2020年大河ドラマ「麒麟がくる」は、NHK総合にて日曜夜8時、BSプレミアムにて午後6時、BS4Kにて朝9時に放送中です。
前回のあらすじ
1568年7月、越前から美濃の織田信長(染谷将太さん)のもとにやってきた足利義昭(滝藤賢一さん)。
信長は武家の棟梁として義昭を「公方様」と呼び、歓待しました。
信長が義昭に献上したたくさんの金品を義昭は貧しい民のために使えると喜び、信長は戦に興味を持たない義昭に落胆します。
義昭に対する不満をこぼした信長に対し、明智十兵衛光秀(長谷川博己さん)は義昭をかばいます。
義昭を生かすも殺すも信長次第、と光秀は言います。
信長は義昭がどうでもかつて光秀と話した通り、大きな国を作る、と宣言しました。
信長は上洛するために邪魔な三好と六角を排除するために動き始め、光秀には三好の動向と朝廷の意向を探ってくるようにと命じました。
京には信長の命を受けた木下藤吉郎(佐々木蔵之介さん)が既に潜入していました。
織田軍は強いと触れ回り、三好勢を動揺させていたのです。
光秀は、京に住む駒(門脇麦さん)を頼り、朝廷と関係深い伊呂波太夫(尾野真千子さん)に会わせて欲しいと頼みました。
光秀が京に現れ伊呂波太夫に会いたいという理由を察した駒は、京がまた戦火に巻き込まれてしまうのかと怒りを顕にします。
京を焼かれたくないと駒は怒り、上洛するのならば刀を抜かずに、畑を焼かずに来て欲しいと叫びました。
伊呂波太夫から三好の強さは堺の豪商との繋がりにあると聞いた光秀と駒。
駒は堺の自治組織「会合衆」の今井宗久(陣内孝則さん)と面識があり、光秀に会ってみるかと尋ねました。
駒は、自分が作る薬に興味を示していた宗久に、薬を売って構わないから三好に軍資金や弾薬を売らないで欲しいと交渉します。
その上で、光秀に会って欲しいと宗久に頼んだのです。
宗久は、三好との関係を絶ってもいいけれど、信長に京の町を焼かない、堺を守ると約束して欲しいと条件を出しました。
その証として、上洛の際には武装せずに入京して欲しいというのです。
光秀は、宗久の出した条件を信長に報告したのですが、会議の場は凄まじい程に荒れました。
柴田勝家(安藤政信さん)は、ありえないと猛反発し、稲葉良通(村田雄浩さん)は、光秀は朝廷から戦の仕方を習ってきたのかと、罵倒します。
織田の家臣たちは光秀に怒号を浴びせ、場は混乱するばかりでした。
光秀も負けじと三好への金の流れを断つ必要性と京の民からの信頼を得る重要性を説くのですが、誰も聞く耳を持ちません。
場の混乱を収めたのは信長の一喝でした。
上洛に関しては織田の意向だけでは決められないとして義昭に判断を仰ぐことになりました。
義昭に報告すると、非武装での上洛に義昭は歓喜しました。
奉公衆の三淵藤英(谷原章介さん)に同意を求めると、三淵は義昭らしい上洛になりと微笑み、信長の意向を尋ねてきます。
信長は、義昭の意を汲んで上洛すべき、と非武装での上洛を決めたのでした。
信長の本心は家臣の柴田と同様であり、非武装での上洛などありえないことです。
しかし、そのことは光秀の腹に収めておけ、と言い放ちました。
そして、今後に関わる重要なこととして、自分の家臣になるか将軍の側に仕えるのか今決めろと光秀に迫ったのです。
光秀は、自分の心は決まっていると言い、将軍に仕えると明言しました。
信長は「残念だが、わかった。以後、そのように扱おう」と光秀の言葉を受け入れました。
9月、織田軍は六角軍を打ち破り、織田の勢いを感じた三好は京から逃げ出しました。
敵のいなくなった京に、義昭一行は非武装での上洛を果たしたのでした。
前回、第27回「宗久の約束」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは、第28回「新しき幕府」のあらすじと感想です。
評定の行方
永禄11年(1568年)9月、足利義昭は織田信長と供に上洛を果たしました。
今井宗久と約束した通り、非武装での上洛です。
京を支配していた三好勢は、織田軍の勢いに圧され摂津や大和に逃げ出しました。
その頃、三好勢が担いでいた14代将軍・足利義栄は摂津にて病死。
信長は混乱している摂津に入り、一気に攻め込むと三好勢を畿内から一掃することに成功しました。
信長は三好の居城であった芥川城に入城しました。
この戦いで義昭や信長は諸国から権力者と認められ、芥川城には諸国から数々の献上品が届けられていました。
大和にて、三好勢と戦闘していた松永久秀(吉田鋼太郎さん)も芥川城に戦勝祝いに訪れていました。
久秀は、将軍の奉公衆に取り立てられた光秀と再会し、その出世を我が事のように喜びます。
信長に祝いの品として土産を持ってきたと久秀は言うのですが、応対していた光秀は、信長は今評定中なので直ぐには会えないと返します。
久秀は、自分が三好と通じているという噂が流れていることを知っていました。
もしや自分も詮議されているのでは、と懸念しました。
光秀は声を潜め、詮議の最中なので詳しくは言えないが、久秀には大和での実績、活躍があるため案じることはないと久秀に告げました。
光秀が評定の中に足を踏み入れると、信長の家臣である柴田勝家と義昭の奉公衆である三淵が激しい論戦を繰り広げていました。
詮議の内容は、松永久秀の処遇について。
義昭の兄である義輝暗殺に久秀が関わっているとされているため、義輝側近であった三淵たちは、久秀を受け入れることなど到底出来ません。
しかし、織田勢は久秀の大和での活躍から受け入れるべき、と主張します。
評定は果てしなく続き、やがて誰も言葉を発しなくなりました。
信長は静かに座して沈黙し、上座に座る義昭はオロオロとしながら、目で信長に縋ります。
やがて義昭が口を開き、この三好の根城であった芥川城を抑えられたのは信長のおかげである、と話し始めました。
声をかけてもどの大名も義昭の手助けなどしなかったのに、信長は上洛の供をし、三好征伐にも自ら進んで戦に赴いてくれている、と深く感謝しました。
信長のことは父とも兄とも思っていると義昭が告げると、信長も「恐れ多いことでございます」と喜びました。
その信長が久秀を受け入れたほうが良いというのだから、兄殺害に関与している久秀に思うところがないわけではないが、受け入れたいと思う、と三淵を説得しました。
三淵を説き伏せた義昭は、その上で信長に認めて欲しいことがあると言い始めたのです。
代々足利将軍家に仕え、政所を担っていた摂津晴門(片岡鶴太郎さん)を引き続き政所に迎えたいというのです。
信長は義昭の申し出を了承しましたが、光秀は、前幕府崩壊まで義輝を支えられなかった摂津の登用に不安を感じていました。
そしてそれは、細川藤孝(眞島秀和さん)も同じく感じていたことでした。
藤孝は摂津の登用について光秀に意見を求め、今後も光秀と相談したいと言うのでした。
光秀は信長との接見を終えた久秀と再び会った光秀は、久秀から越前に動きがあると知らされました。
義昭上洛について、信長に敵意を持っている朝倉義景は、信長の敵である三好・六角と手を結び信長を狙っているというのです。
そして、三好方の筒井順慶と一戦交える、と言うと大和に戻って行きました。
本国寺の変
同年9月、足利義昭は朝廷から15代将軍を任されることになりました。
信長はそれを見届けると、一部の兵を残して、岐阜へと帰っていったのでした。
永禄12年の正月、事件は起こりました。
三好の軍勢が将軍の御座所である本国寺に突如襲撃したのです。
激しい銃声と夥しい数の矢が降り注ぐ中、武装した義昭を光秀は地下へと匿いました。
信長の不在をみるや襲ってきた三好に対し、御座所が襲われるとは思っていなかったと己の油断を義昭に謝る光秀。
義昭は震えながらも、この都は穏やかでなければならない、と話し始めます。
父も兄もこの都を追われ、都に帰りたいと願っていたといいます。
光秀も、かつて父が土岐氏に仕えていた頃、都に供をしたことがあるといい、父から都は美しきところだったと聞いたことがあると話しました。
都を前のような美しさを取り戻さなければ、という光秀に、「自信は?」と義昭は問いかけます。
光秀は「自信があります」と力強く言い放ち、いずれは妻も子もこの都に呼びたいのだと話しました。
摂津晴門に命じて住むところを用意させよう、と嬉しげに話す義昭ですが、光秀は摂津の名を聞くと、複雑な表情となりました。
医師・望月東庵(堺正章さん)の家で薬を作っていた駒のところに本国寺で戦が始まったという知らせが入りました。
今は将軍の傍付きになっている光秀の身を案じる駒でしたが、今は何もできることがない、と冷静さを装いました。
三好の軍勢は足利勢の手堅い守りに攻めあぐねていました。
そうする間に、足利勢の援軍が到着、三好は形勢不利とみて、京から退却しました。
変の後
本国寺の変終結の知らせを受けた駒は、怪我人の手当てのために東庵と共に本国寺へと駆けつけることにしました。
光秀は、壊れてしまった門を二度と壊れないように修繕すると指示を飛ばしています。
駆けつけた東庵と駒に感謝を伝え、心配する駒に「案ずるな、儂は負けん」と安心させると、寺の修繕へと向かったのでした。
治療のために寺の中に入った駒は、かつて大和でであった覚慶(義昭)と再会しました。
義昭は駒のことを覚えており、今は難しいが、落ち着いたら遊びに来るようにと伝えたのです。
そのことを聞いた伊呂波太夫は、駒に義昭に会わせて欲しいと頼みます。
三好の顔色を伺い、義栄を14代将軍に推挙してしまった関白・近衛前久が、現在不遇の身となりあちらこちらに隠れ住んでいることに心を痛めていたのです。
その処遇をお願いしたい、と語る伊呂波太夫に、そういうことは直接義昭に言うのではなく、今や義昭の側近となった光秀に言った方がいいのでは、と東庵は提案しました。
幕府内部の膿
忙しく文書を検める光秀の居室に、藤孝が現れました。
藤孝は、今回の襲撃になぜ幕府方が誰も気付かなかったのだろうと疑問を投げかけました。
確かに、三好の襲撃は光秀も気づくことができず突然のことでした。
話を聞いていた光秀は、持っていた文書を藤孝に見せました。
それは、幕府の人間が不当に各所の領地を狙い横取りしているという訴状でした。
そんな文書をよく見つけた、と驚く藤孝に、この混乱に乗じて集めたのだと光秀は説明します。
今の幕府体制は、義輝の時と同じとなっています。
文書をみると、かなり前から不正や横領などが行われてきた様子が見て取れました。
光秀は、幕府内部に手引きした者がいるのだろうと予想しました。
政所である摂津を始めとする幕府の役人の中には三好に戻ってもらい、旧体制に戻したいと考える一味がいたのです。
光秀は、現在の役人を一新すべきと言い、藤孝も同じ意見を持っているのですが、三淵も一色もそこに手を付けようとしないと嘆きます。
信長の怒り
本国寺襲撃から5日後、知らせを受けた信長は数名の供を連れて、急ぎ京へと入ると、摂津を責め立てました。
自分よりも先に藤孝に連絡をした摂津に怒りをぶつける信長。
摂津に詰め寄ると、このことで2つ学んだと言い放ちます。
1つ目は今の幕府では義昭を守ることができないということ。
2つ目はこの寺を義昭の御座所として安心していた自分は愚かだった、ということでした。
今後、自分が信頼する人物を名代として京に置き、義昭を守るための城を作ると宣言したのです。
来月から取り掛かり4月には完成させる、という信長に対し、摂津は2か月で築城するなど不可能だと訴えます。
しかし信長は、近隣諸国に幕府の名で触れを出し、石や木材、大工や鍛冶職人を集めればできる、と力強く言い放ちます。
摂津は信長の迫力に平伏するしかありませんでした。
そして、幕府と信長の名のもと、伊勢・三河・丹後・播磨など15にも及ぶ国々が協力を申し出ました。
信長は急ピッチで進む工事現場で指示を出しながら、自分の名前だけではこれほどの協力は得られなかった、と語ります。
やはり大きな国を作るには義昭の名が欠かせない、と言います。
難しいのは摂津たち。義昭が摂津たちに操られることを恐れた信長は、光秀にしっかりと守るようにと命じるのでした。
光秀は、石垣に使うと集められた石の中に、石仏があるのを発見し、戸惑っていました。
しかし、同じように石仏を見た信長は、幼い頃に仏をひっくり返して母にこっぴどく叱られ、仏の罰が当たると脅されたと話しました。
仏罰というものに興味を持った信長は、いつ当たるのかと首を長くして待っていたのですが、仏罰はついぞ当たらなかったのだと語るのでした。
信長は、越前の朝倉義景が三好・六角と手を組んだことを光秀に話します。
挟み撃ちにあわないように、朝倉を討つ、と宣言。
帰蝶が美濃に戻ってきて、光秀に会いたいと言っていると伝えると、たまには美濃にも戻って来いと誘いました。
そこに義昭がやってきて、信長を見つけると駆け寄ってきました。
義昭は立派な城が建ちそうだと喜び、信長に全幅の信頼を寄せ、信長の手を取り、岐阜に戻らずずっと側にいて欲しいと懇願するのでした。
その頃、幕府内部では摂津晴門が扇を握り締め部下の報告を受けていました。
三好の片割れが越前に入り、義景に入れ知恵をしている、と報告を受けた摂津は喜び、衆目の中、信長に恥をかかされたことを根に持ち、一泡吹かせてやると息巻くのでした。
次回、第29回「摂津晴門の計略」
本国寺襲撃に激怒した信長は、二条城建設を急ピッチで進めていきます。
しかし、各地から資材を召し上げながらの強引な工事に反撥が起こり、摂津のもとに多くの声が集まることになってしまいます。
伊呂波太夫から現幕府から追われ身を隠している近衛前久の処遇について相談された光秀は、近衛前久と対面することに。
前久から現幕府内部の腐敗を忠告され、幕府の本分とは何かを考えるのです。
最後に
今回は染谷翔太さん演じる信長の迫力に驚かされた回でした。
評定の場では黙して語らず、判断を義昭に任せていましたが、片岡鶴太郎さん演じる摂津に怒りをぶつける場面は凄まじい迫力に満ちて素晴らしかったですね。
そして、光秀が信長に感じた違和感にも緊張しました。
石仏の頭を軽く叩きながら、笑顔で「仏罰は当たらなかった」と言い、石垣に使うことに何もいわかなった信長と、石仏までも使うのかと躊躇う光秀。
2人の食い違いに緊張が走りました。
光秀が大出世したのも嬉しかったですね。
くたびれたような衣装ばかり来ていた光秀がパリっとした装束を纏っていたので、ようやくこの日が来たんだねえ、と感慨深く感じていました。
また、松永久秀が有名な九十九茄子の茶入を出してきて嬉しそうに説明するシーンは良かったですね。
たくさんの天下人の手に渡り現代にまで残っている九十九茄子の茶器。
数奇な運命の茶器ですね。
さて、次回の「摂津晴門の計略」では、光秀は幕府の本分とは何かを考え、帝の存在を気にかけるようになります。
大きな国を作るために、もっとも大きな存在を考えるようになるんですね。
片岡鶴太郎さん演じる摂津が何をするのか、不気味で怪しくてドキドキします。
次回、第29回「摂津晴門の計略」も目が離せませんね。