2020年大河ドラマ「麒麟がくる」は、NHK総合にて日曜夜8時、BSプレミアムにて午後6時、BS4Kにて朝9時に放送中です。
前回のあらすじ
比叡山焼き討ちにおいて、一番手柄の褒美として、近江志賀2万石を織田信長(染谷将太さん)から拝領された明智十兵衛光秀(長谷川博己さん)は、近江坂本に新たな城を作り移り住む予定でした。
しかし、出世の目覚しい光秀は将軍・足利義昭(滝藤賢一さん)から疎まれ、人質として妻子を京に残して行けと言われていたのです。
信長からの書状を木下藤吉郎(佐々木蔵之介さん)から受け取った光秀は、信長が義昭より、正親町天皇(坂東玉三郎さん)に傾倒し、幕府を見限ろうとしていることに疑問を持ちます。
信長に心酔している藤吉郎も100年前から腐っている幕府はそろそろ見切り時ではないかと光秀に囁いたのです。
その頃、二条城政所において、摂津晴門(片岡鶴太郎さん)は、信長の信頼の厚い光秀を排除しようと画策していました。
将軍・義昭は、常に孤独を抱えていました。
信頼できる家臣の数は少なく、上洛を支えてくれた信長とは不仲。
そんな孤独を慰めてくれる筈の駒(門脇麦さん)が、今日は苛々と不機嫌な様子を見せていたため、義昭も苛立ち、駒に不満があるなら言ってみろと促しました。
すると駒は、望月東庵(堺正章さん)の治療院で、光秀が義昭から嫌がらせを受けていると聞いたと言い、なぜ嫌がらせをするのだと問い詰めたのです。
すると義昭は、幕府は摂津が取り仕切っておりその摂津が光秀を排除しようとしていれば頷くしかない、と叫んだのです。
駒は、義昭の深い孤独を知り、泣き崩れる義昭に何も言えませんでした。
光秀の身に危険が迫っていると知った駒は、伊呂波太夫(尾野真千子さん)に助けを求めます。
細川藤孝(眞島秀和さん)は、伊呂波太夫の知らせを受け本国寺入り、招かれていた光秀に危険を知らせました。
光秀は藤孝の情報に感謝しつつ、奥の部屋にいるという義昭目指して廊下を進みました。
廊下には摂津配下の兵が隠れ、光秀を狙っています。
敵兵の攻撃を避け、応戦しながら光秀は必死に走り、脚に負傷しながら、義昭の居室に辿り着いたのです。
摂津に襲われたはずの光秀が目の前に現れたことに義昭は驚きました。
人払いされた部屋に2人きりになると、光秀は3年前、義昭と本国寺で襲われ穴蔵に隠れた事を話しだしました。
あの時、都をかつての美しい都に戻したいという気持ちは2人とも同じだったと光秀は言います。
しかし義昭は、3年もの月日を経て万事古くなってきた、と嘆いたのです。
光秀は、今こそ古きものを捨て去る機会だと義昭を説得します。
摂津たち、幕府の古き悪しきものを捨てたら、信長の勝手気ままな振る舞いを黙認するしかない、と激高する義昭を光秀は自分がそうはさせない、義昭を守る、と宣言したのです。
その言葉を聞いた義昭は覚悟を決め、現れた三淵藤英(谷原章介さん)に摂津を捕らえさせたのでした。
しかし義昭は光秀に「信長と儂は性が合わぬ」と憎々しげに告げたのです。
光秀が必死に埋めようとしても、信長と義昭の溝は深まる一方でした。
暗殺計画を藤孝に伝えてくれた伊呂波太夫に感謝を伝えると、それは駒に頼まれたからだと太夫は答えます。
光秀は、帝を崇拝している太夫に帝とはどんなお方か、と尋ねてみました。
武士は将軍を敬うべきなのに、信長はそれを帝にしている、わからなくはないがやはりわからないから太夫に聞いてみた、という光秀に、自分よりも帝をよく知る人物として、三条西実澄(石橋蓮司さん)を紹介したのです。
光秀の博識ぶりに感心し、気に入った実澄は、参内した折に帝から光秀の名前が出たことに驚きます。
帝は信長から光秀のことを聞いており、興味を持っていました。
信頼する実澄が光秀のことを気に入ったようなので、帝は折を見て連れてくるようにと実澄に申し渡したのでした。
前回、第35回「義昭、迷いの中で」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは第36回「訣別」のあらすじと感想です。
帝とは
元亀2年(1572年)冬、光秀は三条西実澄の供として御所に向かうことになりました。
ご尊顔を拝することは無理でも、僅かにお声だけなら拝聴できるかもしれない、と言われても、光秀は供として連れて行って欲しいと願い出ました。
内裏につくと、光秀は廊下の端で控えているようにと命じられます。
しばらくすると、実澄の朗々とした和歌を詠む声が聞こえてきました。
「水を渡り 復た水を渡り 花を看 還た花を看る 春風 江上の路 覚えず君が 家に到る」
自然の風景を見ている時は無心に時を過ごすというこの歌を詠み、自身もそうありたいと願っていると帝に話します。
そして和歌にかけて、庭に珍しい鳥がいると言って、光秀が内裏に来ていることを告げたのです。
それを聞いた帝は光秀に当てて書付を渡しました。
用人から頂いたその書付には、「朕はこの詩の如く日々生きたいと思う」と書かれていました。
光秀は廊下から声を張り上げました。
私もこのように生きたいが迷いながらの道でございます、と叫ぶと、「目指すはいずこじゃ」と帝の声が返ってきました。
「穏やかな世を」と光秀が答えると、
「その道は遠い、朕も迷う、なれど迷わずに歩もうではないか、明智十兵衛、その名を胸に留めおくぞよ」
という帝の言葉が返ってきたのでした。
対面は叶いませんでしたが、帝との対話を終え、光秀は感動し、夢見心地で家に帰りつきました。
織田家家臣の思い
家に戻ると、近江から柴田勝家(安藤政信さん)・佐久間信盛(金子ノブアキさん)・木下藤吉郎らが訪ねてきていました。
今、大和では松永久秀と筒井順慶が領土をめぐってあちこちで小競り合いを繰り返し、その範囲は河内の国にまで広がっています。
光秀は信長からの文で出陣の用意をするようにと命じられていました。
信長は義昭の意向を汲んで、松永を討とうとしていますが、本心では乗り気ではないと柴田は言います。
義昭は、兄の義輝は松永に殺されたと思い込んでいるので松永を討てときつく催促をしているといいます。
柴田も義昭の言動に眉をひそめ、始末に負えない、と評していました。
将軍に対しての言い回しとして言い過ぎでは、と佐久間が窘めたのですが、したたかに酔っていた藤吉郎は柴田の言葉を肯定します。
松永と筒井の戦に信長が兵を出せば、近江や美濃は手薄になってしまいます。
その隙を突いて、義昭は信長を朝倉に攻めさせる気なのではないかと言い募るのです。
反論する柴田と佐久間に甘い、と言い、柴田様も佐久間様も本心で松永を討ちたいと思いますか?と問い掛けると、明日近江に戻って浅井を討つ算段じゃ、と帰っていったのでした。
帰り際、佐久間は光秀に叡山の戦において、信長の命に逆らい女子供を逃がしたことを信長に正直に話したことを聞いたと話します。
今度の戦についても、光秀の思うところを信長に直言してもらいたい、と言うと佐久間は帰って行きました。
義昭の変貌
光秀が二条城を訪れると、義昭は剣術の稽古をしていると言われます。
三淵は、義昭は剣豪将軍と名高かった兄・義輝を気にして、最近は剣術に精を出していると言います。
摂津を追放したことで、将軍としての自身の役割を自覚したのでは、と義昭の変化を喜んでいるようでした。
義昭は光秀の姿を認めると、手合わせを所望してきました。
固辞する光秀ですが、義昭から何度も言われ、三淵にも促され渋々義昭の目前に向かい合いました。
光秀の放つ気に圧倒されながら、義昭は光秀に木刀を振るいます。
光秀は義昭の剣を軽々と避けてみせます。
ムキになった義昭は鬼のような形相で光秀に挑んできたのです。
光秀は義昭の必死の形相を見て、かつて穏やかで優しく、戦を誰よりも嫌っていた義昭のことを思い出していました。
義昭の振るった木刀を軽々と振り払った光秀は、倒れこむ義昭にこれまでにしようと促します。
まだ納得しない義昭ですが、三淵にも諭され、ようやく剣を引いいたのです。
義昭の変貌に光秀は言い知れない不安を感じていました。
坂本へ
夜、邸で煕子(木村文乃さん)と語らっていた光秀は、御所で帝と言葉を交わしたことを話しました。
そして、信長が帝を敬う気持ちが少しわかったと話したのです。
我ら武士は将軍の名のもとに集まり世を平らかにすべき、そう思っていたという光秀。
しかし信長はもはやそうは思っていないのではと、感じていました。
左馬助から坂本城がだいぶ出来上がってきたと聞いた煕子は光秀に報告します。
すると光秀は、城ができたら一番に煕子に見せたいと、煕子を坂本に誘ったのです。
数日後、光秀に連れられ坂本城の天守に登った煕子はその見事さに感動します。
まるで湖の上に建っているかのような城に喜びます。
光秀も湖の上で子供たちに古き歌を教えようと夢を語り合います。
光秀は煕子に向き合い、必ず皆をここへ呼び寄せる、と誓います。
人質として妻子を京に残せという、いかに公方様が何と言ってもこの儀だけは飲めん、と光秀は義昭に怒りを覚えます。
そんな光秀に煕子は、この近江は美濃と京の丁度中程にあると言い、光秀はどちらに心を惹かれているのか、と尋ねました。
光秀は虚をつかれたような顔をして迷い、「どちらも大事なのだ、どちらも。ただ、今のままでは済まぬやも知れぬ」と不安を口にしました。
信長の思い
元亀3年(1572年)4月、幕府と織田連合軍は河内に出陣を決めました。
松永久秀と松永に急接近してきた三好勢を倒す戦でした。
しかし信長はこの戦に参加せず、結局松永を取り逃がして戦を終えました。
甲斐の武田信玄は最近信長の動きが鈍いことに気づき、幕府と足並みの乱れを感じていました。
義昭からも上洛せよと矢のような催促を受けているし、信長を討つなら今、と上洛を決意しました。
信玄がまず狙ったのは遠江、浜松城の徳川家康を討つことでした。
光秀は、信長の居城・岐阜城に呼ばれていました。
信長は光秀が坂本にいると便利、と喜びます。呼べば一日でやってこれる距離だからです。
信長は、3日前夢を見た、と話します。
甲斐から大入道が上洛し、信長を捉えて義昭の前に突き出した、というのです。
義昭は事も無げに耳と鼻を削いで五条の橋に晒せ、と言い放ったという夢を見たというのです。
信長は、最近義昭に冷たく当たりすぎたのではと反省していました。
それというのも、信長が義昭に当てて出した17条の意見書が義昭に批判的でかなり厳しい内容だったからです。
信長は、義昭の心を慰めるため鵠を用意し、義昭に贈ろうと考えていました。
しかし光秀は、気を使うなら他の大名にも気を使うべきと言い、三河の徳川家康に援軍を送ってはどうかと進言します。
家康は信長を慕い、これまで信長を助けてきました。
今、武田に攻め込まれて苦戦している家康に3千、いや2千でもいいから送って欲しい、と懇願するのですが、今は自分の方の戦もギリギリで援軍を送る余裕はないと一蹴されてしまいました。
信長の戦いには幕府がいるではないか、という光秀に対し、信長は夢で見たように義昭は自分を疎ましく思っているため、当てにはできない、と言い募ります。
義昭は信長に内緒で武田や朝倉に上洛を促している、それは信長を討つためではないのか、と信長は幕府を信用していませんでした。
光秀は幕府側の人間として、そんなことは絶対にさせない、そのような動きがあれば、自分が絶対に食い止める、と信長に訴えます。
信長は、「以前、帰蝶が言っていた、十兵衛はどこまでも十兵衛だと」苦笑したのでした。
そこに、織田の援軍と徳川軍が三方ヶ原で大敗を喫したとの知らせが入ったのです。
訣別
芳仁丸の作業中の駒のもとに、義昭からの文が届きました。
それには、これまで治療院を作るために駒が義昭に渡した金を全て鉄砲に使ってもいいかという文でした。
駒は戸惑いを見せました。
光秀が信長から預かった鵠を義昭に届けると、「この鵠は来るのが遅かった」と光秀に告げます。
義昭は、この鵠は受け取るわけには行かない、信長との戦を覚悟した、と光秀に言い放ちました。
信長が義昭に送った17条の意見書は、罵詈雑言ばかり、もはや我慢できない、と信長との訣別を決めたのです。
武田は京へ向かってきています。
浅井朝倉は武田に呼応して信長を挟み撃ちにするといいます。
そして、松永久秀も信長の敵になりました。
信長包囲網の完成です。
松永は義昭が信長の敵になるように仕向けたのではないかと光秀は意見します。
三淵は、信長が幕府を蔑ろにし、帝にばかり取り入っていることに立腹していました。
そして、信長から離れ、我らに呼応し戦に馳せ参じよ、と言います。
光秀はもう一度再考して欲しいと懇願するのですが、
「決めたのじゃ、儂は信玄と共に戦う、信長から離れよ、儂のためにそうしてくれ」
と言い放ったのです。
光秀は溢れる涙を堪えきれず、嗚咽を漏らしながら「それはできません」と叫ぶと、踵を返しました。
三淵は光秀を引きとめようとするのですが、義昭は「追うな」と止め、「十兵衛は籠から出た鳥じゃ…。また戻ってくる」と呟いたのでした。
元亀4年(1573年)3月、足利義昭は諸将を集め、織田信長に向けて兵を挙げました。
次回、第37回「信長公と蘭奢待」
もうすぐ上洛、というところで、武田軍の動きが止まりました。
義昭は、信玄からの援軍が得られず孤立してしまいます。
菊丸から信玄が死亡したことを聞いた光秀は、信長に報告。
信長はこの機を逃さずに浅井朝倉に攻め込みます。
最後に
今回は、義昭の変貌に驚いた回でした。
滝藤賢一さん演じる足利義昭は、戦嫌いで貧しき民のことを誰よりも案じ、世を平らかにしようと誰よりも強く感じていた優しい人でした。
光秀と打ち合っていた時の回想シーンでもその優しげな表情は印象的でしたね。
それが時を経る毎に表情がキツくなり荒々しさが前面に出てきていました。
その変化の大きさに驚きました。
幕臣としての光秀の迷いも見応えがありました。
武士として将軍を支える立場にいるものの、帝の威光に触れて信長が帝を敬う気持ちも理解しました。
そして、義昭から人質として妻子を京に置くように言われ、義昭への怒りが募るようになった光秀。
穏やかで優しかった義昭から荒々しい義昭に変化したことによる光秀の戸惑いや悲しみも伝わってきました。
義昭との訣別は胸にきましたね。
あれだけ武士は将軍を支えるもの、と強く思っていたはずの光秀の決断。
どれほどの思いがあったのでしょうね。
さて、次回はとうとう宿敵・浅井、朝倉を打倒します。
信長包囲網を掻い潜り、信長の反撃が始まります。
三方ヶ原の戦いが、使者のお知らせだけで終わってしまったのが少し残念ですが、信長も光秀も参加してない戦いだから、仕方ないですかね。
次回は一条谷の戦いですが、どんな合戦を見せてくれるのでしょうか。
次回、第37回「信長公と蘭奢待」も目が離せませんね。