2020年大河ドラマ「麒麟がくる」は、NHK総合にて日曜夜8時、BSプレミアムにて午後6時、BS4Kにて朝9時に放送中です。
前回、第6回「三好長慶襲撃計画」は、主人公・明智十兵衛光秀(長谷川博己さん)が、偶然知った三好長慶・松永久秀の暗殺計画を阻止するために奮戦するお話でした。
1548年、京は管領家・細川晴元(国広富之さん)の勢力が強まり、将軍家を脅かしていました。
しかしその管領家でも家臣である三好長慶(山路和弘さん)・松永久秀(吉田鋼太郎さん)が力をつけてきたため内紛の種を抱えていました。
下克上の風潮が強まり、京の覇権争いが激化してきていたのです。
三好長慶が蜂起するのではと細川晴元が警戒している中、当の長慶は公家の万里小路家で行われる連歌の会に出席するため京の松永邸にお忍びでやってきていました。
長慶は無類の連歌好きであるため出席を決めたのですが、それは長慶の連歌好きを利用した晴元の罠でした。
鉄砲作りの名手で、光秀と同郷の伊平治(玉置玲央さん)から鉄砲の仕組みを教わっていた光秀は、伊平治から長慶と久秀の暗殺計画があること聞かされます。
すぐに久秀の陣所に向かうのですが、連歌の会の供をしているためか、陣所には人気がありません。
そのため、光秀が向かった先は将軍奉公衆の三淵藤英(谷原章介さん)の邸でした。
その日は藤英の邸で舞が行われており、そこには将軍・足利義輝(向井理さん)も隣席していました。
急にやってきた光秀に応対する藤英と義弟の細川藤孝(眞島秀和さん)。
光秀が三好と松永の襲撃計画があることを報告すると、弟・藤孝は直ぐにでも救出に行こうと言うのですが、兄・藤英は渋い顔です。
それというのも、連歌の会は裏で細川晴元が手を回している会で、そこでの襲撃計画ならば首謀者は細川晴元。
三好と松永は細川の家臣であるため、所詮は細川家の内紛だといい、自分たちが手を出すまでもない、と言うのです。
藤英は、将軍奉公衆である自分たちが動いてしまったら、上意とみなされ困る、といい光秀に帰るよう促しました。
藤孝は兄の言い様に怒り、その場を立ち去ります。
藤英もまた光秀の前から立ち去ろうとするのですが、光秀は将軍のあり方について自論をぶつけ、自分の主張を将軍に伝えて欲しいと訴えて、単身、三好と松永の救出に向かったのです。
義輝は、襖一枚隔てた所で2人の話を聞いていました。
部屋から出てきた藤英が義輝に気づき跪くと、義輝は側仕えたちに光秀の後を追うようにと命令しました。
一方、万里小路邸では、連歌の会の真っ最中でした。
突然現れた刺客に驚きつつ、久秀も自身と主君を守るために応戦します。
刺客たちからなんとか逃げていた長慶ですが、とうとう追い詰められあわや、というところで光秀に助けられました。
その後、駆けつけた藤英たちの助力もあり、長慶と久秀は無事脱出に成功。
首謀者の細川晴元は、逃げる2人の姿を見て悔しさに歯噛みしました。
激しい戦闘で肩に一太刀浴びた光秀は、藤英の家臣に京に戻っている望月東庵(堺正章さん)のところまで案内してもらいます。
しかし、途中で気を失い、東庵の家の前で倒れてしまいました。
東庵の助手・駒(門脇麦さん)に助けられた光秀が目を覚ましたのは2日後のことでした。
光秀が目を覚ますまでの2日間、つきっきりで看病した駒。
光秀のことを慕う駒は、光秀の側にいられることに喜びを感じていました。
10日後、無傷で戻ったものの、政治的に動けずにいる久秀から頼まれた藤孝が見舞いを持って東庵宅を訪れました。
藤孝は、藤英の邸で光秀が叫んだ将軍のあり方について、共感していました。
今の京には光秀のように、武家の棟梁である将軍について、当たり前の考えを持つ武士が少なくなってきていることを憂い、光秀に共に将軍を支えて欲しいと訴えました。
しかし光秀は、現在の美濃も京と同じように内紛の種を抱えている状態だと打ち明けます。
美濃に戻り、美濃を一つに纏められたら、美濃を上げて藤孝と共に将軍を支えると光秀は誓いました。
各大名家が纏まり将軍家を支えられたら、世は平らかになるはず、と考えた藤孝はその日を待ちつつ、それまで戦い続けるしかないと決意を固めました。
その頃、美濃の斎藤利政(後の道三)(本木雅弘さん)は、尾張の織田信秀(高橋克典さん)に奪われていた大垣城を奪還するための戦を仕掛けていました。
豊かな穀倉地帯であり交通の要所である大垣を取り戻すことは利政の悲願でした。
大垣を取り戻した利政の元に戻るため、光秀は怪我をおして美濃へ帰還しようとしていました。
しかし病み上がりの光秀を心配した駒は、東庵の言いつけとして美濃までついていくと言い張ります。
駒の熱意に負けた光秀は同行を許し、2人は美濃まで一緒に行くことになりました。
途中、廃寺で休むことになった2人は一枚の筵に入り肩を寄せ合い暖を取ったのでした。
前回第6回「三好長慶襲撃計画」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは第7回「帰蝶の願い」のあらすじと感想です。
信秀の事情
1548年秋、大垣城を利政に奪われた織田信秀の敗因は、織田家内部の分裂のためでした。
大垣城を守るため出陣した信秀の居城・古渡城を清洲城の守護代・織田彦五郎が攻めたのです。
そのため、大垣城を諦め、古渡城に戻らざるを得なかった信秀。
今の信秀は、3つの敵に囲まれていると分析します。
駿河の今川義元、美濃の斎藤利政、そして織田彦五郎。
身内である彦五郎がなぜ自分と対立を繰り返すのか疑問に思う信秀に、平手政秀は津島や熱田の港を抑える信秀の富に嫉妬しているからだろうと予測しました。
信秀は今川から受けた矢傷のため体調不良が続き、不安を感じていました。
敵が2つならば握り潰せるが、3つになったら手に余る、ということで、信秀は美濃との和議を決意しました。
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光秀の帰還
明智の荘の光安(西村まさ彦さん)は、利政から帰蝶のことを言われて、悩んでいました。
牧(石川さゆりさん)は光安の悩みを察していたようでした。
そこに、光秀が京から戻ってくるとの知らせが入りました。
翌日、駒と共に自宅に帰った光秀を牧は首を長くして待っていました。
光秀が駒の手当を受けていると、京で怪我をした光秀に、なぜ便りの一つもよこさないのか、と牧は不満を漏らします。
そこに、帰蝶がやってきたとの知らせが入りました。
この近くに来る鶴の群れを見るために来たのだが、ついでに叔母である牧の顔を見に寄ったというのです。
しかし、鶴が来るのはもっとずっと遠く。
光秀は、帰蝶の言い分に不自然さを感じるのですが、よくわからない様子です。
帰蝶が来た理由を察した牧は、帰蝶に駒が京から来ているから会ってはどうかと促し、光秀には急いで光安のところへ行くようにと指示を出します。
光安のところへ行った光秀は、光安から事情を知らされました。
先日、稲葉山城に尾張の織田信秀から使者が遣わされ、和議を申し入れてきたこと。
もう二度と争わず末永く付き合えるよう、信秀の嫡男・信長の嫁に帰蝶を貰い受けたいと条件をつけてきたこと、などです。
尾張との和議に同意した利政が、帰蝶に縁談を告げると、帰蝶は「否」と返事をし、そのまま口をきかなくなったといいます。
利政は、帰蝶の叔父である光安に、「どう思う?」と問いかけており、光安は対応に苦慮していました。
そんな時に明智の荘にやってきた帰蝶。
「鶴を見に来た」という帰蝶の言い訳を信じる光秀に、「本当にそうだと思うのか?」と光安は光秀に問いただします。
そして、帰蝶の気持ちを確かめろ、と光秀に指示を出したのです。
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帰蝶の思い
光安の所から戻ると、明智家にはたくさんの子供たちが駒のお手玉を見にやってきていました。
帰蝶も駒の見事なお手玉さばきを楽しそうに眺めています。
子供達と駒が家の中に入ると、光秀は帰蝶に話があると声をかけました。
光秀がなにを話そうとしているのか察した帰蝶は、座らず立ったまま話し始めました。
「1度目は何も分からず嫁にいった、そこで私がどんな目にあったのか十兵衛は分かっておろう」と嫁には行きたくないという意思を光秀に示す帰蝶。
幼い頃、光秀が泣いて困った時、誰にも言わないでくれと言われた約束を帰蝶は一番親しい身内だった光秀のために、守り抜いたといいます。
だから、今度は自分を守って欲しい、尾張になど嫁に出してはいけないと、皆に言って欲しいと帰蝶は懇願します。
その頃、駒は牧に帰蝶に縁談があると稲葉山城で聞いたと話していました。
本当のことかと聞く駒に、牧は国の一大事を軽々しく口にしてはいけない、と窘めました。
女子ならば誰しも嫁に行き子を産み育てる、帰蝶も駒も、皆等しくそういう時を迎える、それが今日になるか明日になるかの違いのみ、そう優しく言う牧に、駒は反論しました。
思っても思いが遂げられない場合がある、身分とか暮らし向きとか様々なわけがあり嫁ぐことが叶わない者もいる、そういう者はどうしたらいいのだろうか。
そこに、帰蝶との話を終えた光秀が居室に入ると、駒は光秀の世話を甲斐甲斐しくするのです。
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利政の命令
利政に呼ばれた光安と光秀。
利政は今回の和議と帰蝶の縁談について光安に問い、光安は和議のためならば仕方がないと返答します。
光秀にも問われると、人質として嫁ぐことになる帰蝶に対し、情として忍びない、と光秀は言います。
父として同じ思い、光秀以上に思っているが、和議もこれ以上ないほど大切なこと、だから帰蝶を説得しろ、という利政の命令に光秀は頷くことができません。
どうしてもできないのか、と恫喝されても、「自分はできない」と言い張り、利政から出て行けと言われてしまいました。
売り言葉に買い言葉、光秀も「わかりました、帰ります」と勢いよく叫ぶと退出してしまいます。
しかし、帰蝶と仲が良い光秀しか帰蝶を説得できる者はいないとして、光秀は呼び戻されました。
美濃が見渡せる階上で、利政は光秀に語り始めました。
京の松永久秀から書状が届き光秀に世話になったと書かれていたと話します。
「よくやった」と、利政は光秀を褒めるのです。
利政は、京の内裏を見たか、と光秀に問います。
塀が高くて中が見られなかったと言うと、8年前、京の御所の塀が洪水で流された時、尾張の織田信秀は4000貫を献上し、今川は500貫、美濃の土岐は1貫も出せなかった、と悔しげに呟きました。
なぜそんなに尾張は豊かなのか、それは熱田・津島という港を持っていたからです。
海があれば港ができ、港ができれば船が来る、そうすれば海の恵みが得られ交易などの利益も得られ信秀は領地を発展させてきました。
それに比べ美濃には海がない、苦労して田を作り、畑を耕した1年の利益は、海の恵みがあればあっという間に作り出せる、と利政は言います。
利政は、海を手に入れたい、和議を結べば海が近くなる、自分の仕事は戦ではなく国を豊かにすることだと訴えます。
国を豊かにすれば国は1つに纏まる、そのための和議なのだと、光秀に説明しました。
そして、このことを帰蝶に伝えて欲しいと光秀に指示を出したのでした。
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対立
利政の所から下がる光秀は、利政の嫡男・高政(伊藤英明さん)から用があると呼び止められました。
光秀が高政の部屋に行くと、そこには美濃の国衆が集まっていました。
高政は、光秀が利政に逆らい和議に反対したと知っており、よくぞ逆らった、と光秀を褒め称えるのです。
困惑する光秀に、高政は尾張との和議など以ての外だと父の決定を批判します。
信秀は尾張の守護でも守護代でもありません。
その信秀と手を結ぶことは尾張の守護や守護代、その先にある今川まで敵に回すことになります。
そんな信秀との和議を愚かと言わずしてなんと呼ぶ、という高政に対し、光秀は困惑します。
国衆達と共に和議に反対しようと酒を差し出され、迷いながら断りきれず飲み干す光秀。
明智の荘にいる帰蝶を利政のもとに返してはならない、と高政に言われた光秀は何も返答することができませんでした。
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帰蝶の願い
明智の荘では帰蝶が駒に化粧を習っていました。
光秀に化粧の出来を見てもらうと、旅芸人にそういう顔の人がいた、と光秀は答えます。
旅芸人、という言葉を受けて、自身も旅をしてみたいという帰蝶。
船に乗り海を渡りたい、共をせよ、と光秀に楽しそうに話しかけていました。
「帰蝶様」と呼びかける光秀の言葉を遮った帰蝶は、結婚相手の信長のことを話し始めました。
尾張の織田信長はうつけという噂だけれど、この美濃では本物の信長を見た者はいない、うつけというのはどううつけなのか誰も知らない、だから、光秀に信長を見てきて欲しい、と言うのです。
光秀の目で見て、どのような者なのか教えて欲しい、光秀の目は帰蝶の目、しっかりと見てきて欲しい、と懇願しました。
光秀は、一言一言区切るように、葛藤しながら「見て、もし良きお方なら、嫁がれますか?」と問いかけます。
その問い掛けに、帰蝶は背を向けたまま答えることはありませんでした。
美濃から尾張の熱田に行商に行く者に付いて、変装した光秀は熱田に潜入しました。
活気溢れる熱田の市はお忍びで信秀や奥方も現れると地元の人は言います。
光秀は市を巡りながら、信長の情報を得ようと話を聞いて回りました。
港のある熱田の市の豊かさは、大阪堺に負けないほど、活気に溢れていました。
驚く光秀に、商人たちは港があるからだと説明します。
海が欲しい、と望む利政の言葉を光秀は実感していました。
すると、そこに味噌を売る菊丸(岡村隆史さん)の姿を見つけました。
光秀は、信長がどういう人物なのか、知りたいが、それが無理なら顔だけでも見たい、と菊丸に話します。
事情はわからないながら、信長の顔を見たいだけならそれは可能だと教えました。
このところ信長は供を連れて漁に出ているというのです。
だから明け方、この港で待っていれば帰ってくる、と菊丸は教えました。
明け方、彼方の方から1艘の小舟が戻ってきました。
そこには、自信に満ちた精悍な顔をした若者が乗っていたのです。
その若者を凝視する光秀でした。
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次回、第8回「同盟のゆくえ」
帰蝶の頼みで信長を見に行った光秀。
尾張の海で漁師から慕われている信長の姿、その奇妙な出で立ちを目の当たりにすると、帰蝶を嫁がせる人物として相応しいのかと光秀は悩みます。
困惑する光秀に、母・牧は美濃の行く末を一番に考えろ、とアドバイスします。
信秀との和議を反対する高政達の動きもあり、ひと波乱がありそうですね。
今回のお話は帰蝶の切ない思いが前面に出ていました。
前からそうでしたが、光秀が帰ってきたという知らせを受けるたびに何かと理由をつけて明智の荘にやってきた帰蝶。
いじらしいですよね。
それに全く気づいていない光秀の鈍感さがもどかしく感じました。
愛娘・帰蝶を案じながらも美濃のため、尾張に嫁がせようとする利政と、それに反発する高政を筆頭とする国衆。
それぞれ利権が絡んだ思惑があり、美濃が1つに纏まるのはかなり難しそうですね。
自分の立場、役割がわかっている帰蝶だからこそ自分の気持ちを言えず、ちょっとのわがままを言う帰蝶が可愛くて切なくて胸が締め付けられました。
そしてもう1人、いじらしいほど光秀に尽くす駒の姿。
報われないことがわかっているだけに、見ていて切ないですね。
次回、第8回「同盟の行方」で帰蝶も光秀も自分の気持ちに区切りをつけることになります。
鈍感な光秀が帰蝶への思いをどう自覚するのか、楽しみです。
次回は、政治的な駆け引きと繊細な心理描写に注目したいですね。