毎週日曜日20時から、NHK総合他にて始まりました大河ドラマ「西郷どん」。
2018年1月7日、第1回「薩摩のやっせんぼ」が放送されました。
東京上野の西郷隆盛像が建てられた、明治31年(1898)12月18日、西郷隆盛(鈴木亮平さん)の妻、糸(黒木華さん)、弟従道(錦戸亮さん)、従道の娘の桜子(西郷真悠子さん)が、その除幕式に参列している場面から始まりました。
桜子が幕を引いて現れた隆盛像に向かって糸は「うちの旦那さぁは、こげな人じゃなか。ちご。」と呟き、止める従道の言う事を聞かず立ち上がり、大きな声でもう一度「ちご。うちの旦那さぁは、こげな人じゃ、ありもはん!」と叫ぶのでした。
次に犬と一緒に野山を駆け巡り、狩りをする隆盛が現れ、銃を撃った後、右肩の傷跡が大きく映し出されました。
初回は、ドラマの人物紹介と西郷の子供時代を中心に描かれました。西郷が連れていた犬は、実際は薩摩犬だったらしいのですが、今では希少なので、薩摩犬の毛色と同じ「黒胡麻」柄のある四国犬が選ばれたそうです。
西郷の右肩にある傷跡のエピソードも描かれます。
それでは、第1回「薩摩のやっせんぼ」のネタバレとあらすじと感想です。
下鍛冶屋町郷中の小吉
後の西郷隆盛となる、小吉(渡邉蒼さん)は、薩摩の鶴丸城下の下鍛冶屋町で生まれ育ちました。西郷の家の隣には、後の大久保利通となる、正助(石川樹さん)の一家が暮らしていました。ドラマは天保11年(1840)、西郷の少年時代から描きます。
薩摩では、町を区割りした郷中ごとの教育が行われていました。今でいう町内会のようなもので、郷中の年長者が年少者を、文武に渡って厳しく指導しました。郷中の教育は男子に限り、受けることが出来ました。
ドラマでも、西郷の家に集まる郷中の男の子たちが相撲を取ったり、家の中で勉強を小吉が小さい子たちに教えていたりと言った場面が映される一方で、小さな女の子はその脇で母、満佐(松坂慶子さん)のもとで、妹たちは忙しく動き回って家事をしていました。
そんななか、お腹が空いた小吉たちは川に鰻を取りに行ったところ、高麗町郷中の子供たちが先に来ていて勝手に鰻を取っていました。
縄張り争いで川の中で喧嘩を始める子供たち。小吉は喧嘩の途中で、勝負を鰻取り合戦に切り替えます。
鰻を捕まえるのが得意な小吉は、鰻を捕まえて川岸で焼いて食べ始めました。町の人たちも橋の上から、川で喧嘩する子供たちを心配そうに見ていましたが、一緒になって鰻を取り始めた事が分かると去っていきます。そのなかに後に西郷の三番目の妻となる、岩山糸(渡邉このみさん)も小吉たちを見ていました。
小吉たちが鰻を食べる様子を、羨ましそうに見つめる高麗町郷中の有村俊斎(池田優斗さん)が、腹立ち紛れに、「磯の御殿に茶坊主として上がっているが、茶会の時、山盛りの菓子が目の前を通り過ぎる。」と食べた事を自慢します。
小吉は、肝試しに下鍛冶屋町と高麗町郷中で御殿に潜り込んで、先に菓子を取れた方が勝ちだとする勝負を持ち掛けます。大山格之助(犬飼直紀さん)が「恐ろしい天狗が住んでいると聞いた。」と躊躇しますが、小吉は「よか肝試しじゃ。」と押し切るのでした。
次の日、子供たちは郷中ごとに船を出して、藩主の別邸である磯の御殿に到着します。磯の御殿の岸辺に、見覚えのない男の格好をした子供が立っていて、小吉たちを急かします。
小吉が名を尋ねると「い、と」と言ったので、小吉たちはその子を「伊東」と呼び下鍛冶屋町郷中と一緒に御殿に忍び込みました。伊東は足が速く、慌てて皆付いていきました。
天狗に会う
両郷中の子供とも、上手く御殿に忍び込めたものの、下鍛冶屋町郷中の村田新八(加藤憲史郎さん)が、池に落ちてしまい警備の人に見つかります。郷中ごとに二手に分かれて逃げました。
小吉たちは逃げた山道で、大砲が炸裂する場面に出くわし、全員顔がすすけてしまいます。
「情けない。この程度の火薬にも耐えられんのか。」と言う言葉が聞こえてきます。子供たちは煙が立ち込める先に見えた、マントに丸めがねをした男を見て、「天狗じゃ。」と逃げまどいます。
新八が着物の裾を木にひっかけて動けなくなり、小吉が助けようとしますが、天狗は新八に近づいてきて、思わず小吉は新八を置いて逃げてしまいます。
大久保正助は、真っ先に天狗に土下座して「許してたもっせ。」と謝り、他の少年たちも一緒に謝ります。
小吉だけは立ったまま動かず、「薩摩隼人はいつでん死ぬ覚悟はできちょ。」と強がりますが、天狗は大きな声で笑って「薩摩隼人が聞いて呆れる。お前は一番幼い仲間を見捨てて逃げた。弱い者の身になれん奴は、弱い者以下のクズだ。そういう奴を薩摩では「やっせんぼ」っていうんだろ。」と叱りつけます。
小吉は天狗にここで何をしていたか尋ねると、「異国の天狗をやっつけるために算段していた。」と説明しますが、小吉らに「ここで見た事を誰にも言うな。」と言います。
そして新八の帯を引っ張って持ち上げて小吉たちに差し出すと、口止め料として紙の包みを渡すのでした。
船まで戻り、包みを開けると、カステラが二切れ入っていて、子供たちは目的のお菓子にありつけて大喜びです。先に逃げていたと思っていた足の速い伊東も、ちゃっかり船に乗っていて、カステラを一緒に食べる事が出来ました。小吉はカステラの包み紙に書かれていた「Cangoxima」の文字を見つけ、「天狗の呪文か?」と不思議がり、大事に胸にしまいました。
突然入ってきた伊東も、すっかり下鍛冶屋町郷中の仲間になっていました。
天狗は島津斉彬(渡辺謙さん)で、藩主の嫡男として江戸の藩邸で生まれ、ずっと江戸で暮らしていましたが、影武者を置いてこっそりと国元に帰っていたのです。当時の藩主、島津斉興(鹿賀丈史さん)は生まれてからずっと江戸にいる斉彬を良く思っていませんでした。
斉興の側室、由羅(小柳ルミ子さん)は、嫡男の斉彬より、自分が産んだ斉彬の弟、久光(青木崇高さん)を藩主にしたいと思っている様子です。
由羅は帰ってきた斉彬に対して、嫌がる素振りを見せ、「薩摩にはいない者」として振舞うよう釘を刺すのでした。
1月3日にBSプレミアム「英雄たちの選択 新春スペシャル「幕末ヒーロー伝 これが薩摩藩の底力だ!」」でやっていたのですが、1840年に起こったアヘン戦争で、大国清を倒したイギリスに斉彬は危機感を持っており、家臣たちに、従来の青銅の大砲より強い、鉄での大砲を造るよう命じていたそうです。
同じように佐賀藩で鉄を反射炉で造っている事も知っていた斉彬は、佐賀藩からオランダの専門書を借りて、この難しいミッションを家臣に任せていたとの事。しかも専門書も仕組みの解説だけで反射炉の造り方までは書かれていませんでした。
何度も失敗を繰り返し、音を上げる家臣の尻を叩いて、血のにじむような試行錯誤の上、5年もの歳月をかけて反射炉を完成させたそうです。スゴイですね。
このドラマでは、そんな斉彬と家臣たちの努力している姿をチラッと見せてくれたのでしょう。
小吉は天狗の虜になっていました。家に帰ってからも天狗の「弱い者を守る。」という言葉が残っていた小吉は、剣術の強い自分を、先祖の「無敵斎」の生まれ変わりと期待をかけてくれている祖母、きみ(水野久美さん)や祖父龍右衛門(大村崑さん)、父吉兵衛(風間杜夫さん)の前で「弟や妹ばかりでなく、自分より弱か者を守りとうございもす。そん為にもっと強くなりたか。」と思いを述べ、喜ばせるのでした。
妙円寺詣り
薩摩では、妙円寺詣りといって、関ケ原の戦いの終わりに、敵中突破した島津義弘公の武勇を称えた郷中の年中行事がありました。子供たちは皆、鎧を身に着けての激しいものでした。
小吉たちと一緒に、伊東と名乗っていた子も下鍛冶屋町郷中の一員として参加することになりました。
一番乗りには、島津家の血を引く重臣日置島津家で、小吉も勉強を習っていた師匠である、赤山靱負(沢村一樹さん)から餅がもらえるという特典付きです。お腹を空かせている下鍛冶屋町郷中の皆にとっては、この上ないご褒美です。
喜んでいる小吉たちに向かって、尾田栄作(中野魁星さん)率いる平之郷中が綺麗な鎧を身に着けて登場し、自分たちが一番の餅を貰うと宣戦布告をしてきました。
小吉たちは口ではへりくだっていましたが、目を見合わせて戦闘態勢です。
重い鎧兜につけた子供たちは、20キロ先の妙円寺目指して突き進みます。初めは皆勢いよく駆け出したものの、途中で滑ったり転んだりして倒れる子も出始めます。
4時間も経った頃になると上りの山道となり、道の脇で倒れ込んで休憩する子が多くなってきました。高麗町郷中の俊斎もいました。
スタート地点で喧嘩を売ってきた平之郷中の子も道の脇で倒れこんでいて、その中を小吉は先に進んでいきます。そんな小吉を、尾田栄作が足をかけてこけさせます。
それでも先に進む小吉に、今度は殴りかかって来て妨害を続ける平之郷中の子供たち。
逃げては妨害、を繰り返しながら、小吉は「先行け!伊東。頼むぞ!」と足の速い伊東を先に進むよう平之郷中の子たちを倒して先に進めさせるのでした。
なんとか、妙円寺にたどり着いた小吉たち。鎧を身に着けた赤山靱負が待っていました。先にゴールしていた子がいたので諦めていると、赤山が「下鍛冶屋町、一番乗り。あっぱれじゃ。」と声をかけます。驚く小吉たち。
なんと、伊東が一番にゴールしていたのでした。
「伊東のおかげじゃ。」「ほんのこて速かなぁ。」小吉たちは口々に伊東を褒めたたえます。そして約束通り餅を貰えることになり、皆で頬張っていたところ、他の郷中の子が伊東の事を「岩山の娘。」と見破り、女だと知らなかった小吉たちも驚いて立ち上がります。伊東は、男に変装した「岩山糸」でした。
他の郷中の子のみならず、下鍛冶屋町郷中の子からも責められる糸。糸も「相撲や剣術を習いたい。何故女は郷中に入れないのか。」と訴え、泣いて帰っていくのでした。
そこへ、馬に乗った久光が現れます。一斉に膝をついて頭を下げる一同。赤山が久光の後ろにいた斉彬を見つけます。小吉たちは「天狗様。」と頭を下げると赤山が「お世継ぎ様じゃ。島津斉彬様なるぞ。」と叱ります。
斉彬は「子は国の宝だ。お前たちのような者がいれば、薩摩は安泰だ。頼もしく思うぞ。」と優しく声をかけると、小吉たちは感激するのでした。
家に帰って斉彬の言葉を、家族や正助の父、大久保次右衛門(平田満さん)に報告する、小吉と正助。
次右衛門は「斉彬公は世にもまれな秀才でおらる。英邁の誉れは天下に高く、薩摩が御公儀に堂々と物申せっとも、あん御方んお蔭だそうじゃ。」と言うと皆は大いに喜ぶのでした。
特に小吉の父吉兵衛が一番喜んでいました。町の皆でお酒を飲んで喜び合いました。
一夜明けて、糸の言葉が気になっていた小吉は、女の格好で町を歩いてみて、道の真ん中を歩くと殴られ、洗濯は男女のものは別に洗っている事を知ります。
父吉兵衛が小吉を迎えに行くと、小吉は男女の差を訴えますが、父は取り合いませんでした。
そして「斉彬様のもとに仕えたい。」と言う小吉に「大それた望みを口に出すんじゃねど。」と釘を刺します。
けれど小吉もそんな父の言葉を「大それた望みは二度と口にしもはん。望みが叶うまでは、胸ん中で思うだけにしもす。」と聞き入れませんでした。
どこまでもポジティブシンキング!気持ちいいですね!斉彬さんという人は、人柄は穏やかで頭脳明晰。会えば、まるで雷に打たれたような印象を与える人物だったそうです。
そんな人物に出会えた子供はイチコロです。
右肩の傷
小吉はそれから、剣術の腕を磨いて強くなってきました。
そんなある日、正助と歩いていると、妙円寺詣りで因縁をつけてきた平之郷中の者らが、仕返しに木刀で襲ってきました。
正助は逃げようとしますが、小吉は尾田栄作の木刀を奪って応戦します。数人池に落としたあと、草むらに投げられた尾田が、木刀は小吉に取られていたので、腰に差していた鞘の付いた刀を持って構えます。
周りにいた町の人は皆騒然としましたが、小吉は刀を持った尾田を払いのけます。周囲が歓声を上げると激高し、もう一度襲い掛かります。が、小吉が木刀で受け止め、鞘を壊してしまいました。むき出しになった刃は、小吉の右腕にそのまま深く刺しこんでしまい、流血します。小吉は肩をおさえてうずくまり、あまりの痛さにうめき声をあげます。
周りが騒然とする中、尾田は逃げ帰っていきました。
小吉は家に運ばれ母満佐から手当てを受けますが、その傷は深く、高熱にうなされました。使用人の熊吉(塚地武雅さん)はその傷が喧嘩で出来た傷ではなく、刀傷だと満佐に言います。
そんななか、尾田の父が西郷家に謝罪に現れました。「郷中の規約で抜刀は許されていない上、目下のものを傷つけた息子に腹を切らせる。」と尾田の父は言います。
しかし小吉が、傷を負いながらも起き上がって「いえ、抜刀はしちょいもはん。強く振り下ろしたので鞘が割れもした。」と尾田栄作をかばいます。
小吉の父吉兵衛が「喧嘩両成敗。そちらのご子息も怪我をされている。」と言うと、逆に小吉に頭を下げさせるのでした。
西郷家より身分の高い立場である尾田は、あっさりと引き下がって帰りました。帰りがけに反省していたかに見えた栄作が、小吉の顔を見て笑ったのでした。
これは屈辱的ですね。身分が低い立場だからと言って引き下がる必要があったのでしょうか?
尾田の父は息子の腹を切らせると言っていたのに、吉兵衛が遠慮するとあっさり引き下がりました。確かに喧嘩両成敗かもしれませんが、先に喧嘩を売ってきたのは尾田の方です。
腹を切れとまでは思いませんが、なんらかの制裁は加えて欲しかったです。まぁ、目下の者に力負けしていた時点で、向こうには屈辱だったのでしょうが…、腹が立ちます!
しかもこの傷のせいで、小吉は右腕が上げられなくなり、刀が持てなくなってしまうのでした。小吉は「強くなりたい。」と思って剣術の腕を磨く日々を思い出し、一人林の中で泣きます。
そこへ、久光と斉彬が二人で狩りをする場面に出くわしました。生きる希望を失っていた小吉は、銃を構える斉彬の前に出て行ってしまいます。
「危ねえじゃねえか。」と怒る斉彬。小吉は大泣きして、斉彬の側で忠義を尽くしたいと思っているのに、怪我をしてしまった自分の現状を訴えます。
「めそめそするな、このやっせんぼ!」斉彬が言うと小吉は涙をこらえようとします。
「死んではならぬ。侍が重い刀を2本も差してそっくり返る時代は終わるんだ。
これからはか弱き者の声を聞き、民の為に尽くせる者こそが真の強い侍となる。お前はそういう侍になればよい。」と斉彬は優しく語りかけると、去ろうとするのを小吉は、「おいは、斉彬様にまたお会いしとうございもす!」と言います。
「お前が強くなっていたらまた会おう。強くなれ。」そう言い残すと斉彬は颯爽と去っていきました。
この年、島津斉彬が薩摩にいたという記録はないそうです。ドラマの創作だったのでしょう。
しかし、この初回で薩摩の郷中教育、島津斉彬がイギリスに対して危機感を持って薩摩でやろうとしていた事、男が優遇されていた社会構造など、短い時間にたくさんの事をまとめて詰め込んだ、いいお話でした。
郷中の仲間
小吉たちは赤山靱負の屋敷で、西洋の世界地図を見せてもらいます。そこに描かれた日本は世界の端っこの、楕円の形をした国でした。
しかし、日本とされている場所の端に「Cangoxima」の文字を小吉は見つけます。斉彬がカステラを包んだ紙に書かれていた文字です。
これは、「カゴシマ」。そう「鹿児島」です。日本は世界の端っこにある小さな国ではありましたが、その中でも「鹿児島」の事を世界はちゃんと描いていたのです。
感激する下鍛冶屋町郷中の子供たち。
子供たちは城山に上り、鹿児島の景色を眺めながら「こん先、だいが一番先にお城に上がっか競争じゃ。」と言いました。
いつもお腹を空かせていたこの少年たちが、徳川幕府を倒し、新しい日本を築き動かす中心人物になっていくのです。
今回はここで終わりです。濃い内容でした!面白かったです。
小吉役の渡邉蒼さんを下から上に撮った、立ち姿が鈴木亮平さんにそっくりです。
顔はそんなに似てはいませんが立ち姿が「あれ?もう入れ替わった?」と思ったくらいです。
ガラっと大河ドラマが男の物語に様変わりしました。これを原作も脚本も女性が書いているのだから不思議です。
次回、第2回「立派なお侍」です。
予告ではもう鈴木亮平さんの登場となるようです。
予告番組で、鈴木亮平さんが「第2回は名作です。」とおっしゃっていましたので、期待してもいいのではないでしょうか?
放送が楽しみです。