2020年大河ドラマ「麒麟がくる」は、NHK総合にて日曜夜8時、BSプレミアムにて午後6時、BS4Kにて朝9時に放送中です。
前回のあらすじ
1565年、永禄の変が起こり、二条城に住まう将軍・足利義輝(向井理さん)が襲撃され命を落としました。
実行犯は亡き三好長慶の子や松永久秀(吉田鋼太郎さん)の息子たち、三好一派です。
京の実権を取り戻そうとする三好一派は将軍亡き後、1番将軍に近い義輝の実弟・覚慶(滝藤賢一さん)を寺に幽閉しました。
まさか、将軍の命までは取らないと考えていた松永久秀ですが、息子たちの暴挙に呆然とします。
久秀は急いで覚慶が幽閉されている寺へと向かいました。
厳戒態勢が敷かれる中、強引に中に入り覚慶の部屋の前に平伏した久秀は、義輝の死に対し弔意を表しました。
そして、次の将軍になりたいかどうか、覚慶の意思を確認したのです。
覚慶の答えは「死にとうはない」というものでした。
久秀は、将軍奉公衆に命じ、覚慶を甲賀の和田惟政の下へと脱出させたのでした。
その頃、永禄の変で義輝が命を落としたと知った明智十兵衛光秀(長谷川博己さん)は、命までは取らない、京から追放するだけ、と言っていたはずの松永久秀に抗議するため、大和へ行きたいと切望していました。
しかし、越前に世話になっている光秀が出国するには朝倉義景(ユースケ・サンタマリアさん)の許可が必要です。
光秀の訴えを聞いた朝倉家家老の山崎吉家(榎木孝明さん)は、突然大和に行きたいと言い出した光秀に困惑していました。
主君・朝倉義景に相談すると、あっさりと出国を許可します。
美濃から逃れ越前で寺子屋の師匠に甘んじているが、京では将軍の覚えもめでたいという光秀のことを、使える刀なのかなまくらなのか、と評していました。
義景の計らいにより、大和に向かった光秀は久秀と面会すると怒りを爆発させました。
光秀の怒りを感じた久秀は、息子のしでかしたことなので、自分も責任を取ると光秀に着火した鉄砲を渡し、自分を撃てと銃口を己の額に当てました。
銃口を握り、光秀を見据える久秀の迫力に光秀は迷い、激しい咆哮を上げると久秀から銃口を逸らし庭に向けて発砲しました。
久秀は、次の将軍に近い義輝の実弟・覚慶が命を狙われている、と打ち明けました。
奉公衆により今は甲賀の和田惟政の所に逃れていると話すと、朝倉義景から書状が届いたと告げました。
そこには、光秀に覚慶が将軍の器であるかどうか見極めてこい、と書かれていたのです。
光秀は、割り切れぬ思いを持ちながら甲賀に向かったのでした。
京では、駒が作る万能薬が評判となり、また、伊呂波太夫(尾野真千子さん)が方々から注文を取り付けてくるため、駒も東庵も薬作りに奔走していました。
盗賊被害のため、当座の生活資金を稼ぎたい一心で、短期間だけ作るつもりだったのに、余りにも大きな仕事になってしまったことに駒は当惑していました。
そこに、関白・近衛前久(本郷奏多さん)が伊呂波太夫を訪ねてやってきました。
前久は、次の将軍任命に関することで、三好一派から監視されていました。
姉弟同然に育った伊呂波太夫に愚痴をこぼすのですが、太夫は三好の言うようにしてやればいい、と助言します。
どうせ誰が将軍になっても同じ、将軍という御輿に拘っているのは武士たちだけ、そんなことで前久の命に万が一のことがあってはいけない、と言うのです。
前久は、血筋から言えば三好一派が推す義栄ではなく実弟の覚慶だと考えているというのですが、その意見を押し通せば戦が起こる可能性もあると危惧します。
太夫は、戦が起こるなら起こればいい、そして武士が全部居なくなればいい、そうしたら平和な世の中がやってくるのに、とこぼすのでした。
甲賀で覚慶と会うことができた光秀は、覚慶の言動を観察していました。
兄・義輝の信頼を得ていたと紹介された光秀に、覚慶は自分に将軍が務まるだろうかと問いかけてきました。
死にたくない一心で脱出してきたが、戦も好まず、人を殺すことなど思うだけでも恐ろしく、自分は兄とは違う、と心情を吐露する覚慶。
奉公衆は弱気な覚慶を励まし、還俗してもらう、と告げました。
目を瞑り奉公衆の言葉に耳を傾ける覚慶の様子を、光秀はじっと観察していました。
越前に戻り、義景に目通りすると、覚慶の将軍としての器はどうかと尋ねられます。
期待に満ちた義景に光秀が告げた言葉は、「次なる将軍の大任にあの方はいかがなものか」という言葉でした。
その頃、京では関白・近衛前久が次の将軍を帝に推挙する日がやってきていました。
前久が言上した名前は「足利義栄」
三好一派が推挙する人物でした。
前回、第24回「将軍の器」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは、第25回「羽運ぶ蟻(あり)」のあらすじと感想です。
美濃へ
1566年、近江矢島御所に還俗し足利義昭と名を変えた覚慶が滞在していました。
朝倉を頼り、甲賀を出てきたものの朝倉からは何の連絡もなく、敦賀に3か月も足止めされていたのです。
奉公衆は煮え切らない朝倉の態度に苛立っていました。
越前の朝倉義景に直談判に来た細川藤孝(眞島秀和さん)ですが、義景とは面会できず苛立ちを光秀にぶつけていました。
光秀は、義景の態度がはっきりしないのは自分が義昭は将軍の器ではないと進言したからではないかと考えていました。
1567年8月、斎藤高政の子・龍興を追放し美濃を平定した織田信長(染谷翔太さん)は稲葉山城に入城していました。
11年前、美濃に残った明智の家臣・藤田伝吾(徳重聡さん)から越前の明智家へ文が届きました。
受け取った光秀の母・牧(石川さゆりさん)は、伝吾たちが襲撃で壊れてしまった明智の家を修繕し、田畑を守り、光秀たちがいつ戻ってもいいようにしてあると知ると、喜びました。
牧は、かねてからいずれは美濃に戻りたいと考えていたのです。
光秀が妻の煕子(木村文乃さん)に美濃に戻りたいかと尋ねると、煕子は、子供たちにとってはここが故郷だから、と答えました。
光秀は、牧を連れて美濃へと向かいました。
11年ぶりに戻った美濃・明智の荘が昔のままの姿だったことに牧は喜び、伝吾に深く頭を下げ感謝を伝えました。
その日、牧の帰還に村人は喜び、村人は明智家に集い宴が始まりました。
夜が更け、宴が終わると、光秀は縁側で母と2人語らっていました。
牧は、美濃に連れ帰ってくれた光秀に感謝を伝えます。
もう何も思い残すことはない、という母に光秀は、自分の身はまだ定まっていないからまだまだ母には見守ってもらいたい、と答えます。
牧は、光秀は明智の当主、土岐源氏の血が流れているのだから、誇りを持って思うままに生きろ、そうすればその先にはきっとやるべきことが見えてくる、と光秀を励ましたのでした。
これから進む道
翌日、光秀が稲葉山城の信長を尋ねると、そこに美濃国衆で斎藤高政に与して斎藤道三に反旗を翻した稲葉一鉄(村田雄浩さん)がいました。
高政が亡くなり、その息子・龍興が斎藤家の当主となったものの、龍興を見限り、信長についていたのです。
龍興は肝が小さく国衆は振り回されてばかりだったが、その点信長は違う、これまでのことは水に流してこれからは共に織田家を支えよう、と親しげに話しかけてきたのでした。
信長に目通りがかなった光秀は、美濃平定を祝い、越前に逃れていた母が美濃に戻ったことを伝えました。
信長は、光秀は美濃に戻るつもりがないのかと尋ねてきます。
光秀は、越前での暮らしがあるので、と答えました。
すると信長は光秀に「儂に仕える気はないか」と聞いてきたのです。
光秀は、信長の申し出を断ると、本当は亡き義輝に仕えたかった、と話し始めました。
義輝ならば武家の頭領として全ての武士を束ね世を平らかにしてくれるのではないかと思っていた、と。
しかし、義輝は死に自分はどうしたらいいのかわからなくなった、と信長に答えたのです。
信長は自分も同じだと、答えます。
今川を討った時、光秀は信長に「美濃を平定した後はどうするのか」と尋ねました。
その時、信長は光秀に何も答えませんでした、答えられなかったのだというのです。
しかし1つわかったことがあるといいます。
自分は戦が嫌いではない、ということです。
戦に勝って皆が喜ぶ顔を見るのが好きだというのです。
しかし、この先何処に向かって戦をすればいいのか、それがわからない、と信長は嘆きます。
逃げた龍興は六角や三好一派と組んで美濃を取り戻そうとしています。
美濃の周りには武田、浅井、朝倉などもいて、いつまでたっても戦は終わりません。
どうすればいいか、と尋ねる信長に光秀は「上洛すればいい」と答えました。
新たな将軍に力を貸し、幕府を再興すればいい、と光秀は話します。
まず、畿内を押さえれば信長がかねてから欲していた堺が手に入ります。
無駄な戦を終わらせるためには幕府を再興し、将軍を中心とした平らかな世を畿内を中心に再び築く、武士がまた誇りを持てるように。そうすれば皆大いに喜びましょう。
誰も手出しができない大きな国を作れば、世は平らかになり皆が喜ぶ、と光秀は力説します。
大きな国、とはかつて斎藤道三が語っていたことです。
信長は道三の目指していたことだと知り、乗り気になってきていました。
信長は、次の将軍となる義昭はどんな人物かと光秀に尋ねます。
前将軍・義輝と懇意だった光秀が良いというなら儂は神輿を担ぐ、という信長に光秀は義昭の人物評を語れずにいました。
駒の薬の役割
京では、駒の薬作りは忙しさを増していました。
東庵は嬉しい悲鳴を上げていました。
しかし、治療を受けられない貧しい人々のため、と思ってお寺に卸していた駒の思惑から外れ、母が病気と嘘をついて無料で貰った薬を又売りしている子供がいるというのです。
駒は寺の和尚に激しく抗議し、又売りをしている子供のところにも行くと言って去って行きました。
それを見ていた今井宗久(陣内孝則さん)は駒の作る薬に興味を示していました。
駒は、寺でタダで貰った薬を又売りしている子供の家に行ってみました。
子供の家は困窮しているようですが母は元気で病気をしているようには見えません。
又売りをしてはいけない、と叱る駒の言葉は子供に届かず、稼いで何が悪い、タダで貰った物を売って稼いで何が悪い、それで弟妹が飯を食える、と言い放つ子供に駒は言い返すことができませんでした。
落ち込む駒に東庵は、又売りしても別にいい、と語ります。
金を払える者が金を払って薬を手に入れ、生活に困っている者がそれで金銭を手に入れる。
駒の知らないところで薬が独り歩きして困っている人を助けている、いい薬だ、と駒を励ましたのでした。
義昭の器
光秀が越前に戻ると、家に細川藤孝が来ていました。
さらに、光秀に会いたいという義昭も連れてきていたのです。
義昭は、甲賀にて裸足で逃げ出そうとしているところを見られ、情けない姿を見せてしまった、と恥ずかしげに言います。
そして光秀に、桜の木の下で蟻の姿を見つけたのだと話し始めました。
その蟻は自分よりもはるかに大きい蝶の羽を運ぼうと必死になっていましたが、障害物が多くなかなか巣に運ぶことができずにいました。
仲間が助けようとよってきても、助けはいらんとばかりに他の蟻を振り払って1匹で運んでいたのだといいます。
義昭は、その蟻は自分だ、と言いました。
意地になって1人でやろうとしても将軍は支えがなければできるものではない、正直、これまで僧だった自分が武家の頭領などできるのだろうかと。
しかし、将軍になれば、これまでできなかったことができる、多くの人を救うことが出来る、と思うようになったと語ります。
光秀は、義昭の考えを褒め、将軍がそういう考えならば民も救われる、と言いました。
義昭は光秀に近づくと、自分は義輝ではない、助けがいる、力のある朝倉の力が、と言います。
そして、朝倉義景に執り成してもらいたいと光秀に懇願するのでした。
御輿を担ぐもの
朝倉義景の邸にて、光秀は義景に目通りしていました。
義景は光秀が義昭と会っていたことを知っており、どのような話をしたのか知りたがっていたのです。
蟻の話をしていたと光秀は正直気に語り、義景によろしくと言っていたと話しました。
蟻の話に驚いた義景は、やはり義昭は将軍の器ではなかったか、と落胆しました。
しかし、光秀は実際に話してみたら、思いが変わったと意見を翻します。
義昭は聡明で、弱い者の気持ちが分かる人物。
強い大名の支えがあれば、立派な将軍になれるかも、という光秀の言葉を聞いた義景は、松永久秀からも上洛して信長と共に義昭を支えて欲しいと依頼されていると明かしました。
信長と一緒というのが気に入らないが、義景は義昭という神輿を担ぐ決意を固めました。
義昭は美しい神輿ではないか、その美しい神輿を担ぐのは自分、ならば担ぐ神輿は軽い方がいい、と義景は言います。
しかし、家老の山崎吉家は上洛には莫大な費用がかかると難色を示します。
そこに、義景の嫡男が現れました。
飼っていた鼠が逃げ出したと泣き叫んでいます。
義景は家臣に命じて広く邸内を探し始めました。
光秀はそんな義景の様子をじっと観察していました。
三好一派の推す足利義栄は摂津の富田に滞在していました。
そこに宮廷の官吏がやってきて、義栄を第14代将軍と任命したのでした。
1568年2月のことでした。
次回、第26回「三淵の奸計」
光秀の意見を聞き、義昭を奉じて上洛することを決めた朝倉義景でしたが、気紛れな態度で奉公衆を振り回します。
光秀や三淵藤英(谷原章介さん)はそんな義景に不安を感じるようになります。
朝倉家も決して一枚岩ではないと感じた光秀は、信長に単独で上洛してはどうかと働きかけるのです。
最後に
とうとう美濃が信長に平定され牧が美濃に戻ることができました。
明智の荘を守ってきた藤田伝吾たちの頑張りが胸にしみました。
元通りの明智邸を見た時の牧の喜びようが見ていてとても嬉しかったです。
領主の戻りに村人が喜ぶ姿も微笑ましかったです。
久しぶりの信長の登場でしたね。
これまで「戦は嫌い、したくない」という侍が多い中、「戦は嫌いではない」と言った信長は印象に残りました。
しかしその理由が皆に褒めてもらいたいから、喜んでもらいたいから。
まるで子供のような理由ですが、傍にいる人が上手く舵取りをすれば、戦のない平和な世の中になれるだろうと感じました。
もともと信長は、商才に溢れた人ですからね、早く堺を手に入れて手広く商いをして、戦のない世ができればいいですよね。
駒の丸薬も大変なことになってきましたね。
堺の豪商であり当代髄一の茶人である今井宗久が駒の丸薬に興味を示していましたから、これからどんな風になっていくんでしょうか。
義昭と敵対する三好一派が推す義栄がとうとう将軍となってしまいましたが、光秀たちの推す義昭は巻き返せるのでしょうか?
重い腰を挙げる決意を固めた朝倉義景と、やる気満々の織田信長。
これから京の実権争いはどう転んでいくんでしょうね。
次回「三淵の奸計」、光秀の働きと世の中の動きに大注目です。