嵐の松本潤さん主演の2023年大河ドラマ「どうする家康」。
脚本は、稀代のストーリーテラー・古沢良太さんです。
毎週日曜BSプレミアム午後6時~、NHK総合午後8時~放送されます。
徳川家康の生涯を新たな視点で描く、スピード感溢れる波乱万丈の戦国エンターテインメント。
こちらでは、大河ドラマ「どうする家康」のあらすじ、ネタバレ、感想をお届けします。
さて、第39回「太閤、くたばる」では、とうとう豊臣秀吉が最期を迎えてしまいます。
天下一統を成した後、領土を海外に求め、国内を混乱に陥れた秀吉。
誰も望まない朝鮮出兵を押し通した秀吉は一体どのような結末にするつもりなのでしょうか。
前回のあらすじ
嫡男の死で傷心の茶々(北川景子さん)を慰めるため、豊臣秀吉(ムロツヨシさん)は、朝鮮への出兵を決めました。
連戦連勝と伝えられ、朝鮮の次は明、その次は天竺、南蛮だと秀吉は豪語します。
そんな秀吉に、浅野長政は反発。
その場は、徳川家康(松本潤さん)の取り成しで収まりましたが、口に出さないだけで、浅野と同じ考えを持つ者は多いのではないかと、後日、家康の側室・阿茶(松本若菜さん)は呟きました。
服部半蔵(山田孝之さん)の情報によると、連戦連勝とは嘘偽りの情報で、実際はかなり苦戦を強いられているというのです。
家康は、秀吉の側近の石田三成(中村七之助さん)を問い詰め、秀吉の唐入りを止めるよう説得しました。
家康と三成の必死の嘆願により秀吉の唐入りは見合わせることになりました。
秀吉の母・大政所(高畑敦子さん)が危ないとの知らせを受けて、秀吉は急遽大阪に向かいました。
その隙に家康の館に現れた茶々。
茶々は、北の庄城落城の恨みをぶつけながら、家康を父のように慕っていいかと尋ねてきます。
家康は茶々の言動に戸惑いますが、側室・阿茶が茶々を撃退。
茶々の言動を怪しんだ家康は、秀吉に茶々を遠ざけろと進言します。
秀吉は激高しますが、先の将軍・足利義満(古田新太さん)が現れ、日の本の頂点にいた時の後悔や反省を秀吉に語って聞かせました。
落ち着いた秀吉は、茶々を大阪に戻すと決意。
その後、明国との対戦を休止。
和睦への道を模索し始めました。
そこに、茶々から懐妊したとの知らせが。
前回、第38回「唐入り」を見逃した方はぜひこちらをどうぞ。
それでは、第39回「太閤、くたばる」のあらすじと感想です。
新しき政とは
次男・拾を産んだ茶々のいる大阪城に、急ぎ戻ってきた秀吉。
秀吉は、汚れた者を近づけるな、拾に粗相をする者があれば、誰であろうと成敗していいと言います。
「この小さきものが余の全てじゃ」秀吉はそう唸ったのです。
拾が生まれたのは、唐入りを、和議を持って終結すると決めた直後でした。
秀吉は、側近の意見を聞かず、七か条の条件を持って和議をせよと命じます。
しかし、明国の王女を天子様の后にする、朝鮮王子を人質として差し出させ、朝鮮の南半分の領地を得るという、無理のある和議でした。
石田三成は、家康の屋敷を訪れ、その次第を報告します。
家康は、これでは明国は受け入れないだろうと無理のある和議に眉を顰め、耄碌しても天下人、難儀なことだ、と阿茶も呟きます。
家康は、三成が考えている新しい政の仕組みとはどのようなことかと問いかけます。
すると三成は、力ではなく、知恵。天下人を支えつつも合議を持って政をする、志あり、知恵豊かな者たちが話し合い、皆が納得して事を進めていく、そうなれば、天下人の座を力で奪い合うこともなくなるだろうと、語ったのです。
本多忠勝(山田裕貴さん)は、まさに新しい世の政、と感嘆の息を漏らし、阿茶も秀吉に奏上してみてはどうかと言います。
家康は、夢を語っているだけでは夢で終わってしまう、と諭しました。
酒井忠次の願い
文禄4年、京、家康は、隠居して久しい酒井忠次(大森南朋さん)の所を訪ねました。
家康の嫡男・秀忠(森崎ウィンさん)が祝言を挙げたので、挨拶に来たというのです。
酒井忠次は目を患っていました。
妻の姿も、井伊直政(板垣李光人さん)の姿もよくわかっていない様子です。
しかし、成長した秀忠の姿を見た忠次は喜びました。
秀忠の嫁は、江といい、茶々の妹です。
太閤・秀吉が徳川との縁を強く望み適った縁でした。
秀忠は、海老すくいを直に見たことがないといい、本家本元である忠次の海老すくいが見たいと願っていました。
目を患っている忠次に無理をさせては、と躊躇していると、忠次がこれで最後の海老すくい、と踊り始めたのです。
家康たちは、忠次と海老すくいを共に踊り、楽しいひと時を過ごしたのでした。
忠次は、唐入りはどうなるのか、このまま終わると思うか、と家康に問いかけます。
家康は「かつて信長様が言っていた、安寧な世を治めるのは、乱世を終わらせるより遥かに難しいと」と呟きます。
忠次も「まさに」と頷きます。
徐に家康に近づくと、しっかりと家康に抱き付き「ここまでよう耐え忍ばれましたな。辛いこと、苦しいこと、よくぞ、乗り越えて参られた」と言います。
家康は「何を申すか、お主がおらねばとっくに滅んでおるわ」と答えます。
「それは、違います。殿が数多の困難を辛抱強く堪えたから、我ら徳川が生き延びられたのです。殿、1つだけ、願いを言い残してようございますか。天下をお取り成され。秀吉を見限って、殿がおやりなされ」忠次はそう言ったのです。
「天下人は、嫌われるばかりじゃ…」と家康は俯きます。
3か月後、忠次は息を乱しながら1人で甲冑を身に着けていました。
「殿から出陣の陣触れがあったのじゃ、参らねば」と立ち上がる忠次。
しかしその体は1人では支えられず、ふらついて倒れ込んでしまいました。
妻の登与(猫背椿さん)は、座り込む忠次に甲冑を着せ掛けていきます。
そうして、完成した時、忠次は息を引き取っていました。
登与は、地に手をつくと「ご苦労様でございました」と深々と頭を下げたのでした。
第2次朝鮮出兵
文禄5年、ついに明国皇帝の返事が秀吉にもたらされました。
秀吉はその結果に満足と笑みを零します。
しかしこれは、戦を終わらせるために小西行長らがでっち上げた偽物だったのです。
それを知った秀吉は激高し、戦じゃ、と叫びます。
再び朝鮮に出兵し、今度は勝つんじゃ、と吠えたのです。
家康は小西を庇い、今一度考え直して欲しいと懇願するのです。
すると秀吉は、これは賭けだと言います。
このままでは先の戦で何も得られなかったことになる、何かを得るにはこの戦を今一度しなければならない、と言うのです。
余りにも危うい賭け、と家康は反対しますが、勝てばいい、と秀吉も引きません。
家康は、我が軍勢は出しませんと宣言。
秀吉は勝手にせい、と答えます。
「家康よ、長久手のでの戦を覚えておろう、儂はあの合戦でそなたに負けた。が、戦っちゅうのは勝てなくても利を得る術はいくらでもある。ここには無限に策が詰まっておるでよ、のう、儂に任せときゃいいがや」
そして三成に朝鮮攻めの用意に取りかかれ、と命じたのです。
かくして、慶長2年6月、誰も望まぬ第二次朝鮮出兵が再び始まったのです。
伏見城では、朝鮮から持ち込まれる荷物を扱っていました。
首を持ってこられない将たちは、討ち取った者の鼻と耳を削いで戦果とすると本多正信(松山ケンイチさん)が秀忠に教えます。
前にもまして悲惨なものになっている戦を心配する秀忠。
正信は、外だけでなく日の本の中も滅茶苦茶、着々と乱世に逆戻りだと言います。
家康はそんな正信を窘め、策は無限にあると言った秀吉を信じるだけだ、というのです。
秀吉、倒れる
拾改め秀頼が目覚ましく成長していきます。
目を細め、秀頼の遊びを見ていた秀吉が突然倒れました。
皆が心配して駆け寄る中、倒れた秀吉を見る茶々の目は、冷ややかでした。
倒れた秀吉は三成を呼び、遺言を作りたいと言いました。
「秀頼はあまりに幼い、誰じゃ、誰が天下人になる」と三成に問いかけます。
すると三成は、意を決したように、「天下人は無用と存じまする」と答えたのです。
「豊臣家への忠義と知恵ある者たちが話し合いを持って政を進めるのが最も良きことかと」と進言したのです。
「儂も同じ考えよ」と秀吉。
「望みはひとえに世の安寧、民の幸せよ、治部、良い、やってみい」と三成に許可を出しました。
寧々(和久井映見さん)もしっかりと頷きました。
家康と前田利家(宅麻伸さん)に報告した三成。
家康は、三成の夢が実現すると喜び、利家は、大事なのは野心を隠し持つ大名をいかに抑え込むかだ、と言います。
三成は、利家と家康に、力ある大名を纏め上げ、五奉行を支えて欲しいと訴えます。
家康はそれを快諾、利家も頷きました。
何でも欲しがる藤吉郎も最後は民の幸せを望むとは、と利家は笑いました。
秀吉の回復を知り、家康も利家も安心したのです。
しかしその後、秀吉の様態は再び悪化していきました。
寧々に呼ばれ急ぎ駆けつけた家康。
寧々は、秀吉がどうしても家康と話がしたいと言っていると、部屋へと促しました。
家康と秀吉は2人きりで向かい合いました。
秀吉は「秀頼を頼む」と訴えます。
秀頼を…、という秀吉に家康は「無論、秀頼様をお守りいたします」と言います。
更に秀吉は、千姫を秀頼に添わせてほしいと訴えます。
それにも頷く家康。
家康は、秀吉にはまだやらねばならないことがあると訴えます。
尚も「秀頼が…」と言いかける秀吉に、家康は「この戦をどうなさるおつもりで。世の安寧、民の幸せを願うならば、最後まで天下人の役目を全うされよ」と訴えます。
しかし秀吉は「そんなもん嘘じゃ、世の安寧など、しったことか、天下なんぞ、どうでもいい、秀頼が幸せなら、無事に暮らしていけるなら、それでええ。どんな形でもええ、酷いことだけはしないでやってくれ、のう、頼む」と訴えます。
倒れかかった秀吉を抱きとめた家康。
家康は「情けない、これではただの老人ではないか」と嘆きます。
秀吉は「天下はどうせお前にとられるのだろう」と囁きます。
「そんなことはせん、儂は治部殿らの政を支える」と家康は答えます。
しかし秀吉は納得しません。
「知恵出し合って話し合いをする?そんな、上手くいくはずがねえ、おめえもようわかっとろう。今の世は、今のこの世はそんなに甘くない。豊臣の天下は儂の一代で終わりだわ」というのです。
そんな秀吉に家康は激高します。
「だから放りだすのか、唐、朝鮮の怒りを買い、秀次様を死に追いやり、諸国大名の心は離れ、民も怒っている、こんな滅茶苦茶にして放り出すのか!」という家康に、「ああ、そうじゃ、なんもかんも放り投げて儂はくたばる、後はお前がどうにかせい」と笑い出します。
秀吉は笑いながらむせ、倒れました。
家康は「死なさんぞ、秀吉」と叫びます。
目を閉じた秀吉。
秀吉の吐息を感じた家康は「猿芝居か」と怒ります。
秀吉は笑い出します。
「大嫌いじゃ」という家康に、「儂はお前さんが好きだったにゃ」と秀吉。
そして、「信長様はご自身の後を引き継ぐのはお前さんだと、そう思っていたと思われるわ。悔しいがの」と言います。
「天下を引き継いだのはそなたである、まこと、見事であった」と家康は褒めたのです。
秀吉は、居住まいを正し、穏やかな表所を浮かべると「すまんの、上手くやりなされ」と後を託しました。
家康は「2度と戦乱の世には戻さぬ。後は任せよ」と請け負ったのです。
家康は、秀吉の姿をしっかりと見据えると立ち去りました。
こうして2人だけの話し合いは終わりました。
その夜、咳込んで苦しがる秀吉の側には茶々がいました。
血を吐き、苦しむ秀吉が人を呼ぼうと呼鈴に手を伸ばそうとするのですが、茶々はそれを遠ざけます。
起き上がり、茶々に手を伸ばす秀吉に、「秀頼は貴方の子だとお思い?秀頼はこの私の子。天下は渡さぬ。後は私に任せよ、猿」と告げたのです。
秀吉は茶々に顔を捕まれ、笑みを浮かべながら息を引き取りました。
血まみれになり動かなくなった秀吉を、茶々は泣きながら抱きしめたのでした。
力ではなく知恵、天下人を支えつつも合議によって政を成す、そうなれば、天下人の名を力で奪い合うことも無くなりましょう。それが私の夢でございます、という三成の言葉を家康は思い返します。
そして、忠次と最後に会った時のことも反芻していました。
「天下人など嫌われるばかりじゃ、信長にも秀吉にもできなかったことが、この儂にできようか」そう、聞き返した家康に、忠次は「殿だからできるのでござる。戦が嫌いな殿だからこそ。嫌われなされ、天下を取りなされ」と力強く言ったのでした。
次回、第40回「天下人家康」
秀吉(ムロツヨシ)が死去し、国内に動揺が走る。家康(松本潤)は三成(中村七之助)と朝鮮出兵の後始末に追われる。秀吉の遺言に従い、家康は五大老たちと政治を行おうとするものの、毛利輝元(吹越満)や上杉景勝(津田寛治)は自国に引き上げ、前田利家(宅麻伸)は病に倒れる。家康は加藤清正(渕上泰史)ら諸国大名たちから頼られる中、やがて政治の中心を担うようになる。そんな家康に野心ありと見た三成は警戒心を強め、二人は対立を深めていく。
NHK大河ドラマ「どうする家康」公式サイト
太閤・秀吉が死去。
合議制による政を石田三成たちは始めるのですが、なかなかまとめることができません。
頼られる立場となった家康のもとに大名たちが集まり始め、家康は三成に謹慎処分を言い渡されてしまいます。
それは家康が意図したものなのでしょうか。
秀吉に後を託された家康は、秀吉にも信長にもできなかった天下の安寧をどのようにしていくのでしょうか。
最後に
秀吉がとうとう退場してしまいました。
圧巻の最期でしたね。
咳込み血だらけになる秀吉とそれを冷たい目で見つめる茶々。
ムロツヨシさん演じる秀吉の狂気の演技は見ていて恐ろしくなるほど、引き込まれました。
1つのシーンごとに目が違うんですよね。
狂気をはらんだ恐ろしい目、穏やかに後を託した目、愛する茶々の憎悪を目にした時の目、そして息を引き取りがらんどうになった時の目。
ドラマ当初から陽気に振舞っていながら得体のしれない不気味な恐ろしさを漂わせていた秀吉。
権力を手にしていく過程の凄まじさと衰えていく晩年の悲しさを見事に演じていらっしゃいました。
一風変わった秀吉でありましたが、とても魅力ある素晴らしい秀吉だったと思います。
ムロツヨシさん演じる秀吉に目が離せませんでした。
また、目を引きつけられたのは、北川景子さん演じる茶々の表情ですね。
妖艶に、秀吉に寄り添う表情、無邪気に笑う表情、前回の哀し気に家康に訴えかける表情、そして今回の秀吉を冷たく見据える表情には引きつけられました。
お市の方を演じていた時の表情と全く違う、同じ人なのに全く別人に見える素晴らしい演技に感動しました。
感動というと、大森南朋さん演じる酒井忠次との別れも感動でした。
軍議に出てこないな、と思っていたら隠居していて驚きましたが、きちんと家康との別れが描かれていて安堵しました。
久しぶりに海老すくいが見られたのも嬉しかったですが、最後に天下人への後押しを忠次がやるところが凄く良かったです。
最後のセリフが、本当に良かった、感動でした。
今まで、弱虫で戦嫌いの家康を支え続けた徳川の忠臣・忠次の言葉が心に沁みました。
仲の良い夫婦の姿も良かったですね。
猫背椿さん演じる登与との最後が、沁みました。
夫を支え続けてきた妻の姿にも感動でした。
そしてやはり良かったのは、家康と秀吉の2人の語らいシーンですね。
秀頼のことだけを思う自分勝手な秀吉に激高した家康。
高笑いしながら、開き直る秀吉。
死んだと見せかけ心配させる秀吉と、心配したのに芝居とわかり、思わず大嫌いじゃ、と子供のように言う家康。
自分は好きだった、と笑いながら言う秀吉に、昔からの関係を見たようで、懐かしく感じました。
信長の後を引き継ぐ役目を期待された家康に嫉妬した秀吉に、それでも引き継いだのは秀吉、誠に見事であった、と家康は秀吉を認めました。
お互いに信長に認めてもらいたくて必死に競っているようなライバル関係だった2人が、お互いを認め合い、秀吉は家康に後を託しました。
この2人の関係性、とても素晴らしく感動しました。
嫌がらせのように放り出すのかと思いきや、上手くやりなされ、と家康のやり方を認めているかのような秀吉の言葉が深く、その時の2人の表情に引きつけられました。
目が離せない素晴らしいシーンでした。
主要人物がどんどん退場していってしまい、だんだん寂しくなってきたところですが、家康が天下を安寧に導くためにはまだまだ問題が残っています。
有能さを認め、理想を語る三成を好ましく思っていたはずの家康が、三成を追い詰めることになっていくのです。
さて、次回第40回「天下人家康」では、合議制で豊臣政権を支えると言った三成と家康が対立していくことになります。
純粋に政を行おうとする三成に、家康はどうやって天下を取っていくのでしょうか。
最後に向けて物語はどんどんスピードアップしていきます。
これは目が離せませんね。