毎週日曜日20時から、NHK総合他にて放送中の大河ドラマ「西郷どん」。
2018年7月8日は本放送をお休みして、スペシャル番組「いざ革命へ!西郷と4人の男たち」が放送されました。
司会は、歴史に詳しくないフットボールアワー後藤輝基さん、幕末ファンという関ジャニ∞横山裕さん。今年「素顔の西郷隆盛」を出され、NHKBSプレミアムで木曜夜8時に放送中の「英雄たちの選択」でおなじみ、歴史家の磯田道史さんが解説を務められました。
その他のゲストにお虎役、ハリセンボン近藤春菜さん、歴女の乃木坂46山崎怜奈さん、「まじかる☆タルるートくん」「東京大学物語」の著者である漫画家の江川達也さん、アメリカ人の視点から、厚切りジェイソンさんが出演されました。
「西郷どん」はこれから革命編になりますが、西郷吉之助(鈴木亮平さん)が出会う4人の男たちについての人物紹介と今後の物語を少しだけ紹介する番組になりました。
ウナギのような男、坂本龍馬
まずは1人目、番組が行った街頭インタビューで、幕末の人物で一番有名だった坂本龍馬について取り上げられました。「西郷どん」では小栗旬さんが演じられます。
土佐の下級武士であった坂本龍馬は、はじめは外国人排斥派の考えを持っていました。しかしある知識人から西洋の文明の素晴らしさを聞いて、コロッと開国派に考えを変えました。
龍馬にとって主義主張より好奇心を満たす方が勝っていたのです。龍馬はウナギのようにヌルヌルと人の懐に入り込み、知識を吸収していったのです。
そんななか出会ったのが勝海舟です。勝に海軍創設の話を聞いた龍馬は、その意見に賛同し弟子になります。そしてそれだけに留まらず、武器弾薬を商うビジネスマンに転身。「海援隊」を設立。現在の総合商社の原型と言える組織をつくりました。
薩摩、長州が討幕に傾いていた頃なので、両藩がこぞって武器を買い、龍馬は大儲けしました。さらに仲が悪かった両藩の仲を取り持ち「薩長同盟」を結ぶことにも貢献しました。
こうして龍馬は、人のなかでウナギのように常に柔軟に自分を変える事で幕末を生き抜いていったのです。
小栗旬さんは龍馬のことを「冒険家みたいな人だと思う。この人は全然違う感覚でみんなと接してきた結果、皆が謎に魅了されるみたいな感じがあった人じゃないかなという気がします。」と評し、「龍馬が来ると風が吹くみたいな、そんな感じになれたらいいなと思います。」とこれから演じるにあたってのお話をされていました。
江川達也さんは「人の見る目が凄かったのでは?話を聞いてどこまで頭がいいか判断する能力が高かったのだろう。」と評し、厚切りジェイソンさんは龍馬を見て、スティーブジョブズを思い出したと言い、「自由な発想で、新しい世界を想像してどんどんつくっていく。誰と会っても進化を求めていく。」と評しました。
龍馬が売っていたミニエー銃は、殺傷能力が高く、それまでの戦の形を変えました。銃のおかげで、訓練さえすれば、武士だけでなく庶民も銃を扱えるようになり、兵士になれるので、身分制が崩壊されていきました。武士の世を終わらせた銃なのです。
銃のおかげで龍馬は、当時の大名より稼いでいました。一介の素浪人のようにみえる龍馬が何故色んな人に会えたのか?龍馬の持つ経済力と海軍を持っている軍事力を皆、知っていたからなのです。
龍馬をみての生き方のヒントを磯田さん風にまとめると「変わることを恐れるな。」ということでした。
敵が大好物、勝海舟
2人目は遠藤憲一さん演じる勝海舟です。磯田さんによると「敵が大好物」とのこと。勝はひとことで言うと「交渉の達人」。交渉力に長けていた人物だったそうです。
ドラマの中で勝は、幕府の人間でありながら、「幕府を見限るこった。」と言い放っており、この言葉が討幕の志士を突き動かしました。また、幕府のなかでも言いたいことをズケズケ言うので上司に疎まれ、嫌な役を押し付けられることが多かったそうです。
誰もやりたがらないトラブル処理などを嫌がらず引き受け、次々解決していく中で勝は、交渉力を磨いていったのです。
神戸に海軍操練所を建設した事も、西洋式海軍の力があまり知られていなかった時代に、勝が当時の将軍、徳川家茂に交渉して実現しました。
勝の交渉力が最も発揮されたのは江戸城の開城です。西郷と交渉し、見事、血を流さず江戸城を開城させることに成功したのです。
勝は敵が大好物で、海軍操練所では、討幕派の長州や薩摩からも人を集めました。自分を殺そうとしている人物にも会い、腹を割ってとことん話す事で相手を魅了したといいます。敵味方関係なく人と会っていました。
勝は幕府への意見書に「身分に関わらず優秀な人物を登用すべし」と出していたこともあります。
勝海舟役の遠藤憲一さんは、勝の事を「一人一人の命をちゃんとみれる人。腹の根っこの部分はストレート。人に嫌われたくないとか、いい目にあいたいとか、そうすると媚びへつらわなきゃいけないところがあるが、全部敵だと思っているくらいが、自分のまんまでいけるという思いがあるんじゃないかな。」と言っていました。
勝の名言で「誰を味方にしようなどと言うから間違えるのだ。みんな敵がいい…その方が…大事が出来る。」というものがあります。ゲストの山崎怜奈さんは「八方美人にならず誰の敵にもならないけど、誰の味方もしない。でも来るならおいでというのが男らしくて勇ましい。」と勝の事を評しました。
その通りだと思います。今回取り上げられた人の中で、私は勝海舟に一番ひかれました。
実際、考え方の違いだけで殺し合いが普通に行われていた時代で、いつ殺されてもおかしくないのに、向かい合って話し合って解決するなんてなかなか出来る事ではないと思いました。
磯田さんによる、勝海舟から学ぶ金言は「100%の敵も100%の味方もいない。」です。
こんな生き方、出来るようで出来ないです。
ヤモリのような男、岩倉具視
3人目は、笑福亭鶴瓶さんが演じる岩倉具視です。江川達也さんが、策略家である岩倉が西郷に影響を与えて幕末動かした感じがすると言っていました。岩倉をひとことで言うと「策士」、この男がいなくては新たな時代が来ることはありませんでした。
大久保利通らと岩倉使節団で欧州に行った岩倉は、産業革命を遂げた町の様子を見て、経済発展の重要性を痛感します。帰国後、工業化を推し進めて日本最初の鉄道の一つの設立にも携わりました。現在の新幹線や山手線のJR東日本です。功績の大きさから500円札の顔にも選ばれたことがあります。
岩倉は、朝廷の中では一番下の下級公家でした。そこから自らの知恵のみで天皇の側近にまで上り詰めます。具体的には、天皇家と将軍家の政略結婚を画策、などです。
ドラマに登場する頃の岩倉は、政治の争いで敗れたのち一時蟄居させられ、あばら家のような住まいで暮らしていました。そんな環境の中でも岩倉は「このままでは終わらない。」と意見書を書き、これぞという人物に送り続けていたのです。また、西郷たち武士にお金を取って話を聞かせるなどもしていました。
岩倉具視役の笑福亭鶴瓶さんは岩倉の事を「ハッタリが強かったと思います。だから蟄居生活の中で、人が話を聞きに来る。絶えず誰かに何かを話してる。語っていたことがほんまになってくるみたいなところが、岩倉具視にはあったんでしょうね。」と話していました。
ヤモリには暗闇でも物を見分ける能力を持つのもいるのだそうです。岩倉の事を「ヤモリ」と磯田さんが呼ぶのには、そういう理由からです。
ドラマの中で岩倉が、自分で魚を焼くシーンが出てきますが、実際に毒殺されない為に自分で食事の準備をしていたのだそうです。
岩倉の意見書を読んだ磯田さんによると、薩摩と長州に日本を変える力があると、ある意見書の中でいち早く見抜いていたそうです。
「薩長二藩は龍虎の如し。」とあり、薩摩と長州を結び付けたらどんな変化でも起こせると言っていたそうです。実際に薩長同盟を仲介したのは坂本龍馬ですが、薩長同盟は岩倉が発想していたことだったのです。
「こうしてみたら…」という妄想ともいえる反実仮想力が岩倉にはありました。
磯田さんが思う岩倉から学ぶ金言は「すべての未来は妄想からはじまる」です。
岩倉のように、なんでも自分の発想を人に話してみるもんだと思いました。それを聞いた人の中に実行してくれる人がいるかもしれません。全部が全部、思い通りにはならないとは思いますが、言っておくもんだなと思いました。
カメレオン、桂小五郎
4人目は、玉山鉄二さん演じる桂小五郎です。桂小五郎を表す言葉は「カメレオン」です。
玉山鉄二さんは「マッサン」で広島弁を話されていたので、近くの長州の人の言葉は入りやすかったのでは?と私は勝手に思いました。
桂小五郎は、長州藩の代表として、薩長同盟や廃藩置県の実現に尽力した人物です。山口の地元では「逃げの小五郎」と呼ばれているそうです。
長州には、理想の為なら死を恐れない過激な志士が多くいて、桂はそんな人たちなかでも一風変わっていました。京都で潜伏していた桂ら長州の志士たちが、新選組に行動を知られた際に、応戦する仲間たちを置いて一人、屋根伝いに逃げたというのです。
「生き残らなければ事を成す事が出来ない。」それが桂の信念でした。「新堀松輔」「広江孝助」など10の偽名を使い分け、逃げのびたそうです。
兵庫県の廣江屋という荒物屋に潜伏していた時は、「廣江屋孝助」という偽名で、廣江屋のお嬢さんと恋仲になって子供まで作ったり、実際に荒物屋になって働いていたそうです。
そうやって場所によって色を変えるカメレオンのように、潜伏場所にふさわしい人物になりきり、溶け込んでいたのです。
桂小五郎役の玉山鉄二さんは、桂の事を「名前を変えたり、色々逃げ回ったりして結果的に自分の命が残って、西郷と共に遠くを見て日本のあるべき姿みたいなものを、根本的に変えなきゃいけないっていう思いでは、すごく共感してる部分ではないかなと思います。」とおっしゃっていました。
磯田さんによる桂から学ぶ金言は「逃げるは恥だが役に立つ」です。どっかで聞いた言葉ですね!しかし、言葉通り!分かりやすいです。
厚切りジェイソンさんによるとアメリカでも似た言葉があって「戦い負けても戦争勝つ」。同じような意味ですね!
「~すべき」という非現実的なことを言う偏った人が多い長州藩の中で、桂のように現実にしていくにはどうするかを考える人が必要だったんじゃないかと磯田さんはおっしゃっていました。
理想に燃えて命を落としてしまえば、実現できません。人から見たら一人生き残って卑怯にも感じるかもしれませんが、生き残った桂がいたからこその明治維新だったわけです。
これからの西郷どん
今後の「西郷どん」は、激動の時代に突入。今までの「いい人」のイメージが一新され、薩摩郡を率いる司令官となった吉之助は別人のように変わっていきます。
実の弟、信吾(錦戸亮さん)の前でもかつての優しい兄の顔を見せません。大義の為には、時にしたたかに、時に非情になります。
盟友、大久保一蔵(瑛太さん)と一緒に日本を切り開いていきます。三番目の妻となる、糸(黒木華さん)も再登場です。愛加那(二階堂ふみさん)ファンの私としては複雑な思いですが…。
予告画面では、戦いの場面や、ヒー様こと一橋慶喜との決裂の場面などが映りました。
慶喜役の松田翔太さんの声で「誰が味方で、誰が敵なのか見当もつかん。」と言う言葉が出てきました。
まさにこれからの目まぐるしい展開の全てを語っているかのような言葉です。
また、およしこと、ふき(高梨臨さん)も出て来るようなので出演を楽しみしていた私としては嬉しいです。
それでは次回、第26回「西郷、京へ」は、7月15日放送予定です。