2021年大河ドラマ「青天を衝け」は、NHK総合にて毎週日曜夜8時から、BSP、BS4Kにて毎週日曜午後6時から、毎週土曜日午後1時5分から再放送が放送中です。
前回のあらすじ
岡部の代官に御用金の支払を命じられた渋沢栄一(吉沢亮さん)。
年貢を収めているのに事あるごとに御用金と称して金銭を要求してくる領主と、居丈高に命令する代官に対し、栄一は抑えきれない憤りを感じていました。
従兄の尾高惇忠(田辺誠一さん)は、栄一のその感情は「悲憤慷慨」であると教えたのです。
悲憤慷慨とは、正義の気持ちを持ち世の不正に憤り嘆くことをいいます。
今の世には、栄一だけでなくこの悲憤慷慨という気持ちを持つ者が数多くいるといいます。
惇忠もこの世に悲憤慷慨の気持ちを持っていると栄一に伝えたのでした。
栄一たちが嘆く世は、徳川家康(北大路欣也さん)が作り上げた、僅か7%の武士が支配する世のことです。
しかし、戦がなくなり、平和な世が続くようになり、武士とその他という厳しい線引きが近年では揺らぎ始めていました。
正義感の強い栄一の言うことも理解しているのですが、この世には理屈だけではどうにもならないことがあると、父・市郎右衛門(小林薫さん)も嘆くのでした。
栄一の姉・なか(村川絵梨さん)の縁談話について、東の家の宗助(平泉成さん)、まさ(朝加真由美さん)夫婦が反対していました。
なかの縁談相手が狐憑きで、縁付くと渋沢家にも障りがあると言うのです。
市郎右衛門もゑい(和久井映見さん)もそんなことはないと否定するのですが、宗助もまさも信心深く一歩も引きません。
縁談を反対されたなかは、狐に憑かれたように、様子がおかしくなり、父も母も栄一も心配していました。
そして、なかの縁談は破談となりました。
その頃江戸では、日本に異国人が増えるにつれ、疫病などの流言飛語が飛び交うようになっていました。
その対応に頭を悩ませている老中・阿部正弘(大谷亮平さん)のもとに、政治に返り咲いた水戸藩の徳川斉昭(竹中直人さん)が異人を排除せよという過激な主張で猛抗議するのです。
両者の間に険悪な雰囲気が漂うと、斉昭の側近・藤田東湖(渡辺いっけいさん)が斉昭を宥め場を取りなしていました。
その時、下田沖で大地震が発生しました。
斉昭はこの機にロシア船を打ち払えと主張するのですが、阿部は人道的に間違っていると反論。
東湖は必死に斉昭に人道を説くのでした。
徳川慶喜(草彅剛さん)は、異国人に詳しい東湖に異国の武器について学びたいと家を訪れ教えを請います。
夷狄嫌いの父・斉昭に怒られるだろうかと危惧する慶喜に、斉昭は日本を守るという意識が強すぎるために暴走してしまうのだと東湖は説明していました。
その姿を見た慶喜の側近・平岡円四郎(堤真一さん)は東湖こそ円四郎が目指す諍臣であるのだろうと感心したのでした。
破談からずっと様子がおかしいなかを心配した父は、なかを集金の旅に連れて行き、気晴らしをさせようと考えていました。
市郎右衛門となかが旅立つと、東の家のまさが中の家の憑物を払うと修験者を連れてきました。
栄一は抵抗して追い出そうとするのですが、まさの勢いに負けてしまいます。
そうして祈祷が始まりました。
神を降臨させたという修験者は、この家には憑き物がいる、かつて無縁仏になった人がこの家を祟っていると告げるのです。
まさやゑいが驚愕し、修験者の言葉を信じそうになった時、旅から帰ってきた父となかがその様子を見てしまいました。
なかは表情を無くし顔を背け、父は眉をひそめました。
そんな中、ただ1人栄一は修験者に果敢に立ち向かい、修験者の矛盾を指摘。
嘘を見抜かれた修験者はたじろぎ、栄一は畳み掛けるように祠をたて祀る必要はない、と論破します。
そして、人の弱みに付け込んで一家を惑わす修験者はお断り、なかはそんなに弱くない、と修験者を追い出したのです。
栄一の言葉を聞いたなかははにかみながら笑顔を見せ、父は栄一のおしゃべりもたまには役に立つ、と笑顔を見せたのです。
そうして、なかはいつもの明るい笑顔を見せるようになったのでした。
1855年秋、安政江戸地震が起こりました。
江戸の町は崩壊し、斉昭の側近・藤田東湖は地震により亡くなりました。
斉昭の悲しみは深く、血塗れで横たわる東湖の亡骸にすがり泣き崩れたのでした。
前回、第5回「栄一、揺れる」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは第6回「栄一、胸騒ぎ」のあらすじと感想です。
徳川家康の話
家康は、61歳の時の子である十一男・頼房を紹介しました。
頼房が3歳の時に常陸国10万石を与え、7歳で水戸25万石を与えられた水戸徳川家初代となった人物です。
水戸家は皇室を大事にしていました。
毎年領地で取れる一番ジャケは皇室に献上し親密な関係を築いていました。
頼房の子・光圀も主君は京の天子様である、徳川一門尽く敬うべし、と常々話していたといいます。
この人物は、後の水戸黄門のモデルとなった人物です。
この光圀によって編纂された歴史書『大日本史』の編纂を通じて形成された水戸学の本には、尊王思想について書かれており、その本は多くの武士に読まれていました。
その本を書いた藤田東湖は、烈公と呼ばれた斉昭の心の支えでありましたが、安政江戸地震で亡くなってしまいました。
千代の思い
東湖が亡くなったという話は、武蔵の国の尾高惇忠のところにも届きました。
国の命運を決めなければならないこの時期に東湖を亡くしたことは大きな痛手でありますが、嘆いても仕方がなく、これからは我ら一人一人が志を持ちこの世に立ち向かわなければならない、と惇忠は決意を改めました。
自分たちは所詮百姓であるけれど、漢の劉邦も元は田舎から出て皇帝となり
太閤豊臣秀吉も元は農民でしたし、東照大権現と言われる家康だって、三河の小大名でありました。
百姓でも何かできる、と栄一は気勢を上げるのでした。
栄一たちが通う道場では、長七郎の腕が立ち、栄一も喜作も長七郎には敵いません。
お前たちの剣には覚悟が足りない、道場の剣と本当の戦は違う、と惇忠に嗜められてばかりいます。
中の家に仕事に来ていた千代に、長七郎の剣は気迫が違う、自分の剣はどうしても農作業のようになってしまう、と栄一が愚痴ると、千代は吹き出しました。
それを見た栄一は、自分だって本当の戦になれば人なんて叩っ斬る、とムキになるのですが、千代は笑ったのはそういう意味ではない、と慌てて「違うんです!千代はそんな栄一さんをお慕い申してるんだに」と告げてしまいました。
自分の失言に気づいた千代は慌てて逃げ出し、告白された栄一は、胸がぐるぐるする、と混乱してしまいました。
慶喜の嫁
江戸の水戸藩邸では、側近の藤田東湖を亡くした徳川斉昭が呆けていました。
そこに、地震で遅れていた七郎(慶喜)の嫁が到着するとの知らせが入りました。
強情息子の七郎に嫁が来るのかと、斉昭は呆けている暇はないと気を引き締めるのでした。
慶喜は自分を徳川の飾り物だと称しますが、小姓の平岡円四郎は慶喜は飾り物では収まらない、と反論します。
武芸に優れ、知識も豊富な慶喜は、この乱世のもぐらである、と言うのです。
水戸のご老公だけでなく、この日の本の皆の憂いが消え、亡くなった東湖の御霊が喜ぶ方法が1つだけある、と円四郎は言います。
慶喜が次の公方になればいい、と円四郎は言うのです。
「お前までそんなことを」と慶喜は憂鬱そうに言うのですが、円四郎は自分は慶喜に惚れ込んでいる、と言うのでした。
そして、とうとう慶喜のもとに嫁が到着しました。
公家出身の美賀君(川栄李奈さん)と対面を果たした慶喜ですが、簡単な挨拶だけするとすぐに退出。
養母の徳信院(美村里江さん)は優しく話しかけるのですが、美賀君の表情は消えていました。
地震により嫁入りが遅れたのはもう1人いました。
将軍・家定に嫁いだ薩摩の篤君(上白石萌音さん)は、江戸城に入り、養父である島津斉彬や福井藩藩主・松平春嶽(要潤さん)と対面していました。
朗らかに家定の子を産む、と宣言した篤君に、松平春嶽や島津斉彬はそれよりも一刻も早く一橋家の慶喜を公方にしなければならない、その為に大奥からその後押しをして欲しいと依頼したのです。
少々驚いたものの篤君は鷹揚に頷いたのでした。
福井藩士の橋本左内(小池徹平さん)は、慶喜の小姓である円四郎と面会し、慶喜が次代の公方に相応しいかどうか、身の回りのことを話して欲しいと依頼するのです。
円四郎は慶喜の将軍就任が近づいている、と喜んでいました。
慶喜の妻となった美賀君の気性は荒く、慶喜と徳信院の仲の良い姿に嫉妬し、大暴れします。
幕府の一大事
江戸幕府にも大変なことが起ころうとしていました。
港を開いた下田に、米国の外交官・タウンゼント・ハリスがやってきたのです。
日本に通商条約の締結を求めて来て、条約が締結されるまで下田に居座るつもりだとの報告を老中・阿部正弘は受けていました。
これまでは、異国との条約は曖昧であるべきと考えられていましたが、今回は国を開くべきではないかと進言される阿部。
阿部もその時が来たのかと、考え始めていました。
しかし、海防参与の徳川斉昭は阿倍の意見に猛反発。
朝廷に、異国から開国が迫られていると報告する、と息巻いて出て行ってしまったのです。
そんな斉昭の暴走を見かねた現藩主の慶篤や慶喜は、斉昭に隠居を進めるのですが、斉昭は激高します。
水戸の者として何ができるというのか、慶喜が将軍となってくれるのなら喜んで今すぐにでも隠居する、と2人の意見を一蹴したのです。
道場破り
その頃、栄一が通う尾高の道場に北辰一刀流の真田範之助(板橋駿谷さん)が現れました。
この頃、攘夷の機運と相まって、腕に覚えがある人物が他流派の道場を訪れ、腕試しを申し入れるという道場破りが流行っていました。
始めに喜作が相手をするのですが、真田は突きの一撃だけで喜作を負かし、次に挑んだ栄一も軽々と捻りあげてしまいました。
次に名乗りを上げたのは、尾高長七郎。
長七郎の名は、他の道場でも強者として知れ渡っていました。
噂に名高い長七郎との手合いに喜ぶ真田。
互いに一歩も引かぬ戦いの末、長七郎が真田の剣を折り、喉元に剣を突きつけたところで勝負が決まりました。
戦いの後、尾高の家で酒を酌み交わすことになりました。
惇忠は真田から今の江戸の流行りは、夷狄を討つという尊王攘夷の心だと聞かされました。
つまみを出しに現れた千代に見とれた真田。
こんなところにこんな美女がおったとは、と千代の美しさに感嘆します。
惚ける真田に、喜作や栄一はあまり千代を見るなと牽制しました。
笑う惇忠と長七郎は、千代は尾高の大事な妹、長七郎に剣で勝った者にしか千代は渡せない、と宣言したのでした。
階下に降り、酒の様子を見に来た栄一は、千代の後ろ姿をじっと眺めていました。
酒を運ぼうとする千代を止め、自分が運ぶと強引に盆を奪った栄一は、熱い酒をこぼしてしまいました。
心配した千代は栄一の手を取り、火傷がないか確認をします。
すると、われに帰った栄一から「触んな」と言われてしまいます。
千代に手を握られ動揺した栄一は、頭を冷やしてくると尾高の家から飛び出しました。
途中会った伝蔵に胸がぐるぐるする、と話し、栄一は落ち着くために走り出しました。
義公の教え
江戸では、美賀君がまた荒れていました。
刀を振り回し大暴れする美賀君を、慶喜は扱いかねていました。
年が明け、1857年(安政4年)となりました。
正月になると、斉昭は必ず皇族出身の吉子を上座に据え盃を頂きます。
母・吉子(原日出子さん)は、慶喜を尋ね東湖亡き後の水戸は荒れている、と憂いました。
斉昭の暴走も止まず、困っていると話したのです。
そんな母の言葉を受けて、慶喜は自分から父に話してみると請負いました。
母は嬉しげに笑い、慶喜に何度もお礼を言うのです。
そんな母の振る舞いを見た慶喜は、父は良い妻を娶られた、と感心し、自分はたった1人の妻を持て余している、と憂いたのです。
吉子は、自分は良い妻なのではなく、嫁ぐ夫に恵まれただけなのだと言いました。
夫が素直で良き心を持てば、妻も自ずと良妻となるものかもしれません、と告げるのでした。
斉昭は2人の息子と共に京の天子様に向けて手を合わせながら、「これは、義公以来代々引き継ぐ、我が水戸家の掟である」と言いました。
「我らは御三家、御三卿の1つとして徳川の政をお助けするのは当然のこと、しかし、もし万が一、何かが起こり、朝廷と徳川が敵対することがあった時に、徳川宗家に背くことはあっても、決して決して天子様に向かって弓を引くようなことはあってはならない、ゆめゆめ忘れることのなきよう」と伝えたのでした。
そんなやりとりの後、慶喜は阿部正弘に、父は老いた、職を辞そうとしたら受理して欲しい、と依頼しました。
慶喜は阿部正弘の顔色が悪いことに気づきました。
阿部は、ハリスの対応や開国に向けての準備に忙しく、顔色を悪くしていたのです。
松平春嶽や島津斉彬は慶喜が一刻も早く将軍の後継になって欲しいと願っていると阿部は慶喜に告げます。
慶喜は、自分にそんな威厳はない、これから遠乗りにでも行こうと思っている、と言うのです。
阿部は慶喜と共に一度公儀で働きたかった、と呟きました。
この国は変わろうとしている、斉昭や阿部の時代は終わり、新しい世が始まろうとしていると遠くを見上げるのでした。
栄一は、長七郎が真田の勧めで江戸に行くことを羨ましく思い、家族に漏らしていました。
ゑいは、そんな栄一の言葉にぎょっとして、長男である栄一が江戸に出てしまっては困ると栄一の言葉を遮り、上州や信州へと送り出しました。
家を出たところで、喜作が長七郎に声をかけているところに出くわしました。
「長七郎、頼みがある、江戸から戻ったら俺と勝負してくれ、江戸から戻ればお前はきっともっと強くなっているだろう、それでも俺はお前に勝たなければならない、お前に勝ってお千代を嫁に貰いたい」と言うのです。
喜作の言葉を聞いた栄一は驚き、声を上げてしまいました。
喜作は「俺はお千代が欲しい」と言うと、声を上げ大きく剣を振り切ると立ち去りました。
モヤモヤしたものを抱えながら旅立った栄一。
街道の途中、用を足しているところに遠乗りに出た慶喜一行が現れました。
栄一を咎めようとする側近を止めた慶喜は、馬から降りると栄一の隣に立って、一緒に用を足したのです。
その頃、幕府ではたくさんの問題に悩まされていた阿部正弘がとうとう病に倒れてしまったのです。
次回、第7回「青天の栄一」
老中・阿部が亡くなり、幕府は大混乱。そんな中、慶喜を次期将軍に推す声が日ごとに高まり……。一方、血洗島では、長七郎が真田に勧められ、武者修行のため江戸へ行くことに。栄一は、依然、千代とぎくしゃくした関係のままであったが、喜作が千代を嫁にもらいたいと言い出し動揺する。惇忠と藍売りに出かけた栄一は、漢詩を詠みながら山道を歩く中で自分の真の思いに気づき、そびえたつ山頂で……青天を衝く!
大河ドラマ「青天を衝け」公式サイトより
千代の突然の告白で胸がぐるぐるした栄一。
さらに、喜作が千代を嫁に望んでいると知り、自分の気持ちがわからず動揺してしまいます。
栄一はいつ、自分の気持ちに気づくのでしょうね。
前回「触んな」なんて言われて千代も傷ついたでしょうに。
この三角関係はどのように決着がつくのでしょうか。
また、開国の問題がもろもろ残っている中で、実務を担っていた阿部の死去。
各所から将軍就任を望まれている慶喜はどう動くのでしょうか。
一瞬ではありましたが、とうとう遭遇した栄一と慶喜。
これから2人の道はどう交錯するのでしょう。
次回、第7回「青天の栄一」も目が離せませんね。
最後に
今回は、色々と揺れる栄一がとてもとてももどかしかったです。
千代に好意を寄せている喜作に対して、対抗していたにも関わらず、千代から思いを告げられて動揺するとは…。
心配されているのに冷たく突き放すところも、何やってるんだ!早く気づけ!と心の中で悶絶していました。
それに引き換え喜作の潔いこと。
あれだけストレートに思われたら千代も嬉しいでしょうに、しかし残念ながら千代の気持ちは鈍感な栄一にあるんですよね。
侭なりませんね。
慶喜の嫁にも驚きました。
美賀君のキャラが強烈すぎて、本当だったのかな、と驚きましたね。
慶喜がまた冷静に冷たい視線を向けるものだから、確かにおかしくなってしまうかもしれませんね。
京から江戸まで嫁いできたのですもの、気にかけて欲しい気持ちはわかります。
わかりますが、いやあ、川栄李奈さん演じる美賀君、強烈でした。
対する篤君は随分落ち着いていましたね。
これもまた対照的で面白かったです。
苦労人の阿部正弘が倒れてしまい、ああこれまでの心労が積み重なった結果なんだろうな、と非常に苦しく感じました。
あっちこっちから責められ、問題だらけでしたもの、そりゃ倒れますよね。
無邪気な栄一は、江戸に憧れ江戸に赴く長七郎を羨ましがるのですが、長男である栄一を手放せない渋沢家としては、そんな発言は控えて欲しいと思ってしまいますよね。
母・ゑいの苦労がよくわかります。
無邪気はいいのですが、早く大人になって、と栄一に感じてしまう回でした。
さて、来週はぐるぐると胸が苦しかった栄一がようやく自分の思いに気づきます。
将軍後継問題も佳境に入ってきましたし、来週の「青天を衝け」も見どころ満載で目が離せません。