど道に外れたものなのか、正そうとしたのに国衆の前で話を遮られ聞いてもらえなかったのでは自分の立場がないと、憤りました。
母は、頼芸は利政が怖いから、表立って歯向かえば殺されるからできないのだ、と高政を宥めるのですが、高政の怒りは増すばかりです。
あんな下劣な男、と父・利政を貶める言葉を吐く高政に、さすがの深芳野も自分の父になんてことを、と怒りを顕にします。
しかし高政は、利政は自分の父などではない、本当は自分の父は頼芸なのだろうと、母を問い詰めるのです。
頼芸も自分の子のように思っていると言ってくれている、と。
母は諦めたように、そう思いたければ思うがいい、と言い放ちました。
しかし、それを盾として利政に立ち向かうのならば止めろ、と高政を諌めます。
いずれ高政が家督を継ぐのだから、今はおとなしくしていろ、と母は高政に言い聞かせるのでした。
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駒の旅立ち
光秀が邸に戻ると、家の中はいつになく賑やかな様子です。
駒が明日京に帰るため、近所の人々が別れを惜しみ宴会をしているというのです。
光秀がその部屋に行ってみるとそこでは駒が美しく舞っていました。
それを眺める光秀、駒も光秀を見つめながら優雅に舞い踊りました。
ひと段落すると、駒は明智の邸を目に焼き付けるように屋敷の中を見て回っていました。
光秀と2人きりになると、駒は牧から貰ったという扇子を光秀に見せます。
それには明智の紋である桔梗が描かれていました。
光秀は、これは父の形見の一つ、母の感謝の気持ちだろうと駒に話します。
駒は、「一生の宝にする」と大事そうに胸に抱えました。
翌日、京に帰る駒を見送るといい、駒と一緒に街道を歩く光秀。
1人で帰れる、長くいると別れが辛くなる、と駒は断るのですが、峠道まで、と光秀は言い譲りません。
やがて峠道にたどり着きました。
駒は光秀に声をかけます。
ハッと立ち止まる光秀に、本当は帰蝶を見送りたかったのではないか、と駒は問いかけました。
帰蝶が明智の荘から稲葉山城に戻る日、光秀は帰蝶を見送らず、書物の整理をしていました。
本当は駒よりも帰蝶を見送りたかったのではないか、本当は手放したくなかったのではないか、遠くへ行かせたくなかったのではないか、大好きだったから、だから、見送らなかったのではないか。
ここは駒と光秀の2人だけ、誰も聞いてはいない、だから本当の気持ちを言って欲しい、本当は帰蝶を想っていたのでしょう、と駒は光秀を促しました。
躊躇いながら光秀は、「そうやもしれん」と呟きました。
その言葉を聞いた駒は、ショックを受けるのですが、それを聞きたかった、と泣きそうになりながらも笑顔を見せました。
「やっぱりそうですものね」と自分を納得させるように呟くと、光秀に笑いかけ「ここでお別れいたします、ありがとうございました」と感謝の言葉を述べ、頭を深々と下げると振り返りもせずに京へと戻って行きました。
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祝言
1549年2月、帰蝶は信長に嫁ぐために尾張へと旅立って行きました。
和睦が整ってから僅か2か月という慌ただしい嫁入りでした。
駿河の今川義元(片岡愛之助さん)の館には三河岡崎城城主の松平広忠(浅利陽介さん)がいました。
松平広忠は、信秀のところに人質として囚われていた竹千代の父です。
義元から尾張と美濃の同盟を聞いた広忠は、三河の守りを固めると主張するのですが、義元や太原雪斎(伊吹吾郎さん)から守るのではなく、織田を攻める時だと炊きつけられ、織田に攻め込む決意を固めます。
「松平家の汚辱を晴らすは今ぞ」と義元に言われると、広忠は力強く応えます。
「織田と戦じゃ」と義元は叫び、戦の準備を始めたのでした。
尾張の那古野城にて、信長と帰蝶の婚姻の儀が行われるはずでした。
しかし、当の信長が行方不明となり、側近らが必死で探し回っています。
1人取り残された帰蝶のもとに、信長の守役である平手政秀(上杉祥三さん)が弁解にやってきました。
信長はこの日を失念してしまったのだろうか、と問いかける帰蝶に冷や汗をかきながら、もう少し待ってください、と謝り慌ただしく出て行く平手政秀。
また取り残されてしまった帰蝶は、複雑な表情を見せながらも、面白そうににやりと笑うのでした。
その頃、明智の荘では、光秀が一人縁側でお手玉をしていました。
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次回、第9回「信長の失敗」
祝言をすっぽかされた帰蝶ですが、信長の率直さや領民を思いやる姿に興味を持つようになります。
父・信秀や母・土田御前に愛されない信長の孤独を知った帰蝶は、信長に寄り添い仲を深めていきました。
一方、美濃の光秀も後の正妻となる煕子(木村文乃さん)と再会することになります。
今回の見所は、帰蝶の儚い思いと光秀の葛藤、駒の届かない思い、3人の複雑な心情が見所だったのかな、と思います。
お互いに思っていながらも立場ゆえに口にできない気持ちを2人が昇華するところが切なくなりました。
川口春奈さん演じる帰蝶の諦めたような儚い微笑みがとても美しかったです。
そして、わかっていながらも光秀の本音を聞いてしまった門脇麦さん演じる駒の強がりが痛ましかったですね。
身分違いだから、とわかっていながらも素直に光秀への好意を表す駒のいじらしさに好感を持っていたのですが、光秀の気持ちを知って傷つきながらも笑顔を見せるところが切なくて、胸が締め付けられました。
振り返らずに、しっかりと歩く背中に心打たれました。
男たちの思惑にもドキドキさせられました。
今は大人しくしている土岐頼芸の腹の中、付き従う国衆の思惑、頼芸に踊らされている高政、国を豊かにしたいという利政の思惑が高政や国衆に伝わらないのがもどかしいですね。
松平広忠を使って、織田を攻めようとする今川の腹黒さなども不気味で、ハラハラしました。
次回、第8回「信長の失敗」では、孤独な信長と帰蝶が寄り添う場面が見られます。
政治の駒として人質として輿入れした帰蝶ですが、幸せになって欲しいと切実に願ってしまいますね。
光秀にも出会いがあります。
後にどん底に陥る光秀を支えるできた妻の登場です。
2人の物語も楽しみですね。