「風林火山」は、2007年1月7日から12月16日まで放送された大河ドラマです。
2017年、4月からNHK BSプレミアム日曜昼12時から、大河ドラマアンコール枠で再放送されています。
2017年7月16日に放送されたのは、第16回「運命の出会い」です。
前回は、諏訪攻めで山本勘助(内野聖陽さん)の策がことごとく当たり、見事合戦をせずに諏訪頼重(小日向文世さん)を、武田晴信(市川猿之助(市川亀治郎)さん)のもとに下らせることに成功しました。
前回の第15回「諏訪攻め」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
今回は、その戦後処理を行います。そこでも勘助の思惑通りになるのでしょうか?
それでは、第16回「運命の出会い」、あらすじと感想です。
高遠への処遇
頼重の妻、禰々(桜井幸子さん)は、甲斐に発つ前、由布姫(柴本幸さん)に「兄を信じておくれ。」と言い、お守りを渡します。
天文11年(1542)7月5日、諏訪頼重と禰々、嫡男の寅王丸は、甲府へと護送されました。由布姫は、静かに涙を流しながら耐えます。
禰々と寅王丸は、頼重と引き離され、躑躅ヶ崎館に連れて行かれます。大井夫人(風吹ジュンさん)は娘との再会を喜びます。晴信の妻、三条夫人(池脇千鶴さん)も喜んで迎えます。
禰々は、頼重と離されたことを不安に思っていました。大井夫人は寅王丸のことだけを考えるよう、諭します。
頼重は一人、甲斐の東光寺で待たされました。
晴信は、高遠頼継(上杉祥三さん)の本陣に赴き、戦終結の和議を結んでいました。諏訪の西を高遠、東を武田の土地とすることを話していました。
高遠は、それだけでは約束と違うと言います。
それは、以前勘助が、調略に行った時に提案していた、諏訪惣領家、大祝の職を高遠が司り、諏訪の地を高遠が治めるというものでした。
晴信は、「武田の家臣として土地を請うならそれでもいい。既に惣領を司る諏訪頼重殿は武田に従っていて、上原城も我らが押さえている。
これより諏訪の地を侵すものは武田の敵になると心得よ!」と高遠に言い放ちます。
高遠連峰軒(木津誠之さん)は、「高遠、いや諏訪を謀略により掠め取られた!」と気づきます。
板垣信方(千葉真一さん)は、「先に約定を違えたのはどちらであったか?」と話に割って入ると、高遠は笑いながら、「人は騙せても諏訪明神にはどんな神慮が下されるのか?」と脅すと、晴信は「心配なく。武田も昔から諏訪明神に帰依している。」ときっぱり言うのでした。
自分だって騙すようなことをしておいて、高遠はいざとなったら神様の名前を口にして、脅すなんて、よくある手口ですよね。神様を出されると、何やら恐ろしくなって何も出来なくなってしまいます。
晴信と頼重の会見
晴信は諏訪領の半分を手にし、上原城にわずかな兵を残して甲府へ帰りました。
頼重、禰々夫婦と対面します。禰々と寅王丸の無事を喜ぶ晴信に、頼重は禰々に政の話を聞かせたくないと、人払いを晴信に頼みます。願い通り禰々を退席させた後、会見を始めます。
頼重は隣の部屋で刀を持って待機する、勘助の殺気を感じていました。
頼重は、「この戦は高遠が謀略して始めたもの。武田に高遠を討ってもらいたい。そうすればどんな和議も受け入れる。」と強気に晴信に申し入れます。しかし晴信は、「その恨みはいつか寅王丸が晴らしてくれましょう。
寅王丸が元服して、高遠へ兵を向ける時には、諏訪へ援軍を遣わしましょう。武田と諏訪の誼は寅王丸をおいて他にはござらぬ!」と頼重の主張を完全に拒否します。
怒る頼重に、「そもそも我らとの誼をないがしろにし、上杉と和睦したのはどなたでござろう!」と凄い剣幕で晴信は怒鳴りつけます。
それを言われては、頼重に返す言葉もなく、「寅王丸のこと、その言葉に偽りはござらぬであろうのう。」と頭を下げながら晴信に問います。「神明に誓って…」と言う晴信に頼重は覚悟を決めます。
その晩、宴が開かれ晴信夫婦、頼重夫婦は揃って出席します。頼重と禰々は並んで目の前の能を見ながら、視線を落とさず手だけそっと握り合うのでした。
勘助はその様子を見つめます。切なさを感じながらも夫婦の絆の深さを知る一場面でした。
頼重自害
あくる朝、勘助は、装束の準備が整ったと頼重を迎えに来ます。「このわしに腹を切れと?晴信殿の意向であるか?」と頼重は尋ねます。勘助は「御意。」と答えます。
そのような大事なことを伝える役目をする勘助に、頼重は、晴信からよほど信用されている者だと思い、近くに寄るよう指示します。
そこで自害する前に、頼重は腹を割って話そうと勘助に言います。そして先に「武田を侮って佐久の地を取ろうとした。」と話し、さらに「高遠を調略したのは武田か?」と勘助に尋ねます。勘助は「さようにございます。」と答えます。
頼重は少し考えた後、「わしはこれまで、領主たる者、領民に慈悲深く、戦においては強くなければならないと思ってきた。それも、このように国を滅ぼしてしまえば、わしの思慮が足りなかったと言わざるをえまい。主君たるものは、最も小賢しくなければならぬ事を知った。しかし、わしは生き長らえたとしても寅王丸に小賢しくあれとは教えてやれない。教えたくもない!その事をそちから寅王丸に教えてやって欲しい。わしのような目に遭わせたくない。」
と勘助に頼みます。そしてくれぐれも寅王丸のことを頼むと懇願するのでした。
禰々に「武田を恨むことがないよう、寅王丸にもそれを伝えて、いずれは立派な諏訪の当主に寅王丸を育てて欲しい。寅王丸の行く末だけを信じ、いたずらな行いは慎むべし。いかなる庇護を受けようとも恥じ入ることなく、寅王丸を救ってくれ。由布姫は大祝、頼高に頼む。諏訪の地に再び神の恵みがあらんことを祈る。」
と、頼重は遺書を残し、自害しました。
桑原城を攻める
諏訪の桑原城に、頼重自害の知らせが来ます。大祝の頼高も自害したことも伝えられます。頼重は由布姫を頼高に託そうとしていたので、それも叶わぬことになりました。
由布姫には頼重の辞世の句が渡されます。
「おのずから 枯れ果てにけり 草の葉の 主あらばこそ 又も結ばめ」
もとから頼重は死を覚悟で、甲斐へ行ったのだと家臣は由布姫に言います。由布姫は、これは武田家の偽りだと泣きながら、「父は武田に討たれた。討ち死にだ。」と言い、家臣皆に辞世の句を見せて、「父上の無念が乗り移っているのが、見えないか?」と父の死を怒りのなか、受け止めるのでした。
頼重の死後、禰々は泣きはらし、食事も取りません。人質として嫌々嫁いだと思っていた晴信は、頼重と禰々が仲睦まじかったことを知り、驚くのでした。
心を痛める晴信に、「先に裏切ったのは、諏訪頼重殿にございます。勝たねば、死あるのみ。」と板垣は慰めました。
桑原城にいる諏訪の残党のことを「後に憂いを残すな。」と晴信は板垣に任せました。
板垣と勘助で桑原城へ諏訪家の討伐に向かいました。勘助は、後に憂いを残さない為、由布姫を切るつもりでいます。
河原村伝兵衛(有薗芳記さん)、葛笠太吉(有馬自由さん)も桑原城攻めに参加しています。桑原城の中には、平蔵(佐藤隆太さん)が諏訪兵としていました。勘助に切りかかってきたところを、伝兵衛と太吉は確保しました。
桑原城では女性たちは自害し、果てています。由布姫は侍女に短刀を渡され、自刃を促されていました。
由布姫を探していた勘助と板垣は、由布姫を切らなければいけないとわかっているが、武田が切ったとなれば、災いのもとなので、由布姫が自刃することを望んでいました。
由布姫がいる部屋に踏み込んだものの、二人は近づかず見守っていました。勘助は由布姫が自刃するつもりなら、とっくに果てているはずと追い込みます。
由布姫は「父も大祝も皆死んでいく。せめて私だけは生きていたい。どうせ死ぬなら討たれて死にたい。自ら死を選ぶのは嫌じゃ!」と短刀を勘助に振りかざし、何度も何度も勘助にかかってきます。勘助は腕を押さえて止めます。
「私は、もはや死ぬことは恐ろしくない!生きている方が恐ろしい。この世の方がずっと恐ろしい。さればこそ、私は見たいのです!生きてこの世を見てみたい…。この城や諏訪の湖がどうなってゆくのか。この目で見たい。生き地獄だからこそ、それを見たいのじゃ。死ぬのは嫌!どんなに辛くとも生きていたい!」
由布姫は震えながらも、しっかりとした口調で勘助に言うと、崩れるように倒れこみます。
倒れた由布姫の胸から、禰々が渡したお守りが出てきました。
それを見た勘助は、同じようにお守りを胸に下げていた恋人のミツ(貫地谷しほりさん)と、由布姫を重ね合わせ、ミツが「死にたくない。生きてこの世の恐ろしいものでも戦も見たい。」と言っていた言葉を思い出しました。
勘助、由布姫を幽閉
勘助は、由布姫の手を引っ張り、「姫をお連れ申す!」と言って桑原城から連れ去ります。そして諏訪上社に幽閉するのでした。
勘助が由布姫を殺さなかったことを晴信は驚きます。板垣は、「まれにみるご気性の激しい姫君ございます。いずれ始末つけないといけません。」と晴信に進言しました。
勘助は由布姫のもとを訪れます。怯える由布姫に、「お逃げ下され!」と言いました。
今回はここまで。
次回は、由布姫の処遇を巡って大波乱の様子です。
武田家は大いに揺れ動きます。
次回、第17回「姫の涙」です。