毎週日曜日20時から、NHK総合他にて放送中の大河ドラマ「西郷どん」。
2018年8月5日、第29回「三度目の結婚」が放送されました。
前回、長州征伐の勅命に従い、前尾張藩主徳川慶勝(小宮孝泰さん)を総大将として幕府軍が長州へ出兵しました。一橋慶喜(松田翔太さん)に、采配を振るうよう命じられていた西郷吉之助(鈴木亮平さん)は、川路利良(泉澤祐希さん)と中村半次郎(大野拓朗さん)らに、出陣に先駆け長州の様子を探らせ、幕府への降伏をすすめる一派がある事を知ると、徳川慶勝から許可を得て、単身、岩国へ乗り込み、領主の吉川監物(猪野学さん)と会談。
見事、禁門の変を引き起こした3家老の切腹と、長州藩主の謹慎という条件をもって幕府への恭順の意を示させることに成功し、戦をすることなく長州征伐を終えました。
前回の第28回「勝と龍馬」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
それでは、第29回「三度目の結婚」のあらすじと感想です。
秘めた決意
長州征伐を成功させた吉之助は、薩摩へ戻りました。藩主島津茂久(長田成哉さん)は吉之助の働きを褒めると、父久光(青木崇高さん)にも褒めるよう促します。久光は「大儀である。」と絞り出すように言うと、吉之助は丁寧にお礼を言うのでした。
藩主への挨拶のあと、いつも鰻を捕っていた川のほとりで一蔵と二人になった吉之助は、慶喜が幕府さえ残ればそれでよいと考えている事を話し、長州征伐も、幕府の脅威である、長州と薩摩を互いに戦わせ、力を弱らせようとしたのだと言います。
そして幕府を潰す事を考えていると打ち明け、薩摩藩内で力を持つ一蔵に協力をお願いしました。しかし一蔵は、討幕を掲げた長州が孤立し、大打撃を受けた例を出し、吉之助を止めました。
反対を受けながらも説得をしようとする吉之助に「ついていけん。」と一蔵は言い、二人の話は終わりました。
話の後、吉之助が子供たちに交じって鰻取りを始めたところ、川に懸かった橋の上から糸(黒木華さん)が大きな荷物を背負って歩いてきて、鰻を捕る吉之助を見つめているのを一蔵が発見します。
糸は立ち止まった事を、前を歩く女性に叱られていて、オドオドしている様子でした。
雪篷と再会
実家に戻った吉之助のところへ、大山格之助(北村有起哉さん)、海江田武次(高橋光臣さん)が駆け付け、薩摩への帰りを祝う宴が開かれました。二人は吉之助が単身岩国に乗り込み、戦を終わらせた事を褒めたたえます。
俊斎は、一蔵がこの場に顔を見せない事を、吉之助が出世したのを妬んでいるからと言い、大山が「酒がまずくなる。」と話を止めさせました。
話題が変わって、吉二郎(渡部豪太さん)の妻の園(柏木由紀さん)が「こげん立派な義兄がおられる家に嫁に来させてもろて、まっこてあいがとさげもす。」と言うと、吉之助は「礼を言うのはこっちじゃ。琴たちが嫁に行って女手がなか家に、お園どんが来てくれて大助かりじゃ。赤子まで授かっての。まことにめでたか。」と感謝します。
そんな吉之助に、手伝いに来てくれていた琴(桜庭ななみさん)が、吉之助にも嫁を貰って欲しいと言い出します。大山と俊斎も琴に加勢し結婚をすすめると、それまで黙っていた吉二郎も一緒になって嫁取りを!と言い出しました。
吉之助は、「今それどころでない。」と渋ります。西郷家は吉之助以外全員で吉之助の結婚話で盛り上がりました。
吉二郎夫婦は、早速吉之助の嫁候補を募ると、大勢の女性が西郷家へ詰めかけました。吉二郎が、面接に来た女性に「借金がありますが、貧乏暮らしに耐えられますか?」と告げると黙り込んでしまいました。
そこへ吉之助が城から戻ってくると、集まっていた女性たちが色めき立ちます。何も知らない吉之助がこの状況に困っていると、後ろの方からほっかむりをした人が「吉之助さぁ、あたいを選んでたもんせ。」と言って現れると、吉之助の前で頭にかぶっていた布をとって顔をみせます。
「雪篷さぁ!いつ島から戻られたとでごわすか?」沖永良部島で吉之助の命を助けてくれた川口雪篷(石橋蓮司さん)でした。吉之助は雪篷との再会を喜び、行くところがないという彼を家に迎え入れます。吉之助は雪篷の赦免を願い出ていたようです。嫁候補の女性たちは、雪篷の勢いに押され、退散していきました。
遠慮のない雪篷の突然の登場に、熊吉(塚地武雅さん)は戸惑います。琴は「人が増えるならなおさらお嫁さんを取った方がよか。」と嫁を取るよう改めてすすめますが、吉之助は島に妻と子がおると言い、頑として受け入れません。
雪篷も「確かに島妻は薩摩に連れて来る事は出来ん。じゃって薩摩の男は皆、薩摩で本妻をもらう。じゃっどん、そうせんところが、西郷どんちゅう男なんじゃろうな。」と吉之助の考えを支持しました。
しかし琴は「跡取りはどうする?父上と母上に叱られもす。」と言うと吉二郎も「御先祖様に申し訳が立たない。」とこちらも意見を曲げません。熊吉も吉之助不在の家を守ってきた吉二郎の意見を支持します。
吉二郎は自分のわがままを聞いて欲しいと、跡取りを懇願するのでした。
嫁取りの君命
翌日、急遽城に呼び出されていた吉之助は、久光に、参勤交代を再開した原因が、長州征伐の成功で幕府が力を盛り返してきたからだと言われます。
言いがかりに近い久光の言い分に、「仰せの通りにございもす。」と吉之助は涙を見せて謝り、その反応に驚いた久光は黙り込み、大久保一蔵(瑛太さん)に上京させ、朝廷から幕府へ参勤交代の取りやめを命じてもらうよう働くという、吉之助の尻拭いを命じたのでした。
話が終わったあと、城の廊下で吉之助に一蔵は「国父様のご機嫌を取り、懐に入り込もうちしちょっとか?」と聞きます。吉之助は、慶喜が近く再び長州征伐をするだろうと予想し、薩摩は長州の味方につこうと思っている事を打ち明けます。
「薩摩と長州が組めば、他藩もついてくる。それにはまず、国父様の気持ちを動かさねばならない。そん為には媚びも売るし、偽りの涙も流す。」と久光への態度もその為であると言います。そしてもう一度、一蔵に協力を求めました。
二人が話しているところに、桂久武 (井戸田潤さん)が藩主の言葉を告げにやってきました。「今や西郷吉之助は、薩摩を代表する人物。そんな西郷に、いまだ嫁も嫡子もおらんのかと嘆かれておられる。そいはもう鎌倉以来の武門、島津の恥じゃ。はよ嫁を取れ。君命じゃ。」
君命話で話は中断され、一蔵は「考え直せ。」と吉之助に言い、去っていきました。
糸の気持ち
城から戻った一蔵宅には、妻の満寿(三村里江さん)に兄の嫁取りについて相談しに来ていた琴がいました。一蔵は「また嫁取りの話か。」とため息をついて、明日また上京する事を満寿に伝えます。吉之助もそのあとに筑前、福岡と回って上京する事も言い、「嫁を選ぶ暇などなか。」と琴に静かに言うのでした。
琴が帰宅した後、一蔵は満寿に先日見かけた糸について調べるよう頼みます。満寿は調べる相手が女性だったことに少し機嫌を悪くしましたが、引き受けました。
琴は翌日になっても、庭先で薪を割っていた吉之助に嫁を取るよう食い下がります。そこへ糸と、父の岩山直温(塩野谷正幸さん)が満寿に連れられて西郷家にやって来ました。出世の祝いに来たとの事で、糸は鯛を持って来ていました。
家の中で話を始めると、以前赤山靱負(沢村一樹さん)のお供で祝いの席に鯛を持って来た糸に、郷中仲間が酔っぱらって鯛を台無しにして、叱られた話をして懐かしみ、盛りあがります。
今回、直温の供で来た糸に熊吉が「里帰りでごわすか?」と尋ねると、直温が海老原に離縁されて岩山家に戻ってきた事を明かします。
不穏な空気が流れて琴が「糸さぁ、恥ずかしがる事はあいもはん。兄さぁも一度嫁に逃げられちょ。」と言うと、満寿が「吉之助さぁにぴったりの人じゃち、思いもはんか。」とすすめると、琴も吉二郎も「糸さぁなら家の貧乏のこつも、よう分かっちょ。」と喜んで賛同します。熊吉も糸が昔から吉之助を慕っていたと口を滑らすと、話は糸と吉之助の結婚へと傾きます。
糸は話を止め、出世の祝いに来ただけと、帰ると言います。満寿は「だまし討ちのようなことをしてすんもはん。私は最初から吉之助さぁと糸さぁを引き合わせるつもりでした。」と正直に言います。
満寿は各地を駆け回る吉之助には、国元でしっかりと家を守り、跡継ぎを生んでくれる嫁が必要である事を力説すると、琴と吉二郎も大きく同意します。今度ばかりは雪篷も喜んで二人の結婚を祝福します。父の直温も同意している様子です。
このまま話が決まるかに思えた矢先、園が産気づきます。慌てて皆で出産の準備を始めようと動き出すと、糸は産婆さんを呼びに外へ出ていきました。
糸の俊足のおかげで園は、無事女の子を出産。改めて糸が頼りがいのある人だと言って、皆が糸に嫁に来てもらえないかと懇願します。直温は逆に吉之助に「糸をもらってくいやんせ。」と頼みます。
しかし糸は「私は、西郷様の妻にはふさわしくあいもはん。私が離縁されたのは、そいは私に子が出来んかったからです。」そう言って頭を下げると、西郷家から出ていきました。
糸の後ろ姿を切なそうに見送る吉之助でした。
岩山家に戻った糸は、兄嫁のトキ(植木夏十さん)に辛く当たられていました。せっかくの再婚話を子どもが出来ない事を打ち明け、自ら潰してきた糸をよく思っていませんでした。
トキの糸に対する邪魔者扱いに、兄の直一郎(ミョンジュさん)も父も何も言い返せずにいました。
岩山家の描写が流れましたが、居場所のない糸の心細さが伝わって来て、身に詰まりました。
正直すぎるプロポーズ
翌日、子供の世話をしながら家事をしていた糸に、男性が訪ねてきたとトキが呼びに来ました。糸が部屋に行くと待っていたのは吉之助でした。
吉之助は昨晩、寄ってたかって家族たちが糸を嫁にしたがり騒ぎたてた事をまず謝ります。そして自分はすぐに京に戻らないといけないので、自分の嫁になる人は気の毒だと言います。しかし糸は「立派だと思いもす。そげな大変なお役目を吉之助さぁは一人で気張っておられもす。私はそげな吉之助さぁを尊敬しちょいもす。」と言います。
糸の言葉を聞いてうつむいた吉之助は、意を決したように姿勢を直し、「糸どんさえ良ければ、あん家に来てくれもはんか。」とプロポーズします。
驚く糸に「おいも一人目の妻には離縁を告げられもした。二人目の妻と子は島においもす。そん上、三人目の妻になってくれち、図々しかこつ極まりなか。そいを承知の上でお願いしちょ。糸どんが来てくれたら、家の者も喜びもす。」と言葉を重ねます。
糸はまた子供が出来ないから離縁された事を話すと「そいでもよか。そげなこつは天に任しもんそ。」と吉之助は笑顔で返します。
しかし糸は、吉之助が居場所がない自分を憐れんで嫁にもらおうとしている事を見抜き、哀しそうに笑います。
「おいには女子を憐れんだり、女子に惚れたりしちょっ暇はなか。そればかりか、いつまでこん命がもつかさえ分からん。糸どんじゃって言うが、おいは今、とんでもなかちこつをしようとしちょ。日本中がひっくり返るような…。おいはのう、民の為の国を造りたか。皆が笑って暮らせる国を。そん為にはどげんしてもやらねばならんこつがある。
一蔵どんには分かってもらえんかった。じゃっどん、糸どんなら、おいの志が分かってくれそうな気がして…。ひとりでも分かってくれる人がいたら、心強か。…どげんな?」と吉之助は正直すぎる自分の気持ちを糸に語りかけました。
しかし、糸は首を縦には振りませんでした。
自宅に戻った吉之助は、家族に糸に断られた事を謝ります。プロポーズなのに「惚れる暇はなかどん、家の者が喜ぶから。」と女心を分かってない発言をしたと、雪篷は大笑いします。
吉二郎は「まず相手に惚れる事じゃ。そっから夫婦は始まるち。」と言っていた父吉兵衛(風間杜夫さん)の言葉を出して、兄を諭します。琴も呆れて大きくため息をつきました。
橋の上のプロポーズ
吉之助が旅立つ日、岩山家では直温が糸に本当の気持ちを聞いていました。
直温は「おはんには、すまん事したち、ずっと思っちょった。わしが決めた縁談で、辛か思いをさせてしもて。今度は、おはんが決めたらよか。」と言います。
父の気持ちを知って言葉に詰まる糸に、相変わらず辛く当たってくる兄嫁。子供が泣きだしたのを糸のせいかのように言ってきました。
「じゃかましか。自分の子じゃっとが。」父は兄嫁に一喝してくれた上、「糸、もう二度と会えんかもしれんど。」と糸の背中を押してくれました。
糸は西郷家に走って西郷家に着いたものの、既に吉之助は出発していました。糸は慌てて走り出します。橋の上で吉之助をみつけ、追いついた糸。
「死んだらやっせん。待っちょいもす。あん家でお帰りを待っちょいもす。西郷吉之助の妻として、新しか国を一緒に見たか。ふつつか者じゃっどん、よろしくお願い致しもす。」
糸がプロポーズし返しました。
吉之助は何度も礼を言い、旅立っていきました。その後ろ姿に糸は「西郷吉之助!チェスト!気張れ!」と声をかけたのでした。
熊吉と琴がやっと追いついて、糸に「糸さぁ、よかったな。」とお祝いの言葉を言いました。
やっと糸と吉之助が結婚という事になりました。
吉之助が惚れて結婚したのは二人目の妻、愛加那だけで、あとの二人は吉之助の優しさで結婚したって感じでしょうか?
糸どんは前から吉之助の事が好きだったし、これはこれで良かったと思います。
しんどい回が続いたので、今回は平和な感じの話で落ち着きました。
あと、雪篷が島から帰って来て、吉之助に会った時に背負っていた大風呂敷が、沖永良部島で吉之助を見送った時に振っていた、「革命」と書かれた旗でした。
「革命」とちゃんと読めるように背負われていたのが面白かったです。
次回、第30回「怪人 岩倉具視」です。
前にチラッと出た岩倉具視の話です。