2020年大河ドラマ「麒麟がくる」は、NHK総合にて日曜夜8時、BSプレミアムにて午後6時、BS4Kにて朝9時に放送中です。
前回のあらすじ
前回第15回は、仏門に入った斎藤道三(本木雅弘さん)と家督を継いだ道三の嫡男・高政(伊藤英明さん)の対立が決定的となったお話でした。
側室・深芳野の遺志を尊重し、嫡男・高政に家督を譲り仏門に入った斎藤道三。
しかし、帰蝶(川口春奈さん)を始めとする正室の子たちは高政が家督を継いだことにより、織田家との関係が悪化することを恐れていました。
帰蝶は、弟・孫四郎に命じて明智家に接触させ、高政排斥に向けて先頭に立って欲しいと懇願するのですが、光秀(長谷川博己さん)の返事は拒否。
翌日、守護代となった高政に呼び出された光秀は、孫四郎を操っている帰蝶に釘を刺して来いと命じられます。
信長(染谷将太さん)との同盟を見直す必要があると言い、信長と敵対している織田彦五郎(梅垣義明さん)と繋がりを匂わす高政の言動に気づいた光秀は、不安を覚えました。
その足で道三の屋敷に行った光秀は、高政に尾張に行けと命じられたと訴えます。
自分では帰蝶と高政の仲を取り持ち丸く収めることは難しいとして、こうなった責任は今後の道筋を決めずに高政に家督を譲った道三の所為であると主張しました。
道三は、自分がもう一度政務を司る気はないと明言し、自分も手探りで進んできたのだから、高政もそうするしかない、と光秀を諭したのです。
そして、光秀に高政と上手くやるようにと言い含めたのでした。
その頃、尾張で異変が起きました。
尾張の守護・斯波義統(有馬自由さん)が織田彦五郎の家臣・坂井大膳に襲撃を受け、絶命したのです。
嫡男である斯波義銀(松田周さん)は那古野城の信長を頼り、信長は義銀の意を汲んで、清須の織田彦五郎と坂井大膳を討ち果たすと約束しました。
しかし、有効な手立てがなかなか見つからずにいた時、信長の叔父である織田信光(木下ほうかさん)が那古野城にやってきたのです。
信長が不在だったため応対した帰蝶に、信光は彦五郎から碁を打とうと誘われたと明かしました。
誘われるまま清須に行ってしまえば、信長に反旗を翻すと疑われるのではないかと心配する信光に対し、帰蝶は碁を打ちに行けばいい、と清須行きに賛同したのです。
碁打ちが終わったと知らせが来たら、信長は清須に駆けつける、と囁く帰蝶の意図を信光は察しました。
清須にて彦五郎との対局中、隙を見て刀を抜いた信光は彦五郎の胸を差し貫いたのです。
主を失った清須の崩壊は早く、すぐさま駆けつけた信長は清須に入城し、次々と周辺の城も手中に収めていったのでした。
道三はこの知らせに喜び、自分の目は確かであったと喜ぶのですが、高政は危機感を募らせていました。
国衆の稲葉(村田雄浩さん)から孫四郎が信長に迎合していることや、一部の国衆が孫四郎を担ぎ上げようとしていることを聞いた高政は、孫四郎の存在を危険視するようになっていきました。
彦五郎が討たれた話は駿府にも届き、今川の軍師・太原雪斎は彦五郎の死に驚き、信長の存在を重要視するようになりました。
駿府に滞在していた藤吉郎(佐々木蔵之介さん)は、今の勢いは今川ではなく織田にあると感じ、尾張に行く決意を固めます。
美濃では、高政の具合が悪いという噂が飛び交い、見舞いに来た孫四郎と喜平次が高政の側近に騙し討ちに合うという事件が起こりました。
道三は2人の愛息子の死に嘆き悲しみ、息子の血がベッタリと顔や手に付着したまま高政の邸に乗り込んだのです。
高政に怨嗟の言葉を投げつけた道三は、稲葉山城を脱出し、美濃の北にある大桑城に入りました。
高政は、自分の父は道三ではない、土岐頼芸だと国衆に宣言し、これを機に揺るぎない国家を作ると宣言したのでした。
前回、第15回「道三、わが父に非(あら)ず」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは第16回「大きな国」のあらすじと感想です。
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戦を止めるために
孫四郎と喜平次という息子たちを高政に殺害された道三は、高政に怨嗟の言葉を吐くと稲葉山城を脱出し、大桑城に逃れました。
美濃を二分する戦の前触れでした。
光秀の叔父・光安(西村まさ彦さん)は、明智としてどう動けば良いのか悩み、光秀に相談していました。
戦にならないように手を尽くすしかない、と光秀は光安に尾張に行きたいと願い出ます。
戦になるかならないかは、信長、いや、帰蝶次第ではないかと光秀は考えたのです。
尾張の清須城にて、光秀は帰蝶に目通りが叶いました。
帰蝶は、光秀が誰の使いでやってきたのか警戒し、孫四郎を殺した高政の使いなのかと問いただします。
帰蝶は、凶行に及んだ高政をもはや兄とは思わないと怒りを顕にしました。
光秀は、高政も悪いが、孫四郎を唆して高政を排斥しようと画策した帰蝶も悪いのではないかと言い募ります。
高政が怒るのも無理はないと言いきりました。
美濃のことは美濃に任せ、外から手出しは控えて欲しいと光秀は帰蝶に懇願するのですが、帰蝶も主張を譲りません。
父・道三が目指した国造りに理解を示さず、信長と手を切り、信長と敵対する織田信賢と手を組み、さらに高政は今川とも手を組もうとしていると帰蝶も言い募ります。
自分が高政を説得し、帰蝶が危惧するようなことは絶対にさせない、と光秀は意見するのですが、頼ってきた孫四郎を冷たく追い返した光秀のことは信用できない、と帰蝶は捲し立て、光秀を追い返したのです。
2人の会話を信長は襖を隔てて聞いていました。
信長は、帰蝶の怒りも分かるが光秀の言うことも分からないこともない、と理解を示しました。
信長が放った間諜によると、高政の所には国衆が約1万の兵が集まり、道三の所に集まる兵力は僅か2千と差がありすぎると言うのです。
しかも、信長は今、周囲を牽制しなければならず、美濃に加勢に行くことができません。
いかに戦上手の道三といえども、今戦をしては勝ち目はない、と信長は見ており、なんとか身を守ってもらいたい、と考えていました。
それでも帰蝶の怒りは収まらず、戦の時に役立つという伊呂波太夫(尾野真千子さん)の所在を侍女に探らせるのでした。
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太原雪斎の死
その頃、駿河でも異変が起こっていました。
今川義元の軍師・太原雪斎(伊吹吾郎さん)が病死してしまったのです。
今川は雪斎の死を隠すため、雪斎の治療に当たっていた望月東庵(堺正章さん)と助手の駒(門脇麦さん)を寺に押し留めていました。
東庵は、今川の事情に理解を示すのですが、駒は閉じ込められている状況に不満が溜まっています。
2人が庭で豆と昆布を煮ていると、匂いに誘われて寺にいた松平元信(後の徳川家康)がやってきました。
東庵と駒に勧められて皿を受け取る元信。
そこに、はるじという偽名を使い薬種問屋に勤めている菊丸(岡村隆史さん)が薬草を届けにやってきました。
東庵を外部の人間に接触させたくない門番は、用が済んだらすぐに出て行くよう注意すると、持ち場に戻ります。
菊丸は門番の姿が見えなくなると、元信の側に膝をつき挨拶をしました。
菊丸は元信が住まう所によく顔を出し、元信と顔見知りになっていたのです。
美濃の守護代が変わり、そのために騒動が起こっているらしいと菊丸が尋ねると、今川の家臣がそのように噂していたと元信は肯定しました。
道三の息子たちが高政に斬られたこと、道三が怒り今美濃はいつ戦が起こってもおかしくない状況であると元信は語ります。
何の話をしているのだとしびれを切らした門番が菊丸を急かしに来たため、話はそこで中断。
駒が菊丸を促して別室に行くと、菊丸は薬草を所定の位置に収めていきます。
残された東庵は、人質として寺に囚われている元信に退屈ではないかと気遣います。
元信が将棋相手がいればいいのに、とぼやくと自分が相手になりましょう、と東庵は名乗りを上げたのでした。
美濃の危機を知った駒は、菊丸から詳細を聞くと、明智に聞きたいことがあるため、駿河を脱出したいと言い出しました。
初めは渋っていた菊丸ですが、駒に手を握られお願いされると、一も二もなく駒の願い通り、駿河脱出の協力を承知したのでした。
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光安の思い
光秀が美濃に戻り、稲葉山城に登城すると、階上が宴会のように盛り上がっています。
不審に思い階段を登ってみると、高政と側近に囲まれた叔父・光安が皆の笑いを誘い踊っていたのです。
明智の行くすえを考え、思い悩んでいた叔父・光安。
光安の思いを感じ取り、その道化た姿を厳しい目で見つめていた光秀は、その視線を高政に向けました。
光秀の厳しい視線を受け止めた高政は、光秀の誘いに乗り別室に出てきました。
光秀は尾張で帰蝶に会って美濃に手を出すなと言ってきたと報告します。
高政も、戦は避けたいので織田が手を出さないのであれば道三も動けないだろうと安堵します。
光秀は、火を点けたのは高政ではないかと非難しました。
さらに、最近では自分の父は道三ではなく土岐頼芸だと言いふらしていることについても言及します。
本当はどっちなのだと尋ねる光秀に、高政はどっちでもいいのだと返しました。
自分の出自が訳のわからないものよりも土岐源氏の流れを汲んでいるとした方が、周りも喜び、いずれは守護の座も貰いやすいと高政は言うのです。
人を騙すようなやり方に、光秀は皮肉げに「賢いやり方だ」と評しました。
高政は、光安が挨拶に来たことを話し、領地安堵を願い出たことを話しました。
しかし、高政は明智には領地替えを考えていると言うのです。
まだどことは決めていないが、もう少し大きな領地を与えるといいます。
しかし、そのためには光安を隠居させ、光秀が後を継げと命じるのです。
なぜ、そんなことが必要なのかと問いかけると、美濃は国衆が各々田畑を管理し、どれほどの領地があるのか、どれほどの石高があるのかさっぱり分からない。
国を新たにし、大きな力を持つためには、全てを明らかにし、領地の洗い出しをすることが肝要だというのです。
だから、光秀に力を貸して欲しいと高政は言います。
高政の言い分に光秀は戸惑いを隠せませんでした。
邸に戻った光秀は、妻・煕子(木村文乃さん)に領地替えについて話しました。
煕子は、それが美濃のために良いことならば、光秀に付いて行くだけ、と受け入れます。
そこに、光安の息子・左馬助(間宮祥太郎さん)が、大桑城からの知らせを携えてやってきました。
大桑城の道三が高政と戦をするため、志を同じくする者は大桑城に集うようにとの知らせでした。
この知らせを聞いた光安の様子がおかしくなったと左馬助は心配し、光秀はすぐさま明智城へと向かいます。
明智城の光安は、大事に飼っていた鳥を逃がしていました。
その様子を見ていた光秀が心配して近寄ると、光安は光秀に語り始めました。
領地替えについて聞いたこと、光秀の父や光秀、そして牧(石川さゆりさん)に面目ないと項垂れます。
新しい国になるというが、あの高政に自分の命は預けられない、と苦しげに吐き出すと、光安は道三のもとに向かうと光秀に言い切りました。
しかし光秀は光安を止め、大桑城に人は集まらないから行ってはいけない、と主張します。
戦にならないように手を尽くすから2日待って欲しいと光安に懇望すると、光秀は大桑城に向かいました。
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道三の決意
大桑城に着くと、そこには伊呂波太夫が帰るところでした。
それと入れ違いに道三のもとに行くと、道三は仏と向かい合っていました。
戦支度もしないで現れた光秀に道三は毒づきます。
出陣を止めるために来た、と言うと、道三は先程帰蝶が奇妙な女を寄越したと言い、隣国越後に逃げ道を用意したから付いて来いと言われたと言うのです。
この戦には勝てないとも。
しかし、道三はこの鎧を脱ぐ気はないとして太夫を追い返しました。
光秀は、このまま戦が起こってしまっては国が2つに割れてしまうと主張し、戦を止めて欲しいと道三を説得します。
しかし、道三の決意は変わりませんでした。
「高政はの、儂を真実の父であると解っている。されど、土岐頼芸様が父と言い触らし、己もそうなりたいと思ってきた。高政は人を欺き自らを飾ろうとしている。
十兵衛、人の上に立つ者は正直でなくてはならぬ。偽りを申す者は必ず人を欺く。そして国を欺く。決して国は穏やかにならぬ。儂はケチだがそれを儂は隠したことがない、そうは思わぬか」
道三の静かな問いかけに光秀はその通りだと返しました。
道三は、光秀は正直者だと言い、それでいい、と頷きました。
「儂はこれまで戦で数多の家臣を死なせてきた。毎夜眠りにつく時、その者たちの名を唱えてみるのじゃ。それが、近頃その名が出てこない。儂の命を救ってくれた者たちが、何人も出てこない、忘れてしもうたのじゃ…。儂は…老いぼれた。
最早これまでと家督を譲ろうと思うたのじゃ。
しかし、譲る相手を間違えた。間違いは正さなくてはならぬ」
道三はそう語ると、家臣に鶴山に陣を張ると下知を飛ばしました。
何もできず、呆然としている光秀を振り返ると、
「十兵衛、儂の父親は、山城の国きた油売りで、美濃に居付いた。儂によう申しておった。美濃も尾張もない、皆1つになれば良い、近江も大和も。さすれば豊かな大きな国となり、誰も手出しができぬ。
儂一代ではできなかったが、お前がそれをやれ。
儂も美濃一国で終わった。
しかし、あの信長という男は面白いぞ。あの男から目を離すな。信長とならそなたやれるやもしれん。
大きな国を作るのじゃ。誰も手出しができない大きな国を」
そう言うと「さらばじゃ」と身を翻し、光秀の叫びと懇願を振り切って道三は出陣したのです。
道三を止められなかった光秀は明智の荘に戻ってきました。
すると、領民が荷物を纏めて逃げ出そうとしているのです。
家臣である藤田伝吾(徳重聡さん)は光秀の指示を待っていました。
この有様に驚いた光秀が藤田に問いただすと、光安が左馬助を連れて道三のもとに駆けつけたというのです。
なぜ止めなかったのかという光秀の叱責に、藤田は「武士の意地」と言われたからだと答えます。
稲葉山城では高政の召集に応じた国衆が多数集まっているといいます。
藤田が光秀の指示を仰ぐと、光秀はどちらにも加担しないと宣言し、屋敷に戻ってしまいました。
母・牧から稲葉山城から召集がかかったと伝えられた光秀ですが、光秀は動こうとしません。
居室で待っていた煕子は、皆覚悟は出来ている、光秀の心のままに、と光秀の意志に従うと言い募ります。
光秀は居室で考えていました。
床の間の桔梗紋を見据え、立てかけてある鉄砲を手に取ります。
そして、かつて道三と交わした会話を思い出していました。
初めて堺を見た時、美濃も堺のように豊かな国にしたいと感じたこと、その気持ちを忘れるな、と言われたことを。
光秀は鉄砲を構え、引き金を引きました。
そして煕子を呼び、鎧の準備を命じたのです。
ついに光秀は戦に向かう決意を固めたのでした。
家臣を集め、戦に向かうと宣言した光秀。
行く先を問う家臣に光秀は、「叔父上の後を追う、鶴山へ!敵は高政様!」と叫んだのでした。
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次回、第17回「長良川の対決」
光秀の懇願も振り切り、帰蝶の用意した逃げ道も断り、高政に向かっていく道三。
道三の圧倒的な劣勢を知った信長は、いてもたってもいられず道三に加勢するために尾張を飛び出しました。
長良川で相対した両軍ですが、高政自らが率いた大軍により次第に道三の敗色が濃くなっていきます。
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最後に
今回の見所は、やはり斎藤道三役の本木雅弘さんの語りだったのではないでしょうか。
大桑城で光秀に語る場面は、静かでありながらも迫力、気迫に満ち、道三の怒り、悲しみ、そして揺るぎない決意がひしひしと感じられました。
老いてしまった道三ですが、自らの過ちは自らが正す、という強い姿勢に心打たれました。
若い光秀に後を託すシーンには感動しましたね。
こんなにすごい道三にもうすぐ会えなくなるかと思うと、残念で悲しくてたまりませんが、本木さんの素晴らしい道三の最後をしっかりと目に焼き付けたいと思います。
それにしても、光秀さん。
頑張っているのですが、なかなか上手くいきませんね。
個性が強すぎる人々を相手に交渉しようとしてもなかなか難しいのはわかるのですが、余りにも振り回されている姿を見ていると、光秀が可哀想で応援したくなりますね。
光秀を信じ、一心に付いてきてくれる妻や家臣のためにも頑張って欲しいです。
というか、こうやって交渉術が磨かれたんでしょうかね。
この大河ドラマでの帰蝶と信長の距離感は見ていてとても気持ちがいいですね。
プリプリ怒る帰蝶を宥めようとする信長にほっこりとさせられ、話を変えられて怒りながらもちゃんと教えてあげる帰蝶がとても可愛いです。
それから、武千代くんが大きくなって、元信さんになっていました。
これにもびっくり。
東庵先生や駒は本当にいろんな人々と縁を結んでいくんですね。
これから2人はどんな人と会っていくのでしょう。
このあたりもとっても楽しみです。
戦国時代が本格的に始まってくるこの時代、注目したい人物・事柄が多くて大変です。
ですが、この大迫力でカラフルな大河でどのように魅せてくれるのかとても期待しています。
来週、道三の勇姿を楽しみにしています!