2020年大河ドラマ「麒麟がくる」は、NHK総合にて日曜夜8時、BSプレミアムにて午後6時、BS4Kにて朝9時に放送中です。
前回のあらすじ
元亀元年(1570年)11月、織田信長(染谷将太さん)は比叡山延暦寺の助力を得た浅井・朝倉連合軍との戦に苛立っていました。
比叡山に浅井・朝倉、西から三好勢と大坂本願寺、南からは六角勢と一向宗徒が信長に牙を剥き、織田勢は孤立し苦戦を強いられていました。
近江・宇佐山城に入り、浅井・朝倉勢と対峙したものの、その戦いは2か月も膠着したままでした。
信長は比叡山に一気に攻め込もうとするのですが、神仏の怒りを恐れた家臣たちは消極的です。
戦いに参加していた明智十兵衛光秀(長谷川博己さん)は、密かに朝倉の家臣・山崎吉家(榎木孝明さん)に連絡を取り、朝倉義景(ユースケ・サンタマリアさん)との面談を取り付けたのです。
信長に報告後、比叡山に入り朝倉義景と対面した光秀は、かつて世話になった義景の恩に報いるため、双方が無事に領地に帰れるよう心血を注ぐと宣言し、義景にこの戦は今が潮時ではないかと促します。
もう少ししたら越前は雪深くなり、領地に戻ることが困難な時期になってしまいます。
もし、帰れなくなったら冬を越すまで、連れてきた兵たちを養わなくてはなりません。
義景も山崎吉家もそれを承知しているのですが、叡山に陣を布いた以上、叡山の天台座主・覚恕(春風亭小朝さん)の意向を無視するわけにはいかないというのです。
かつて、一向宗との戦いに苦しんだ義景は、叡山の強さを身を持って知っていました。
義景は信長に伝えろ、この戦を止めたければ覚恕に跪け、と言うのでした。
覚恕は、叡山が何年もかけて得た領地や商売を信長に奪われたことを根に持ち、信長に激しい憎しみを募らせていました。
美しい兄にコンプレックスを持ち、醜いゆえに家から出された覚恕は、金銭を持つことで兄を、美しいものを見返そうと考え、金銭に対し、並々ならぬ執着を見せていたのです。
その覚恕と幕府政所頭の摂津晴門(片岡鶴太郎さん)は繋がっていました。
将軍・足利義昭(滝藤賢一さん)が朝倉と延暦寺に対し、和睦の申し入れを何度もしているのですが、信長に激しい怒りを持つ覚恕はそれを受け入れず、また、摂津も信長を排除するために信長を追い詰めるために策略を巡らせていたのです。
そんな中、尾張の小木江城が一向宗徒に襲撃され、信長の弟・信興が討たれました。
退路を絶たれた信長は、京を捨てて美濃に戻ろうとするのですが、光秀はそれではこれまでの苦労が無駄になってしまうと信長を諌めます。
もう一度義昭に和睦の申し入れを頼んではどうか、と進言するのですが、信長は帝に和睦の執り成しを頼むことを思いつきました。
京の御所修繕に力を尽くした信長を助けたいと帝は和睦の勅命を出しました。
これにより、全軍が兵を引き、つかの間の平和が訪れたのです。
信長のために鉄砲を譲った筒井順慶(駿河太郎さん)は、駒(門脇麦さん)の仲立ちにより義昭に目通りが叶い、義昭の養女を娶ることになっていました。
宴席に呼ばれた松永久秀(吉田鋼太郎さん)は、それが血で血を洗う戦を続けてきた長年の宿敵の慶事だったこと憤り、それを画策した幕府のやり方に反発、幕府から離れると宣言します。
光秀も久秀が呼ばれていたことを知らず、久秀を呼んだ摂津に怒りをぶつけました。
元亀2年秋、信長は再び叡山の麓に兵を集結し、叡山の焼き討ちを決行しました。
前回、第33回「比叡山に棲む魔物」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは、第34回「焼き討ちの代償」のあらすじと感想です。
焼き討ちの代償
元亀2年(1571年)9月、信長は比叡山延暦寺を焼き討ちにしました。
僧侶やそこに暮らす人びとを男女の区別なくことごとく皆殺しにしたのです。
光秀は、女や子供などは見逃すようにと家臣たちに命じていましたが、他の武将は信長の命令通り、山中にいる者は全て斬捨てる者も多く、叡山は凄惨な有様となっていました。
覚恕は取り逃がしたものの、信長の命令通り山中のほぼ全ての者を討ち果たしたと、柴田らが信長に報告すると、信長は叡山陥落を喜び、鬨の声を上げたのでした。
討ち果たされた僧侶たちの首が集められている庭に出た光秀は、その夥しい数の首を痛ましげに眺め、頭を垂れました。
その時、信長が光秀に声をかけたのです。
光秀は信長に自分の独断で女子供を見逃したことを告白します。
すると信長は「それは聞かぬことにしておこう」と光秀を許します。
「他の者ならその首刎ねてくれるところじゃ、山中に住む女子供はここに刃を忍ばせている、いずれは我らに牙をむこう、以後は皆殺せ」と言うと、比叡山焼き討ちに関しての光秀の功を褒め、一番手柄としてこの一帯志賀郡2万石を光秀に与えました。
義昭の怒り
京・二条城にて義昭は信長の冷酷な戦のやりように怒りをぶちまけていました。
平伏した摂津や三淵藤英(谷原章介さん)らに、「僧侶は皆首を取られた、女子供もことごとく斬られた、何故この戦を止めようとしなかったら!」と摂津らを叱責しました。
信長は何をしでかすかわからぬ男。幕府は信長の言いなりで、叡山滅亡の片棒を担いだ、仏法の明かりが消え世に闇が訪れるのも、幕府が無能ゆえだと、京の者たちに言われるだろうと義昭は叫びます。
摂津は、幕府はこれまで織田に対してはっきりものを言えなかった、遠慮があったといいます。それは義昭が信長を大恩人として扱っていたから。
そのため、幕府は信長に何も言えずにいたのだと摂津は反論します。
このようなことをしでかす信長との関わりを絶った方がいいのではと摂津は言い募りました。
それを聞いていた三淵は、そのようなことができるのかと摂津に問います。
摂津は、大和で松永久秀と敵対している筒井順慶に幕府から援軍を送ればいい、と言い始めました。
松永の後ろ盾は信長です。
筒井に援軍が来て困れば松永は信長に助けを求めるはずです。
そうなれば、戦の内実は幕府と織田のぶつかり合いとなり互いの立場がはっきりするというのです。
そうなったとしても幕府に勝算はあるのか、と三淵は再度口を挟むのですが、摂津は強気に勝つように手を打つ、と言い放つのです。
織田が幕府の敵とわかれば近隣の大名も幕府に従うといいます。
誰も田舎大名に頭を下げたくありませんから、と。
戦は所詮数です。
大軍を集めた方が勝ちなのです。
問題は、公方様にその覚悟があれば、と摂津は言い放ったのでした。
義昭は二条城を開放し、叡山から逃れてきた怪我人たちの治療を行っていました。
筒井はその怪我人たちを精力的に治療する駒の姿を見つけると声をかけました。
大和の国を穏やかに平らかにするために、松永久秀と戦う覚悟を決めたといい、幕府の力を借りるために京にやってきていたのです。
叡山が見せる悪夢
叡山焼き討ちの凄惨な戦場が頭から離れず、悪夢となって光秀を苦しめていました。
その夢で、倒れ伏す人々の中に愛娘の姿を見つけた光秀は夢の中で娘の名を叫びました。
光秀の嫡男・十五郎の泣き声で目覚めると、光秀は夢でみた娘たちの姿を探して家中を巡ります。
そして次女・たまの姿が見えないことに光秀は気づきました。
たまは珍しい鳥がいると聞いて市場へと来ていたのです。
藤田伝吾と共に美しい鳥に見入っていたたまは、突然飛んできた石が頭に当たり、血を流しました。
周囲からは叡山焼き討ちをした明智光秀は鬼、と罵声が浴びせられます。
伝吾はたまを抱き上げ、すぐに医者へと連れて行きました。
連れて行かれた先は望月東庵(堺正章さん)の診療所でした。
診療所へと向かった光秀は、たまの怪我がそれほど酷くないことにほっとしました。
たまは、自分の護衛として同行していた伝吾を叱らないでと光秀に訴えます。
光秀は、悪いのは父、父が叡山で戦をしたせいだ、とたまに謝りました。
謝る父にたまは、母から父はやむを得ず戦をしているのだと聞かされているといいます。
「悪いのは戦、父上は悪くない」とたまは言うのでした。
駒は光秀に話があると連れ出しました。
叡山で芳仁丸を売っていた14歳の子供が戦に巻き込まれた死んだ話を始めました。
その子は家が貧しくお金が必要でした。
芳仁丸を売って得たお金を母に渡し、その一部を駒に届けて欲しいと母に言ってもう一度叡山に向かったのだといいます。
戦にいい戦も悪い戦もない、14歳の子が8文残して死ぬのが戦。
決して光秀を責めるつもりはない、と駒は言い、義昭の側にいてなぜ戦が起こるのかも理解しているといいます。
今、駒が怖いのは義昭が信長から離れることだと光秀に訴えます。
そうはならない、自分はその為に幕府にいるのだと光秀は言うのですが、駒は義昭から聞いた話だとして、幕府が筒井順慶の後ろ盾となり松永久秀と戦を始めようとしていると伝えました。
光秀は驚き、それが本当なら止めなければならないと筒井順慶の宿所を訪ねることにしました。
代理戦争の行方
駒と行った順慶の宿所で、光秀は久秀と戦うのかと順慶に問いました。
順慶は、松永と戦が始まれば信長も順慶の加勢に加わると幕府から聞かされていたと答えますが、信長は松永の味方となっているため、松永と戦うならば信長と敵対することになると光秀は反論します。
順慶は信長と敵対するつもりはないと言うのですが、父祖の代から敵対していた松永を放っておくことはできないと打ち明けます。
光秀は、大和に帰る前に堺に回り道しようと順慶を誘います。
光秀も同行するというと、順慶は駒も同行するのかと確認を取り、駒も一緒とわかると回り道を承知したのでした。
順慶と光秀が堺の今井宗久(陣内孝則さん)の屋敷に着くと、光秀から呼び出しを依頼された人物も既に到着していると告げられます。
光秀は宗久に頼んで松永久秀を呼び出していたのです。
久秀は2階で易をたてていました。
50を過ぎて道を教えるものが必要と母に言われて始めたことでした。
「戦は勝ちますか?」と光秀が問いかけると、「敵を目の前にして教えるわけがない」と久秀は順慶を鋭い目で見据えながら笑ったのです。
それでも知りたい、という順慶に久秀は茶入をみせ、この唐物の茶入を千貫で買うなら教えてやろうと詰め寄ります。
順慶は茶入を見ながら塗りの甘さや形などを目利きし、十貫ならば、と答えました。
久秀は順慶の目利きが正しいと証明するように茶入を畳に放り投げると、光秀を呼び出しました。
廊下に出ると、久秀は小声で「わしにどうしろというのだ」と光秀に訴えました。
この戦は信長と話して始めたもの、今更手を引けというのか、と言い募ります。
光秀は、自分が拝領した志賀2万石では大和の代わりにはならないかと言い募り、久秀に譲ると懇願します。
驚いた久秀は信長は承知しないだろうと反論するのですが、光秀は「承知させてみせます」と断言します。
久秀は、義昭と信長は長くは持たないと思っていたと打ち明けます。
信長は何でも壊すが義昭はなんでも守ろうとする。
水と油ほどに違う、と言い放ちます。
久秀も、信長が叡山をあれほどまでに焼き滅ぼすとは思っておらず、その冷たさは自分にはない、と驚きを隠せません。
光秀も「あれは…私も…」と呟き、「あの戦のやりかたは私には…」と絶句します。
しかし、信長を尾張から引っ張り出しここまで動かしてきたのは光秀です。
叡山の焼き討ちも誰かがやらなければ世は変わらなかったのです。
所詮、信長と光秀は根が1つ、と久秀は言い「いつか必ず公方様と争う時が来る、わしはそう思う」と言い切ったのです。
光秀が自分の拝領した2万石を差し出すという心意気を買って、筒井順慶との戦を一旦止めてもいい、と久秀は光秀の進言を受け入れたのです。
こうして、久秀と順慶の和議は整いました。
信長と帝
美濃・岐阜城にて光秀は、久秀と順慶が和議を結んだことを信長に報告しました。
信長は、義昭から筒井に援軍を送れと言われ困っていたといいます。
もし、戦が始まったとしたら、義昭との対立を避けるために、義昭の言うとおり筒井側に付かなければならなかったのです。
光秀は信長が松永ではなく筒井側に付こうとしていたことに驚き、義昭の意向に沿うためなのかと信長に問いかけました。
すると信長は、義昭の意向に沿ったのではなく、将軍と対立することで帝の心を波立たせてしまうからだと答えたのです。
義昭の言うことはいちいち的外れで、相手にしてられないというのですが、帝の言葉は胸に届くと語ります。
焼き討ち後、御所に参内した信長は、帝から叡山の件は誠に痛ましき戦だがやむを得ない戦だったと言葉を貰ったと話します。
そして、これからも天下静謐のために励むように、大儀であった、これからも頼りにしていると言葉をかけられたと嬉しげに言うのでした。
御所・内裏にて、正親町天皇(坂東玉三郎さん)は東庵と碁を打っていました。
帝は関白からある噂を聞いたと東庵に話します。
それは、帝が信長を利用して叡山から覚恕を追い出したと言うのです。
関白は、信長は荒々しき者ゆえあまり近づかない方がいいのではと苦言を呈されたと言います。
しかし帝は、信長以外に誰が覚恕を叡山から追い払うことができただろうかと言います。
帝は参内した信長の様子が褒めて欲しそうだったから褒めた、と言いました。
「真を申せば無残な戦じゃ」と帝は呟いたのでした。
京の遥か東、甲斐の国にて、武田信玄(石橋凌さん)を頼って覚恕は逃げ延びてきました。
叡山を焼き討ちにした信長を恨み、信長への激しい怒りを信玄に訴えた覚恕。
信玄は、叡山での凄まじい戦を知っており、信長を仏法の火を消した鬼と評すると、憎き信長をこの信玄が討ち滅ぼしてみせます、と宣言。
覚恕は怒りのあまり数珠を引きちぎる程に怒りを爆発させていたのでした。
次回、第35回「義昭、迷いの中で」
信長は将軍と幕府のことは顧みなくなり、帝や朝廷との関係を深めようとしていると光秀は木下藤吉郎から聞かされました。
一方で、幕府の摂津らは信長の力を削ごうと画策し、信長の重臣である光秀の暗殺計画を企てます。
刺客に襲われる光秀ですが、将軍の身を案じ、義昭のもとへと急ぎます。
最後に
比叡山焼き討ちの凄惨な光景に胸が痛くなりました。
武器を持たない女や子供、戦う意志のない僧侶に至るまで皆殺しという信長の冷酷さ、狂気を感じました。
染谷将太さん演じる信長の演技は、回を追うごとに迫力を増してくるので毎回魅入ってしまいます。
叡山焼き討ちで心に深く傷を負った光秀の苦悩も見ごたえがありました。
亡くなった女子供たちの死体の中に自分の娘たちの姿を見るという悪夢。
目覚めた後に娘たちの姿を探す父としての光秀の姿を見て、光秀の傷の深さが分かりました。
義昭の変化にも注目でした。
優しげな僧・覚慶だった時には見られなかった激昂した口調、表情、仕草。
あれだけ信長を頼っていたのに、今では憎々しげに怒りをぶつける義昭を見ると、信長との決裂の日は近いと感じてしまいますね。
それにしても、信長の変化もそうですが、義昭の変化には驚かされます。
今回、一番ほっこりしたシーンは、吉田鋼太郎さん演じる松永久秀と光秀の掛け合いでしょうか。
筒井順慶に茶入の目利きをさせたシーンではとても格好いい久秀が、光秀と2人になったとたん「わしにどうしろというのだ」と困ったように小声で囁く。
興奮して光秀が座ったことにも気づかず何度も「座れ」と言って、光秀が「座っております」なんて、コントみたいじゃないですが。
ピリピリしたシーンが多かったせいか、こういうコミカルなシーンがあるとホッとしますね。
光秀と久秀の良い関係性がわかり、ほっこりしました。
さて次回、第35回「義昭、まよいの中で」で光秀は刺客に襲われてしまうのですね。
室町幕府はとうとう崩壊してしまうのか。
信長と義昭の関係が破綻した後、光秀はどのように動くのでしょうか。
色々と注目したい点が満載の回ですね。
楽しみにしています。