2021年大河ドラマ「青天を衝け」は、NHK総合にて毎週日曜夜8時から、BSP、BS4Kにて毎週日曜午後6時から、毎週土曜日午後1時5分から再放送が放送中です。
前回のあらすじ
文久4年(1864年)、徳川慶喜(草彅剛さん)の一団の前に渋沢栄一(吉沢亮さん)と従兄の喜作(高良健吾さん)が立ち塞がりました。
しかし、慶喜一行は栄一を一顧だにせず、通り過ぎてしまいました。
慌てて追いかけたものの、一向に追いつかず、栄一は声の限りに「徳川のお命は尽きてございます!」と叫んだのです。
その言葉が耳に届いた慶喜は、馬を止め、栄一の声に耳を傾ける気になりました。
言うべきことを言い終えた栄一に、「言いたいことはそれだけか」と問い掛けると、栄一はまだまだ言い足りない、と答えます。
慶喜は翌日改めて話を聞くので訪ねて来いと命じました。
去り際、慶喜の側近・平岡円四郎(堤真一さん)が栄一に目配せをしました。
この直訴は、平岡円四郎が一枚噛んでいたのです。
ともあれ、渋沢栄一と徳川慶喜のこの出会いから、日本は近代化への道を進むことになるのでした。
時は遡り栄一4才の頃。
武蔵野国の農民として生まれた栄一(小林優仁さん)は、さみしがり屋で強情っぱり。
出かける両親を引きとめようと大暴れするのですが置いていかれ、自分を置いていったことを後悔させてやろうと姿を隠してしまいます。
帰宅した両親はいなくなった栄一を心配し、家人をはじめ村中の人々を動員して栄一を夜通し探しました。
翌朝、蚕部屋の藁の中で見つかった栄一は、父から大目玉を食らってしまいます。
それでも無邪気に、自分を置いていかなければよかったと思っただろう?と母に言う栄一。
そんな栄一に母・ゑい(和久井映見さん)は、優しく人の気持ちについて諭し、栄一は自分の行いを反省したのでした。
栄一の住む武蔵野国の北にある血洗島(現・埼玉県深谷市)では、養蚕と藍玉作りを主としていました。
栄一の父・市郎右衛門(小林薫さん)は、農民・職人・商人として日々忙しく働いていました。
その息子の栄一は、人一倍腕白でおしゃべり、好奇心の赴くまま従兄の喜作(石澤柊斗さん)と朝から晩まで駆け回りのびのびと育っていました。
その頃、常陸国・水戸では、藩主・徳川斉昭(竹中直人さん)が、最近頻繁に現れるようになった外国船から日本を守るため、大掛かりな軍事訓練を行っていました。
斉昭の息子・七郎麻呂(笠松基生さん)は、斉昭から厳しく育てられ、その優秀さで将来は名将になると周囲から高い評価を受けています。
しかし、斉昭の思想は過激であると幕府から警戒され、謀反の疑いありとして、隠居・謹慎を命じられてしまいました。
栄一が6才になると、父から学問を習い始めました。
栄一は、父から責任とは「大事なものを守る務め」と教えられ上に立つものの心構えを学びます。
ある日、栄一が従兄たちと遊んでいると、岡部の陣屋に罪人が来ると聞きました。
どんな罪を犯して捕まったのかわかりませんが、きっと鬼のような男なのだろうと栄一は思ったのです。
ある日、従兄たちと川に遊びに行くと、栄一の従姉妹・千代(岩崎愛子さん)が大事な櫛を川に流してしまいました。
栄一が探しに行くと、川の下流に囚われのはずの罪人が佇んでいます。
罪人は栄一と千代の姿を認めるとゆっくりと近づいて来て、流された櫛を千代に渡したのです。
その後やってきた役人に、抵抗もせず捕まった罪人の様子を見ていた栄一は呆然とし、櫛を手渡された千代は、囚われた罪人は悪い人ではない、と栄一に告げるのでした。
一方江戸では、徳川幕府が存続の危機に瀕していました。
外国からの脅威に怯え、嫡男に後継者ができないことを嘆いている12代将軍・徳川家慶(吉幾三さん)。
将軍に一番近いとされていた一橋家の当主が急に亡くなり、深刻な後継者問題に悩んでいました。
そこで、優秀と名高い斉昭の嫡男・七郎麻呂を一橋家の養子にすることにしたのです。
その頃栄一は、川で出会った罪人のことを気にかけていました。
深夜、喜作と長七郎(須東煌世さん)と共に岡部の陣屋に忍び込んだのですが、番犬に見つかり不審者として牢番に追われてしまいます。
無事逃げ切ったものの、仲間とはぐれた栄一は、不思議な声が聞こえる方に足を向けました。
すると牢の中に、探していた罪人がいたのです。
罪人は、長崎の出島でオランダ砲術を学んだ高島秋帆(玉木宏さん)で、このままでは日の本は終わる、と嘆いていました。
誰かが守らなければならない、という言葉を聞いた栄一は、父の教えや母の言葉を思い出し、「俺が守ってやんべ、この国を」と宣言したのでした。
一橋家の養子となった七郎麻呂は、将軍・家慶の慶の字を貰って、徳川慶喜、と名乗るようになりました。
前回、第1回 「栄一、目覚める」を見逃した方は、ぜひこちらをどうぞ。
それでは「青天を衝け」第2回「栄一、踊る」のあらすじと感想です。
徳川家康の歴史講義
江戸幕府は、よく鎖国をしていた、と言われていますが、完全に閉じていたわけではありません。
会津や琉球は、藩主がオランダや清国と活発なやり取りをしていましたし、長崎の出島でも同様に商いを行っていました。
外国のことは、オランダ人に頼んで作ってもらっていたニュースペーパーにより、定期的に情報を得ていたはずでした。
しかし、200年も経つと日本が知らないうちに世界は大きく変わっていたのです。
英国、フランス、ロシア、米国は、こぞって東アジアを目指し始めていました。
アヘン戦争で清が英国に破れ、次は日本かと思われていたその時に現れたのが渋沢栄一です。
しかしその栄一も今はまだ子供です。
栄一、9才
9才になった栄一は、父・市郎右衛門について商売について学び始めていました。
各地の藍農家を回り、良質の藍葉を買い付けるのも市郎右衛門の重要な仕事でした。
市郎右衛門は各地を巡り、藍の出来を見て、肥料が足りないとか虫をしっかりととるようになど助言を行います。
栄一は、藍農家を巡る父が、皆に慕われていると感じていました。
ある藍農家で、父の作る藍玉は良い、と褒められた父は誇らしそうです。
それを指摘すると、藍玉は良い物を作れば人に嬉しがられ、自らも利を得て、村を潤すこともできる、人のためにも己のためになる良い商いだ、と言うのです。
栄一は、母も皆が嬉しいのが一番だと言っていたと思い出します。
父は、藍玉を褒められると、自分の息子が褒められているようで嬉しい、と語ります。
そして栄一の顔を覗き込みながら、
「だけんども、藍玉と違ってこの息子は俺の思うようには育たねえ」と笑い飛ばすのでした。
村に戻ると、村の衆が祭りに使われる獅子を出しているところでした。
今年1年の五穀豊穣、悪疫退散を願って行われる祭りは、子供たちにも大人気で皆楽しみにしていました。
栄一は獅子舞を踊ることを楽しみに、従妹の千代は新しい着物を仕立ててもらえることを楽しみにしていたのです。
伯父の宗助(平泉成さん)は、子供たちにしっかり踊れ、と活を入れました。
村祭り、中止
血洗島の渋沢家には、時折この地域一帯を治める岡部藩の代官がやってきます。
そんな時には、精一杯のおもてなしをするのが常でした。
岡部藩の代官・利根吉春(酒向芳さん)は、横柄な態度で馳走を貪り、そして6月の吉日に岡部藩の祝い事のために、街道の整備に人足100名、さらに御用金2千両を用意するように市郎右衛門に命じたのです。
村の顔役である宗助は平伏するのですが、市郎右衛門は、6月はこの村にとって一番忙しい時期であるため人足の数を減らして欲しいと嘆願します。
しかし、利根吉春は激高し、膳を蹴り飛ばすと市郎右衛門を怒鳴りつけました。
なぜ父が謝らなければならないのか、承服しかねる栄一は不思議そうに顔を上げていました。
そんな栄一に気づいたゑいは、すぐさま栄一の頭を下げさせ奥に下がらせます。
そして、大人の話だから黙っていろと諭すのです。
結局、市郎右衛門の主張は通らず、代官に命じられるまま人足と御用金を用立てることになりました。
皆の尊敬を集める父が、なぜあんなに頭を低くしなければならないのか、栄一は井戸に向かって「承服できん!」と不満をぶつけていました。
代官からの命令のため、今年は祭りはできなくなったと宗助と市郎右衛門は村人らに告げました。
大人たちは諦めたように頷くのですが、栄一は「俺は嫌だ!」と抵抗します。
五穀豊穣、村の悪疫退散のために行われるはずの祭りは、大切なものだと伯父・宗助も言っていたではないかと反論します。
栄一の反論を聞いていた父は、栄一の頭を叩き、「何もわからないもんが偉そうなこと言うな!」と言うと、村の男衆を集めて立ち去ってしまいました。
神社に1人で座っていた栄一のもとに、千代がやってきました。
千代に祭りはなくなったと告げる栄一。
大人の言うことはよくわからない、だけど、父さまも悲しい顔をしていた、と話します。
千代も、大人には誠にわからないことが多い、と言いながら、早く大人になりたい、早く大人になって母や兄の役に立ちたい、と言うのです。
皆が嬉しいのが一番なのに、どうして上手くいかないのか、と栄一はため息をつきました。
家に帰った千代は、母の尾高やへ(手塚理美さん)に祭りがなくなったから着物は仕立てなくていい、と告げます。
すると母は、千代はいつも我慢ばかりしているから、たまには母や兄の気持ちを受け取ればいい、と優しく諭すのでした。
江戸の七郎麻呂
一橋家に入った七郎麻呂は、将軍・家慶の慶の字を貰って、徳川慶喜と名乗るようになりました。
髷を結ってもらいながら、一日の予定を聞く慶喜。
その日常は、慶喜にとって退屈なものでした。
これなら水戸で剣の稽古をしたり藤田東湖に説教を受けていた方がよかったと、髷を結っている途中で寝転んでしまいます。
要するに、一橋家というのは、将軍家の居候なのだと理解したからです。
そこに、将軍の来訪が告げられました。
流石に将軍の前では神妙に、聡明な受け答えで家慶を喜ばせます。
家慶も、実の子供のように慶喜を可愛がっていたのでした。
家慶は慶喜に舞は好きかと尋ね、一緒に舞の練習を重ねるのでした。
江戸・水戸藩邸
江戸の水戸藩邸には、幕府から隠居を命じられた慶喜の実父・徳川斉昭が住んでいました。
水戸の藤田東湖(渡辺いっけいさん)から、斉昭がどれだけ幕府を大切にしているのか、夷狄を遠ざけようと努力してきたのかを綴った手紙が届き、水戸の藤田たちが斉昭のために努力していることを知り、感動していました。
斉昭が政務に返り咲くには、一橋の養子となった七郎麻呂の活躍にかかっています。
斉昭は絶対に返り咲くと決意を新たにし、その期待を七郎麻呂に託したのでした。
血洗島の6月
6月になると、血洗島は1年で1番忙しい時期を迎えます。
労役のため、父は男衆を率いて街道の土木作業に向かいました。
残った女子供は、桑や藍葉の刈り取りに励みます。
時期を逃すと、藍葉の色素が変化するため、急いで刈り取らなければならないのです。
また、蚕が一斉に繭になるのもこの時期です。
夕方、労役から戻った父は、疲れた体に鞭打って、夜遅くまで藍の刈り取りを行います。
そんな日が何日も続いていました。
母・ゑいは、苦しい時こそ楽しまなければ、と歌を口ずさみながら仕事を行います。
そんなゑいの歌声に励まされ、村中も1年で1番忙しい時期を何とかやり抜こうと頑張るのでした。
栄一はじめ、村の子供たちも必死に村の仕事を手伝っていました。
そんな日々が続く中、栄一はゑいの「あんたが嬉しいだけじゃなく、皆が嬉しいのが一番いい」という言葉を思い出していました。
そして、喜作に話を持ちかけたのです。
夕方、疲れ果てた男衆が労役から戻ると、村の藍のほとんどが刈り取られていました。
村に残った女子供たちの頑張りに目を見張り感謝する男たち。
皆が家に戻り、一息ついた頃、中の家の前から笛の音と太鼓の音が聞こえてきました。
何事かと外に出てみると、栄一と喜作が獅子の面を被り長七郎が笛を吹き、獅子舞を始めていたのです。
笛の音に導かれて村人が続々と集まってきます。
舞い踊る栄一に市郎右衛門は何をしているのだと問いかけます。
すると、面を外した栄一は、「五穀豊穣!悪疫退散だに!」と叫び、小さな体を精一杯使って獅子舞を踊り始めました。
栄一と喜作の舞に疲れた村人たちもだんだんと笑顔を取り戻していきました。
必死に踊る栄一を見ていたゑいは、市郎右衛門に「あの子も疲れてるだろうに、よっぽど皆を喜んで欲しかったんだね」と栄一の気持ちを慮ります。
難しい表情で栄一の行いを見ていた父も、それなら俺だって、と言うと栄一の前に進み、踊り始めたのです。
村のまとめ役の市郎右衛門の参加に、村中が喜び皆の疲れを吹き飛ばしたのでした。
それから数年後
子供の頃と同じように、祭りで獅子舞を演じる栄一と喜作。
その2人を美しく成長した千代(橋本愛さん)が見守っていました。
尾高新五郎(田辺誠一さん)は、尾高惇忠と名を改め、村で道場を開き栄一や喜作、弟の長七郎(満島真之介さん)らに剣を教えていました。
惇忠は、水戸様は泰平な世は終わったと言っていた、と言い、これからは百姓であっても、剣の心得がなくてはならない、と剣の指導に力を入れていました。
特に、弟・長七郎はめきめきと上達し、今では兄・惇忠よりも腕が上がったと評判です。
さらに惇忠は、水戸学についても寺子屋を開き、栄一らに教えるようになっていました。
このように、栄一と喜作は共に剣を学び書を学び、読書に明け暮れる毎日だったのです。
ある日、惇忠の家からの返り道、夢中になって音読しながら帰っていた栄一は、喜作の声がけに気づかず、そのまま溝に落ちて泥だらけになってしまいました。
母・ゑいや姉・なか(村川絵梨さん)に着物を脱がされながら、なかに小言を聞かせられていました。
体は大きくなっても子供のような栄一は、本に影響を受けて、いつかシャムに行ってみたいと思いを馳せるのでした。
食事中、読書は悪いことではないけれど、それに夢中になりすぎて仕事を疎かにしてはいけない、と父から叱られた栄一。
すぐに謝罪をすると、春には江戸に行ってみたい、と言い始めます。
そんな栄一の態度に父は、栄一がそんなことでは家を任せられない、姉のなかに婿を取らせて継がせる、と言い始めました。
驚いた栄一は、家を継ぐのは自分だ、そのためにこれまで商売を学んできたんだと言い募り、これからは決して手を抜かない、と誓うのでした。
その頃江戸では、慶喜が見事な舞を披露していました。
家慶は慶喜を殊の他可愛がり、家慶の後を託せるのは慶喜だと公言していました。
家慶の子供は家祥を除いて皆死んでしまいました。
残った家祥には障害があり、後継を残すことは難しいと感じています。
だからこそ、一橋家に養子に入った慶喜を、水戸の壮健な身体を持つ慶喜に期待を託していたのです。
家慶の側近・阿部正弘(大谷亮平さん)も、家慶の後の将軍は慶喜であると認識していました。
そこに、長崎奉行からの報告として、米国から外交を求める黒船が来航したとの知らせが入ったのです。
東アジア進出を狙う米国は、マシュー・ペリーを提督とした黒船を派遣して、日本に外交を迫ってきていたのでした。
その頃、血洗島の栄一は、父が春には後学のために江戸に連れて行ってくれると聞き、喜びのあまり大声で叫びながら、従兄の喜作のもとに知らせに走ったのです。
次回、「栄一、仕事はじめ」
父・市郎右衛門と初めて江戸に行った栄一は、江戸の華やかさに目を見張ります。
それとともに商売の厳しさ難しさを知ります。
その年の藍葉の不作により、窮地に陥った父を助けるため、栄一も自ら藍葉の買い付けに行きたいと考えるのですが…。
一方、黒船の襲来に江戸は大混乱。
13代将軍・家慶が亡くなり、後継として慶喜の名が上がるのですが、慶喜は反発します。
最後に
やはり今回の見所も、幼い頃の栄一を演じる小林優仁さんの熱演でしょう。
正義感あふれる栄一の怒りと悲しみがよく伝わってきて、切なくなりました。
皆のために必死に働き、皆を喜ばせるために疲れていても頑張って踊る栄一。
グっときました。
また、市郎右衛門を演じる小林薫さんの演技も見応えがありました。
忙しい時期に命じられた理不尽な要求。
少しでも村人たちの負担を減らそうと努力するも叶わず、村人たちに何度も謝る姿、そして、誰よりも働く姿に胸を打たれました。
市郎右衛門を支えるゑいを演じる和久井映見さんの優しい演技も見ていてほっこりしました。
苦しい時こそ楽しまなきゃ、と歌う姿、健気でしたね。
村中が一丸となって苦しい時期を乗り切ろうと頑張る姿に応援したい気持ちがむくむくと湧き上がってきました。
素晴らしい村愛ですよね。
大人になった子供たちの姿にも感動しました。
大人になったはずの栄一演じる吉沢亮さんの無邪気な演技に親近感が湧きました。
未来を夢見て貪欲に知識を得て、剣術を磨く栄一と喜作。
それを導く惇忠の姿に、これからのことを期待したくなりますね。
次回、とうとう栄一は江戸に出ます。
黒船来航で大混乱の江戸で、栄一は何を感じ、何を得るのでしょうか。
次回、第3回「栄一、仕事はじめ」で、栄一がどんなことに遭遇するのか、今から楽しみです。