嵐の松本潤さん主演の2023年大河ドラマ「どうする家康」。
脚本は、稀代のストーリーテラー・古沢良太さんです。
毎週日曜BSプレミアム午後6時~、NHK総合午後8時~放送されます。
徳川家康の生涯を新たな視点で描く、スピード感溢れる波乱万丈の戦国エンターテインメント。
こちらでは、大河ドラマ「どうする家康」のあらすじ、ネタバレ、感想をお届けします。
さて、第25回「はるかに遠い夢」では、築山事件が描かれます。
家康が織田の命を受け妻子を処分した有名な事件ですが、「どうする家康」では、どのように描かれるのでしょうか。
慈愛に満ち溢れた聡明な女性・築山殿と、心優しき武将・松平信康。
そして、2人の計画に賛同した多くの人々はどのような運命を辿るのでしょうか。
前回のあらすじ
唐の医師に扮した穴山信君(田辺誠一さん)と千代(古川琴音さん)を築山に招き入れ、武田と手を組むと約束した瀬名(有村架純さん)。
甲斐の武田勝頼(眞栄田郷敦さん)は、岡崎が武田の手に落ちた、これで織田と徳川を分断できると喜びます。
しかし報告した穴山と千代は、瀬名が不思議なことを語る、と首を傾げるのです。
岡崎では、平岩親吉(岡部大さん)ら側近を排し、瀬名子飼いの家臣たちだけで固めた中、信康が築山に入り浸ることに五徳(久保史緒里さん)を始め側近たちも不安に感じていました。
浜松の家康にもその報は届き、岡崎の動きが織田に知られる前に手を打った方がいい、と服部半蔵(山田孝之さん)に指令が出されました。
服部配下の女大鼠(松本まりかさん)が築山の床下に忍び、ひと月の間、築山を訪れる人々の動きを観察していました。
やってきたのは穴山信君、久松長家(リリー・フランキーさん)と於大(松嶋菜々子さん)、今川氏真(溝端淳平さん)と糸(志田未来さん)らです。
穴山と千代が築山で瀬名と信康と対面しているところを探っていた大鼠ですが、千代に見つかってしまいます。
築山と武田の繋がりを不安視した家康は、兵を集めて築山に向かうことに。
踏み込むと瀬名と信康は家康の訪れを待っていました。
穴山も家康の前に現れ、斬られる覚悟でここにいる、話を聞いて欲しいと懇願します。
そして話し出した瀬名は、壮大な途方もない夢の話をしたのです。
戦ではなく慈愛により人々を治める国を作るというものでした。
瀬名の考えは、穴山も久松も今川も賛同し、協力を申し出ていました。
瀬名の考えを家臣たちに話し、瀬名の考えを推し進めるために、織田を欺くと決めた家康。
勝頼も穴山の説得により、徳川と戦うふりを続けます。
計画は順調と思われたある日、勝頼は瀬名の計画を織田にぶちまけろと穴山に命じたのです。
そして、この謀は、世に知れ渡ってしまったのです。
前回、第24回「築山に集え!」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは、第25回「はるかに遠い夢」のあらすじと感想です。
暴かれた謀
天正7年夏、瀬名は戦をする意味を家康に問います。
争うのではなく助け合う世界を作る、という瀬名の夢を、家康は共に見ようと努力するのですが、その謀は勝頼により暴かれてしまいました。
織田信長(岡田准一さん)は、家康を呼び出します。
やってきた家康は雨の中、傘もささずずぶぬれのまま膝を付き、信長に頭を下げました。
佐久間信盛(立川談春さん)は、岡崎に手謀反の噂あり、家康も加担していると言われているが、それは虚説であろう、虚説でなければなりませんぞ、と問いかけます。
信長は、「お前の家中で起きたことだ、俺は何も指図せん、お前が自分で決めろ」と立ち去りました。
佐久間は家康の頭を上げさせると、「家康殿、何をせねばならぬかお判りでしょうな。ご処分が決まり次第、安土に遣いを」と言い去っていきました。
ずぶぬれのまま、目を伏せ苦渋の表情を浮かべる家康。
信長との対面の間、一言も言葉を発することはありませんでした。
岡崎城下、築山を訪れた家康に、五徳が「父は…何と」と心配そうに尋ねました。
家康は何も言いません。
信康が「私が腹を斬ります」と言い募りますが家康はそれを許しません。
ではどうするのか、と聞く信康に、家康は「信長と手を切る」と宣言します。
「武田に裏切られた今、織田まで敵にまわしたらお終いです」と信康は訴えます。
「お前を死なせるくらいなら儂が腹を斬る」と家康は言いますが、信康は反発。
それこそ、徳川が滅ぶ、と主張します。
瀬名は五徳に、瀬名と信康が悪行の数々をしたと信長に書き連ねた手紙を書くよう促します。
そんなことはできない、という五徳に、そうでなければ五徳も仲間と思われる、と説得します。
自分は瀬名と信康と志を同じくした仲間だと五徳は主張しますが、五徳には姫を育てる務めがあるだろうと諫めるのです。
瀬名は家康に手をついて頭を下げると、「如何様にも処分してくださいませ」と言いました。
深いため息をついた家康は、処分を決めたとして、3人を引き寄せました。
「皆、儂の言うことを聞け、瀬名と信康には責めを負ってもらう。五徳は瀬名の言う通り信長様に書状を書け。そういうことにするんじゃ。信長を、世を…欺く」
決意を秘めた目で皆を見据えた家康は、そう言ったのです。
処分
五徳の手紙を携えた酒井忠次(大森南朋さん)が安土に向かい、五徳の書状を読み上げ、瀬名と信康は自害させると報告しました。
服部半蔵は、瀬名と信康に似た人物を探し出し、2人の身代わりとすると家康に報告します。
2人には場所を移ってもらうが、その際に服部党が2人を身代わりと入れ替え逃がす、名を変え、別人として生きて頂く、いずれ世が変われば以前の通りに暮らしてもらえる、と計画しました。
そして信康移送の日、信康は五徳に別れを言い、いつでも織田に戻っていい、と告げました。五徳は1つお願いがある、と言い、これからもずっとどこに行っても岡崎殿と呼ばれたい、と信康に懇願し、信康は破顔すると快諾しました。
瀬名も氏真や糸、於大や長家と別れを済ませます。
信康を逃がす手筈だった服部ですが、移送に失敗したと家康に報告します。
怒る家康に、信康が拒んだから、という服部。
「ご当人にお心がなければお逃がしすることはできません」と服部は言います。
家康はもう一度逃がそうと画策します。
「大久保忠世(小手伸也さん)のいる二俣城に移す。今度こそ必ず逃がせ」と服部に家康は厳命しました。
二俣城に移送された信康ですが、意思は固く、母が逃げてからだ、と拒みます。
そして瀬名移送の日。
瀬名は家康が瀬名のもとに置いていった木彫りの兎を袂に入れると迎えの者に連れられ、築山を去ったのです。
石川数正(松重豊さん)は瀬名に、「どうか殿のお指図通りに」と懇願しますが、瀬名は何も言わず、ただ微笑んだのです。
瀬名と信康の覚悟
瀬名は佐鳴湖を渡り、船着き場に到着しました。
大鼠に着替えるよう促され、鳥居元忠(音尾琢真さん)にも織田の密偵がどこぞで見ているかもしれない、早く、と促されますが、瀬名は「信康は逃げたのか?」と尋ねたのです。
言い淀む鳥居を見て察した瀬名は、「私の身代わりの者は」と問うたのです。
瀬名は身代わりの前まで行くと、優しく微笑み「行くがよい、家にお帰り」と身代わりを逃がしました。
瀬名は船着き場に座り込むと、懐剣を手に取り、鳥居に介錯を頼むと言いますが、鳥居はそれを拒みます。
瀬名は大鼠に介錯を頼むと言い、大鼠は瀬名の目をじっと見つめ、刀に手を掛けました。
刀を振り上げた大鼠を止めた鳥居は、瀬名に「城で殿が待っておられます」と告げるのですが、瀬名の意思は変わりません。
その時、湖を渡って家康がやってきました。
二俣城にいる信康に、大久保と平岩が逃げるようにと説得を続けますが、信康は母が逃げてから、と言い、動こうとしません。
力ずくででも逃がせと、殿の命だと大久保が告げます。
信康は「母上は、母上がお逃げになってからと言うたはず」と動きません。
服部は「お方様は無事お逃げになりました。殿が直々に説得されました。とある村の古寺に身を寄せておられます」と告げるのですが、信康はその嘘を見破ります。
「半蔵、お前は忍びのくせに嘘が下手だな」という信康。
「ご自害…なさったのだな」
「全ては若殿に生き延びて頂くためでござる、お逃げくだされ」と説得すると、信康は目を伏せ立ち上がりました。
平岩の隙を付き刀を奪うと、信康は己の腹に突き立て割腹したのです。
信康は、我が首をしかと、信長に儂の首を届けよ、儂が徳川を守ったんじゃ、信康は見事務めを果たしたと父上に…と訴えます。
泣きながら信康にすがる平岩を大久保は引きはがし、服部は信康の首を落としました。
信康自害の報を聞いた家康は、虚ろな瞳でふらふらと立ち上がると力なく歩き出し、その場に倒れてしまいました。
久松の所にも瀬名と信康の悲報が届きました。
岡崎の五徳は石川からの報告に泣き崩れ、石川もまた、涙を流します。
北条の氏真と糸も悲しみにくれます。
千代から報告を受けた勝頼と穴山は驚愕し、静かに踵を返した千代に、どこへ行く、と尋ねました。
問われた千代は、何も言わず頭を下げると立ち去りました。
勝頼は「人でなしじゃな、家康は」と呟いたのでした。
「これで徳川殿と、我らの結びつきはより強固なものになりましょう。良かった、良かった」と言った佐久間に対し、信長は、「何が良かった。あ?二度と顔を見せるな」と佐久間を下げたのです。
瀬名
倒れた家康は、涙を流しながら、瀬名のもとに向かった時のことを考えていました。
「死んではならん、生きてくれ」と説得しても、瀬名は、「それはできません、私たちは死なねばなりません」と言うのです。
「本当は信康だけはどんな形でも生きて欲しいけど、あの子はそれを良しとしないでしょう。私も共に行きます」
「嫌じゃ」という家康に、「それはわがまま」と瀬名は窘めます。
「儂かかつて一度、そなたたちを見捨てた。我が手に取り返した時、儂は心に決めたんじゃ。二度とそなたたちを見捨てないと、何があろうと、そなたたちを守っていくと、守らせてくれ」と懇願する家康。
瀬名:「貴方が守るべきは国でございましょう」
家康:「国なんてどうでもいい、儂はそなたたちを守りたいんじゃ」
瀬名:「かつて父と母に言われました、いつか私の大切なものを守るに命を懸ける時が来ると。今がその時なのです。きっと父と母もようやったと褒めてくれるでしょう。全てを背負わせてくださいませ」
家康:「世の者ども、そなたを悪辣な妻と語り継ぐぞ」
瀬名:「平気です。本当の私は貴方の心に居ります」
堪らず、家康は泣きながら瀬名を抱きしめました。
瀬名:「相変わらず、弱虫泣き虫鼻水垂れの殿じゃ。覚えておいででございますか。ずっと昔、どこかに隠れて私たちだけでこっそり暮らそうと話したのを。あれが、瀬名のたった1つの夢でございました。遥か遥か遠い夢でございましたな。さ、お城にお戻りなさいませ。ここにいてはいけませぬ」
そして瀬名は、「平八郎、小平太、殿をお連れせよ。そして殿と共に、其方たちが安寧の世を作りなさい」と命じたのです。
「そんなこと…、そんなこと儂には…」と泣く家康に木彫りの兎を渡すと、「できます。いいですか。兎はずっと強うございます。狼よりずっとずっと強うございます。貴方ならできます、必ず」と家康の手を握りしめました。
「瀬名はずっと見守っております」と瀬名は微笑んだのでした。
家康は涙を拭うと船へと歩きだしました。
それを見送った瀬名は、静かに座り、懐剣を取り出しました。
今までのことを思い出していた家康。
瀬名とかくれんぼをして遊んだこと、祝言の時のこと、初陣の時のこと、子供が生まれた時のこと。
「いつか必ず取りに来てくださいませ。殿の弱くて優しいお心を。瀬名はその日を待っております」
その兎を手にした家康は、立ち上がり振り返ると、やはりだめだ、と瀬名のもとに行こうとし、忠勝と康政に止められてしまいます。
それを見ていた瀬名は、静かに目を伏せると懐剣を己の首にあて、そのまま掻き斬ったのでした。
見守っていた鳥居は泣き崩れ、瀬名が苦しむ前にと大鼠が止めを刺し、そして深々と頭を下げたのでした。
湖に、家康の悲痛な叫び声が響き渡りました。
次回、第26回「ぶらり富士遊覧」
信長(岡田准一)を恨む様子もなく従順に付き従う家康(松本潤)を理解できず、忠勝(山田裕貴)ら家臣の一部は不満を持っていた。そんな中、家康は安土へ戻る道中に信長を接待したいと申し出る。家臣団に於愛(広瀬アリス)や茶屋四郎次郎(中村勘九郎)も加わって富士遊覧の饗応が始まるが、気まぐれな信長に振り回され、計画は思うように進まず…。
NHK大河ドラマ「どうする家康」公式サイト
愛する妻子の死の悲しみの中、信長に不満を漏らすこともなく従順に振舞う家康。
一部の家臣から不満が漏れる中、家康は化けたと信長は評するのです。
信長を饗応したいと願い出た家康の思惑とは一体何なのでしょうか。
一筋縄ではないかない、饗応の行方が楽しみですね。
最後に
有村架純さん演じる瀬名と細田佳央太さん演じる信康が自害してしまいました。
2人を生かそうと必死に計画した家康の思惑を裏切り、2人は家康を置いて旅立ってしまいました。
2人は2人なりに徳川のこと、家康のことを思い、全ての責を負って自害したのでした。
悲しい回でしたね。
2人を守ろうと奔走する家康と徳川家臣団。
しかし、2人の気持ちは固く、生きて欲しいという願いは届きませんでした。
武田と通じたから殺せと命じられ、家康が殺した、という史実をこのように丁寧に解釈し描かれたこの回は、涙無くしては見られない回でした。
心優しい信康でしたが、最期のシーンの迫力に圧倒されてしまいました。
静かに、逃げることを拒み続けた信康が、母の死を察して、己の腹に刀を突き立てるシーン。
側近の平岩親吉の刀を奪い取り、一瞬の隙を付いて自害しました。
その時の迫力は凄まじかったです。
ぐりぐりと腹に刀を突き立て、横に掻っ捌く。
その時の鬼気迫る表情に圧倒されました。
山田孝之さん演じる服部半蔵に、自分が徳川を守った、と痛みに苦しみながら満足そうに笑いかける表情に涙が込み上げてきました。
岡部大さん演じる平岩が号泣し、小手伸也さん演じる大久保が絶句、半蔵は信康の苦しみを取り除くために刀を振るいました。
それぞれ涙を流しながら、悲痛な表情で信康を見守っていました。
そこにいる誰もが信康を慕い、その死を悼んでいることがよくわかる素晴らしいシーンでした。
瀬名の最期も本当に素晴らしかったです。
家康が家族にかける思いの強さもよくわかりましたし、瀬名の家康に対する思いが詰め込まれていました。
瀬名は、心優しい家康と嫡男・信康の心を守るため、戦のない世を目指しました。
しかし戦国の世の中ではその考えは異端。
武田勝頼の裏切りによりその企みは暴かれ、天下統一を目指す信長は、敵である武田と通じた瀬名を許しませんでした。
信長の呼び出しに応じた家康は、一言もしゃべらず、ただ俯くのみ。
家康の苦しい心情がよくわかりましたね。
家康を諭し励まし、家臣たちに命を出す瀬名の凛とした姿は美しく、涙が止まりませんでした。
両親が瀬名たちを守ったように、瀬名は家康と家康が守る民たちを守るため、命を差し出しました。
なぜ、瀬名や信康が死なねばならなかったのか、本当にこの戦国という世は辛く悲しいことが多くある世だったのですね。
岡田准一さん演じる信長は、瀬名と信康の死を「良かった」と言った佐久間を下がらせました。
その後、「家康よ…」と呟いていたのですが、なんとなく、武田と手を結ぶより、信長に夢の話をした方がもしかしたらよかったのかも、と思ってしまいました。
信長も天下布武を掲げていますが、これは戦によって天下を治める、という意味ではなく、七徳の武と言う意味が込められていると言われています。
七徳の武とは、武力ということではなく、戦を止めるとか、民を安んじる、衆を和す、財を豊かにする、とかいう意味が込められているのです。
これを語源とする天下布武、なのですし、商売にも積極的だった信長だったら、もしかしたら瀬名の思いに賛同してくれたのではないか、と思ってしまいます。
まあ、岡田准一さん演じる信長の迫力に押されて、そんなこと口に出せないですけれども。
今回、第25回「はるかに遠い夢」では、築山事件を丁寧に繊細に描かれており、後世では悪女と謗られる築山殿を心優しい聡明な人物として見事に描いていました。
本当に見応えのある、素晴らしい珠玉の回だったと思います。
さて、次回第26回「ぶらり富士遊覧」では、だいぶテイストが変わるようですね。
愛する妻子を失った家康は、信長を恨むことなく従順な態度を貫き、信長を饗応したいと申し出ました。
家康の真意は何なのか、家康の妻子の死に関わっている信長は一体どういう境地で饗応を受けるのか、第26回も見所満載で、見逃せませんね。