61作目となる2022年大河ドラマ、「鎌倉殿の13人」。
脚本は、三谷幸喜さん。
主役の北条義時を務めるのは、小栗旬さんです。
毎週日曜(総合)午後8時、(BSプレミアム、BS4K)午後6時、毎週土曜日午後1時5分から再放送が放送中です。
前回のあらすじ
建久10年(1199年)1月、頼朝の死について土御門通親(関智一さん)から報告を受けた後鳥羽上皇(尾上松也さん)は、頼朝の死の真相を的確に推理していました。
その頃、鎌倉では頼朝の後を継いだ源頼家(金子大地さん)が母・政子(小池栄子さん)から頼朝が決意を誓った髑髏を「鎌倉殿に代々引き継がれる物、上に立つ者の証」と渡されていました。
鎌倉殿として頼家が行った所信表明は、家柄で人を選ばず、実力のある者を登用するというもので、頼家の縁戚として権力を振るおうと考えていた北条時政(坂東彌十郎さん)や比企能員(佐藤二朗さん)は戸惑いました。
頼家は頼朝の側近だった北条義時(小栗旬さん)に若い人材を集めるよう命じ、義時は嫡男・頼時(坂口健太郎さん)と異母弟・時連(瀬戸康史さん)を頼家のもとに送り込みます。
2月、京で起こった暗殺計画の発覚に、頼朝が懇意にしていた一条家が関わっていたことで、朝廷から処罰を命じられたのですが、この処罰について、一条を助け朝廷に力を見せようという北条や比企の意見を退け、頼家は一条家を処罰すると決めました。
こうして、若手を育成し、膨大な訴えを捌く頼家ですが、その量の多さに嫌気が差してしまいます。
休憩と称し、正室・つつじのもとに向かっても、側室・せつとつつじの争いを見せつけられ、頼家は気が休まりません。
側近となった頼時は、頼家の焦りを見抜いていました。
義時は、頼家を幼い頃から知る妻・比奈(堀田真由さん)に背中を押され、頼家を支える案を考えました。
その案とは、前もって訴訟の内容を文官が評議し、取るべき道を絞り、決定を頼家に任せる、ということです。
文官4人と頼家の信頼が厚い梶原景時(中村獅童さん)の5人衆でそれを受け持つという案でしたが、北条や比企の権力争いが加わり、気づけば12人にまで膨れ上がっていました。
最終的には尼御台となった政子の意志で義時も加わり、13人の合議制が取られることになりました。
頼家は、その数の多さに呆然とし、自分はそれほど頼りないかと衝撃を受けます。
自分の味方と思っていた義時が母の意思で13人衆の中に加わったことにも衝撃を受け、北条は信じられない、と激高します。
頼家を支える13人衆は、大江広元、三善康信、中原親能、二階堂行政、北条時政、三浦義澄、和田義盛、足立遠元、比企能員、安達盛長、八田知家、梶原景時、北条義時。
頼家の前で挨拶をするのですが、頼家は「父上は最後まで御家人に心を許してはおられなかった。儂も同じだ」と言い放つのです。
そして、自分が集めた若者と政を行うと宣言。
頼家を支えようと考えていた義時は苦渋の表情を浮かべ、梶原は「頼朝様は些か亡くなるのが早すぎだ」と呟くのでした。
前回、第27回「鎌倉殿と十三人」を見逃した方は、ぜひこちらをどうぞ。
それでは第28回「名刀の主」のあらすじと感想です。
対立
義時の発案で結成された13人の合議制が始まりました。
しかし、訴訟当事者が昔からよく知る人物であったり、親戚ということで、宿老同士の意見が纏まりません。
見かねた梶原が一喝し、評議はやり直し。
頼家には報告しないことになりました。
前途多難な合議制に、義時は苦渋の表情を浮かべるのでした。
若き鎌倉殿を補佐する13人の御家人たち。
頼朝を越えようともがく頼家は、不信感を募らせるのでした。
13人の合議制について、頼家は不満を持っていました。
「あいつらの魂胆はわかっておる。裁きを下すのは儂で、13人は補佐役。そういうのは建前で、補佐役なら2、3人いれば足りるはず。寄ってたかって儂を除け者にするつもりだ」と不満を若き側近たちにぶつけます。
自分たちで政を成そうと意気込む頼家は、若き側近たちに所領の風紀を正すため、見回りを強化するよう命じます。
その報告を受けた政子は、頼家の考えがわからず、苦悩していました。
義時や梶原は、頼家がしていることは、街道の掃除や迷い犬の保護など、他愛もないことなので、今はまだ静観すると報告します。
ただ、これから自分たちの権限を増やせと言われるのではと危惧していました。
梶原は、自分の仕事は頼家への謗りを防ぐこと、今はそれに心血を注ぐ、と宣言しました。
正治元年(1199年)6月30日、頼朝と政子の次女・三幡が闘病の末、亡くなりました。
三幡の乳母夫であった中原親能はこれを機に出家し、鎌倉を離れることになりました。
政子の悲しみは深く、周囲が心配する中、三幡の今際の際に間に合わなかった頼家が狩りから戻ってきました。
政子は、いつも肝心な時にいない、と頼家を詰ります。
頼家は政子に謝罪しながら、政子の手を取り、三幡を入内させられず残念だったと言います。
しかし、自分が朝廷と結びつき、鎌倉を揺るぎないものにすると誓うのでした。
悩み
頼朝の異母弟・阿野全成(新納慎也さん)の妻で、北条時政の娘・実衣(宮澤エマさん)は、琵琶の稽古に励んでいました。
師である結城朝光(高橋侃さん)と実衣は親しくなり、実衣は政子に対する不満を打ち明け、夫がそれを聞いてくれないと自嘲します。
結城は実衣の不満を受け止め、自分はいくらでも付き合うと約束します。
結城に心を開いていく実衣。
そんな実衣に結城は悩みを打ち明けました。
ある日、仁田忠常(高岸宏行さん)との雑談で、結城は若い頼家に対しての不満と不安を口にしました。
「とても鎌倉を率いるに相応しいとは思えない。頼朝様にはもっと生きていて欲しかった。忠臣は二君に仕えず」
それを善児(梶原善さん)に聞かれていたため、梶原から呼び出され、謹慎を命じられたというのです。
実衣は結城のために、自分が何とかする、と約束するのでした。
自室で一幡と過ごしていた側室・せつ(山谷花純さん)は、正室・つつじ(北香那さん)の元へ行き、頼家に会わせて欲しいと訴えます。
しかし、頼家はつつじのもとにも姿を見せていませんでした。
悪阻で苦しみながら、せつと同じ思いだと言うつつじ。
せつはそんなつつじを気遣うのでした。
横暴
その頃、頼家は安達盛長(野添義弘さん)の息子・景盛(新名基浩さん)の妻・ゆう(大部恵理子さん)を御所に召していました。
ゆうに入れ込み、政務にも同行させようと口にする頼家。
北条頼時は、頼家に「人の道に反しております」と苦言を呈すのですが、頼家は耳を貸しません。
困った頼時は、梶原に報告。
梶原は「お前の父を呼べ」と義時を呼ぶよう命じました。
頼家は、安達親子に景盛の妻のゆうを譲るよう命じました。
景盛は、頼家に怯えながらもその要求を拒否。
盛長もこればかりは承服できないと断ります。
頼家は、自分に背くは父に背くと同じ、と脅すのですが、盛長は断固として頷きません。
「力ずくで人の妻を奪ったとなれば、鎌倉殿の名に傷が付きます。そのことを申し上げておるのです。家を焼き払われようが、鎌倉を追われようが、たとえ首をはねられても私の心は変わりませぬ。お父上を悲しませてはなりませぬ」と頼家を諌める盛長。
それでも頼家の横暴は止まらず、安達親子を捕えて首を刎ねよと命じたのです。
控えていた梶原は、頼家を諌めるのですが、頼家の怒りは収まりません。
そこに義時が政子を連れて現れました。
政子は頼家の愚行を責め、「いい加減に目を覚ましなさい」と一喝します。
同じことを頼家の妻たちの前で言えるかと諌めます。
義時は、安達程鎌倉に忠義を持つ者はいない、こんなことで首を刎ねるなど許させることではない、と激高します。
それでも不満を口にする頼家に、政子は「頭を冷やしなさい」と諭しました。
その場は一旦収まるのですが、頼家の気持ちは収まらず、その怒りは梶原に向きました。
「覚えておけよ」と脅すと、梶原は冷静に「覚えておきます」と答えて立ち去るのでした。
この件で、御家人の気持ちは頼家から離れ、頼家もまた御家人への不信感を強くしました。
双方に対処するため、梶原は結城朝光に謀反の疑いありとして、見せしめに死んでもらおうと考えました。
頼家に不満を持つ御家人を牽制し、引き締めるために必要だというのです。
不満
梶原の厳しい判断に義時は苦悩しました。
実衣に結城を助けて欲しいと懇願され、畠山重忠、三浦義村(山本耕史さん)、和田義盛(横田栄司さん)らに相談した義時。
畠山は「梶原殿は、鎌倉のあちこちに間者を忍ばせて情報収集していると聞きます。今のままでは梶原殿に反感を抱く御家人が増えるばかりです」と訴えます。
義時は、宿老同士の対立は避けたいとして、宿老ではない義村に御家人たちの不満を梶原に伝えて欲しいと頼みます。
しかし義村は、それでは弱いとして、人数を集めて訴状にして頼家に処分してもらおうと主張したのです。
大事にしたくない義時は、4、5人集めるだけでいい、と言いました。
そうして、義村たちは署名を求めるために動き出しました。
初めに北条時政の所に行くと、梶原が気に入らないという時政はすぐに署名しようとします。
りくも「梶原殿を引きずり下ろしてやりましょう」と時政に紙の一番最後に名前を書くように促します。
その後、比企能員のもとを訪れると、同じようにすぐに署名を貰えました。
その数は義時の意図に反して67人にまで膨れ上がりました。
義時は、大事にするなといっただろう、人数も多すぎる、と義村を咎めるのです。
義村は、出来上がった訴状を時政に見せ、翌日、大江広元(栗原英雄さん)から頼家に渡してもらうと話します。
すると、横で見ていたりくが、一番端に書いてあった時政の署名部分を小刀で切り取ってしまったのです。
それは、梶原と頼家が結託し、訴状に名のある御家人を処分するかもしれないと危惧したからです。
巻紙の一番端に書くよう指示したのは、切り取ったのがわからないようにするためだったのです。
りくの策士ぶりに義村も感服したのでした。
義時の妻・比奈(堀田真由さん)は、坂東武者の内輪もめの多さに辟易していました。
これからどうなるのか不安を抱き、頼時に頼家の側に張り付き、義時が不利になるようなことがあれば、すぐに報告するようにと命じるのでした。
断罪
義村から訴状を預かった大江ですが、頼朝に忠節を尽くした景時が罪に問われるのは不憫であり、和平への道を探るべきと考えていました。
和田が、なぜ頼家に渡さないのかと詰め寄っても、訴状は最後の手段、と渡すことを躊躇っていました。
しかし、和田から「梶原がそんなに怖いか」と恫喝され、「鎌倉殿に渡すのか、渡さないのか、今ここで返答せい」と迫られました。
そして頼家に呼び出された梶原。
政子は梶原が欲得のために動く人間ではないと庇い、呼び出しになど応じなくていいと言うのですが、梶原は潔く呼び出しに応じます。
頼家と宿老の前に呼び出された梶原。
頼家は2通の訴状があると話し始めました。
1通は梶原による結城朝光謀反の件についての訴状。
もう1通は多くの御家人による梶原を訴える訴状です。
結城の件については、疑いは晴れたと頼家は訴状を破きます。
梶原の件については、北条や比企から梶原の言動について不満が漏れました。
義時は、その行動は鎌倉を守るため、私欲はない、と庇います。
弁明を求められた梶原は、恥じ入るところはただの1点もない、と何も言いません。
頼家は「父は御家人たちを纏める為に上総介広常を斬った。お前を許せばこの66人の御家人が黙ってはないない」と判断し、梶原を謹慎に処したのです。
梶原は何の弁明もせず、一族とともに所領に戻りました。
しばらくして様子を見に行った義時に、梶原は京から誘いがあることを打ち明けました。
鎌倉にいても先はないと考えた梶原は上皇からの誘いを受けようと考えていました。
しかし義時は「行ってはなりません」と猛反対。
この件を頼家に伝えたのです。
その頃、義村は結城に身を隠すよう命じ、お金を与えていました。
今回の梶原失墜の件は、梶原を邪魔と思っていた義村が仕組んだことだったのです。
義時から上皇の動きを聞いた頼家は、梶原を呼び出しました。
忠臣は二君に仕えず、という言葉を持ち出し、京に行こうとしていた梶原に「お前は自分が忠臣でないことを認めたわけだ。この鎌倉に忠義を誓えん者はいらん。奥州外ヶ浜に流罪を命じる」と罰を言い渡したのです。
結末
正治2年正月、義時は極秘裡に比企能員に呼ばれました。
比企は、穏便に、決して頼家の耳に入れてはいけない、と義時に訴えます。
義時が部屋に入ると、梶原勢が一幡を拘束していました。
梶原は、京へ赴く際の人質に一幡を攫おうとしていたのです。
こんなことをしなくても、京まで無事に辿り着けるよう手配する、と義時は言うのですが、上皇の誘いの件を頼家に漏らした義時を信頼できないと梶原は言います。
義時が頼家に伝えたのは、鎌倉と朝廷の争いが勃発するのを恐れたためです。
梶原が京に行けば、頼家は絶対に梶原を許さず、必ず討ち取ろうとする、それは朝廷と鎌倉の火種になると義時は言います。
鎌倉を守るためだったと義時は言い募りました。
刀は斬り手によって名刀にも鈍らにもなるという。
自分は鈍らで終わりたくない、と言った梶原は、一幡をせつに返し、流罪先に行くと立ち上がりました。
去り際、義時に「そなたは上総介広常の前でこう申した。我らは坂東武者のために立ち上がった。源氏は飾に過ぎぬと。忘れてはおらぬな」と声をかけた梶原。
義時はしっかりと頷きました。
「己の道を突き進め、置き土産じゃ」と善児を義時に譲りました。
立ち去る梶原勢を見ていた義時は、頼時にすぐに兵の用意をしろと命じます。
「梶原殿は必ず西へ向かう。東海道で討ち取る」と言うのです。
梶原は流刑地に向かうと言いましたが、武士らしく華々しく戦で死ぬつもりだ、と気づいた義時は、梶原を追討するための兵を準備するのでした。
次回、第29回「ままならぬ玉」
御家人たちのバランスが崩れ始めた鎌倉。 義時(小栗旬)は北条と比企との争いの激化を懸念し、頼時(坂口健太郎)と比奈(堀田真由)を前に決意を新たにする。 そんな中、つつじ(北香那)が源頼家(金子大地)の次男・善哉を出産。 三浦義村(山本耕史)が乳母夫となるが、比企能員(佐藤二朗)は長男・一幡こそが嫡男であるとけん制。 一方、北条時政(坂東彌十郎)はりく(宮沢りえ)から政子(小池栄子)の次男・千幡を頼家の跡継ぎにと……
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」公式サイトより
頼朝の代から鎌倉を守ってきた梶原が退場してしまいました。
北条と比企の争いが激化し、ますます鎌倉は纏りを失い崩れかけてしまいます。
後継争いによるゴタゴタは、どんな結末になるのでしょうか。
今回大変な策士であることが発覚したりく、そして義村は、また何か企むのでしょうか。
次回、第29回「ままならぬ玉」、義時にとっても頼家にとっても、誰にしてもままならぬことばかりの鎌倉は、一体どうなってしまうのでしょうか。
次回も楽しみですね。
最後に
頼朝の信頼が厚く、忠義の心に溢れていた梶原が失墜してしまいました。
表情を変えず、淡々と仕事をする中村獅童さん演じる梶原景時は、誼を重んじる坂東武者にとっては取っ付き難い親しみ難い人物だったのかもしれません。
北条時政や三浦義澄などの縁戚の繋がりや地域の繋がりなどを見ていると、1人で淡々とやるべきことをやる梶原は異端だったのかもしれませんね。
それでも、小栗旬さん演じる北条義時と会話する時は、その表情が崩れ、時に柔らかい表情や、今回は泣く場面も見られました。
数少ない表情の変化を今回は沢山見ることができて、感動しました。
頼家の空回りぶりには驚きましたね。
頼朝を越えようともがく、とナレーションではありましたが、超えるどころか、まだまだ足元にも及ばない、にも関わらず鎌倉殿の威光だけは使えると思い込んでいる頼家に、呆れるとともに怒りを感じました。
父だって同じだろうと人妻を自分の物にしようとするなど、あまつさえいうことを聞かなかったら首を刎ねようだなんて、暗君もいいとこですよね。
金子大地さん演じる頼家の演技に本気で腹が立ち、怒りがこみ上げました。
見事な暗君ぶりだったと感服しました。
しかしそんな頼家も今はまだ政子には敵いません。
小池栄子さん演じる凛とした政子は相変わらず美しく、かっこよかったです。
そして今回驚いたのは、宮沢りえさん演じるりくの先見の明の鋭さと、誰にも悟られず梶原を追い落とした山本耕史さん演じる三浦義村の恐ろしさ、です。
義村は史実でも不可思議な人物、権謀に長けた人物と評されていますし、これからの暗躍がまだまだ見られる人物です。
これまでも、知略に満ちた策を義時に授ける姿が多々見られましたが、権力争いが激化するこれからが義村の本領発揮なのでしょうね。
今後の義村から、目が離せません。
そして、小栗旬さん演じる義時の苦悩が手に取るようにわかり、切なくなりました。
頼朝亡き後の鎌倉を守るため、必死になっているのに、ままならない現実。
勝手ばかりする御家人たちや傲慢な主君、義時は今後どんな決断を下すのでしょうか。
次回、第29回「ままならぬ玉」では、北条と比企による激しい後継者争いが勃発します。
そんな中、りくがまた何かを企むようですが、一体どんなことが起こるのでしょうか。
血生臭い権力争いが激化するようで、恐ろしさに怖気づいてしまいそうです。