2020年大河ドラマ「麒麟がくる」は、NHK総合にて日曜夜8時、BSプレミアムにて午後6時、BS4Kにて朝9時に放送中です。
前回のあらすじ
1568年、三好三人衆が奉じる足利義栄が第14代将軍に就任しました。
しかし、義栄は重い病を患っており、京への上洛を果たせずにいました。
そのため、内裏では新将軍に対する悪評が高まり、義栄を推挙した関白・近衛前久(本郷奏多さん)にも批判が集中していました。
そんな中、将軍への道を諦めていない覚慶(滝藤賢一さん)は、還俗し元服の儀を執り行いたいと申し出ます。
近衛家に敵意を向ける朝廷の二条晴良(小藪千豊さん)は、覚慶の申し出を帝に取り次ぎ、許可を得ていました。
前久は、帝に元服の許可を伝えるために、越前行きを命じられたのですが、今朝廷を離れることはできないと、近衛家に縁のある伊呂波太夫(尾野真千子さん)に名代を頼んだのでした。
朝倉義景(ユースケ・サンタマリアさん)を加冠役として還俗した覚慶は足利義昭と名を改め元服の儀を執り行いました。
元服したことにより義昭は武士として生きると宣言し、次期将軍にもなり得る立場になります。
加冠役の朝倉義景は義昭の後見についたと諸国に知らしめました。
見届け役として儀式に呼ばれていた二条晴良は、義昭が上洛した暁には次の将軍に任命するという約束を帝から取り付けていました。
義昭元服の後は上洛、と浮かれる義景ですが、朝倉一門の中には上洛に反対する勢力も多くいました。
今の越前は一向一揆の対応に苦慮しており、将軍の跡目争いよりも内政に力を入れるべきと考える者が多くいたのです。
朝倉景鏡(手塚とおるさん)と家老・山崎吉家(榎木孝明さん)もその一人。
元服祝いと称して開かれた宴に招待された光秀は、上洛を唱える義景と反対する景鏡の言い争いに対し、京や畿内の情勢に詳しいと意見を求められました。
無礼講のため存分に話せと言われた光秀(長谷川博己さん)は、今の一条谷の状況は、戦に向かうそれではないと話しました。
本来、国を挙げて戦に向かうならば、市の物資は侍に買い占められ品薄になっています。
しかし、一条谷の市は活気に満ち物資が溢れていました。
義景だけが戦に行く気になっていても周りの者が動かなければ戦など出来はしない、と光秀は言い放ちます。
前久の名代として越前を訪れ、宴で祝いの舞を披露した伊呂波太夫は、思案する光秀に上洛を首尾よく進められるのは義景ではなく光秀なのではないかと問いかけます。
斎藤道三や織田信長(染谷将太さん)、松永久秀(吉田鋼太郎さん)など力ある人物が気にかける光秀がいつまでも燻っていていいのか、そろそろ船出の時期ではないかと太夫は言います。
乗る船がない、と嘆く光秀に、太夫は信長の名を挙げるのでした。
光秀は単身岐阜城に入ると信長に単独で義昭を支えて上洛してはどうかと提案します。
驚く信長ですが、光秀の説得に頷き、義昭を美濃に連れてくるようにと命じました。
越前に戻った光秀は、義景ではなく信長を頼みにした方がいいと義昭と奉公衆を説得します。
光秀の策に同意し、美濃に行く決意を固めた義昭ですが、朝倉義景の怒りを危惧していました。
義昭直筆の手紙を受け取った義景は、怒り狂い国境を封鎖、義昭一行を越前から絶対に出さないようにと命令を下しました。
恐れていた通りの義景の反応に、光秀は家族を秘密裏に逃がすことを決意。
三淵藤英(谷原章介さん)は、朝倉一門の上洛反対派に連絡を取り、この状況を一変させる奸計を巡らせたのです。
ある日の朝倉邸にて、義景の嫡男が毒を飲まされ亡くなりました。
義景の嘆きは深く、もはや上洛などしていられる心境ではありません。
ひと月後、義昭一行は美濃に旅立つことになり、三淵は義景に挨拶に向かいます。
意気消沈した義景は、三淵の挨拶を受けながら、信長のような成り上がり者に上洛と言う大事を支えられるものか見ものだと言い放ち、席を立ちました。
光秀は、義昭の供をすることになり、秘密裏に越前を脱出しようとしていた家族らは、家老・山崎の采配により国境まで送り届けられることになりました。
主である義景に追従していた山崎ではありますが、本心では上洛に反対していたため、三淵や景鏡に協力していたのでした。
三淵の奸計により、無事越前を出立した義昭一行は、信長の待つ美濃へと歩を進めたのでした。
前回、第26回「三淵の奸計」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは、第27回「宗久の約束」のあらすじと感想です。
信長の考え、義昭の考え
1568年7月、美濃・立政寺に入った足利義昭を織田信長は家臣を引き連れて出迎えました。
信長は、自分の中では義昭は既に将軍になっているとして、義昭のことを「公方様」と呼びかけます。
信長は一千貫もの大金を義昭に「忠義の証」として献上しました。
大量に積み上げられた金銭を見た義昭は、これで貧しき者が救える、と信長に感謝を伝えます。
信長は、戦に興味を持たない義昭に違和感を覚えました。
岐阜城にて、信長は光秀にあの金は貧しき者に使うために渡したのではなく、戦のための備えとして渡したのに、義昭は全く分かっていないと落胆しました。
6歳から寺に入っていた義昭なので、戦に不慣れなのは仕方がないこと、寧ろ、よく戦をする決心をしたものだと光秀は義昭を庇いました。
しかし、義昭を活かすも殺すも信長次第、と光秀は言います。
あのような義昭を見て、信長はこれからどうするつもりだと尋ねると、信長は光秀と話した通り、義昭を奉じて上洛し幕府を再興して諸国をまとめ大きな世を作る、と宣言しました。
上洛の妨げとなるのは京の三好と近江の六角。
しかし、信長の妹・市が近江の浅井長政に嫁いでおり、浅井からは信長と共に義昭を奉じて上洛するとの連絡を受けていました。
信長は浅井を上手く使おうと思うと言い、今後のことを相談するために近江の浅井へ行くと言います。
光秀には京へ行き三好の動向と朝廷が信長側に味方する気があるのかどうか探って来いと命じました。
信長は、京に既に木下藤吉郎(佐々木蔵之介さん)を潜入させていると言います。
京に潜入
京に入った光秀は、魚売として京に紛れている藤吉郎と接触しました。
山伏の格好をした光秀を見て、その格好では京では目立つと隠れ家に案内します。
藤吉郎は、光秀の衣服を手配すると京の情勢を語り始めました。
今、京の街は三好と織田が戦を始めると噂になっていると言います。
その噂は藤吉郎が流したものでした。
藤吉郎は、「織田は強い」と市中に噂を流し、三好方を動揺させる狙いを持っていました。
良い案だと、光秀は作戦を褒めました。
藤吉郎は、信長はいつも無茶な要求ばかりするがその分約束は守ってくれる、と信長を大層慕っているようでした。
藤吉郎が流した噂のため、京の住人は避難する者でごった返していました。
三好の配下に織田のものだと知られると命の保証はありません。
光秀は供をするという藤吉郎を振り切って望月東庵(堺正章さん)宅を尋ねました。
懐かしい再会に東庵はもちろん、駒(門脇麦さん)はびっくりして声も出ない様子。
そこに藤吉郎が乱入してきました。
藤吉郎と東庵は駿河で面識があり、この偶然に驚きつつも挨拶を交わします。
駒には、かつて字を教えてもらったと、丁寧に感謝の気持ちを伝えるのでした。
織田の配下に付き、戦で活躍して出世した、と大きな声で話し始める藤吉郎。
すると東庵は慌てて今奥で療治を受けているのは三好長逸の縁の者だと告げます。
藤吉郎は、思わず胸に隠し持った短剣を手にし、奥の襖を睨みつけます。
東庵は、ここは療治の場所だから騒ぎは起こすな、と釘を刺して三好家の待つ部屋へと去って行きました。
駒の思い
光秀は、駒と共に奥の一室に入りました
義昭を奉じて信長と共に上洛すると駒に告げ、義昭の上洛について朝廷がどう思っているのか探りに来た、と正直に打ち明けます。
そして、朝廷と関係が深い伊呂波太夫に会わせて欲しいと駒に頼んだのです。
織田が京に入るということは、戦になるのか、と駒は光秀を問い詰めます。
また京は焼け野原になってしまうのか、と嘆き怒りをあらわにする駒に、やむを得ない、と光秀は答えます。
戦のない世にするために、今戦をすること必要という光秀に、駒は怒りをぶつけました。
もし、光秀が昔のままの光秀ならば、義昭に上洛をするのならば刀を抜かずにおいでくださいと、信長に、畑に火を点けないで、と伝えて欲しいと訴えます。
何も言えない光秀。
駒は静かに太夫のところに案内しますと口にすると外に出ました。
三好の強さ
太夫は遊女が多く住む里にいました。
踊りが上手いと評判の娘を一座に誘うため、そこに来ていたのです。
よく来るのか、という光秀の問いに、ここは自分が生まれたところだと人伝に聞いたので来るようになったと生い立ちを話します。
生まれてすぐに近衛家の門前に捨てられ、近衛家に拾われたと言います。
ここへ来ていつも思う、世の中は醜いか美しいかどちらかだ、と太夫は語ります。
太夫は、朝廷は三好が勝つか織田が勝つか息を潜めて見ているところだと言います。
織田が勝つようならば義昭を将軍にする用意があると言います。
その証が欲しいのならば、朝廷の偉い人に合わせると太夫が言うと、光秀はそのように頼むと返したのです。
しかし、三好は強い、と太夫は言い募ります。
三好には堺の豪商が付いているため、お金が豊富にあるのです。
お金があればなんでもできる。
三好は古くから堺の豪商と付き合いがあるため強いのだと太夫は言います。
その中でも今井宗久は鉄砲の弾薬を一手に扱っており、莫大な利益を上げています。
この上洛戦は長い戦になるだろうと、太夫はため息をつきました。
すると、その話を聞いていた駒が、今井宗久と面識があると話し始めたのです。
かつて二条のお寺に行った折、駒の作る薬に興味を持ち、売ってみたいと言われたことを話しました。
その時は、利益のために薬を作っているのではないと断ったと言います。
駒は、会合衆から三好に金が渡らないようになれば、戦はできないのかと太夫に問います。
戦はお金で動く、と太夫が言うと、明日二条の寺に行くという宗久に会ってみないかと駒は光秀を誘ったのです。
宗久との対面
翌日、宗久の点てた茶を勢いよく飲み干した駒。
あまりの飲みっぷりに宗久が声をかけると、喉が渇いていたもので、と駒は返しました。
それほど、大事を持ち込んだのだと宗久は笑います。
駒は、もう京で戦は見たくないのだと語りました。
薬は命を救うもの、しかし、薬に興味を示した宗久が命を奪う弾薬などを三好に売るのはおかしい、と訴えます。
駒は宗久に薬を売ってもらってもいいと決意しました。
だから、宗久には戦の手助けをしないで欲しいと訴えます。
駒の主張を聞いた宗久は、自分も京が焼かれる様は見たくない、と答えます。
しかし、三好と手を切っても織田が堺を守ってくれるとは限らない、わからないことには踏み込めない、と反論します。
しかし駒は根気よく宗久を説得し、光秀に会って欲しいと懇願したのです。
宗久は光秀の名を聞くと表情を厳しくし、隣に控えている光秀に会うために襖を開けたのです。
宗久は光秀にも茶を振る舞います。
光秀の名は帰蝶からよく聞いていたと、と宗久は言います。
帰蝶は馬の鞍、鉄砲の弾薬まで宗久から買っていたというのです。
織田の戦支度は全て帰蝶が揃えているのと噂されている、と言います。
そしてその帰蝶がもっとも頼りにしているのが光秀だと言うのです。
光秀はその言葉に首を振って見せます。
堺の商人は異国との商いで生活をしています。
それが守られるのならば、三好でも織田でもどちらが勝っても良いのだと宗久は言います。
今度の戦は織田が有利だと宗久は見ています。
なぜなら、織田には次の将軍・義昭という旗印がしっかりとあるのですが、三好が担いでいる義栄という旗印は摂津で倒れてしまい、纏まりに欠けると見ています。
商人は融通した金が戻らないのに、金を出さない、鉄砲を売ったりはしない。
三好から離れても構わない、しかし、織田に約束をしてもらいたい、と宗久は条件を出してきました。
京の街に火はかけぬ、堺を守ると約束して欲しい、と言い募るのです。
その証に、上洛の折には鎧兜を着ないで来て欲しい、と言います。
その条件を飲むのならば、堺の豪商たちも文句は言わないだろうと、宗久は信長に約束を求めたのです。
重大な決断を迫られた光秀は、宗久の点てた茶をゆっくりと飲み干したのでした。
信長の決断
信長に宗久との約束を話すと、信長の側近たちから怒号が湧き上がりました。
これから三好や六角と戦わなければならないのに鎧兜を脱いで上洛などありえない、と柴田勝家は叫びます。
稲葉良通も光秀は京に三好の動向や朝廷の意向を探りに行ったはずなのに戦の仕方を教えてもらってきたのかと罵倒します。
他にも、光秀を罵倒する声が多数聞こえてきました。
光秀は、今回の上洛では戦の強さを見せつけるのではなく、京の民の心に気配りをしなければならない、民を恐怖に落とすのではなく信頼を勝ち得なければならないと反論します。
堺の豪商から三好への金が途切れるということは、三好は近江の六角に援助ができなくなり、三好の援助がない六角など織田にとっては簡単に倒せる相手です。
まず、三好への金の流れを立つことが重要だと光秀は説くのですが、信長の側近に耳を貸す者は誰もいませんでした。
喧々囂々とする会議は信長の一喝で収まりました。
上洛に関しては、織田のみにて決めることはできないとして、義昭と相談すると信長が言うと、配下は頭を下げたのでした。
信長が美濃の立政寺に滞在する義昭を訪ね、鎧兜なしの入京を説明すると、義昭は歓喜しました。
平和主義の義昭は、京の人々を恐れさせず安心させることが肝要であるといい、素晴らしい策であると三淵に同意を求めました。
三淵は、義昭にふさわしい上洛ですとその案を肯定します。
三淵が信長に意見を求めると、信長は義昭の意を汲んで上洛すべき、と答え鎧兜なしの上洛を了承したのです。
義昭の御前を離れた信長は、自分の意見は柴田と同じだと言い放ちます。
本来ならば義昭の案は否であるが、そのことを光秀の腹に収めておけ、と告げました。
しかし、光秀が心配していることもわかる、と告げます。
光秀の心配は上洛後のことです。
信長はそれに理解を示しました。
そして、まずは六角を討とう、と言ったのです。
そして、今後に関わることとして光秀に問いかけます。
光秀は今後義昭の側に付くのか、それとも信長の家臣になるのか、今決めよ、と信長は言いました。
光秀は、私の心は決まっております、と言い、将軍のお側に参ります、とはっきりと答えました。
光秀の答えを聞いた信長は、「残念だがわかった、以後、そのように扱おう」と言うと立ち去りました。
その年の9月、織田は近江の六角を攻め、勝利を得ました。
そして京に入る時、京には三好の姿はありませんでした。
反対勢力がない中での上洛のため、武装する必要のなくなった上洛軍は鎧兜を脱ぎ、京に入ってきました。
久しく息を潜めていた室町幕府が動き始めた瞬間でした。
次回、第28回「新しき幕府」
ついに上洛を果たした足利義昭。
織田軍は勢いに乗り周囲の三好勢をも倒していきます。
光秀も将軍奉公衆に取り立てられるなど、活躍が認められてきました。
義昭は、先の将軍・義輝暗殺に関わったとされる松永久秀の処分について、その処遇を信長に任せる代わりに、幕府の政務を代々将軍家に使えてきた摂津晴門に任せたいと言い出しました。
幕府衰退の原因とも言える摂津の起用は、光秀たち奉公衆に不安を感じるのです。
最後に
今回のお話は、駒の強い意思が感じられる回でしたね。
もう戦は見たくない、京を焼け野原にしたくない、という強い思いで、陣内孝則さん演じる今井宗久と難しい交渉をやり遂げました。
決意に満ちた表情が素敵でしたね。
光秀は、難しい決断を迫られる回でした。
鎧兜なしの上洛、そして、義昭の家臣となるのか信長の家臣となるのか。
ちょっと残念だったのは、宗久の問いかけに対し、光秀が無言を通したことです。
気持ち的には宗久の言うとおりにしたかったのだと思うのですが、光秀の強い言葉、態度などが見られたら嬉しかったかな、と思いました。
ま、光秀だけで決められることではないのはわかってるんですけどね。
対して、染谷翔太さん演じる信長が随分と貫禄が出たように感じました。
自由に意見が出せる会議の場を一喝で抑える威厳、不安を感じていようがそれをおくびにも出さず義昭を立てる姿、家臣の気持ちを理解する寛容さ、信長の成長・勢いを感じました。
邪魔する勢力を全て排除して戦のない世、大きな国を作ろうと勢いを増す信長と、貧しい民のためにと考える義昭との間に深い溝が刻まれるのは早いぞ、とこれから暗雲が立ち込めそうな気配に戦々恐々です。
さて次回、摂津晴門という片岡鶴太郎さん演じる曲者が現れますね。
ひと波乱もふた波乱もありそうな気配に、ドキドキしながら見ようと思います。