2020年大河ドラマ「麒麟がくる」は、NHK総合にて日曜夜8時、BSプレミアムにて午後6時、BS4Kにて朝9時に放送中です。
前回、第10回「ひとりぼっちの若君」は、三河の覇権を狙って信長(染谷将太さん)が起こした松平広忠暗殺の報復で、三河の安城城が落とされ、信長の兄・織田信広と松平竹千代(岩田琉聖さん)との人質交換を要求されたことによる騒動を描いたお話でした。
光秀への想いが破れた駒(門脇麦さん)は京で抜け殻のようになっていました。
そこに、伊呂波太夫(尾野真千子さん)の一座が5年ぶりに京にやってきました。
伊呂波太夫の一座は、火事で家を失った駒が身を寄せていた一座でした。
懐かしい再会、そして昔話から、駒を助けてくれた侍が明智家に連なる人だということがわかりました。
慕っていた明智十兵衛光秀(長谷川博己さん)と同じ家紋を持つ人物。
駒は光秀の母・牧(石川さゆりさん)からもらった家紋入りの扇子を抱きしめ涙を流し続けました。
1549年11月、尾張との国境にある安城城が今川に攻め落とされ、城主の織田信広が人質として捕らえられてしまいました。
今川は、織田に捕らわれている人質・竹千代と信広の人質交換を要求します。
事の顛末を織田信秀(高橋克典さん)から知らされた美濃の斎藤利政(後の道三)(本木雅弘さん)は、光秀を呼び人質交換の行く末を見て来いと命じました。
戦が始まりそうな尾張に調査に入るのですから命がいくつあっても足りません。
光秀は文句を口にしつつ、帰蝶(川口春奈さん)の御機嫌伺いと称して人質交換の行く末を探るために尾張へ向かいました。
信秀の館では、嫡男・信長が人質交換に反対していました。
異母兄であるものの、戦で負けたからには捕えられる前に自害しておくべきだった、と主張し、三河の覇権を握るためには竹千代を手放してはいけない、と言い立てます。
竹千代を自身の城である那古野城に移し誰にも渡さない、と息巻いて城を後にしました。
そんな信長よりも弟の信勝を後継にと母・土田御前(檀れいさん)は勧めるのですが、信秀は順序を乱しては無理が生じる、と土田御前の言葉を退けました。
熱田の市に立ち寄った光秀は、菊丸(岡村隆史さん)を連れて那古野城に向かいました。
三河の民である菊丸に、竹千代はどちらにいた方が良いかと尋ねると、いずれ誰の支配も受けない三河の主となるために、無事でさえいてくれたら、織田でも今川でもどちらでも構わない、と話します。
那古野城の帰蝶を訪ね、懐かしい再会を果たしていると信長帰城の知らせが入りました。
光秀は階の下で平伏していました。
信長は帰蝶への土産として花を渡し、仲睦まじい様子が伺えます。
信長が階の下にいる光秀に気づくと、帰蝶は美濃の鉄砲に詳しい人物、として光秀を紹介しました。
信長が持っていた銃がどこで作られたものか当ててみろという難問に見事答えられた光秀は、信長に気に入られることになります。
部屋に招かれお茶をご馳走になっていると、那古野城に越してきた竹千代が信長に
挨拶をしたいとやってきました。
かつては親しく遊んでくれていた信長が最近はちっとも遊んでくれないことに不満を持っていた竹千代は、信長が自分の父を殺したことを気にしているのなら気遣い無用だと宣言したのです。
信長は竹千代の覚悟を知り、一緒に将棋をすることにしました。
帰蝶と光秀を下がらせた信長ですが、すごい勢いで走り出し、去りかけた光秀に鉄砲の話しがしたいから明日も登城するようにと声をかけたのです。
約束を取り付けた信長は無邪気に喜ぶと、竹千代が待つ部屋に戻りました。
将棋を指しながら信長は人質交換の話を竹千代に聞かせました。
信長自身は竹千代を行かせたくはないが、竹千代はどちらに行きたいか、と尋ねてみます。
すると竹千代は、今川は倒すべき敵だが、顔を見たことがない、だから懐に入って今川のことを知りたい、と話しました。
信長が迷っているならば、自分はどちらでも構わない、と竹千代は宣言したのです。
光秀に同行し、先に帰ったはずの菊丸は、2人の様子を天井裏からじっと聞いていました。
前回、第10回「ひとりぼっちの若君」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは第11回「将軍の涙」のあらすじと感想です。
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織田の窮状
1549年11月、尾張笠寺にて、松平竹千代と織田信広の人質交換が行われました。
これにより、一進一退を続けていた東海の覇権争いに多大な影響を及ぼすことになりました。
末盛城にて、無事に人質交換終了の知らせを受け取った信秀でしたが、信広が無傷で帰ってきたことに不満を持っていました。
一城の主が攻め落とされ捕らえられたのならば、せめて満身創痍で帰ってくるべきだったと、息子の不甲斐ない様子を嘆きます。
今川から受けた矢傷のため、尾張一の弓使いであった信秀は弓が引けなくなっていました。
信広は戦いもせずに捕えられるなど不甲斐なく、信長は何を考えているのかさっぱりわからない、信勝は未だ若く、自分自身は弓が引けない有様。
今の織田では今川と戦っても勝ち目はないと、信秀は憤慨します。
側近の平手政秀(上杉祥三さん)に、今後の今川の動きに目を離さないように命じるのでした。
その頃、今川義元(片岡愛之助さん)と竹千代は対面していました。
織田から竹千代を取り戻せて義元はご満悦です。
豪華な食事を出された竹千代ですが、それには手をつけず、自分はいつ三河に帰れるのかと義元に質問します。
今川の軍師・太原雪斎(伊吹吾郎さん)は、今三河は織田勢と今川勢に分かれ争っているため危険だと説明します。
このままでは三河は滅ぼされてしまい、隣国としてそれは見るに忍びない、織田を完膚なきまでに叩いて安全になれば、竹千代を三河に戻すことができるといいます。
義元は、今川が織田を追い払うまでの辛抱だと伝えました。
その言葉を聞いた竹千代は、小さな頭を下げ項垂れました。
義元は、太原雪斎に年が明けたら織田と戦をすると宣言し、これは、三河を救うための戦だといい、薄く笑ったのでした。
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まとまらない美濃
1550年夏、今川義元は宣言通り、織田に戦を仕掛け始めました。
尾張の知多半島に攻め寄せた今川軍は次々と織田の領地を制圧します。
織田信秀の戦力が低下していることが明白になってしまいました。
この戦況を知った美濃では、評定が開かれていました。
利政の嫡男・高政(伊藤英明さん)は、利政が勝手に結んだ盟約は間違いだったと言い利政を責めます。
国衆たちは、織田からの援軍要請が来たら、兵を出すつもりなのかと利政を問い詰めます。
そのつもりがある、と答えた上で、利政は国衆たちに逆に問いかけたのです。
今川と戦うつもりがあるのか、と。
しかし、国衆の稲葉(村田雄浩さん)は戦うつもりがあっても今は田が忙しい時期だから兵が集まらない、と拒絶します。
他の国衆に目を向けても、目を合わせる者は誰もいません。
利政は、織田が危うくなれば次は美濃が危険というのですが、美濃が危ない時は兵を出す、戦うと稲葉は言うのです。
利政が勝手に結んだ盟約のためには兵は出せないが、自分たちの土地を守るためならば戦うという国衆の発言に利政は失笑し、今日の評定はこれまで、領地に戻って稲刈りでもすればいい、と皮肉りました。
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織田への返答
そういったものの、織田家の家老・平手政秀から既に援軍要請を受けており、国衆の賛成が得られなかった今、援軍を派遣することができない状況に利政は困っていました。
明智光安(西村まさ彦さん)にどうしたらいいかと相談すると、光安は、兵は出せないが米を出すのでそれで了承してもらえないだろうかと提案します。
それで承知してもらうしかない、とした利政は、織田への使者として、信長と面識のある光秀を適任としたのです。
平手政秀は信長の世話役だったので、少しでも面識がある光秀ならば、という理由でした。
これで織田が納得してくれればいいですが、不服とした場合、織田との盟約を破棄して今川に乗り換える、と利政は決めたのでした。
利政の使者として那古野城に到着した光秀。
その頃、那古野城で信長は家臣と相撲に興じていました。
美濃からの使者が来た、といっても光秀だろうから後で行く、と相撲を優先させたのです。
その態度をみた平手政秀は、他の城では戦っているのに、と信長に落胆するのです。
光秀と面会した平手は、信長と面識がある光秀と信長の関係を知りたがり、鉄砲の話しかしていないと知ると、消沈してしまいました。
2人で戦略でも考えていたのではないかと期待していたのです。
信長は今は鉄砲にしか興味がなく、近江の国友村に、数百もの鉄砲を注文したと呆れていました。
平手は、光秀が利政の信任が厚いと褒めながら、利政が尾張をどのように支えてくれるのかと期待に満ちた顔で地図を示しながら、織田の戦況を説明しようとしました。
すると恐縮した光秀が声を上げ、美濃は織田に兵を出せないことを説明し、深々と頭を下げたのです。
帰蝶もその知らせをたった今知ったとして、父の不甲斐なさに憤りつつ、平手に頭を下げました。
平手は光秀の言葉に呆然とし、帰蝶を冷たい目で見据えると肩を落として2人の前から立ち去りました。
平手の背中を見送った帰蝶は、光秀に自分は美濃に戻ったほうが良いかと尋ねました。
帰蝶が帰りたいと望んでも、織田がそれを許さないだろうと言う光秀に、自分は人質だから、と帰蝶は肩を落とすのです。
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信長の策
すると、平手から話を聞いたと信長がやってきました。
美濃の決定に謝罪する光秀に対し、仕方ないと理解を示した信長は、どうすれば良いかと帰蝶に膝枕されながら思案します。
すると、和議ができないかと言い始めたのです。
今、今川を食い止めているのは、刈谷城の水野氏です。
水野氏は3か月は食い止められると言っていますが、その3か月の間に兵を集め戦いを挑んだとしても、勝利は難しいだろうと信長は言います。
それならば三河との国境にある刈谷城を明け渡すから、戦をやめてほしいと今川に頼むのはどうだろうと、思いついたのです。
しかし、それをするには仲立ちとなる人が必要となり、どの人物ならばいいのかがわからないと信長は言います。
すると、光秀は、美濃の土岐一族の内紛の折に、将軍家に仲立ちになってもらい事なきを得たことを思い出しました。
しかし、守護でもない織田家のために将軍家が動くだろうかと信長は危惧します。
帰蝶は、光秀が京に行った折に、将軍奉公衆である三淵藤英や細川藤孝と知りあったことを言い、光秀ならば将軍家も動いてくれるのではないかと言い始めます。
難色を示す光秀に信長は、帰蝶のためにもよくよく思案しろと光秀を促したのでした。
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和議のために
美濃に戻った光秀は、織田と今川の戦を止める方法として将軍家に仲裁に入って貰う案を利政に伝えたのですが、将軍家を頼るには金がかかると利政は乗り気ではありません。
土岐一族の内紛の時、六角氏に金3枚を渡したのに、将軍家ならばもっとかかるだろうと光秀の提案を一蹴するのです。
しかしそれでは人質である帰蝶の身が危ないと光秀が言うと、いざという時には帰蝶の逃げ道を確保する、と言って話を聞きません。
それでは、土岐頼芸(尾美としのりさん)から将軍家に働きかけてもらえるよう取り計らうのが筋ではないか、と光秀は食い下がるのですが、やりたいのならば勝手にやってもいいけれど、自分は1文も出さない、とけんもほろろに光秀を追い出すのでした。
困った光秀が頼ったのは、高政でした。
土岐頼芸に面会したいと頼み込み、織田と今川の戦を食い止めたいから頼芸から将軍家に執り成しを頼んで欲しい、と訴えたのです。
高政は、父が勝手に結んだ盟約のためになぜ自分が動かなければならないのかと激高します。
光秀は、高政が何かする必要は無く、ただ頼芸のところに連れて行ってくれるだけでいいと頼み込みます。
それでも、光秀を連れて行けば自分が光秀の策に加担していると思われると高政は断ります。
しかし、「会わせてくれるだけでいい、そうしたら高政の言うことはなんでも聞く」と言った光秀の言葉を聞くと、その言葉忘れるな、と頼芸に会わせることにしたのでした。
土岐頼芸の屋敷にて、光秀は織田と今川の戦を止めるために、将軍家に和議の取りなしを依頼して欲しいと頼みました。
将軍家に仲介役になってもらうとすると、かなりの金が掛かる、と頼芸は言い始めます。
それは利政が出せばいい、という頼芸ですが、息子の高政は父は絶対に金を出さない、と断言します。
利政のために自分が金を出すのは嫌だと出し渋る頼芸。
しかも、利政は頼芸を美濃から追い出し自分が守護になろうとしている、と頼芸は言うのです。
国衆の稲葉から聞いた話なので、詳しい話は稲葉から聞くといい、と言った頼芸に、もしその話が本当ならば、自分は頼芸を守り、利政を殺す覚悟がある、と高政は頼芸に誓いました。
高政の決意を聞いた頼芸は、光秀の申し出を承諾し、手紙を書く準備を始めたのでした。
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将軍の涙
その頃、京では細川晴元(国広富之さん)に不満を持つ三好長慶が下克上をして内紛が起こっていました。
その影響で将軍・足利義輝(向井理さん)は京から近江に落ち延びざるを得ませんでした。
将軍に会うため近江の堅田に行こうとしていた光秀は、途中雨に降られ、坂本で宿を取ろうとしました。
しかし、三好軍が将軍を追ってきたため堅田付近は三好の兵で固められ一般人は近づけない有様です。
宿も逃げてきた人々で満杯で、光秀は泊まることができません。
困っている光秀に、声をかける人物がいました。
それは、京で出会った細川藤孝(眞島秀和さん)でした。
光秀は、藤孝に事情を説明し、将軍に拝謁できないかと頼み込みました。
将軍は今、朽木に落ち延びており、抜け道を使って藤孝が京と朽木を往復していると言います。
義輝を京に戻せるよう三好と交渉しているというのです。
藤孝は、今の京には将軍を利用しようとする武士が多すぎる、と嘆きます。
近江朽木にいる将軍のもとに案内された光秀は、義輝に謁見が叶いました。
義輝はかつて1度だけ会った光秀のことを覚えていました。
頼芸からの手紙を渡した光秀に、義輝は声をかけました。
光秀に会ったのはこれで3度目、1度目は本能寺の前で藤孝と斬り結んでいた時で、見事な剣技で驚いた、と語ります。
2度目は三淵の屋敷で、三淵藤英(谷原章介さん)に「将軍は世を平らかにするもの」と叫んだ言葉に励まされたのだと言いました。
美濃にそのような武士が1人いる、己が将軍であろう、何故世を平らかにできぬ、一言争うなと命じよ、そう申して自分の背を叩いた武士がいる、しかし、もうそういうふうに自分を叱ってくれる者はいない、と寂しげに呟きました。
光秀の言うとおり、未だに世は平らかではありません。
自分の力が足りないから、自分もこの地でこの有様、と自嘲する義輝。
父・義晴は病弱だったため、子である義輝に強い子になれ、声は大きく、良い耳を持ち、よく学べ、そうすれば立派な征夷大将軍になり、世が平らかにできる、そうすれば麒麟が来る、この世に麒麟が舞い降りる、と話したといいます。
この世を穏やかな世に作れる者だけが連れてくるという不思議な生き物・麒麟。
自分はその話が大好きだったと義輝は回想します。
その麒麟を自分はまだ連れてくることができない、無念だ、と義輝は涙をこぼしました。
義輝は光秀の申し出を了承し、織田と今川に和議の使者を送ると約束してくれました。
「十兵衛、麒麟が来る道は遠いのう」と言う義輝から光秀は目を離せず、見つめていました。
帰る道すがら、光秀は義輝の思いを噛み締め、涙を流したのでした。
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次回、第12回「十兵衛の嫁」
将軍の取りなしにより、織田と今川は和議が結ばれました。
しかし、今川の勢いは止まらず尾張の危機はまだ去ってはいませんでした。
そんな中、信秀は自身の命が残り僅かであると悟り、織田の行く末を話し合うのです。
信秀からのメッセージを帰蝶から伝えられた信長。
その頃、美濃では光秀がとうとう嫁を取ることになっていました。
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最後に
今回、第11回「将軍の涙」は、光秀が様々な人々に振り回される姿がたくさん見られました。
織田と今川の戦を止めるため、帰蝶の身を守るために奔走する光秀の姿に心に打たれました。
盟約を結んだにも関わらず兵を出せず苦悩する利政、しかし余りにもケチくさい言動にちょっとイライラしましたね。
自分が元気ならば戦えるのに、後を引き継ぐ者たちの頼りない様子の信秀の悔しさも伝わってきました。
利政に反発する高政と、利政に従わずのらりくらりと反発する国衆とのやりとり。
稲葉の言葉を信じ、利政を追い落としたい頼芸。
それぞれの思惑でしか動かず、全くまとまらない美濃の現状に見ていてハラハライライラでした。
でも、光秀が頼芸にちゃっかり金10枚をお願いするところは面白かったですね。
京でも同じですよね。
純粋に将軍を中心にこの治世を盛り立てようという武士は少なく、将軍でさえも有力武士に利用される存在と成り果てていました。
自分の力不足を嘆き、将軍としての役目を果たせず、いつまでも平らかにならない世に義輝は涙しました。
その憂いは見ていて苦しくなりましたね。
いつになったら麒麟は現れるのでしょうか。
果たして、麒麟を連れてくる人物とは誰なのでしょうか。
さて次回の第12回「十兵衛の嫁」で、とうとう光秀は身を固めます。
良妻賢母と名高い妻木煕子(木村文乃さん)です。
和議が成立したとしてもまだまだ油断できない状況の中、信秀が命を落としてしまいます。
織田と今川、そして利政と高政の対立も激化し、光秀の立場が難しくなっていきます。
これからどうなってしまうのか、来週も目が離せませんね。