2021年大河ドラマ「青天を衝け」は、NHK総合にて毎週日曜夜8時から、BSP、BS4Kにて毎週日曜午後6時から、毎週土曜日午後1時5分から再放送が放送中です。
前回のあらすじ
明治10年、西南戦争において西郷隆盛が自刃し、その後、大久保利通も暗殺されました。
政府の財政は、大隈重信(大倉孝二さん)が担っていました。
西南戦争に掛かった莫大な費用を賄うため、積極財政を行い、景気は一時的に回復しました。
それにより、銀行業に興味を持ち、自分の銀行を持ちたいと考える人々が増え、第一国立銀行頭取である渋沢栄一(吉沢亮さん)のところに押し寄せるようになっていました。
かつて、三井の番頭だった三野村利左衛門が漏らしたように、金中心の世の中に変わってきていたのです。
栄一は、銀行は己の利のために作るものではなく、あくまで国益のために作るもの、と考えていますが、商人とは己の利に貪欲な人々ばかりです。
三菱の岩崎弥太郎(中村芝翫さん)もその1人。
岩崎は、銀行のトップである栄一に興味をもちました。
世の中から武士は消えましたが、栄一が目指す一等国には程遠い状況。
それには、20年前に結んだ不平等条約がネックになっていました。
政府の大隈や伊藤博文(山崎育三郎さん)も不平等条約改正に向けて動き出しましたが、英国公使パークスから、日本には民の代表たる組織がないと指摘されてしまいます。
伊藤は、栄一たちに、民の代表として商法会議所を作って欲しいと依頼しました。
栄一は、各業種から名だたる商人を集め、商法会議所を設立したのです。
その一方で、栄一は1つの養育院を預かっていました。
日々の暮らしに困る人々は増える一方で、養育院も人々を受け入れるだけで精一杯。
子供たちを世話する世話人の態度には、温かみを感じられません。
その環境は酷いものでした。
その話を聞いた栄一の妻・千代(橋本愛さん)は、自分も養育院に行きたいと動向を願ったのです。
ある日、栄一は岩崎弥太郎の宴席に招待されました。
栄一は、岩崎の出自が自分と同じ百姓であったことや、同じように、役人の理不尽な要求に憤慨し、いずれ国を変えてみせると同じ志を持っていたと知り意気投合します。
岩崎は、これからは金の世だとして、栄一に手を組もうと呼びかけました。
しかし、栄一は国益重視、1人や1企業だけが富むのではなく、経済が回るよう民が富めるようにと考えており、岩崎とは真逆の考え方をしていました。
岩崎の要求を突っぱね、帰ろうとする栄一を、岩崎は尚も引き止めます。
困惑する栄一を助けたのは、亡き平岡円四郎の妻・やす(木村佳乃さん)でした。
岩崎が「渋沢」をもてなすと聞いたやすは、宴席まで様子を見に来ていたのでした。
岩崎に引き止められ困惑する栄一を物陰から呼んで、裏口から逃がしたやす。
やすは、円四郎の意思を栄一に託したのでした。
栄一は千代を伴い、養育院を訪れました。
千代は、子供たちがいる部屋に赴き挨拶しますが、子供たちの様子は芳しくありません。
新しい着物が支給されましたが、それは既にボロボロの着物。
項垂れる子供たちに、千代は着物を繕う方法を教え始めました。
次第に打ち解ける子供たち。
千代は子供たちに優しく穏やかに接し、表情の乏しかった子供たちに感情を取り戻させたのです。
栄一は、千代に月に一度は共に養育院を訪れようと、提案したのでした。
そんな中、米国前大統領・グラントの来日が決定しました。
グラントをもてなすためには、官だけでなく民からの歓迎も必要だと岩倉具視(山内圭哉さん)は言います。
栄一は、グラントをもてなすために、千代、よし(成海璃子さん)、うた(小野莉奈さん)に将軍一家のもてなしをして欲しいと頼みました。
千代たちは戸惑うものの、初めての大役に頑張ろうと気合を入れたのでした。
前回、第34回「栄一と伝説の商人」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは、第35回「栄一、もてなす」のあらすじと感想です。
グラント来日3か月前
グラント将軍をもてなす役割を担う千代たちは、築地の大隈邸を訪れました。
そこには、大熊の妻・綾子(朝倉あきさん)、井上馨の妻・武子(愛希れいかさん)など、政府高官の妻が勢揃いしていました。
最近までヨーロッパに行っていたという武子に、女性たちは西洋式の挨拶の仕方などを学びます。
日本が一等国を目指しているこの頃、アジアでは欧州各国による植民地支配が強まっていました。
その頃、栄一たちも集まって、グラント将軍たちをもてなすための余興を考えていました。
かつて栄一は民部公子と共にヨーロッパを回った経験を話します。
「俺は民部公子とパリに行った時、文明の差を嫌というほど思い知った。今度は今の日本がいかに西洋に追いついているのか、見せつけなくてはならない」
女性たちも、武子の指導のもと、西洋風の仕草を学びます。
野蛮国と思われないように、女性たちも西洋の様式をしっかり学ばなければなりません。
千代とよしは、戸惑いながらも「女性も変わらなければならない」と覚悟を決めたのです。
グラント将軍来日において、日本が世界に並び立つ国になるよう、期待している人々が数多くおり、寄付金もたくさん集まりました。
しかし中には、栄一が民の代表として扱われていることに不満を抱く人々もいました。
栄一宅や井上宅には脅迫状が届き、街頭では栄一たちを批判する演説が行われていました。
グラントの到着
そんな中、グラント将軍一家が横浜港に到着しました。
表では、栄一たちが歓迎のもてなしで忙しい中、裏では、岩崎弥太郎がこの期に乗じて商いを発展させようと画策していました。
グラント一行をもてなすために、夫人同伴の夜会に参加することになった千代たち。
綾子は公家装束、武子と娘はドレス姿です。
その美しい姿に、栄一の娘・うたは感動しました。
歓迎の宴が始まり、物怖じせず、外国人と触れ合い会話を楽しむ日本の夫人たちの姿を見て、
「ここにおるワイフたちは立派なもんじゃのう」
「ああ、日本のおなごはますますああなっていかにゃならん」
グラント将軍の妻・ジュリア夫人が足を気にしている様子を見せ、退室しました。
それを見ていた千代は、後を追い「どうかされましたか?」と声をかけました。
夫人の足は虫に刺されて腫れ上がっていました。
千代は、薬を用意しますと、立ち去りました。
それを栄一が英語で夫人に伝えていると、グラント将軍が現れました。
夫人は、もうアメリカに帰りたいと夫に訴えました。
グラント将軍一行は、欧州、インド、清国など、各国を巡っており、夫人は疲れ果てていたのです。
グラント将軍は、ここが最後の訪問先だから、と夫人を宥めていました。
そして栄一に、こんなに大仰に歓迎されても、自分はもう将軍ではない、日本の期待に応えられるものはない、と告げるのです。
グラントの希望
翌日、栄一のもとに伊藤がやってきて、グラント将軍が栄一の家に行きたいと言っている、と告げたのです。
栄一は困り果て、どうしたらいいのかと途方に暮れていました。
しかし、それを聞いた千代は興奮して、
「いいえ、なんという僥倖でございましょう。あれほどのお方を家でお迎えできるとは、こんな光栄なことはございません。お前様、あの飛鳥山の邸を何としてでも2日で仕上げ、精一杯の支度をして、ご降臨を仰ぎましょう!」
というと、家人たちに次々と指示を飛ばし始めたのです。
「ああ~、ぐるぐるいたします!」
と興奮する千代の勢いに、栄一は戸惑い驚いていました。
家の者総出で飛鳥山の新居を整え、グラント将軍一行をもてなす準備を整えていきます。
その最中、栄一は自分はパリで受けたどんなもてなしより、思い出すのはポトフだと語りました。
「豪華なもてなしは確かにありがたい。しかし、遠い異国の地で誠のもてなしとは、結局は人の温かい心なのでなはないか」と栄一は呟きました。
その言葉を千代は黙って聞いていました。
グラント一家の訪問
そして、グラント一行が飛鳥山の渋沢邸にやってきました。
玄関に入ると、栄一の子供たちが並び、日本の歌を披露します。
そして、ようこそ我が家へ、と歓迎の言葉を述べたのです。
子供たちの温かい歓迎にグラント一行も笑みを浮かべました。
庭に幕を張り、日本舞踊や、甲冑を着た武士の立ち会い、組手、相撲などを披露します。
そんな中、伊藤は、前将軍であるグラントをここまでもてなす意味はあるのかと呟きました。
現に、英国公使のパークスや他の公使たちは、グラントの来日を冷めた目で見ていると言います。
アメリカ1国、しかも大統領でもない者をここまでもてなして、何が変わるというのか、と呟いたのです。
その言葉に栄一は考え込みます。
すると、よしと喜作がやってきて、「次は、血洗島名物、煮ぼうとうです」と煮ぼうとうを振舞ったのです。
各国の長旅で疲れた舌は、煮ぼうとうの優しい味に癒されました。
千代の優しい温かい心遣いを見て、栄一は顔をほころばせました。
栄一は、千代の嬉しそうに一生懸命もてなす姿を見ると、意味なんてなくてもいいか、と言いました。
千代のあんな顔は初めて見た、と感慨深そうに呟いたのでした。
千代の温かいもてなしによって、グラント将軍一家との距離が縮まり、夫人は千代たちにヌードルの作り方を教えます。
将軍は、アジアを回って気づいたことを栄一たちに教え始めました。
「近年、アジアでヨーロッパの影響力が強まっている。そして、何億人ものそれぞれの文明を持った人々が、西洋人でない故に軽んじられ権利を無視されている。日本は今、欧米に肩を並べようとしている。しかし、覚えておいたほうがいい。多くの欧米人、特に商人は日本が対等になることを望んでいない。今のままアジア人を働かせ続け利益を得たいのだ。日本が独立を守り、成長するのは大変なことだ。しかし…私は願っています。それが成功することを」と栄一たちに助言したのでした。
千代たちのもてなしは大成功。
この後の上野の歓迎会も大成功に終わりました。
栄一は、「今回はまことにたまげた。お千代は世界に冠たるおなごだ。極上だ。かけがえのない奥様だ」と千代を褒め上げると、千代を抱き寄せ、「惚れ直した。ありがとう」と感謝を伝えたのでした。
こうして、2か月の滞在を終え、グラント将軍一行は帰国しました。
三菱の動き
日本が国力を上げることに力を注ぐ中、政府の保護のもと、海運業を独占したのは三菱でした。
大隈を呼んだ岩崎は、新しい事業をする場所として、北海道を任せて欲しいと頼みます。
薩摩の黒田が年100万をかけて開拓していますが、未だに北海道は不毛の地。
ここはダメだ、と大隈は言うのですが、岩崎は自分ならば大丈夫、どんな地でも宝の地にすることができる、と豪語したのです。
明治13年、国会開設をと叫ぶ声が大きくなって来ていました。
政府に対する不満が人々の間に高まるにつれ、政治への参加を求める自由民権運動が激しくなっていきました。
一部の政府高官だけが権力を握り、御用商人だけが潤う世の中に、不満が起こっていたのです。
その夜、大隈は北海道の開拓事業を止めると宣言。
伊藤と井上は、大隈と三菱の癒着に忌避感を持っていました。
政府の中で、財政を担う大隈の振る舞いはだんだんとやりたい放題になっており、伊藤と井上は今後の障害になるのではと危惧していました。
栄一のもとには、三菱をどうにかして欲しいと苦情が殺到していました。
大手の三菱には競合会社がおらず、どんどん値が上がり中小海運業は潰されてしまうのです。
栄一は、日本のため、三菱の一人勝ちは国のためにも打破しなければならない、と合本による新たな会社を設立することを決めたのです。
「三菱と真っ向勝負をするんだ!」と意気込む栄一でした。
次回、第36回「栄一と千代」
栄一は三菱の独占に対抗するために東京風帆船(とうきょうふうはんせん)会社を設立するが、岩崎弥太郎の新聞を使った巧みな攻撃に、開業前に敗北してしまう。また、養育院も東京府から事業縮小を迫られ、なかなか前に進めない栄一。その裏で弥太郎は着々と事業拡大を進める。そのころ、長女・うたと穂積陳重の縁談が持ち上がり、意気投合した二人は結婚する。しかし、渋沢家が幸せな空気に包まれる中、千代が突然病に倒れてしまう。
大河ドラマ「青天を衝け」公式サイトより
三菱との真っ向勝負を決意した栄一ですが、岩崎弥太郎の巧みな攻撃に撃沈してしまいます。
千代が力を注いでいる養育院の事業も縮小しなければなりません。
そんな中、長女うたの結婚話が浮上しますが、千代に不穏な影が忍び寄ってくるのです。
第35回では大活躍だった千代に突然襲いかかる病魔。
心配ですね、不安ですね、千代はどうなってしまうのでしょうか。
次回、三菱との対決の様子と千代に注目したいと思います。
最後に
今回は、女性の活躍が目覚しい華やかな回でしたね。
井上馨の妻・武子が素晴らしくいいキャラクターでした。
女性たちのキャッキャという和気あいあいとした様子は見ていて楽しかったです。
何よりも圧巻だったのは、千代、でしょうね。
グラント将軍一家をもてなすために、女性も一緒に表舞台に立つと言われた時から、千代はとても前向きに取り組んできました。
控えめでありながら芯が強く、優しく慈悲深い千代。
千代がグラント将軍一行をもてなそうと張り切る姿は頼もしく、かっこよく、素敵でした。
栄一が困り果てていて、声にも元気がなく、呆然としていたから、余計にその対比が面白かったですね。
しっかりものの千代の可愛い面がたくさん見られて、本当に嬉しかったです。
政治の面では、大隈と岩崎の癒着度合いが激しくなり、井上と伊藤が大隈排除に立ち上がりそうになっていました。
恐ろしいですね~、伊藤たちは一体どうするつもりなのでしょうか。
最近、偉そうな大隈の姿ばかりで、始めの頃、栄一と掛け合いをしていた頃が懐かしいです。
次回は、三菱の岩崎弥太郎と栄一の対決ですが、やはり海千山千の岩崎にやられてしまいます。
開業前に潰されるって、すごいですよね。
その情報操作の力に驚きます。
しかし、栄一だってきっと巻き返してくれるはず、ですよね?
もちろん、勝ち負けではないんですけど、国のため、栄一には頑張って欲しいと思います。
さて、次回第36回「栄一と千代」では、千代が病に倒れてしまいます。
小さい頃からずっと栄一を支え続けてきた千代。
その早すぎる退場が残念でなりません。
家を飛び出した栄一を精神的に支え、栄一の代わりに家を守り、子を育てた千代。
2人の強い絆が見られるかと思おうと楽しみではありますが、次回が来るのが恐ろしくもあります。
橋本愛さんの落ち着いた語り口、凛とした姿、包容力あふれる笑顔、時に人を諭すために強い口調になる時もありますが、嫌味のない説得力のある語り口に思わず納得してしまいます。
理想の妻・母である千代。
その退場は悲しいですが、それが史実なのですから仕方がありません。
次回は、2人の絆をしっかりと目に焼き付けたいと思います。